どちらも《まもる者》だけど、手段と目的が違う。
竈門家って、貧乏家庭なのに兄弟を1人も奉公に出さないって、時代背景を考えればおかしいんじゃ?と思ったので、竈門家を捏造しています。
《注意》
この作品では、竈門兄弟は原作のような普通の幸せを享受することは、現時点では出来ません。
竈門兄弟の幸せを願う人は、今回の話は不愉快に
感じるはずなので、読まないでください。
俺は今…とんでもない所に招かれている。
「I apologize for calling you all of a sudden, but welcome to the U.S. Embassy!」
「はじめまして、通訳を担当します。リアム・オニヅカと言います。こちらの方が我が国の特命連絡員であるローズマリー・ベネット様です。」
「は、はじめまして…」
車に乗せられて、軍人さんにはそれは丁寧に説明をされたが、今のレディさんの姿は、白いワンピースだが、首飾りには宝石がつけられて、膝下のスカートは金銀の糸で縫われたレースをふんだんに使っている。まるで…貴族令嬢だ。
「あ、あの、レディさん…じゃなくて、ローズマリーさんは何と?」
「あぁ、通訳をしていませんでしたね。先ほどの言葉は『急に呼び出してしまったことには謝罪しますが、ようこそ、米国大使館へ!』と言っております。」
「そ…そうですか…」
「Nice to meet you, I'm Rosemary Bennett, who was dispatched from the U.S. Embassy.」
「それでは翻訳します。『はじめまして、アメリカ大使館より派遣されました、ローズマリー・ベネットです。』」
「There's been a rumor, Tanjiro Kamado, isn't it?」
「『お噂はかねがね、竈門炭治郎君ですね。』と。」
「はい!竈門炭治郎です。お招きいただきありがとうございます!」
俺の言葉もまた、
「"Yes! I'm Tanjiro Kamado. Thank you for inviting me!"」
翻訳をされていた。あれ?でもこの人は、
「リアムさん、ローズマリーさんは日本語…話せましたよね?」
まさか、日本語も忘れてしまったのか?
「ええ、内容を理解していますし、話すことも出来ますが、【日本人と日本語で話す機会】がないに等しかったので、日本語で会話するよりも、英語で会話をした方が伝えやすいそうです。」
「そうですか」
確かに…俺と最後に会ってから時間は経っている。
その間に会話の相手になったのは、外国人しかいない。
向こうの言葉に慣れてしまったら、語彙力が上がるのは英語の方になるだろう。
「では、翻訳をお願いします。
今日は何の御用ですか、ローズマリー様。」
「How can I help you today? Ms. Rosemary」
「It will be a long time when you get down to business. So, let's eat first.」
「本題に入ると長くなります。なので、食事を先にしましょう。」
九鬼さんの予想通り、本題に入る前に食事を摂ることになった
「It's an unfamiliar meal, isn't it? Some courtesy violations will be overlooked.」
「慣れない食事でしょう?多少の礼儀違反は見逃します。と仰っています。ローズマリー様のように食事をしてください」
「はい」
そこから出てきたのは、九鬼さんに教えてもらいながらも、悪戦苦闘した【フランス料理】だった。
実践練習をしていなければ、この食事だけで気力を使い果たしていただろう。俺が慣れた手つきで食事をするのが予想外だったらしく、
「I'm very good at it. I didn't expect to be able to eat so elegantly with just a mercenary.」
「すごくお上手です。ただの傭兵とここまで優雅に食事が出来るとは思ってもいませんでした。」
ただの傭兵…九鬼さんが言っていた、食事も外交の場だという話。
確かに…あの時のレディさんではない。
レディさんなら、俺のことを
この人は、もう…本物の…外交官なんだ。
「お褒めに預かり光栄です。ローズマリー様の手本が美しいからです。」
「It's an honor to receive your compliments. Because Rosemary's example is beautiful.」
「You've gotten better at flattery.」
「お世辞も上手くなりましたね」
「ローズマリー様ほどではありませんよ」
「Not as much as Rosemary」
会話はトントン拍子に進んだ。だが、いくら料理が美味しくても会話に温度を感じることはなかった。
表面上は煌びやかで優雅でありながら、中身は空っぽだ。
こんな食事なら、蝶屋敷で食べるおにぎりの方がよっぽど美味しい。
そして、食事はつつがなく終わり、ローズマリーさんが食後の祈りを終えた後、
「Let's get down to business.」
「それでは本題に入ります。」
車の中で、軍人さんに最初に言われた言葉は、
《例えかつて、どんな関係だったとしても、相手は一国の役人、たかが一傭兵如きが気安く話しかければ、ローズマリー令嬢は許しても、護衛のアメリカ人は許さない。敬語で話せ、いいな、絶対だぞ。》
《あの…具体的にどのくらい偉いのですか?》
《例を出すか…お前は平民、相手は貴族令嬢。どうだ?分かりやすい身分差だろ》
《えっ!でもあの国には貴族はいないと聞きましたが?》
《確かに米国には日本のような身分制度はない。
だが、人が集まれば似たような階級差は出てくる。
ローズマリー令嬢は【米国が派遣した使節団の1人】だ。
とにかく、
大使館内の法律は米国だ。私たちが庇える場所ではない。》
《君たちの当主、産屋敷耀哉のせいで、この国は窮地に立たされている。これ以上の失態を重ねたら…お前の妹を殺す。》
あの発言をした別の軍人さんの匂いは本気だった。
俺がローズマリーさん相手に、無礼な態度で挑めば禰豆子を殺すという確固たる意志があった。
傭兵…鬼殺隊士はこれから先は傭兵だと言われた。
軍人よりも格下の戦闘員だと。
俺たちよりも格上の軍人さんが、ローズマリー
だから、これからの話が、ただの雑談ではないのだと、軍人さんの匂いでわかった。
ブルル
「着いた…な。俺たちはここで待っている。帰ってこいよ、竈門炭治郎君」
特例大使館
《竈門炭治郎君…君を令嬢が名指しで呼び出した理由には、いくつかの検討はついている。
まず、第一に…【妹が鬼であること】》
「The reason why I called you is that my sister, like me, is a [demon who doesn't eat people], and there's something I want to ask you who inherited that blood.」
「あなたを呼び出した理由は妹君が私と同じく、【人を喰わない鬼】であること、その血を受け継いだあなたに聞きたいことがあるのです。」
「聞きたいこと?何でしょうか」
「Is there something you want to ask? What is it?」
俺の言葉も即座に翻訳される。最初に会ったときは2人とも日本語での会話だったから、この通訳を挟むやり方は不便に思う。
「Personally, I think the reason why your sister was able to overcome the sun is because of the special bloodline she was born with. However,」
「私個人としましては、君の妹が【太陽を克服】できた理由は《生まれ持った特別な血筋》にあると思います。ですが、」
「ですが?」
「Then why could only your sister endure it? There will be a contradiction. That's why our country wants to investigate another possibility.」
「それだと、何故君の妹1人しか耐えられなかったのか?という矛盾が生じます。なので我が国はもう一つの可能性を調べたいのです。」
「もう一つの可能性?」
禰豆子が太陽を克服できた理由は《竈門家の血筋だから》という考えなのか。確かにそれは俺としても考えていた。
禰豆子だけなんだ、鬼となってからも、本能に飲み込まれなかったのは。
ローズマリーさんも【太陽を克服した鬼】だけど、彼女は《人を喰うことが原因の病》を知っていたという前提条件がある。
だけど、禰豆子にはそんな知識を身に付ける時間がなかった。
他の鬼と前提条件は同じなのに、禰豆子だけが【太陽を克服】できた。その理由に血筋を挙げるのは当然のことだ。
だけど…もう一つの可能性?
「It is possible that your family was unconsciously ingesting [antibodies against the blood of the demon's chieftain].」
「君たち一族が無意識に【鬼の頭領の血に対する抗体】を摂取していた可能性です。」
「摂取?」
俺たちは確かに山で採れた山菜をよく食べていた。
山菜を売りに出すほどの余裕はなかったから、家族みんなで食べ終えていたけど、その中に【鬼舞辻の血】に対する抗体を持つ山菜がある?
「If the reason why your sister was able to maintain reason even though she was an ogre was congenital and unchangeable, such as bloodline, if it was an acquired ability, she would be able to mass-produce [the ogre who overcame the sun].」
何を言っているのかは分からないが、一気に声色が変わった。
「もし、妹さんが鬼でありながらも理性を保つことができた理由が、血筋などの先天的で変えられないものならまだしも、後天的に付けた能力だった場合、【太陽を克服した鬼】を量産できることになります。」
「…あっ!」
そうか、九鬼さんが禰豆子や珠世さんを隠す理由はそれだったのか!
「If it is acquired and an ability that everyone can wear, the power balance of the country will collapse all at once. It's not a story that can be overlooked as a diplomat in a country.」
「もし、後天的で誰もが付けれる能力だった場合、国の勢力均衡が一気に崩れます。一国の外交官として見過ごせる話ではありません。」
食事の時のような表向きとはいえ、和やかな雰囲気から一変し、鬼とは違う疎外感を感じた。この特例大使館と呼ばれる施設は、藤の香りが強く、俺と目線を合わせる人は全て香水を振りかけていた。
俺の鼻を使えない場所だ。
「Therefore,」
「なので、」
「I would like to get permission to enter Mt. Kumotori, the mountain where you are from.」
「君の出身山である雲取山への入山許可をいただきたい。」
「入山許可?」
なんで山に入る許可を俺に取るんだ?そういうのは普通、大人に求めるものではないのか?
「The day we first met, I was wondering after I heard about your family structure and life.」
「初めて会った日、君の家族構成と生活を聞いてから不思議に思っていたのです。」
「There's no way your parents wouldn't know that electricity is spreading, the son of a charcoal grilling hut, a family business that will be tapered considering the coming era. However, aside from you, the eldest son and heir and the eldest daughter Nezuko, it's strange that the mother didn't urge other brothers to find a place to serve.」
「炭焼き小屋の息子という、これからの時代を考えれば先細りする家業、電気が普及していることを貴方の両親が知らないわけがない。なのに、長男で跡継ぎで家長のあなたと、長女の禰豆子さんはともかく、他の兄弟に奉公先を探すように、母親が促さなかったのがおかしな話なのです。」
奉公先…。確かに俺たちは裕福な家庭ではない。
だが、飢えるほど貧しい家庭ではなかった。
でも、確かに言われてみれば、他の兄弟持ちの中には、奉公に行っている兄弟がいると聞いたことはある。
食い扶持を減らす為でもあるが、真っ当な教育を受けさせてくれる奉公先の方が、子どもの将来も安泰だからという理由がある。
そう考えれば…母さんが奉公先を探さないのは、確かにおかしい話だ。
「Some families don't serve their children, but that's because the house is wealthy. What do you think is the reason why you don't find the servant of your second son and third son in a poor family that is in trouble with what to wear?」
「子どもを奉公に出さない家庭もありますが、それは家が裕福だからです。着る物にも困るような貧困家庭で、次男三男の奉公先を探さない理由は何だと思いますか?」
「理由…」
俺たちは山菜などを取ったり、炭を売って食事を確保していた…、だけど、それだけで賄えるほどではなかった。
奉公先なら、町に降りて炭を買ってくれる常連さんなどに頼めば、伝を使って探してくれるはずだ。
情に深い人が多いのだから。
なのに、母さんや父さんが奉公先を探さなかった訳。
雲取山の入山許可を俺に求めた…まさか!
「炭焼き以外にも、収入源があり、貯蓄があるから…ですか。」
「In addition to charcoal grilling, there is a source of income and savings ...?」
「That's correct. Please see this document. He is the successive owners of Mt. Kumotori.andThis is the water bill for the successive owners of Mt. Kumotori and the water provided to the field.」
「『正解です。こちらの書類をご覧ください。雲取山の歴代所有者と、畑に水を提供した分の水道料金です。』炭治郎さん、米国大使が日本政府に要請して提供してもらった、雲取山の所有者兼管理者の名簿と、戸籍謄本です。」
通訳のリアムさんに渡された書類には、おじいちゃんの名前や、父さんの名前が記されていた。今は母さんの名前だ。
そして、
「君たち竈門家と長い付き合いがある、サブロウと呼ばれる男性に話を聞きました。500年に及ぶ間、雲取山は竈門一族が所有していた固定資産だそうです。元はどこかの権力者の土地だったそうですが、何かしらの事情により、所有権が竈門家に移り、以降竈門一族が代々受け継いで、守っていた土地だそうです。」
「えっ…でも、父さんも母さんもそんな事は一度も…」
家が貧しいなら、それこそ土地を一部売る話があってもおかしくない。なのに、跡継ぎの俺は一度もそんな話は聞いていない。
でも、リアムさんの話は嘘ではない。
この書類には、明治以前の古びた紙からずっと竈門家の名前が記されている。
「恐らくは…君が正真正銘、大人の仲間入りを果たした時に所有権を移すつもりだったのでしょう。歴代の所有者は、その時代ごとに成人と認定される歳に土地の継承をしています。
君たち一族が代々受け継いできた【ヒノカミカグラ】?と呼ばれる神事を完璧に出来た男子に継承権があると考えると…貧しいのに、次男以下を追い出さない不可解な理由に説明がつきます。」
通訳のリアムさんはそう言った。
確かに…雲取山の歴代の所有者は長男で統一されてはいない。
次男や三男が受け継いでいる時もある。
戸籍謄本を見て、「長男が亡くなったから次男に」という話ではないのは事実だ。
俺が一通り書類に目を通したのを確認してから、
ローズマリーさんは、
「I'd like to get permission to enter Mt. Kumotori, but you're still a minor. Even if you give permission, you need adult permission anyway. Please decide after consulting with Kuki-dono. Mt. Kumotori is a Japanese territory, and people from other countries cannot enter without permission.」
「雲取山の入山許可を頂きたいですが、…君はまだ未成年。君が許可を出しても、どちらにしろ大人の許可も必要とします。九鬼殿に相談をした上で決めてください。雲取山は日本の領地、私たち他国の人間が無許可で入ることはできません。」
《第2の目的は恐らく、君たち家族が住んでいた雲取山の調査をするためだ。調査許可を求められたら、君はこう言えばいい。
「それは所有者に言ってください。」と。》
九鬼さん、所有権が俺に移っている場合はどうすればいいのですか?
だが、ローズマリーさんの話ぶりを考えると、今のところ俺が仮に許可を出さなかったところで、大きな亀裂を生むほどではない。
「ローズマリー様、それは俺1人では決められません。九鬼さんと…政府代表の九鬼大和警視と相談の上で連絡します。」
「Rosemary, I can't decide that by myself. I will contact you after consulting with Mr. Kuki and Superintendent Kuki Yamato, the representative of the government.」
「I understand. Then, I will transfer this material. Please give it to the representative of the Japanese government」
「『分かりました。では、こちらの資料を譲渡します。日本政府代表にお渡しください。』と仰っています。」
「はい、確かに受けとりました。」
「Yes, I certainly received it.」
話はこれで終わったと思い、少しほっとしていたところ、
「Tanjiro Kamado, you, no, it's a terrible story for your brothers, but there's something you need to listen to. This time...this is the biggest reason I called you.」
「『竈門炭治郎君、君、いや君たち兄弟には酷な話だが、聞いてもらうべき話がある。今回…君を呼んだ最大の理由だ。』炭治郎さん、我々が君をわざわざ大使館に呼んだ理由を聞いてください。」
「えっ…!」
大使館にわざわざ呼んだ?まさか、禰豆子の血や雲取山への入山許可は前座に過ぎなかったのか。
「I and my father, Ambassador Harris, have the same idea, but it is almost certain that the biggest reason your sister was able to overcome the sun is [bloodline]. In other words...the act of your brothers having children and connecting offspring is only a threat from the United States's point of view. Let me get straight to the point. We, the consensus of the country of America, want the Kamado family to be discontinued in your brother's generation.」
「私や私の父であるハリス大使も同じ考えですが、君の妹が【太陽を克服】できた最大の理由は【血筋】であるのは、ほぼ確定です。つまり……君たち兄弟が子を持ち、子孫を繋げる行為は、アメリカから見れば脅威でしかありません。単刀直入に言います。我々、アメリカという国の総意は、
「……は?」
禰豆子が太陽を克服できた理由が血筋であることはまだいい。
俺もそんな予想をしていたのだから…でも、それを理由に【人に戻っても子孫を残すな】…と。
(ふざけるな!)
手を出しそうになった。でも、
《最後に1つ…君がこれから行くであろう大使館について説明しましょう》
九鬼さんに言われた《一番大事な心得》を思い出した。
《大使館に入るには、相手側の許可が必要です。政府代表と任命されている私はもちろん、呼ばれる側は等しく【交渉相手】と認識されます。
そして、外交に慈悲の心などありません。
例え相手が身内であれ、交渉相手となった暁には【敵対関係】になります。
外交とは…優雅に振る舞いながら、自分の主張を押し通すものです。
外交の要は【言葉】です。
基本は表向きの心地よい甘言を、言いながらそっと毒や罠に嵌めるか。
あるいは相手側を怒らせて、被害者として主張を受け入れさせるか。の2つの方法があり、時と場合に応じて使い分けるものです。
君の場合は、妹が【太陽を克服した鬼】です。
向こう側が一番欲するのは、君の妹。
この国に【太陽を克服した鬼】を置き続けるのは、向こう側からすれば首元に小刀が突くような危機感があるはずです。
だから、絶対に【君の妹を自分達のそばで管理したい】と考えている。
君を呼んだ理由は、十中八九罠に嵌める為です。
どんな甘言を言われても、挑発されても、決して…
そうだ…。このまま動けば向こうの意のままにされてしまう。
禰豆子の為を思うなら、動いてはいけない。
グッと堪えろ…!
怒りを鎮めろ!
「ふぅ…」
「What's the matter?」
「どうされましたか?」
【子孫を残すな】と言った同じ口で、俺を心配する言葉を使う。
「何でもありません。」
「It's nothing」
冷たく、虚しい、空っぽの言葉。
「ところで【一番大切な話】とはそれだけなのですか?」
「By the way, is that all [the most important story]?」
平静を装え、笑え、穏やかな言葉を使え、
「That's right, no matter how you move, please do whatever you want. All we can do is give you advice. Most ... if you act to leave your descendants behind, I think you will be missing for some reason in a world without demons.」
「そうですよ、君たちがどう動こうとも勝手にどうぞ。私たちに出来るのは忠告だけですからね。最も…子孫を残そうと行動すれば、鬼なき世界で、何故か行方不明になるとは思いますが。」
遠回しに【子孫を残したら殺す】と宣言してきた。とても微笑みながら言う言葉ではない。
だが、今回の件ではっきりと分かった。
この人は、もう
九鬼さんの言っていた通り、これからは【米国の為に動く】
それが分かった時点で、俺の中で区切りもついた。
これから先、俺がやるべき事は決まった。
「昼食…美味しかったです。ローズマリー
「Lunch...it was delicious. I hope Rosemary is doing well.」
「I had a good meal today for the first time in a long time. Thank you, too. Please give my regards to Superintendent Yamato.」
「『今日は久々に楽しい食事をとれました。こちらこそ、ありがとう。大和警視にもよろしく』だそうです。
帰りはこちらから送りましょう、車の準備を致します。」
「はい、お願いします。」
大使館から帰ってきて、早速九鬼さんと話し合いをし始めたら、
「はあ!雲取山の所有者は竈門葵枝ではなかったのか!?」
「えっ…!母さんは鬼舞辻に殺されて、今は妹と俺だけですよ!」
「君…まさか、家族分の死亡届を出していなかったのか!」
「えっ?死亡届?」
そういえば…おばあちゃんが亡くなった時、母さんが役所に行っていたような?
「はぁ…いいか、竈門炭治郎君、書類上、君の御母堂と兄弟は全て生きている。役所に死亡届を提出し、受理されない限り、雲取山の所有者は、君が成人するまでは、【竈門葵枝】だ。」
鬼の事、冨岡さんとの出会い、そして鱗滝さんとの修行の日々で、すっかり忘れていた。
「今回の案件は、柱の身辺調査に力を入れて、君の身辺調査を怠った私たちの責任だ。御母堂と兄弟の死亡届はこちらが何とかしよう。
そして、雲取山の所有権を君に移す。
後見人はこちらが指名すれば、すんなりと所有権譲渡は出来る。」
「何から何まで…申し訳ありません…。」
ただでさえ忙しい人に、さらに負担をかけてしまった。不甲斐ない。
(もし…竈門禰豆子が太陽を克服できた理由が、ベネット親子の予想の一つ、後天的な能力だった場合、竈門炭治郎亡き後、後見人が土地を相続できるからな。米国人に土地を買われる可能性を消さなければ。)
《舞台裏》
ニコニコ
スン
『はぁ…疲れた』
普段から、あんなフォーマルな場で着る服なんて着ていない。
何でお父様は、ネックレスに本物の宝石なんて付けたんだ?要らないでしょ、表向きの私は10歳だぞ。
一体誰に会うことを想定していたんだ?
それにあのフリルもだ、動きづらい。
料理中、うっかり落とさないように普段より精神を使った。
だが、それがあったからこそ、炭治郎君相手に冷淡に扱う事ができた。それは、これからの事を考えればいい結果だと思う。
計画は成功だ。
完璧に嫌われた。
自分でそう仕向ける予定だったし、実際に竈門炭治郎対策を事前に通達していたから、嘘だとは思われなかったはずだ。
『それにしても…見事な演技でしたね、ローズマリー様』
通訳のリアムさんには、事前に「全て正確に翻訳するように」と言っていた。彼は私とは違い、炭治郎君を懐柔する事を提案していたので、心配だったが、職務には忠実だった。
『彼は鬼を滅ぼす要であると同時に…鬼としての適応能力が最も高い。私たち外部者は、鬼殺隊内では評判が悪い。
今のところ、鬼殺に貢献する物を提供していませんからね。』
そう、今のところ鬼殺隊から見れば、私たちは
【勝手にやってきて偉そうにふんぞり返っている存在】だ。
『しかし、大使館からは【太陽光の再現機械】が出来たと報告がありました。流れは変わるのでは?』
出来てしまったのだ、【ブラックライト】が。
最初聞いた時は耳を疑った。だが、詳しく聞けばまだまだ発展途上段階の試験品、最終的には鬼舞辻に当てることを想定しているが、長時間の発光ができていない。最終決戦の最初の場は、無限城だ。
出来れば、鬼舞辻が産屋敷邸に来た時に殺したいが、到底今の光量ではできない。
ブラックライトの無駄打ちをして、鬼舞辻に逃げられては意味がない。
とはいえ、仰々しい機械があれば疑われてしまう。
小型化を推し進める必要がある。
そして、電池の容量を上げなければ、
『本国に伝えてください。ブラックライトの発光時間の長期化と、電池の小型化を同時並行で進めてください。目標は、刀のように持ち歩けるまでの小型化と軽さ、電池の容量を上げて光量の倍増。大型のブラックライトも少なくとも10機は持ち込んでください。』
『ハリス大使にお伝えします。ところで、客人が帰られたので、この強い香水を落としてもよろしいでしょうか?』
『もちろんです』
事前に特例大使館内の職員に【竈門炭治郎対策】の最重要事項に、
【鼻で人の感情を読み取れる人が大使館にやってくるので、大使館員全て《藤の香水》を通常時より強くかける事】
とお父様経由で通達していたのもあり、皆キツイ匂いをしている。
そして、追加で増員された護衛は、今日は全て休暇として、本家の大使館に移動してもらっている。
私はその人達の正確な場所は知らない。
知る必要がない情報だから…、とはいえ、ある程度の場所は予想がつくが。
『みんな、落とす許可降りたぞー!』
『シャワー浴びれる〜!』
『匂いキツイ』
ざわざわと揃って、シャワー室に人が移動していった。
『みんな…ありがとう』
いくら大使の命令とはいえ、キツイ匂いの香水を一日中つけてろなんて、嫌にきまっている。
ましてや、《ハリス大使の娘》の客人が来るからなんて理由なら、権力の私的利用に見えても仕方ない。
それなのに、《お飾りの特命連絡員》の客人相手に、完璧に対応してくれた。
だからこそ…ちゃんと死なないと…ね。
『さて…あの書類を見て、九鬼さんはどう対応するのかな』
九鬼大和side
「ローズマリー様からの書類です。」
「ああ、置いておけ」
これから優先的にする事は、まず【竈門炭治郎の後見人】にこちら側の人間を入れて、雲取山の所有権を得なければ。
ローズマリー様は、【血筋】による克服と言っていたと炭治郎君からは説明されたが、それはあり得ないと一番理解しているのは、ローズマリー様だ。
本当に太陽を克服する条件が【血筋】ならば、ローズマリー様が克服する条件を満たしていないのだから。
彼女は10歳と表向きはそうなっているが、思考回路は20代前半程度にはあると、護衛期間の会話から推測できる。
【太陽を克服する条件】を【血筋】と言ったのは、ひとえに
【不老不死の妙薬】の原材料をこの国が独占しているとなれば、戦争は確実。そうなれば1番に被害を被るのは、兵士ではない。女子供だ。
鬼による二次被害を最低限に収めるには、【太陽を克服した日本人の鬼】は、【特別な血を引いているから克服できた】と公表すれば、その鬼と兄が子孫を残さねば、この国は【脅威の存在を匿っている】という疑惑を逸らすことができる。
彼女は、外交官だ。
いざ、戦争になれば、アメリカが勝つのは確実。
だけど、戦争は相互少なからずの経済的被害を被る。
ヨーロッパとの戦争で、動乱の足音がする国内を乱す真似は、例え本国の命令であっても拒否する。
彼女からは…そういう覚悟を感じた。
「だから…かね」
君が提供する
……………………………………………………
日本政府代表 九鬼大和警視
鬼殺隊内における反対派の多くは、階級は低い、もしくは鬼殺経験が3年未満の者が多く…
……………………………………………………
「柱稽古の前に末端の教育を受けさせねばならないな。」
無駄吠えする駄犬を飼うほどの余裕は、ないのだから。
ローズマリー・ベネット
本作の主人公
衛る人
《利用価値があるから》という打算ありきとはいえ《不老不死の化け物》を
だから、総合的に見れば大衆の不利益になる
目的達成に必要なら、自分の命は放り出すが、元凶を滅ぼさない限り終わりが来ないため生きているだけ。
仮に『死んでくれ』と言われたら躊躇いなく冨岡義勇を呼ぶ。
第二次世界大戦で戦勝国であるアメリカさえ、少なからず被害を被っているのを、史実として知っているので、無駄な戦争は避けたい。
だからこそ、【青い彼岸花】という【不老不死の妙薬】の原材料は国元には知らせず、自分の信頼できる関係者のみで処分しようとしている。
『禰豆子が太陽を克服できたのは、特別な血を引いているから』とした方が、犠牲者は少なくすむから、大衆の平穏の為に、竈門兄弟に多少の不自由を強いるのは、仕方ないと思っている。
別に子孫を残さなければ、恋も結婚も自由なのだから。
国民として受け入れてくれた人々の利益になるなら、喜んで生贄にでも、壁にでもなりましょう。
あなた方がいなければ、とうの昔に鬼殺隊によって殺されていたのですから。
竈門炭治郎
原作主人公
護る人
妹を護るのに国が邪魔な存在になれば、他国移住もする。唯一生き残った妹の幸せが第一。
だからこそ、『人に戻っても子孫を残すな』と言ったローズマリーが許せない。
怒りで視界が狭くなったので、特例大使館内の違和感に気づかなかった。
九鬼大和
政府代表、鬼殺隊の教師役であり、特高の警視
竈門炭治郎の過去は、人員不足(鬼殺隊や鬼の存在は、あくまでも非公式な為、情報統制のため、人を要請できない)もあり、書類による経歴しか見ていなかった。
雲取山の所有者になりうる存在だと認知していたが、未成年のため今は母親が代理で所有者なため、誤魔化しが効くと思っていた。
また、炭治郎は「妹を人に戻すために鬼殺隊に入った」と言っていたので、家族は健在だと勘違いしていた。
そして、【青い彼岸花】は知らずとも、竈門妹が太陽を克服できたのは、【雲取山から取れる何かしらの植物】が原因だと確信している。
リアム・オニヅカ
ローズマリーの護衛であり、特例大使館のNo.2
炭治郎との面会前の会議では、【懐柔案】を提案していた。
だが、ベネット親子は【鬼殺に貢献してもらう為に、あえて嫌われ役をする計画】を練って、実際それが採用された。
最初は不服だったが、炭治郎と実際に会って、意志の強い目を見て、瞬時に、(これは懐柔できる相手ではない)と判断したので、ローズマリーの指示通りに動いた。
もし、少しでも懐柔できそうな人だったら、命令違反をしていた。
大正コソコソ噂話
護る
「かばいまもる」という意味
「助ける」「かばう」「大切にする」
対象は当然、妹の禰豆子です。
衛る
「外側をとりまき中をまもる」という意味
桜が他国外交官に鬼殺隊の内情を教えるのは、
ローズマリーは戦争を望まず、寧ろ日本人被害者を減らそうと尽力しているからです。