産屋敷邸
カァカァ
集まった柱の数だけ鴉も集まりつつある中、
「今回は一体何だっていうんだぁ?こちとらお前らが押し付けた雑魚共の鍛え上げに忙しいんだがぁ。」
不満たらたらの不死川、彼は銃器中隊に派遣された鬼殺隊士も受け持っているため、実際に他の柱よりも忙しい。
「あら?冨岡さんと、しのぶちゃんはまだなのかしら?」
一通り、隊士に柱稽古をさせ終わっていたので、そこそこ余裕がある甘露寺。
ゲスメガネ事件を機にスカートからズボンに変わっている。
「おはよう甘露寺、ズボンも似合っている。」
「あら、伊黒さんそうかしら?そうそう、見てちょうだい!伊黒さんからもらった靴下は、見えなくなるけど、着続ける事にしたの。」
「そうか…」
淡々と話してはいるが、靴下の話で明らかに声色が柔らかくなった伊黒、
「南無…」
相変わらず涙を流している悲鳴嶼、
「待たせたな…」
いつの間にか、しれっと座っている冨岡、
「お待たせしました。」
「今回は何のよう?」
同時に入ってきた胡蝶と時透、これで現柱7名全てが揃った。
そして、最後にやってきたのは、
「ようお前ら!」
「今回は私の為に、わざわざ集まってくれてありがとう」
引退した音柱宇髄天元、前任の炎柱、煉獄愼寿郎。そして、もはやいつもの面々に入ってしまった九鬼大和。
「ごきげんよう、柱の皆々様。私は今回の柱集会議に直接の関係はありませんが、立場上同席させてもらいます。では、始めてください。」
と言い、本当にこれまでの柱集会議とは違い、明らかにやる気のない、立ち居振る舞いで話を促した。
「う、ううん、忙しい君たちをこの時期に、わざわざ呼んだのは他でもない、以前の柱集会議で話した【上弦の能力】と【過去】をさらに詳しく話す為だ。」
途中で道を踏み外し、一時はアルコール中毒者になりかけたとはいえ、柱だった男の言葉に、今の柱も食いつく。
「上弦の能力と過去だぁ?以前聞いた内容だけではダメなのか?」
ただでさえ、軍人が入り込んだ事により、原作よりも訓練生が増えている不死川実弥は、さっそくイラついてきている。
「もしや…刀鍛冶の里で【半天狗】と【玉壺】が討伐された事により、新たな上弦がついたのですか?」
以前の柱集会議で、一通りの上弦情報を通達されたにも拘らず、この忙しい日々に会議を開く意味を、早々に察した胡蝶。
「ああ…そういえば」
「補欠早くない?」
「南無…」
「えっ!もう!?」
「チッ…鬼は相変わらずしつこい。」
胡蝶の言葉に納得した、冨岡、時透、悲鳴嶼、甘露寺、伊黒。
「胡蝶しのぶさん…そうだ。
「そうでしたか…」
「はい!」
「では、説明をお願いします。」
「…」
「…補欠…か。」
「補欠とはいえ、上弦だ。」
「そうだ、冨岡、油断できる相手ではない。」
話を促す胡蝶、やる気満々の返事をする甘露寺、南無を言わなかった悲鳴嶼、無言の時透、補欠の上弦に上の空な冨岡、その冨岡に反論する不死川と伊黒、
「んじゃ、派手な俺様がまず説明するぜ!新上弦の肆【鳴女】!前の上弦情報開示で説明した、無惨の居城の管理者だ。
こいつの武器は、無限城の管理者だということもあって、空間を操る血鬼術に特化してやがる。まず、前提として近寄れないだろうな。」
「なら、どうすれば…」
「甘露寺、落ち着け、空間に特化しているという事は、逆に真っ当な戦闘能力が低いとも捉えられる。」
「伊黒大正解だぜ!伊黒の言うように、鳴女と呼ばれる鬼は、無限城の管理をしている分、戦いには不向きだ。だが、補欠の上弦とはいえ、何百年も生きているのは事実。油断したらあっという間に殺される。」
「遠距離による攻撃手段が必要…ですか。」
「確か…軍…持っていたか?」
これまでの鬼殺隊だったならば、基本装備は刀一本。だが、今は違う。
「ええ、不死川中尉がまとめる銃器中隊は、文字通り、銃器などの中距離、遠距離でこそ効果を発揮する武器を使うことが前提です。
上弦の戦いに、軍の中隊を巻き込む事は出来ませんが、銃火器や、手榴弾を腰に下げれる最低数だけならば、数百人の前線で戦う鬼殺隊士に、渡せるだけの数はあります。」
そう、大日本帝国政府は、鬼殺隊を敵視しているとはいえ、実際に鬼と戦うのは鬼殺隊だ。国も最初から、国軍だけで鬼に勝てると思うほど、驕り高ぶっていない。だからこそ、武器提供は一部の秘匿性が高い物を除き、鬼殺隊士に配る事が前提で準備している。
「でも、鳴女という鬼を倒せなければ、無限城は存在し続けるから、最終手段はやっぱり、首を落とす事だけなのね。」
国公認とはいえ、鬼と戦える人数には限りがある。
不利である事には変わりないと、甘露寺は落ち込んだ。
「こればかりは、どうにもなんねぇからな。」
それに同意するのは不死川だ。それに頭を縦に振る他の柱。
「悩んでも仕方ない…肆の血鬼術は前回聞いたから、次に行くぞ。」
「新たな上弦の陸は【獪岳】。皆に通達された裏切り者だ。」
獪岳の説明は愼寿郎がする。天元は柱を引退したとはいえ、日数が経っておらず、裏切り者となれば、感情的に話してしまう懸念から、冷静に話せる愼寿郎にかわった。
「確か…雷の呼吸でしたっけ?」
「あの裏切り者か。」
「あぁ…あの子か。」
「悲鳴嶼さん、知り合いだったのですか?」
「なに…昔、私が鬼殺隊に入る前に養っていた寺の子どもの1人と、同じ名前だっただけだ。あの子は臆病だった…鬼殺隊に入る訳はない。」
「ふーん?」
「善逸君の兄弟子だった子でしたね。」
「裏切り者には死を持って償ってもらうぜぇ。」
「?」
久しぶりに聞いた名を思い出した甘露寺。
甘露寺の手前、裏切り者への声色を抑えた伊黒。
一瞬、寺のあの子を思い浮かべたが、獪岳の性格から、命の危険が伴う鬼殺隊に入る理由がないと、同名の別人だと判断した悲鳴嶼。
基本的にどうでもいい時透。
善逸君の兄弟子だったので名前を知っていた胡蝶。
どこぞのお奉行様と、某死神世界の宿敵、銀髪ポエム幹部が憑依したかのような不死川。
そもそも裏切り者に無関心だった為、獪岳の存在さえ認知していなかった冨岡。
それぞれが反応する中、愼寿郎は更に話す。
「いくら数合わせの補欠とはいえ、この短期間で上弦の陸となったのだから、鬼としての才能が、異常に高かったと言わざるを得ない。油断していたら、柱と言えども致命傷を負わされるだろう。」
そう言い切り、一呼吸してから、
「では、奴の血鬼術について話す。
だが、君たちが察しているように基本的に雷の呼吸を鬼が使う内容だ。
だが鬼となった分、強化されている。雷の呼吸を使う者は
「雷の呼吸は攻撃範囲が比較的広い呼吸です。その中で斬撃に当たってはいけない…ですか。」
「チッ、鬼に寝返るだけある奴だ。嫌らしい技だ。」
「でも、鳴女に比べれば、まだマシなほうね。」
「ああ、そうだな甘露寺。」
「雷の呼吸…か。」
「伍じゃないの?」
「南無…だが、我々が相手する必要がない上弦だ。」
「えっ?悲鳴嶼の旦那、どう言う事だ」
上弦は柱が相手取るのが常識である。
なのに、悲鳴嶼行冥は、泣きながらも「柱が相手取る敵ではない。」と断言した。それに真っ先に反応したのは宇髄である。
「我妻善逸…獪岳の弟弟子だった子は、獪岳が鬼となった事を知ってから技の精度が格段に上がっている。そして、新たに新しい技を創った。雷の呼吸が基盤とはいえ、新たな技を一年も掛けずに創りだした我妻善逸は、先の上弦の陸で妹鬼の首を落とすという功績を鑑みれば、十分、柱候補となり得る。何より…本人が【桑島師匠の仇討ち】を望んでいる。上弦の壱には最低でも柱3人は必要な中で、上弦の陸相手に柱を配置するのは非効率的だ。」
「悲鳴嶼さんが、そこまで言うほどなのですね!」(才能に溢れている隊士なのね、凄いわ!)
「確かに、配置できる数に限りがある中で、鬼となって一年にもみたない陸に柱の相手をさせるくらいなら、仇討ち希望者にしてもらうべきです。」
「ああ、そうだな」
「弱い奴に割く時間はない」
「仮に負けたとしても、その時はその時だしなぁ」
「同意する。不死川」
順に、甘露寺、胡蝶、冨岡、時透、不死川、伊黒だった。
「これで、前半。上弦の血鬼術についての説明は終わった。そして、君たちにはコレを渡したい。」
スッ
【煉獄外伝 甘露寺用】
【煉獄外伝 胡蝶用】
【煉獄外伝 冨岡用】
【煉獄外伝 不死川用】
【煉獄外伝 伊黒用】
【煉獄外伝 悲鳴嶼用】
【煉獄外伝 時透用】
「「「「「「「煉獄外伝?」」」」」」」
「私たち煉獄家歴代炎柱は、炎柱ノ書を書いているのは、少なくとも甘露寺君は知っているだろう。」
「はい!確かに倉庫に入っていました!」
「今回渡すのは、鬼殺隊に関する過去ではなく、鬼…上弦の鬼が何が原因で鬼となり、なぜ力を求めているのかを書いた過去話だ。」
「「「「「「「鬼の過去!?」」」」」」」
「煉獄の旦那ぁ?一体どう言う事だぁ!俺たちは鬼を滅殺するだけだ。鬼畜生の過去なんざどうでもいいわ!」
これに真っ先に反応したのは、鬼となった母を自らの手で殺した不死川である。鬼の過去を知る事は逆に足枷になると知っている。
「不死川さんに同意します。上弦の血鬼術など戦略で必要な情報なら兎も角、鬼の過去を知ったところで何になるのでしょうか?仮に悲惨な理由で鬼となったからと言っても、許す理由にはなりません。」
姉の仇撃ちの為に、体を毒にした胡蝶が続く。
「僕の先祖が上弦の壱でも、血縁が理由で手加減するとは思えない」
先祖が上弦の壱であり、元鬼殺隊の月柱だと知った時透もまた、過去を知るメリットはないと反論する。
「そもそも数百年前の人間だった上弦の過去を、何故人間の貴殿が知っている?」
鬼の過去を知っている煉獄愼寿郎に疑惑の目を向ける伊黒。
「ああ…この若さで耄碌していたとは…嘆かわしい。」
認知症になったと判断した悲鳴嶼、
「でも…少しだけ気になる…な。」
「知って損する事ではない。」
鬼に家族が害されたわけでもないので、好奇心が優った甘露寺と、特に損する内容ではないので、反論する理由がない冨岡。
「そもそも何故、わざわざ冊子にしたのですか?上弦の過去には興味はないですが、ここで一斉に話して仕舞えば良いだけの事です。」
「胡蝶君、伊黒君が言ったように、人間である私が数百年前の人間だった鬼の過去を知っているのはおかしい。だからこそ、冊子にしたんだ。読むか、読まないかは各自に任せる。
だが、各自で内容が異なる。胡蝶君の冊子には上弦の弐に関する過去と、彼を成形した家庭環境と性格を多めに書き込んだ。
時透君は先祖である上弦の壱の過去と、血縁の始まりの剣士について重点を置いた内容。
と、言った
「お館様ですか!」
「南無…」
「なるほどなぁ…」
「元が人間、揺さぶれるならば読む価値はある。」
「俺は…どうでもいい」
「僕も…」
「へぇ…」
ここで出てきた
そして、締めを括ったのは、
「ちなみに、煉獄の旦那が持ち込んだ上弦の過去話は当たっているぜ。遊郭で討伐した上弦の陸兄弟の過去が、当たっていたからな!」
宇髄による【確かな実績】であった。
「…ならば、読む価値がありそうですね。では、私は薬の件があるので失礼を。」
冊子を受け取り、蝶屋敷に向かった胡蝶。
「俺も失礼するぜ、宇髄に煉獄の旦那ぁ」
同じく、雑魚隊士の鍛え上げに向かった不死川。
「私も失礼します。お元気そうでよかった」
一礼し、屋敷に向かう甘露寺。
「俺も…失礼する。」
静かに去ってゆく冨岡。
「俺も稽古が残っているから失礼する。」
結局、最後まで懐疑的な目をしていたが、読んでくれそうな伊黒。
「南無…お二人とも健康そうで何より」
【煉獄外伝】を両手で受け取り、大切に袂にしまった悲鳴嶼。
「僕も帰る」
鴉を呼び寄せて、帰路に向かう時透。
「ああ、さようなら」
「ド派手に元気で過ごせよな!!」
▽▽▽
胡蝶side
早速、上弦の弐の過去話を読み込みました。
「姉さんが…お前を哀れと言った理由、確かにお前は哀れですねぇ」
あの時は、姉さんは吐血しながらも、童磨を哀れと言っていた。
優しい姉さんだったから、また
とは言え、私の計画を止める理由にはならないけど。
「それにしても…」
まさか、伊之助君のお母様が童磨と関わっていたとは。
…………………………………
童磨には、一度だけ【人の心】を得る機会があった。
万世極楽教は江戸の世から続く新興宗教であり、同時に駆け込み寺の機能もあった。そこに逃げ込んだのは、頭が弱いばかりに夫と姑に暴力を振るわれていた【嘴平琴葉】。嘴平伊之助の母親である。
当然、琴葉は逃げ込んだ先が鬼の餌場だったとも知らずに、息子と共に万世極楽教で日々を送った。
童磨自身、その時点では何も思っていなかったが、頭が弱い分周りと違い、自身を教祖様として敬わない琴葉を【心が美しい人】と認識し、寿命が尽きるまでそばに置くつもりであった。
しかし、琴葉は頭が弱い分、勘に優れていた。
ある日、琴葉は信者を喰らう童磨を見つけてしまう。
童磨は琴葉に人喰いを【救い】だと言ったが、琴葉にはただの人殺しにしか見えなかった。
琴葉は息子と共に万世極楽教を脱出。だが、逃げきれないと悟った琴葉は息子を崖に投げ捨て、最終的に琴葉は死亡。
もしも、琴葉を手元に置き続けていたならば、童磨に心が生まれていた可能性があり、童磨は自らの手で、自らに差し伸べられた救いの手を拒んだ形となった。
…………………………………
「これは…伊之助君には言わないほうがよさそうですね。」
育ての父が、上弦の弐だったという事実は必要ない。
「童磨……お前を絶対に殺す……!!」
▽▽▽
不死川side
「はあ!!ふざけんなよ!継国巌勝!」
バタバタ
「どうされましたか!風柱様!!」
「あっ!?いや、こっちの問題だ。なんでもねぇお前は下がれ」
「はっ?はぁ?失礼します。」
継国巌勝が鬼となった理由、弟が嫌いという自分とは正反対な立場と、国と妻子を捨てたという、情に厚い実弥には理解不能な考えに怒鳴り込んでいた。
「…童磨…胡蝶に地獄に堕とされやがれ。」
続く上弦の弐の過去話でも、家庭環境の問題があったとはいえ、歪みすぎた思考回路は、怒りよりも呆れが強かった。
だが、次の猗窩座では、
「狛治ー!!!テメェの求めた強さはそれじゃねぇだろうがあ!!」
盗みこそ働いたが、理由が理由で、自分とも似ている家庭だった事。
何より、狛治時代の罪もせいぜいがスリ程度で、基本的に暴力には走らなかった事。
一時は荒れたものの、師匠との出会いと技の継承、何より恋雪さんと幸せな生活が待っていた中での、毒殺事件。
そして、失意のままに訳もわからぬままに鬼となってしまった、【役立たずの狛犬】に、顔とは似合わず優しい性格の実弥はノックアウトされた。
「お前が煉獄をしつこく勧誘した理由は…」
煉獄杏寿郎を鬼に勧誘していたのも、師匠に勧誘された時の真似をしていると察した実弥は、1日泣きはらし、だが稽古は続けた為、隊士を大いに困惑させた。
▽▽▽
甘露寺side
私の煉獄外伝に載っていたのは、後任の上弦の肆【鳴女】の過去だったわ。
「武器が琵琶と聞いていたから、何となく予想していたけど…琵琶法師だったのね。」
…………………………………
鳴女の人間時代の名前は不明。
琵琶を演奏して金銭を得ていたが、無名だったのもあり貧しい生活だった。その上、旦那は博打ばかりしていた。
鳴女に転機が訪れたのは、夫が唯一持っていた琵琶演奏用の着物まで売って博打に使ってしまったこと。
鳴女は激怒し、夫を金槌で殴り殺した。
この件から分かるように、元々人殺しに躊躇するような性格ではなかった模様。
その後も仕事があったため、仕方なく普段のボロボロの着物で嫌な顔をされながらも、震える手で演奏したところ、音色を賞賛される。これに味を占めた鳴女は琵琶を弾く前に、人を殺す連続殺人魔となった。
ある日、いつものように人を殺そうとしたところ、相手が鬼舞辻無惨だったため返り討ちにされる。しかし、人を殺す事に躊躇いがない鳴女を気に入り鬼となった。
夫の件以外は、同情の余地がない極悪人である。
…………………………………
「人間時代から価値基準が変わっていない鬼なのね。油断できないわ。」
新たに鬼殺への決意を固めた。
▽▽▽
冨岡side
俺の冊子には、猗窩座の過去話と、鬼舞辻無惨の過去話だった。
猗窩座…いや、狛治には同情する。
俺も、姉さんを亡くした理由が鬼でなければ、同じことをしていた可能性が高い。それに狛治は、守る側だった。姉さんに守られ、鯖兎に守られ、お情けで鬼殺隊に入った俺とは違い、ちゃんと守り通そうと努力を重ねていた。父親とのすれ違いによる悲劇もあったが、弱者には手出しをしなかった。恋雪さんの看病を一度も投げ出さなかった。あの年齢でそこまでの配慮ができる人間はそうそういない。
そして…剣士だ。
煉獄は剣士だった。
狛治の大切な人たちを奪ったのは剣士だ。
なのに、ちゃんと勧誘していた。
いくら記憶がないとは言え、仇と同じ武器を使う人間を、称賛するのは元の人格がしっかりと出来ていないと出来ない所業だ。
だからこそ、これ以上【素流】が血で汚れないように、
「人として終わらせてやる。」
それはそれとして、鬼舞辻無惨がお館様の血縁であるとは。
日の呼吸を過剰に警戒しているならば、隙を見て炭治郎を殺しにかかる。あの時とは違う、俺はもう
▽▽▽
伊黒side
俺の冊子には、上弦の肆だった。
人間時代から全く変わらない極悪人。
強さ的に、甘露寺は上弦の肆を相手取るだろう。
俺も甘露寺の為にこの鬼を殺さなければ。
▽▽▽
悲鳴嶼side
私の冊子には、上弦の壱の過去が書かれていた。
「ああ…お互いの相互不理解からのすれ違いだったとは。」
継国縁壱は兄を尊敬していた。
実際、あの時代で忌み子を弟として、大切に扱った黒死牟は立派な人格者だ。なのに…いや、だからこそ…か。
物理的な強さが物を言う乱世において、強さを求めるのは当然の義務だ。ましてや大切な弟がいるならば尚更だ。
だが、弟が天賦の才を与えられていた事。
これが悲劇の始まりだったのだろう。
【守らねばならない弱者】として扱っていた者が、実は誰よりも【強い者】だったと判明してしまえば、責任感の強い人間ほど、自分の存在意義を見失うだろう。
あの2人の父親が、世継ぎを弟に変えると言い出したのも、母親から真正面の愛情を受け取れなかった事も、小さな子供が歪む理由になった。黒死牟は…自らの意思で鬼となったとはいえ、大雑把に見れば、人間側に非がある存在だ。
だからこそ、
「殺さねばなるまい。侍として。」
▽▽▽
時透side
僕の冊子には、上弦の壱だった。
弟への嫉妬から鬼へ…ね。
もし、兄さんが生きていたら、どうだったんだろう?
僕は天才と呼ばれた。
継国縁壱も天才だった。
継国縁壱は兄を神聖視していた。
記憶が戻った今となっては、僕も兄さんとの思い出は美しいモノばかり。
継国縁壱は人の機敏や想いに鈍感だった。
僕も、隠や剣士たちから、怖い人だと言われた事がある。
「もし…兄さんが生きていたら?」
こうならないと誰が言える?
僕は継国縁壱の評価と、ほぼ同じ評価をもらっている。
この過去話は、僕たち兄弟にとって他人事ではない。
やっぱり、僕のために黒死牟は殺さないと。
カァ
「どうした虹丸!ん?招待状?」
九鬼大和
今回は完全に鬼殺隊士案件だったので、33話(緊急!柱集会議!)のように中心人物として会話しなかった。
鬼殺隊の強さと、鬼の厄介さを知っているから武器提供では、大盤振る舞いする。
煉獄愼寿郎
上弦の過去話をした。
流石に亡霊の話だと言ったら、収集がつかなくなる為、お館様の名を使った。意図的に勘違いさせた。
宇髄天元
唯一、亡霊の話だと知っている人
今回は上弦の過去話が、事実であると証明するために呼ばれた。
胡蝶しのぶ
煉獄外伝に載っていたのは、仇である上弦の弐
人間側の非が目立つが、一度は光を手にできたのに、自らの手で壊したので同情できない。そもそも姉の仇の時点で、仮に100%人間が元凶でも復讐をする。
不死川実弥
黒死牟で思考回路の違いと、妻子と弟を捨てたド畜生野郎に怒り狂い、童磨の理解不能さには呆れて、
猗窩座の過去に泣き叫んだ人。
でも柱稽古はあるので、猗窩座の過去に泣き叫びながら、隊士を攻撃していました。
煉獄外伝のダメージが1番大きかった人。
甘露寺蜜璃
人間時代からしてヤバい鬼の過去なので、「世のため人のために殺さないと!」とやる気を上げました。
煉獄外伝のダメージが1番小さい人。
冨岡義勇
猗窩座の人間時代が立派すぎて、鯖兎のおかげで鬼殺隊に入れた自分が情けないと感じている。大切な人たちがいるのだから、早くあの世に送り返さないと。と善意がある分、絶対に殺すと心に決めた。
鬼舞辻無惨がお館様と血縁である事には驚いたが、時透の前例があるので、そう言うこともあるか。と認識した。
炭治郎が殺されないように、今度こそ守ると誓っている。
伊黒小芭内
甘露寺と同じ感想。鬼なので特に感情は動かない。
悲鳴嶼行冥
黒死牟の人間時代における時代背景を考えれば、当主の判断は間違っていないし、しきたりとして長男が実母と会えないのも理解できている。
だからこそ、歪んでしまった、すれ違ってしまった、兄弟の悲劇に泣いた。
侍として終わらせられる時代は、これ以降ないと断言できる為、何としても、今、終わらせる。
時透無一郎
先祖の過去に泣きはしなかった。
だが、どちらかと言うと継国縁壱と自分の評価が似ていることにより、もしかしたらあったかとしれない未来に、少しだけ怯えた。
有一郎兄さんに嫌われたくない。
【煉獄外伝】
上弦が人間だった頃の過去から、鬼となるまでの経緯と理由についてまとめられた物。
外伝なのは、【炎柱ノ書】は鬼殺隊関係者についてまとめられた物だから。
大正コソコソ噂話
わざわざ冊子にしてまで、上弦の過去話をしたのは、殺意だけだと【鬼は滅ぼせない】と産屋敷耀哉が判断したからです。
上弦の過去話を載せる際に、柱の性格を考えて編集を頼みました。
胡蝶しのぶは復讐一択なので、童磨のみ。
この人には、殺意を練り上げることを目的とした過去話です。
しのぶ自身、伊之助は手のかかる弟扱いだからこそ、琴葉の話を載せました。
不死川実弥は、情に厚い性格だからこそ、対戦相手である黒死牟の他に、殺意を上げるための童磨、善意を呼びだし広い視野を持たせるための猗窩座でした。
耀哉の目論見通り、【敬意を評して全身全霊をかけて殺す!】という考えになりました。
甘露寺蜜璃は、元々鬼に対しての確執がないため、鬼に同情しすぎないように細心の注意を払いました。
間違っても、人間側に問題があった猗窩座は載せるな。と厳命しています。【世の為、人の為に鬼を殺す】という価値観になるように、人間時代から犯罪者だった鳴女を載せました。
冨岡義勇は、自分に自信がないので、自信を呼び起こす内容です。
対戦相手である猗窩座を載せる際に、猗窩座、もとい狛治が綺麗になりすぎないように編集を重ねました。
何気に1番、編集が大変だったのが猗窩座です。基本的にいい人すぎるので、嘘を書き込むわけにもいかないし。
その綺麗な人生と対比させて、後味を悪くさせるために唯一、鬼舞辻無惨の過去話を載せています。冨岡義勇は鬼舞辻無惨とお館様が血縁だと知っても、逆上したりする人間ではないと、確信されているから載せました。
【猗窩座を人として扱いつつ死なせる。鬼舞辻無惨にもう大切な人を殺させない】と思わせる内容にしました。
伊黒小芭内は、元々甘露寺以外に心配する要素がないので、さらさらっと、いかに鳴女が殺りづらい敵かを強調しました。
目論見通り、【甘露寺を守る!】と決意を固めました。
悲鳴嶼行冥は、寺の件以降人間不信気味なので、【人の心の尊さと、壊れやすさ】を強調した内容です。
対戦相手の黒死牟が、なぜ弟を大切に思いながらも憎しみを抱いていたのか、どのような過程で壊れたのか、どうすれば壊れずにすんだのか、を書き記しました。
目論見通り、【侍の誉れを持ったまま、死なせる】と決意を固めました。
時透無一郎
兄の記憶を思い出し、人間の心が戻ってきた分、時々やたら幼くなったりする不安定な心を、安定させる為の内容です。
先祖の黒死牟が、弟をどのように思っていたのか。
なぜ仲違いしてしまったのか。
どうすれば、笑って隣にたてたのか。
この内容を通じて、無一郎自身の性格の問題点に気づいてくれれば上々。気づかなくても、鬼殺に大きな影響を及ぼさない。
無事に、他者から見た自分の印象に気づきました。
【黒死牟は殺す。その前に人との交流について考えてみよう】