カイマクルの鬼   作:セッル@ポケモン熱発生中!

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司祭の変化   
《注意》
カニバリズム的描写がありますが、犯罪を推進しているわけではありません。


司祭の話

本部の司令を達成し、山を降りてからも風邪の症状が治らなかったが、今はだいぶ落ち着いてきている。

 

『ウィリアム司祭、本当にもう良いのですか?』

 

『コホッ…んん、咳はだいぶ治りました。ミサの聖書朗読は出来ます。まさか、風邪がここまで長引くとは思いませんでしたが、もう体調に変動はありません。』

 

『ならば…良いのですが…』

 

『シスター、ご心配をおかけしましたが、自分の体調は自分で管理できます。シスターこそ、私のせいで奉仕活動に支障が出ています。シスターは皆の手本、私の心配よりも、他のシスターたちの事を優先的に考えていただきたい。私はもう、問題ありません。』

 

私が体調を崩して帰ってきた時、この老齢のシスターは、私の看病をつきっきりでしてくれた。

途中からある程度体調が安定的になったとはいえ、私とほぼ同時期に来日したシスターだからか、私のこれまでの風邪とは違うと理解していたのだろう。ベッドから起き上がれるようになった今も、私を心配してくれる。ありがたい事だが、これ以上心配されてしまうのも困り物だ。

 

『それも…そうですね。では、司祭に神のご加護を。』

 

『シスターにも神のご加護を』

 

ガラン

 

…去ったな。確か、ペーパーナイフはこの辺りに。

確かめなければ、もし…あの血が見間違いではなかったとすれば。

 

シュッ

 

『やはり…見間違いではなかったか。』

 

紙を切るための物とはいえ、ナイフはナイフ。肌に切り込めば傷が付く。本来流れるのは赤い血。

だが、私からは、

 

『青い…血…』

 

ペンに吸わせる青インクのような、少し見るだけなら黒に近い色の青い色の血液。私の元々の血液の色は当然、赤。だが、例の山から下山してからの体調悪化により、口から出てきた血液は青。やはり…原因は、

 

『あの土…』

 

ローズマリーが処分を秘密裏に求めた時点で、あの植物が存在を公表されてはならない劇物であるのは、わかっていた。やはり特殊な土壌でしか育たない植物だったか。そして、その特殊な土壌を食べた私の身に起きた異常事態。

 

青の血…まるで、かつての時代に栄光を意のままにしていた、スペイン・ハプスブルク家のようではないか。だが、【青い血】はあくまでも比喩表現。

ハプスブルクの歴代皇帝が、本当に青い血の持ち主であったわけではない。それに、

 

『傷の治りが早い。』

 

ローズマリーほどではなくとも、もう傷口が塞がっている。

オニではない確信は、日光を浴びている時点で明らか、そしてローズマリーのような縦長の瞳孔をしていない。

だが、この変化…オニの中で何故ネズコさんだけが、太陽を克服できたのかが明らかになった。

やはりあの植物こそが、オニに対する抗体だったのか。

初めてネズコさんに会った時からほぼ確信していたとはいえ、改めて私の変化を見れば、成程、ローズマリーがあの植物の絶滅を求めるわけか。

こんな劇物が日本に存在していると、明らかになって仕舞えば、世界を巻き込んだ争奪戦になってしまう。何はともあれ、変化が目に見えるものではなかったのが不幸中の幸いと言うものか。流石に、後天的に瞳孔が縦長になってしまったら、どこの組織にも属せなくなる。

 

 

『さて…ローズマリーに説明するべきか否か。』

 

私は太陽を浴びても、何一つ変化はしない。カテゴリ枠があるとするならば、私は【人間寄りのオニ】ではなく【オニ寄りの人間】になる。人間ならば、仮にムザンが討伐されても、私は青い血こそ無くなれど、人間であるから、交流初期に聞いた、ローズマリーのように灰になる事はない。

 

『ふむ…』

 

黙ろう。ローズマリーを疑うわけではないが、情報と言うものは知る人が多いほど、漏洩確率が上がる。私の場合、怪我をするような職種ではない。 

日常生活で困る事はない。ならば…せっかく教会に帰ってこれたローズマリーの心労を増やすばかりの、緊急性がない話題は必要ない。

 

 

 

 

ガチャ

 

『ウィリアム神父、ローズマリーが神父と話したいと。』

『分かりました。直ぐに行きます。』

 

懸念材料の焼却処分に成功した事を話そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

『ウィリアム神父!』

 

キサツタイの魔の手から逃れるために、教会に一時避難をしたローズマリーは、

 

ギュ

 

『会いたかったです!』

 

前回と異なり見た目の年齢に合う、心を持つようになっていた。

 

もとを辿れば、ローズマリーが特命連絡員などという役職についたのは、ひとえに【キサツタイを挑発】するため。役職を罷免されていないが、教会に戻れたということは、

 

『よく戻ってきましたね、ローズマリー。仕事を無事に終えたようで何よりです。』

 

ローズマリーの仕事は終わったのだ。

 

『…いえ…まだです。ウィリアム神父、約束してくれたツクシは何処ですか?』

 

再会の喜びを分かち合う暇もない…か。

そうだよな…ローズマリーは、彼女は()()()()()なのだから。

この部屋は教会関係者の建物とは離れているとはいえ、人に勘ぐられる事態は避けなければならない。

 

『ローズマリー…あなたのお願いなので、こちらも一生懸命に探しましたが、さすがにこの時期にツクシを見つけることは出来ませんでした。ツクシ以外の山菜ならば、ハリス大使に頼み込んで入手する事は出来ますが、季節外れの野菜や珍しい果物ならともかく、山菜を今の時期に入手する事は困難です。……野菜や果物は駄目なのですか?』

 

大丈夫、ちゃんと処分できた。私の変化がその証だ。

 

『いえ…私も我儘を言い過ぎました。』

 

そう言いつつ、明らかにこれまでの緊張感が抜け、

 

『そういえばシスターから聞きました。体調は如何ですか?』

 

話題を矛盾点がないように変更した。

 

『ええ、ローズマリーよりも健康ですよ。慣れないことをした疲れが出たのだと、医師に診断されました。私自身、布教のためにこの国に入国したのです。元々、普通の人よりも健康面には自信があります。現に私を見て、病人に見えますか?』

 

体調の変化があったのは事実だが、私は元来健康体だ。

 

『いいえ、とてもお元気そうです。ウィリアム神父に…いえ、教会の人々と最後まで共に過ごせるようになって…良かった。』

 

『そうですか…神父冥利につきます。』

 

()()()()…この子は生き残る術を探すこともせず、あるがままに死ぬ事を決めたのか。

 

『ローズマリー、あなたは()()()()()療養名目でやって来たお客様です。なるべく教会の外には出ないように。私は溜め込んだ奉仕活動が残っていますので、ここで失礼を。』

 

『あ…ありがとう…ウィリアム神父。』

 

キィ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

ローズマリーが帰ってきた初日。

 

『おはよう、ローズマリー』

 

お飾りとはいえ、役人であるローズマリーは、初めて会った時のように一緒に行動をすることが出来ない。だけど会えない訳ではない。

 

『おはようございます。ウィリアム神父、そのジャムとパンは?』

 

『ああ、私たちは君が健康体であると知っているが、君の表向きは療養だ。私たちは、病人の介護という事になっている。教会の敷地内としても、一般の信者に君の姿を目撃させる訳にはいかない。離れに食事を持ってくる。今日はたまたま私の番だっただけだ。不自由はさせるが、その分、食事は大使館ほどではなくとも、好きな物を食べさせたいと思ってな…ハリス大使や、イーサン軍医からも食事メニューは届いている。存分に食べて、健康を維持するように…とのことだ。』

 

『そうですか。ありがとうございます、早速頂きます。』

 

カリッ

 

『ジャムの味…何味ですか?ブルーベリーのような、ん?藤の風味?』

 

『それは、イーサン軍医お手製のジャムです。ベリーに藤の花エキスを混ぜ込んだモノだとか。』 

 

『ああ、道理で変な味がすると思いました。』

 

ローズマリーはそれからは黙々と食事を摂り、

 

『美味しかったです。ウィリアム神父もこの食事を作ってくれた方にもお礼を伝えてください。』

 

『お伝えしましょう。ローズマリー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

『まあ!ちゃんと食べ終えたのね!』

『この調子ならば、藤の花エキス、濃度をあげても問題ないでしょう。』

 

『では、昼食は誰が持ち込みましょうか、シスターそれとも、イーサン軍医がよろしいでしょうか。』

 

【特命連絡員】の立場がとれるのは、アメリカに渡り終えてからになるのだろう。ならば、最後の最後まで、健康面を騙し通そう。




ウィリアム・ヤコブ・ウィスティリア
イエズス会日本支部所属の宣教師
主人公の友人であり、最初の保護者

本来なら、たかが特殊な土壌を食べたからといって、人間離れする現象はおきない。この人は先祖が鬼(400年前)であったのと、本人が先祖還りであり、比較的鬼の血が濃ゆいので、(日本に宣教師として来れる体力はそこから)鬼の血に対抗する抗体が入った結果、拒絶反応が起きた。
日光を浴びて灰にならないので、自分のことは人間だと思っている。

療養と言う名目で、鬼殺隊から隔離されたローズマリーが、穏やかに過ごしているので安心している。
だが、食事はガッチガチの軍医指導。
教会に戻っても罷免されなかった役職のせいで、行動範囲が大幅に制限され、事実上、監禁状態。
大使関係者の本音を理解しているので、キブツジが討伐されるまで、ローズマリーの健康状態を、平均よりも上と誤認させようとしている。


食事を食べ終えるまでの時間を短縮
食べ残しをこっそりと暖炉に燃やす。

愛しているからこそ、本人の「安らかな眠りという希望を叶えたい」と願う心と、「もっと生きて欲しい」というエゴが交差している。
守るためなら、大切な人を欺く覚悟がある人。
聖人のフリをした、平凡な人の子。

ローズマリー・ベネット
本作主人公
療養という名目で、教会に戻ることが出来た。
ウィリアム神父が【大きなツクシ】こと【青い彼岸花】を絶滅出来たという報告で、やっと大人のフリを外せた。
しかし、特命連絡員という立場はそのままなので、自由に行動できない上、食堂で食事をとることも出来ない。
よく食事を運びにくるウィリアム神父や、シスター、健康状態のチェックのために同伴するイーサン軍医以外、交流ができない。
食事以外の時間は、日の当たる室内で寝転がって、暇つぶしの刺繍をしている。
実は食事の味から、イーサン軍医の存在を理解したので、健康に見えるように誤魔化している。

イーサン・クラーク軍医
アメリカ側が派遣したローズマリー専属の主治医
鬼殺隊士を挑発し終え、役目がほぼ終わっているローズマリーが、無事に帰国できるように健康面を整えている。
基本的に、怪しまれないように特例大使館に居住しているが、日曜の礼拝を理由に、ローズマリーの健康診断をしている。
アメリカまで命の燈が持たないと、実はうっすらと感じているが、患者の希望は生きることではないと分かっているので、健康に見せかけている姿に、騙されたフリをしている。
















大正コソコソ噂話
ローズマリーが朝食のジャムに違和感を抱いたのは、【ベリーに藤の花エキスを混ぜ込んだジャム】ではなかったからです。 
ベリーの色って、何色なのかな?
少なくとも、紫色に近い青色ではないよね。
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