カイマクルの鬼   作:セッル@ポケモン熱発生中!

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産屋敷耀哉の最後の先見の明です。


【先見の明】意外な弱点

九鬼大和side

「産屋敷伯爵が私との面会を求めている?」

「はい、警視。緊急案件だと血反吐を吐きながら、とても演技とは思えません」

 

はぁ…ただでさえ、不穏分子の排除と合同軍事演習における割り振りで大変な時期に限って…とはいえ、緊急案件を後回しには出来ない。

 

「分かりました。案内を」

「こちらになります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

産屋敷耀哉side

 

《無惨!!》

《竈門炭治郎は死んだ。》

《ローズマリー…さようなら》

《誤魔化しも…限界…か。》

《大日本帝国の威信をかけて鬼を滅ぼせ!》

《はっ!!》

 

ある日から私の能力に陰りが見えるようになった。

太陽を克服した鬼、橘香子。

今でこそローズマリー・ベネットと呼ばれる鬼は、まるで私の性格を知っているかのように、こちらの手段を合法的に避けた上、我々の行動を制限した。

途中まではこちらの手の内だった。

他国宣教師に頼り、国籍を得た時点で、こちら側の関係者と書類だけの養子縁組をするように手配した。

だが、ローズマリー・ベネットと名前を与えられた鬼は、国籍だけで安心をしなかった。こちらの段取りが終わる前に、ハリス全権大使の養女となった。

今までなら、たかが一般人、ましてや女学校のお嬢さん相手に先手を打たれるなどあり得ない。

なのに、先手を打たれた。

私はどこかで驕っていたのだ。

《鬼を知らず、両親に甘やかされて育ったお嬢さんに策略を見破られるなどあり得ない。》…と。

無意識に少女だから、民間人だからと、【橘香子】の経歴だけで相手の能力を見くびった。

その上、これまで上手くいっていた。という成功体験もあり、私は【橘香子】が【ローズマリー・ベネット】となった事態の重さを把握しきれなかった。ここで情報漏洩を覚悟の上で、天元に相談していたら、相手が大使の養女になったと知れた。

そうしていれば、私はウィーン条約を破ってまで、橘香子を利用しようとしなかった。

 

もし…たられば…最早、意味のない敗者の言い訳でしかないが、私が先ほど見た未来を実現させる為にも、この国も米国も全てを利用して、最良の未来を創る。

 

「ゴホッ…!ゴホゴホ…」

「あなた…」

 

ガラッ

 

「産屋敷伯爵、緊急案件とは何事でしょうか?」

 

「ゴホッ…布団の上から失礼を…。鬼舞辻がこの屋敷を特定…並びにゴホッ鬼殺隊を殲滅する日が…見えました。」

 

「ゆっくりと話してください。」

 

この人は、この国のためなら何でもする。

どんな非道な手段も厭わない。

だからこそ、信頼できる。

彼なら確実に、鬼舞辻無惨の息の根を止める。

全てはこの国に住まう私たち以外の人間のために。

 

あまねは、大和殿に計画を話した。

 

「なるほど…それで、伯爵や夫人が自爆するのですね。子どもの保護先は何処にするのですか?」

 

「えっ…?」

 

「夫人?」

 

何か…ずれている?

 

「産屋敷家はお家取り潰しでは?」

 

あまねと私は、お家取り潰しを前提に計画を練っていた。だが、ならば、何故、そのような終わった後の事を?

 

「ええ、お家取り潰しは確定です。当然でしょう?曲がりなりにも華族ともあろう立場の人が、国際問題に発展させておいて、鬼を倒し終えたから、本物の繁栄を築くなどと抜かしたら、それこそ断罪案件です。ですが、没収予定なのは爵位と、爵位を理由に得た財産です。産屋敷家は公家の華族なので、爵位を理由に得た財産はない。なので、実質没収するのは爵位だけになります。」

 

「何故…?」

表向きはそうだろうが、我が一族が財を築き上げた理由の一つに、華族だから融資を受けやすい…と政府側は知っている。

 

「もちろん、あなた方の予想通り、産屋敷耀哉が個人で稼いだ財産も没収する事は可能です。しかし他国が見張っている現状、()()()()()()の未来を潰す行為をすれば、更に我が国の評価が下がります。

我が国は一流国家です。

連座など、封建社会の遺物を残していると思われるくらいなら、産屋敷家の財産など必要ありません。」

 

「そうですか…。」

あまねは静かにそう言い、

 

「しかし…鬼舞辻無惨を確実に屋敷に留めさせる為には、子どもの存在が必要です。私たちだって、本当はこのような事をしたくはありません。ですが、鬼舞辻は珠世殿の話では、継国縁壱の一件以来、逃げる事に躊躇いを持たなくなった…と聞きました。懸念材料が少しでもあれば、奴は確実に逃げます。」

 

「つまり…産屋敷が自爆する可能性を悟らせない為に、子ども諸共と?」  

 

「はぁ…米国の特命連絡員が貴殿ら一族を、竈門兄弟の前例を知った上でも警戒し続ける理由が分かりました。ある程度予想していたとはいえ、狂っていますね。」

 

表向きは、子ども達を哀れに思っているのだろう。目があからさまに軽蔑の色になった。

 

「貴殿らの言い分は分かりました。

正直、米国の見張りがないなら、こちらとしても、どの道【産屋敷一族の暗殺】を命令していました。しかし今、伯爵と夫人が自爆する分には構いませんが、子どもを巻き込む形の自爆を行えば、米国は…我々が始末したと思い、《大日本帝国には連座が残っている》と報告されてしまいます。それだけは避けねばならない話です。」

 

やはり…この男は我ら一族の栄光も衰退も興味を示さない。この男にとって1番優先している事は、【国家と国民の繁栄】のみ。子どもを自爆に巻き込む計画其の物は肯定している。

 

「ふむ…子ども達が離れないのならば、その子女、ひなき様とにちか様ですね。死なせましょう。」

 

「死なせる…ですか。」

 

あまねは懐刀に手を伸ばした。それも想定済みだった九鬼大和は、

 

ガシッ

「痛ッ…!」

 

あまねの利き手を掴み、懐刀を落とした。私たち一族が華族であることから、彼はこれまで私たちに指一本触れなかった。だが、今回はあまねは刃物を取り出した。見た目がどれほど華奢に見えても、憲兵というだけはあるの…だな。羨ましい限り。

 

「伯爵夫人、最後までお聞きくださいませ。何も本当に殺すつもりはありません。表向き、【病死した】と事前に宣伝するのです。この建物を知っている人間は少ない。こちら側で仮死薬を準備します。元々が短命な一族ならば、元気な子どもが急死しても、そこまで不自然な話ではありません。特に今の時期、盛大な葬式などできない。葬式は両親と時間が取れる一部の軍人にさせます。棺桶の中に重りでも入れれば、中身が偽物だと気づかれません。万に一つも中身が飛び出さないように、頑丈な棺桶を準備します。」

 

「ゴホッ…」

「あなた!」

 

「それで‥お願い…します。あまね」

「はい、柱や隊士には、葬式が終わった後に報告をしましょう。」 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

「後悔はしませんか?」

「「はい」」

 

「そうですか…では、注射をします。ひなき様、にちか様。」

 

私たちは再度話し合い、ひなきとにちかの体調が悪化していると嘘を言い、娘と私の診察という名目で外部の医者を呼び寄せた。この日を境に残っていた数名の隠は別の部署に配置換えをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「伯爵!あまね様!ひなき様とにちか様が!!」

 

代わりに、戦闘に向かないと判断された何も知らない軍人に、華族一族の警護という名目で、大和殿は軍人を配置した。

当然、何も知らない軍人だから、ひなきとにちかが本当に死んだと認識した。

 

「そうですか…元々、短命な家系です。」

「ゴホッ…葬式を」

 

「はっ!直ぐに九鬼様を!」

 

 

「この度はご息女を2人も亡くされたと聞きました。土葬の準備はこちらが行います。ご冥福…お祈りいたします。」

 

「ありがとうございます。」

「ゴホッ…お礼ゴホッ申し上げ…」

 

そして手筈通りに、仮死状態のひなきとにちかは、天元が作った隠し部屋に運び込まれ、大和殿が用意した子ども用の棺桶に、砂を入れた麻袋の重りを入れ、少数の軍人は大和殿の命令通り、中庭に埋めてもらった。 

 

 

 

 

 

   

 

そして、あまねは鎹烏に速報として、【産屋敷ひなき並びに、にちか急死】【墓参りは全てが終わった後、許可する】と報告した。

大和殿も米国の大使館に説明したようで、百合の花束とお悔やみの言葉が書かれた手紙を渡してきた。

 

「ところで…本人達はいかがお過ごしで?」

 

一通りの偽造工作が終わり、産屋敷一族の様子見として屋敷に足を踏み入れた大和殿はそう言った。

 

「ひなきも、にちかも、隠し部屋の中で過ごしています。今、この屋敷には私たち家族しかいませんので、多少の音漏れは問題なさそうです。」

 

「そうですか…。では、私たちの合同軍事演習は何日に行えばよろしいので?」

 

「ゴホッあの日程で…問題…ありま…せん。」

 

そう、ひなきとにちかが死んだ。自爆するのは私たち夫婦のみ。ともなれば、この男には最早、躊躇う必要が無くなった。

 

「では、不死川中尉には、もう一つの命令を発令させます。」

 

そう言い残し、九鬼大和と呼ばれる男は、二度と産屋敷に近づく事はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

不死川中尉side

俺が表向き率いている【銃器中隊】の軍人も、この頃になると銃撃や近距離戦の訓練も型に入ってきた。

軍が送りこんだ新型の拳銃も、俺用の鬼化する事が前提の拳銃と違い、万人向けの物だからか、俺用よりも多少、藤の弾丸成分が少ないようだが、下弦程度には一時的に怯ませるくらいには効くと証明できた。

一応、日輪刀もあるけど、刀で鬼を殺す訓練はしてないしな。

 

それに、最近は軍人も鬼殺隊士も新人が送られる事が減った上、厄介な味方の排除もひと段落ついたからか、訓練の練度が上がっているように感じる。

 

カツカツ

 

ん?この音は。

 

「中々良い訓練ですね、不死川中尉」

「はっ!ありがとうございます!」

 

九鬼さん!?最近は軍に篭っていると聞いてたんだが?

 

「銃器中隊!集合!」

 

とりあえず、視界に入っている軍人は集めよう。

 

「訓練中だが、この度銃器中隊には新たな任務を与える!」

 

「「はっ!!」」

 

「鬼殺隊士は戦うことを前提にした結果、医療知識が乏しい!君たち後方支援部隊は、負傷した仲間の応急措置並びに、鬼殺隊の医療部隊と連動をとり、より多くの傭兵を戦場に送り続けろ!!!」

 

「医療知識を今からでありますか!?」

 

九鬼さん、俺そんなこと聞いていない!

 

「我々はただでさえ、外部として鬼殺隊では浮いています。戦地が地上ならばまだしも、高い確率で鬼の根城に飲み込まれるでしょう。

中隊はただでさえ、人数が多い分、逸れると連携が取れなくなり、鬼に食われる確率が上がります。傭兵集団と違い、我々は皇軍です。表向きは合同軍事演習でありながら、死人が出る事態は避けねばなりません。と、なれば鬼殺隊士が嫌々ながらも、助ける必要性を作らねばならない。鬼殺隊は華族の傭兵だったので、医療に湯水の如く金を使えなかった。だが、我々は違う。鬼対策ならば、いくらでも国庫から金を出せる。現に君たちが持っている武器も日輪刀以外は、国家の科学班が作った物です。当然、鬼殺隊よりも我々の医療技術の方が上。

鬼殺隊は戦闘、我々は医療に専念する。

分業化する事により、お互いに依存させます。

今の銃器中隊は統制が取れている。だからこそ、戦場の医師を一時的にでも量産させろ。分かったな不死川中尉!!」

 

「仰せのまま!!」

 

この一月、問題児を送らなくなった理由はコレだったのか。確かに補給経路を確保できないなら、俺たちは孤立する。俺たちは後方支援部隊であり、外部者だ。鬼殺隊士によく思われていない。戦闘に集中したい隊士が、嫌いな俺たちを助けるとは思えない。

 

 

 

 

後日、銃器中隊に蝶屋敷の女の子たちが派遣された。

「蝶屋敷から派遣されました、神崎アオイと右から、高田なほ、寺内きよ、中原すみです。」

 

「銃器中隊隊長、不死川玄弥と申します。階級は中尉。九鬼様からお伺いしました。我々に医療のご教授をして頂けると。」

 

「はい、こちらも医療に専念する人数が多ければ、戦いに有利となります。しかし…ちゃんと学ぶのですか?」

 

そういえば…アオイさんと蝶屋敷3人姉妹(血縁ではないけど)は戦えない事から、俺とは違う意味で馬鹿にされていた事もあったな。(まあ、クズ野郎は柱の総攻撃にあったらしいけど)

 

「ご安心ください、我々は最初から鬼と戦うことを前提としていません。なので、身を守る術として医療技術を学ぶ事に好意的な者が多いです。不当な扱いを受けたならば、それは軍規に違反しているので、遠慮なく、物理的に潰しても構いません。」

 

そう、俺たちは【国の命令】として医療技術を学ぶのだ。

それに歯向かうなら、それは軍規違反となる。

 

「分かりました、では基本の応急措置を教えます。」

「よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「産屋敷の本拠地が分かったのか!よくやったぞ鳴女!!」

「ありがとうございます、無惨様。それと、青い薔薇の送り先が南鳥島だそうです…。」

「南鳥島…か。」




九鬼大和
表向きは【外務省が派遣した通訳】
実態は、【特高の警視】であり鬼殺隊案件では
【政府代表任命官】
警察と軍隊では、後者の方が立場が上なのに、1警視如きが軍人に命令できるのは、軍人の間では彼は警視ではなく、政府代表任命官としての命令だから。

一応、娘がいるので子ども巻き込んだ自爆には、嫌悪感が強い。
しかし(今の産屋敷が生き残っても利用価値がなぁ…)と思っているので、自爆計画に反対はしなかった。
【親が落ちぶれれば、子どもが苦労するし、生きるより死ぬ方が幸せなのでは?】という考えもある。悪い意味で日本人らしい価値基準。
とはいえ、現状で【子ども巻き込み自爆】を行なわれれば、米国の報告書に何と書かれるか理解していたので、子どもを予め殺す(仮)計画を立てた。
夫婦の自爆なら問題ないと思うあたり、産屋敷一族の結末はどうでもいいと思っている。

最初から【銃器中隊】を、【医療知識と技術に特化した部隊】にする事にしていた。(近距離戦闘は全て鬼殺隊士にさせるので)
しかし、その前に使えない人間の炙り出しと処分をする為に、【後方支援の情報部隊】にしていた。情報が欲しいのは事実だったので、誰も疑わなかった。
炙り出しと処分が終わり、命令に従う人間が残ったので、最初の目的に戻した。不死川中尉に何も教えていなかったのは、初期の彼は戦闘を望んでいたので、医療部隊を率いる事に消極的になると思われていたから。


産屋敷耀哉
鬼殺隊の当主であり、鬼殺隊が傭兵部隊になる元凶となった男。
産屋敷家が代々受け継いできた【先見の明】という神からの贈り物で、今まで上手くいっていたから過信した。
結果、ローズマリーに先手を打たれる展開になった。
自爆計画の反応を見て、政府が本気で産屋敷一族を見切った。と判断し、もはや産屋敷一族が政府内でコネを作ることは不可能だと確信した。

産屋敷あまね
子ども巻き込み自爆計画で、「子どもを巻き込むな」と至極当然な反論を受けて、自分が産屋敷の怨嗟に飲み込まれていると、今更気付いた。しかし、もう後には引けないので、自爆します。

《ひなき》と《にちか》
両親から離れたくない。という年齢を考えれば当然の言い分ですが、政府としては自爆に巻き込むわけにはいかない。
折衷案で、自爆前に病死した事になりました。
今は、天元の作った隠し部屋で遊びに興じています。

不死川中尉
いきなりの方向転換には驚きましたが、外部の嫌われ集団を助ける鬼殺隊士がいるとは思えないので、医療部隊になるのは当然だと考え直しました。
表向きは【銃器中隊】の隊長ですが、彼のみ鬼と前線で戦う事が認められているので、最終戦では副隊長が隊長になります。














大正コソコソ噂話
実は産屋敷耀哉は何も失態を犯していません。
対象である【橘香子】の確保方法、先見の明は当たっていました。
しかし、それは相手が【橘香子】だったら…です。
主人公が途中で名前ばかりか、魂が変わった事を知らなかったのが敗因でした。
ローズマリー・ベネットという名を()()()()だと勘違いし、真名は橘香子のままだと勘違いしていました。
【ローズマリー・ベネット】を本名だと認識できていれば、少なくとも政府が「ふざけんな産屋敷ィ!」と圧力をかける事態に発展しませんでした。
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