教会に療養という名目で滞在して数週間。
カァカァ
『ん?あれは』
白い…烏?
ポト
『これは』
手紙だ。こんな芸当できるのは、
ペラッ
…………………………………
ローズマリー特命連絡員様
鬼殺隊の宇髄天元様だぜ!
一応の密航の手続きが終わったから念のための報告だ。迷ったが竈門兄弟の密航先は、タイにする事に決まった。
英国が鬼の事を嗅ぎつけないとは限らない。ともなれば、小国とはいえども独立国家であるタイの方が、竈門兄弟の安全性を高めることが出来る。密航の準備は一通り終わった。俺様がお前に求めるのは1つ!
派手に米国の目を釘付けにしろ!
日本なら俺様の手で何とかできるが、他国は無理だ。
それと、お前も軍艦に入っちまえば、もう帰れないぞ。今のうちに日本での未練を絶てよな。
…………………………………
『さすがは元忍』
私には、合同軍事演習が始まる前に移動するとイーサン軍医から連絡があった。だが、当然ながら鬼殺隊はその事を知らない。なのに当たり前のように私が軍艦に移動する日を予想できている。
『未練…か。』
私だって、今でこそこの姿で、記憶が曖昧だが、元を辿れば日本人。当然、日本人の両親や、友だちだっていたのだろう。
でも、もはや思い出せない。未練というか、単純な疑問がある。
『最近、妙に体調が良いんだよな。』
冬に近づいてきて、体調が悪化していたのに、教会に移動してから数日経って、食事量が少なくなっているのに、体調は良くなっている。私としては困らないけど、明らかにおかしいよな?
『まるで別の口があるかのような…?』
私の体調悪化は何も、単純な太陽光不足ではない。食事だけならば、仮にも大使の娘で大事な被験体だ。いくらでも準備してくれてたし、下手な中流階級者よりも豪華で、栄養価が高い料理を食べていた。なのに体調は悪化する一方だった。だからこそ、教会への移動が認められたんだ。なのに、教会に移ってからは、食事量は変わらないにも関わらず、体調は良好に持ち直している。
『そういえば』
私が国籍を得る前に暮らしていたカイマクル。
あれ…結局誰にも言っていなかったな。
まあ、いいか。あそこにあるのは【非常食兼身代わり人形】と、神父さんから貰った聖書だけだもんね。
トントン
『どうぞ!』
『ローズマリー特命連絡員、お食事です。』
『はい、イーサン軍医』
未練はない。そう…未練は。
『食事が終わり次第、軍艦へ移動します。』
『はい。』
▽▽▽
鬼殺隊side
「えっ?包帯ってこんなに複雑にするのか?」
「あー、俺たちは足とか腕とかの、緊急止血しかしていないからな。」
「医療処置がこんなに難しいとは…」
「軍医の地位が高い理由…わかったよ。」
「はいはい、銃器中隊いえ、今は医療中隊でしたね。手を休めずにして、そこ!巻きが甘い!そんなのでは激しく動いたら直ぐに解けてしまいますよ!」
蝶屋敷のアオイは医者でこそないが、医療知識は深い上に経験も豊富だ。蝶屋敷での業務は国の命令で、蝶屋敷の三姉妹と陸軍から派遣された軍医集団に移行されている。(三姉妹は基礎分野のみの教習)アオイは軍人を即席の医療人に変えるために、これまでの知識を全て吐き出して指導している。
「器用な人は出来ない人の指導にまわって下さい。」
「はい、アオイ様」
九鬼の命令もあり、戦えない女の子の命令にも素直に応じる軍人の姿に、本人は、
「はぁ、蝶屋敷の入院患者も同じくらい指示を聞いてくれるなら、苦労しなかったのに。」
と、つぶやいていた。
▽▽▽
不死川玄弥side
俺は今、九鬼警視の前にいる。
「ご報告いたします。銃器中隊改め、医療中隊では軍医とアオイ殿の指導により、簡易的な処置は一通りできるようになっています。」
「ご苦労、不死川中尉。それとこれから始まる日米合同軍事演習において、帝都内の立ち入りを制限する。君たちは民間人が入り込まないように柵立ても同時並行でするように。」
「はっ!承知しました。」
ついに始まるのか、鬼舞辻討伐が。
「鬼殺隊士も一通りの強化はできたと報告がある。今なら下弦?程度の鬼ならば、一般隊士でも倒せるそうだ。君たちも兵器は常に持ち歩くように。」
「はっ!!」
民間人の立ち入り制限か。これなら鬼舞辻も人喰いしにくいだろうな。
▽▽▽
主人公side
『これは?』
目の前にあるのは、銃を入れる為の箱。
『ローズマリー特命連絡員が軍艦で帰国することは周知の事実ですが、軍事演習中に乗り込む事を知っているのは、ルーカス・ホワード司令官しか知りません。特命連絡員がお飾りである事は本国では知れ渡っている以上、堂々と今、軍艦に搭乗すれば違和感を抱かれます。なので、このような密航じみた搭乗方法しかありません。ご安心を。ローズマリー様は艦長室に入りますので、他の軍人と鉢合わせる可能性は低いです。』
『そうですか。』
▽▽▽
南鳥島
ピッピー
ピッ
ピー
「通信が届きました。」
「例の女が来たと同時に確保を、」
「承知しました。」
「…こちらが【青い薔薇】です。」
「確かに受け取りました。」
米国艦隊から1人で降り、青い薔薇を渡したのは、着物をきた1人の女。
ガチャン
「橘咲夜、スパイ容疑で再逮捕します。」
「はい…」
▽▽▽
12月某日
ウウウーー
ウウウーーー
「サイレンの音」
「ついに始まったのか、合同軍事演習」
「と言っても、俺たちは産屋敷の土地で待機命令だけどな。」
「武器は配布されているな。」
「というか、本当に来るのか?鬼舞辻とやらは?」
「そうだな、わざわざ軍事演習中で来るとは思えないけどな。」
産屋敷邸では、この日のために用意された、軍人専用の離れに全てのメンバーが待機していた。
バン
ババーン
「空砲の音も聞こえてくるなぁ」
「まあ、昼間は鬼は出ないから、来るとしても夜だな。」
「俺たちは武器の最終確認で時間を潰すか。」
「おー!」
▽▽▽
主人公side
『てぇー!』
『演習とはいえ気を抜くな!』
『イエッサー!!』
バン
ババン
演習が正式に始まる前に私は、荷物に混じって艦長室に入った。
外の軍事演習の声が聞こえるが、私の存在を知っている人はいない。
これは夜になるまで終わりそうにないな。
一応、私が軍艦で帰国する事を前提に、1人部屋もあるので、夜になったら、そこに運ばれる予定だ。それまでは、
『この中で眠るか…』
最近、眠くなりがちだなぁ。
▽▽▽
side産屋敷邸
「ゴホッ…待っていたよ、鬼舞辻無惨。」
「何とも醜悪な姿だな、産屋敷」
ローズマリー・ベネット
ついに始まった日米合同軍事演習という名目での、鬼舞辻討伐。
貴重な被験体なので、万に一つもないように予め艦隊に入れ込まれた。
軍艦で帰国するのは、周知されていたが、それはあくまでも全てが終わった後なので、今は艦長室にある荷物の中で眠っている。
宇髄天元
仮にも情報特化の忍なので、表向きの帰国ルートが嘘であると知っている。日本側は誤魔化せるので、ローズマリーには是非とも軍艦内で大人しく滞在していてもらいたい。
銃器中隊
改めて、医療中隊
基本的な医療知識と治療法を着々と学んでいる。
合同軍事演習にあたり、帝都内の民間人が入り込まないように見張りもしている。
不死川玄弥
銃器中隊の隊長
すっかり軍人らしい言葉使いになった。
武器の整備と訓練をしながら、帝都内のパトロールもしている。
神崎アオイ
医療知識と治療法を叩き込んでいる。
自分の人生が無駄ではなかったのだと、しみじみと思いながらスパルタ教育中。
ルーカス・ホワード司令官
作中には登場していないが、武器保管庫の一つを、ローズマリーの1人部屋に改築させた。
いくら人ではないとはいえ、大使のご息女相手に、むさ苦しい男どもと同室はまずい。
九鬼大和警視
本職は特高の警視
今は【政府代表任命官】なので、事実上の宰相。
鬼殺隊と鬼案件に限り、本来の権力よりも大きな力を使うことが認められている。
橘咲夜を確保することで、南鳥島は大日本帝国の法律が適応される事を強調したかった。直ぐに釈放します。
橘咲夜(さくや)
橘香子こと、主人公ローズマリー・ベネットの実母
一度は、大使のご息女に襲いかかった事で逮捕され、その後米国大使館に拘束されていた。
ちなみに大使は、この女性が政治的意思を持たず、産屋敷に利用されただけの被害者と知っていたので、実は特高(現在の公安)よりも人道的に扱っていた。一応、我が子の実母なので、その辺りは尊重していたという。
この度、スパイ容疑で再逮捕されたが、特高も暇ではないので、すぐに釈放する気満々である。
ハリス・ベネット
米国大使館の全権大使
ローズマリーの今の父親
橘咲夜をあっさりと手放したのは、ローズマリーには最早【実母への心残り】がないと知っているから。
仮に、【母親への愛着】が残っていたら、最初から大使館に拘束しなかったし、日本側に処刑を迫っていた。
産屋敷耀哉
原作通り
鬼舞辻無惨
原作通り
空砲の音がうるさいと思っている。
大正コソコソ噂話
おや…人形から若葉が?