産屋敷邸
夜になり、辺り一面が闇に包まれる中、因縁の2人が対峙した。
「ついに…私の…元へ来た…今…目の前に…鬼舞辻…無惨…我が一族が…鬼殺隊が…千年…追い続けた…鬼…あまね…彼は…どのような…姿形を…している…?」
片や今にも死んでしまいそうな包帯巻きの男とその伴侶。妻であるあまねは、因縁の男の姿を話す。
「私は心底興醒めしたよ、産屋敷。」
片や正に健康体の成人男性。瞳と髪の違いさえ省けば、双子と言っても信じられる容姿をした男。
つらつらと述べるは「醜い」「屍の匂いがする」
生きることに特化した鬼ゆえに、死に近い存在を毛嫌う。
「君は…知らないかもしれないが…君と私は…同じ血筋なんだよ…君が生まれたのは…千年以上前のことだろうから…私と君の血はもう…近くないけれど…」
「何の感情も湧かないな、お前は何が言いたいのだ?」
鬼舞辻無惨は自分さえ生き残れればそれで良い考えの持ち主。言い方を変えれば
鬼舞辻無惨side
鳴女を使い、隠れ住む忌々しい一族に会ってみれば、元凶の男は死にかけ。その上随分とどうでもいい迷信をほざく始末だ。
病弱?子どもが直ぐに死ぬ?それはただ単にお前たちの先祖が近親交配を繰り返しでもしたのだろう?現に、
「私には何の天罰も下っていない。何百何千という人間を殺しても、私は許されている。この千年、神も仏も見たことがない。」
最も、継国縁壱とかいう化け物はいたがな。
「君の夢は何だい?この千年間…君は一体…どんな夢を見ているのかな」
奇妙な感覚だ。
あれ程目障りだった鬼殺隊の元凶を目の前にして、憎しみが湧かない。むしろ…
「ひとつとや」
「一夜明くれば賑やかで賑やかで」
「お飾り立てたり松飾り松飾り」
「二つとや二葉の松は」
「色ようて色ようて」
「三蓋松は上総山上総山」
この奇妙な懐かしさ、安堵感…気色が悪い。そして、この屋敷には四人しか人間がいない。産屋敷と妻、子供二人だけ。護衛も何もない。
気色が悪い…仮にも上に立つ者が護衛一人つけぬとは、
「当てようか…無惨」
「君は永遠を夢見ている…不滅を夢見ている」
「その通りだ。そしてそれは間もなく叶う。禰豆子を手に入れさえすれば」
妙な安堵感といい、この一族は一体?
「君の夢は叶わないよ無惨。」
「禰 豆子の隠し場所に随分と自信があるようだな、しかし、お前と違い、私にはたっぷりと時間がある。」
死にかけのお前とは違う。私には時間が山のようにある。だが、何かがおかしい?何が?
「大切な人の命を理不尽に奪った者を、許さないという想いは永遠だ。君は誰にも許されていない。この千年間一度も。
そして君はね無惨、何度も何度も虎の尾を踏み、龍の逆鱗に触れている。本来ならば一生眠っていたはずの虎や龍を君は起こした。彼らはずっと君を睨んでいるよ。絶対に逃がすまいと。」
こいつ…本当に死にかけなのか?
「私を殺した所で、鬼殺隊は痛くも痒くもない。私自身はそれ程重要じゃないんだ。
この…人の想いと繋がりが、君には理解できないだろうね無惨。
なぜなら君は…君たちは」
「君が死ねば、全ての鬼が滅ぶのだろう?」
「黙れ」
前言を撤回する。安堵感などない。
「話は終わりだな?」
「ああ…こんなに話を聞いてくれるとは思わなかったな…ありがとう、無惨」
ドン
「ぐっ!」
こいつら…!まさか!!
「産ッ」
「屋敷ィィッ」
あの男の顔!!仏のような笑みを貼り付けたまま!己と妻と子供諸共!爆薬で消し飛ばす!!私は思い違いをしていた。
産屋敷という男を人間にあてる物差しで測っていたが、あの男は完全に常軌を逸している。
仮にも敵地だ、何か仕掛けてくるとは思っていた。しかしこれ程とは!
爆薬の中にも細かい撒菱のようなものが入っていて殺傷力が上げられている。1秒でも私の再生を遅らせる為に。
つまりまだ何かある。産屋敷は、この後まだ何かするつもりだ。
人の気配が集結しつつある。恐らくは柱。
だが、これではない、もっと別の何か、自分自身を囮に使ったのだ。あの腹黒は、私への怒りと憎しみがマムシのように、真っ黒な腹の中でトグロを巻いていた。
あれだけの殺意を、あの若さで見事に隠し抜いたことは驚嘆に値する。
妻と子供は承知の上だったのか?
よせ、今考えることではない。動じるな間もなく体も再生する。
》肉の種子《
血鬼術!!
固定された!
誰の血鬼術だ!これは!
肉の中でも棘が細かく枝分かれして抜けない!いや問題ない。大した量じゃない、吸収すればいい。
ドクン
》ズグ《
「珠世!!なぜお前がここに…」
「この棘の血鬼術は貴方が浅草で鬼にした人のものですよ!」
目くらましの血鬼術で近づいたな。
目的は?
何をした?
この女は無駄なことはしない。
「吸収しましたね無惨、私の拳を!拳の中に何が入っていたと思いますか?」
「鬼を
鬼を人間並に弱くする薬だと?
「そんなものが出来るはずは」
「完成したのですよ!状況が随分変わった。私の力だけでは無理でしたが…」
珠世side
「鬼を人に戻す薬が完成した?」
「はい、全てはここにいる、しのぶさんとイーサン軍医、日本の軍医たちのお陰です。」
私だけでは後100年あっても無理だった。
特に鬼殺の為に、自らの身体を藤に満たすという常軌を逸した胡蝶しのぶさんの力が大きかった。
そして、薬の為にお金を惜しまなかった日本政府と、他国の毒物を大量に持ち込んだイーサン軍医の力も。
「それで?あなたが捨て身で毒を吸収させる作戦は良いとして、鬼舞辻の意識をどう反らすのですか?あなたが言うには、鬼舞辻とやらは時間さえあれば、全ての毒を無効化できるのでしょう?」
「はい、ですのであくまでも
鬼を人に戻す他に、この薬には【老化】【分裂阻害】【細胞破壊】そして、大本命の【血鬼止め】が複雑に入り込んでいます。奴の性格から考えれば、まず【鬼を人に戻す薬】を集中して解毒するでしょう。
その間は僅かとはいえ、他の鬼への支配を緩くせざるを得ない。
そうなれば、帝国軍が無限城に入り込んでいるという事実を認識するのに時間がかかる。」
「なるほど…ですが、まさか
「え…ええ?そうです。そうすれば奴は」
「本命さえ気取られなければいいのです。【鬼を人間に戻す薬】ではなく、あくまでも【鬼を人間並に弱くする薬】で貫き通すべきです。産屋敷の血族なのでしょう?ならば鬼舞辻とやらも病弱な人間だったと仮定すれば、病弱な人間に戻るという薬を放置するはずがない。解毒の早さを遅くすればするほど、こちら側に有利になる。ならば、無駄に敵を警戒させる言葉を使うべきではありません。」
そうか…私は復讐心の余り、1番大切なことを忘れていた。
そうだ…確かにこの男の言う通り、奴を煽ることよりも確実に殺す方を取らなくては。
「はい、では九鬼殿の仰る通りに【鬼を人間並に弱くする薬】で通します。」
そして、今、奴に薬を吸収させた。
「お前も大概しつこい女だな、珠世。逆恨みも甚だしい。」
そうだ。私は医者でありながら副作用を聞かなかった。
「お前の夫と子供を殺したのは誰だ?私か?違うだろう、他ならぬお前自身だ!お前が喰いだした!」
「そんなことがわかっていれば、私は鬼になどならなかった!!病で死にたくないと言ったのは!!子供が大人になるのを見届けたかったからだ…!!」
「その後も大勢人間を殺していたが、あれは私の見た幻か?楽しそうに人間を喰っていたように見えたがな」
「そうだ自暴自棄になって大勢殺した!」
鬼殺隊が公認組織になって隊士よりも、イーサン軍医の目の方が何倍も冷たかった。『知らなかった』と言い訳できる立場ではない。
「その罪を償う為にも」
「私はお前とここで死ぬ!!悲鳴嶼さんお願いします!!」
「南無阿弥陀仏」
》ゴシュア《
悲鳴嶼行冥side
あの方と初めて会った時、お館様は十四、私は十八。
その立ち居振る舞いは己よりも四つも歳が下だと思えなかった。
「君は人を守る為に戦ったのだと私は知っているよ、君は人殺しではない。」
あの方はいつも、その時、人が欲しくてやまない言葉を、かけてくださる人だった。お館様の荘厳さは出会ってから死ぬまで、変わることがなかった。
「五日…以内に無惨が…くる…私を…囮にして…無惨の頸を…取ってくれ…」
「ふふ…勘だよ…ただの…理屈は…ない…」
特殊な声に加えて、この勘というものが産屋敷一族は凄まじかった。“先見の明”とも言う。
未来を見通す力
これにより彼らは財を成し、幾度もの危機を回避してきた。
最も、例の鬼…隠された太陽を克服した鬼に対しては空振りだったが。
(やはり!!お館様の読み通り無惨、この男は、頸を斬っても死なない!!!)
きついのは確か!しかし、
「テメェかアアアお館様にィィ何しやがったアアーー!!!」
柱たちが集結。お館様の采配。見事…
「お館様ア!!」
「お館様」
「無惨だ!!鬼舞辻無惨だ!!奴は頸を斬っても死なない!!」
「無惨!!」
柱が一斉に技をかけた…!!
》ベンッ《
琵琶の音?
「これで私を追い詰めたつもりか?貴様らがこれから行くのは地獄だ!!目障りな鬼狩り共!今宵皆殺しにしてやろう」
とても大きな音が聴こえるが、気配の急激な変化で集中できない!
産屋敷耀哉
作中にあった【虎の尾】は【可愛い子どもたち】
【龍の逆鱗】は【政府関係者】
虎の尾を踏みつけるだけでも愚行だったのに、挙げ句の果てに、力に溺れた結果、【龍の逆鱗】に触れてしまったね。
君を殺すためなら、どんな外道にでも堕ちてやるさ。
どの道、私たちが生き残ったとて残される人生などないのだからね。
産屋敷あまねと子どもたち
何度も話し合って決めました。
連座制が廃止され、他国の目もあるので、産屋敷の血族だとバレても、子どもなら無事に嫁ぎ先で幸せになる未来もあったのに、それでも両親と死ぬ事を選びました。
鬼舞辻無惨
死にかけだと産屋敷を馬鹿にしにきたツケが回った。
産屋敷の言葉の真の意味に気づくことはなかった。
【鬼を人間並に弱くする薬】の解毒をしている。
珠世
当初は【鬼を人間に戻す薬】と正直に言い切るつもりだったが、政府役人の冷静な質問に、自分が冷静さを失っていたことに気づいた。
真の目的さえ悟られなければ、解毒は遅ければ遅いほど有利になるのは当然なので、解毒のスピード感を落とす為に、本来の薬の効果よりも低く言った。
他国の軍医には、『医師の妻でありながら、強力な薬の副作用を聞かなかったお前が悪い。』と言い切られたのもあり、原作よりも罪悪感が強く、無惨への当たりも八つ当たりが多いと思っている。恨みつらみは原作基準だけど、自らの過ちも理解している。
イーサン軍医
珠世が【医師の妻】であり、医療知識もあった事もあり、好感度はマイナスに振り切っていました。
ただの一般人だったら、むしろ慰めていたくらいです。
医師としてのプライドがあるからこそ、ほぼ同じ立場でありながら《薬の副作用を聞かなかった迂闊さ》に憤りを感じています。
それと、軍医なのもあり、『さっさと自殺していれば被害者も少なくてすんだのに』とも思っています。
九鬼大和
特高の警視であり、鬼殺隊案件に限り【政府代表任命官】という役職についています。
珠世の目を見て、復讐に囚われて、一番の目的を見失っていると察したので、諭しました。
案の定、馬鹿正直に薬の効果(表向き)を言い切ろうとしていたので、監督下に置いて良かったと思っていました。
胡蝶しのぶ
原作と違い、国が本腰を入れたことにより、資金はほぼ無制限な上、他国の軍医が毒薬やら薬やらを大量に持ち込んだ事により、実は原作よりも早く【人間化薬】の試薬品を作り出せた。
藤の毒もただ量を摂る手段から、質を効率化する方面にシフトチェンジしている。
悲鳴嶼行冥
お館様の真の目的を知っている唯一の柱。
お館様を尊敬しているからこそ、国の圧力がありながらも最後までお館様のやり方に従った。
竈門禰豆子
隠れている。
ローズマリー・ベネット
本作主人公
米国艦隊の部屋で待機中。
大正コソコソ噂話
前回出てきた主人公の実母、橘咲夜さんは無事に家に帰りました。
「おかえり、母さん!」