C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「アークエンジェルから不明機体が発艦!」
「さっきの機体なの!?」
「はい!カメラ映像拡大します!」
アークエンジェルの前に飛ぶ機体。その顔は四つ眼の異形ながらも、ストライクやインパルスを彷彿とさせる……いわゆる“ガンダムフェイス”だ。
先程フリーダムと共に降りてきた、あの機体。前大戦で活躍したジャスティスともまた違う機体……アレが何なのかは分からない。だが、先程までとはパイロットが違う。それだけは確実だ。
「ルナマリア発進!万が一があるわ、注意なさい!」
「ルナマリア。コアスプレンダー、発進どうぞ。」
『ルナマリア、コアスプレンダー!出るわよ!』
その言葉と共にコアスプレンダーがカタパルトから打ち出される。直後、コアスプレンダーの背後にビームが放たれた。
敵の狙いは甘い……そう思っていた矢先。後続に何が撃ちだされていたかを思い出す。チェストフライヤーだ。
「こっちの対策は万全ってわけね!」
敵の狙いはハナっからコアスプレンダーではない。それぞれのパーツ。しかもチェストフライヤーはシルエットを接続する、コアスプレンダーの次に重要なパーツだ。
「何よ!?
ミサイルをアンノウンに発射するが、付近に居るアークエンジェルのイーゲルシュテルンにより迎撃。再び射出されたチェストフライヤーを破壊した。だが、それ以外で肩のロングレンジキャノンは撃ってこない。レッグフライヤーを狙うわけでもない……少なからずクールタイムが必要となるはずだ。
「アビー!アンノウンはチェストフライヤーを意図して狙ってる!ソードシルエット射出後すぐにチェストフライヤーを!」
『は、はい!』
発艦直後は無防備そのもの。いくら補充のきくインパルスのパーツとて無限にあるわけではない。現に、今あるチェストフライヤーが最後だ。現状使い道の薄いソードシルエットが射出され、キャノンがそれを破壊する。その爆風を突き破ってチェストフライヤーが姿を現した。
「ドッキング!」
なんとかインパルスへと合体した。フォースシルエットも順調に合体した。
「……でも勝てるの?あれに?」
「アークライトめ、砲身の過熱が早すぎるぞ。」
フェイスのコックピットで一人愚痴る。本来ならチェストフライヤーとレッグフライヤーを破壊し尽してMS形態にさせない算段だったのだが……砲身が短くなったせいか、アークライトの連射性がセイバーに比べて落ちている。いや、セイバーの機動力で空気冷却が自然と行われていただけか。
「しかしルナマリア、成長したな……」
隙を突くのは戦場において必須スキル。もちろん俺はルナマリアを殺さないためにも作戦を立て、計算が狂えば次の計画へと変更した。だが、一度のミスでこれだ。コアスプレンダーは既にインパルスへと合体した。先にレッグフライヤーを落としとくべきだったか?
「過ぎた事は仕方ない、だが負けるつもりはねぇぞ……」
向かってくるルナマリアを相手にビームカービンを向ける。するとやはりというべきか、横に避けるルナマリア。それを狙ってミサイルを発射。体勢が崩れた瞬間にクスィフィアスを発射。フォースシルエットを狙ってカービンを撃つ。
だが、クスィフィアスの一撃を見るや直ぐにナイフを取り出すとこちらに投擲しつつ二本の矢を避ける。それをビームシールドで弾きつつ、カービンでルナマリアを適度に追い込んでいく。
「やるようになったな……」
少なくとも、ザク時代のルナマリアではできなかった芸当だ。インパルスを受領するにあたって相当の訓練を積んだ……いや、積まなければやってられなかったのだろう。妹の喪失(当人からして)は心に大穴を空けたに違いない。
アークエンジェルに流れ弾が当たっては困る、やや離れた場所におびき寄せてそこで戦闘を再開する。その間にも向こうはバッテリーを消費している。持久戦だ。
「全弾……持ってきな!」
ミサイルをすべて射出。その方向は6方向から。俺が覚えている限りでは、これを上手く躱したのはイザークから貰ったデータで見たストライクくらいだ。とは言え、対処法は簡単。単純に加速してミサイルが来る方向を大まかに絞ってしまえばいい。が……
「だからこその矢が刺さる。」
フォースシルエットを狙ったカービンが直撃。上手くフォースシルエットだけを撃墜出来たようだが……ミネルバからブラストシルエットが射出された。それを狙おうと俺はアークライトを構え……
その方向に、白煙が見えた。
上昇している……ミサイル?いや、ロケット?
「あのバカ行きやがった!アークエンジェル!援護を!」
『何があった!?』
アークライトを発射、至近弾。一般のシャトルより加速度が大きい。オーブの氏族用シャトルと考えて問題ない。
「アークエンジェル!シャトルが撃ちあがった!」
『バリアント!ッ撃てェー!』
「クソッタレ、ミネルバが張り付いてやがる!今対応できるのは俺しか居ねぇのか!?」
左方から赤いビームが飛び、反応するもアークライトに掠った。パージして誘爆を防ぐ。
「追いつけるわけねぇが、やるしかねぇ!」
デッドウェイトになるファイヤビーの発射管とクスィフィアスを全パージ、最低限の装備にしてスラスターとカービンの出力を最大。カービンの有効射程距離内から外れるまで、十数秒。
「クソッ、背後が鬱陶しい!!」
ミサイルやパージしたクスィフィアスの爆発で機体が揺れる。あのシャトルだけは何としても……!
が、あの爆風を突破したミサイルの一つが機体を揺らし、大きく狙いを外すことになった。俺に出来ることはなくなっている。
「……武装喪失、帰還する。」
水上をホバーするインパルスの砲撃を躱しつつ、アークエンジェルへと帰還する。そして最初にやるべきことは……
「頼むぞ。」
『了解した。何はともあれジブリールが逃げたのはこちらでも確認している。早いところ見つけたいんだがねぇ。』
「何を隠し持ってるかわからん。」
ラクス嬢との会談もそこそこに、俺はプリンシパリティやACESの面々への指示を出していた。イザークやディアッカも動いているとは思うが……
「ジブリールが上がった以上、何が起きてもおかしくはない。大量破壊兵器の可能性だってある。念のため、ジャンクチャ艦隊を展開させておく。特に動きが激しいのは……」
「えぇ……先ほどの演説以後のことはうかがっております。」
「ザフトも対応は始めたみたいだが、どうも変な位置に廃棄コロニーを動かしてるって話だ。」
「廃棄コロニーを?」
「ジャンクチャからの望遠映像になるんだが、これをどう思う?」
「……まるで指輪、ですわね。」
「そう、リング。基部にレーザー砲塔だとかを設置しているわけでもないがらんどうだ。」
「考えろ……それを動かす意味がどこかにあるはずだ。」
「……あっ。ビームを、曲げる?」
キラの声が俺の記憶を呼び覚ました。ヤキンで戦った
「……連合がゲシュマイディッヒ・パンツァーの技術を開発していないわけがないな。」
「あのコロニーにそれが搭載されていると?」
「それも複数配置しておくんだよ。そうすりゃ、月の裏側からだろうが何だろうが無限に発射角がとれる。」
「その大量破壊兵器はどこにある?」
「どこにあるかは発射されるまで分からない。が、月の裏側って線が太い。アルザッヘル基地より警戒されにくい上、資源基地だから大穴が空いてる。」
「でも、今から向かうのは無理だ……」
そんな事はキラという非戦闘員(歴戦の猛者)にすらも分かること。既にパスコードを入力し終えた俺は再びトダカ一佐へと通信をつなぐ。
「プリンシパリティ!聞こえてるか!」
『さっきぶりだね。あの廃棄コロニーにはユニコーンとサビトゥンを向かわせているよ。で、彼らに何か伝言かい?』
「内通者に連絡しておけ。デカい花火に巻き込まれたくなけりゃコロニーから離れてろってな。」
『……トリニティを使うのかい?』
「今、俺らやアンタ。引いてはプラントの心臓を100%跳弾でぶっ潰せる奴がいるんだよ。」
『……なるほど。壁を壊してしまうってことか。なら良いんだ。』
「俺らの出迎えよりそっちを最優先にだ、頼むぞ。」
トダカ一佐の察しの良さには本当に助かる。とっととアークエンジェルの用意を済ませて宇宙に上がる。その時はエンジェル隊も一緒だ。
「隊長殿、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく頼む。というか、エンジェル隊は今まで通りエンジェル隊として活動してもらうんだが……」
「そりゃそうですけどよ、一応プリンシパリティ隊の大隊長様なんでね。」
「まぁ分かってればいいさ。で、どうだ?ゲイツ
「ザクの操縦系統をそのまま流用してるんで、使いやすいです。何よりゲイツ自体に愛着があるもんで。」
「ヤキンで乗ってたのか?」
「後方でしたが。元々厭戦派閥だったので前線特攻か後方待機かのくじ引き。」
「我々は運よく後方部隊に回されましたよ。」
「そうか……ん、何だおやっさん?」
「お前さんの機体の整備が終わったんで、休憩だ。武器も最低限補充しといたぜ。」
「見せてくれ。」
複合防盾システムはそのまま搭載、ビームライフルはゲイツのものを流用して残りは素っ裸か。
「ライフルだけか。せめてビームサーベルの一基くらい用意出来りゃよかったんだがな。」
「無茶言うなよ、必要最低限しか持ってねぇのよ。」
「さいでっか。」
とは言えアークエンジェルと共に宇宙へ上がるだけだ。プリンシパリティに着くまでに戦闘があるとは思えん。
「マスドライバーの用意は?」
「出来てるってさ。俺たちもすぐ行くが……嫌な予感がする。頼むぞ。」
既にアークエンジェルはオーブ軍へと編入され……オーブ軍は秘密裏にターミナル、ACESと連携している。裏の事情まで事細かに入ってきているわけではないが……とにかく迅速に、とだけしか言えない。宇宙の細かいことは、宇宙の奴らに任せるしかない。
……今、ここで安寧を得られているのは国家という後ろ楯があり、虐殺の矛先がプラントへと向いているから。故郷が狙われているというのに、安心を憶えてしまうことに、俺は無性に腹が立った。