東方鮮血城~The Draculina in the Red Castle~ 作:小林ミメト
「ふう・・・。」
来夢は、仇をとれた嬉しさとむなしさで力尽きてその場に座り込んだ。
その時、肩に得も言われぬ激痛が走った。
「痛っ!!!」
恐る恐る振り向くと、そこには彼・・・ではなくピンク色のナイトキャップと赤いリボン、可愛らしいピンクのワンピースを着た五歳程度の女の子が、蝙蝠の羽をバタつかせながら来夢の肩にかじりつき血を吸っていた。
「あ、新手!?気配を全然感じなかったわ!!」
彼女は、満足げな顔で一歩引きその後ろから霧に紛れてレオナルド伯爵が無傷の状態で現れた。
「そりゃあそうさ。お前さんと戦う前に、巫女の勘とやらを封じる毒霧を吐いたからな。」
「グッ・・・攻撃する前に吐いた・・・あの・・・。」
その間、来夢の体から流れ出た血は、戦闘で汚れた巫女服をさらに汚していった。
「お腹いっぱい。」
「我が娘よ、お前のその小食っぷりは何とかならんもんかね。」
彼は、あきれ顔で娘に言った。
「あら、実の娘にデブにでもなれと?」
「そうじゃない。血を吸う以上そいつの息の根が止まるまで吸い尽くせねば、眷属も仲間も作れんぞと言っているんだ。」
それを聞いて来夢は、逃げ出すことも視野に入れ始めた。いくら筋骨隆々な武闘派巫女とはいえ元が人間、血を全部抜かれたおしまいだからだ。
だが、なぜか体が言うことが聞かずひどい倦怠感に襲われた。
だが、その雰囲気を察したのか吸血鬼親子が口論を辞めこちらに歩み寄ってきた。
「無駄だ、我が娘レミリアは少食だがひどい貧血状態になるまでは吸えるからな、一歩も動けまい。・・・さて、」
そう言うとレオナルド伯爵は、ゆっくりと片膝をつき、さっきと打って変わってそっぽを向いておびえる来夢の顔を優しく両手で包んでこちら側に向かせた。
「我が娘よ、こいつの血はどうだった。」
レミリアは、顔の横に人差し指を当てて可愛らしく考え込んだ。最も、そんな可愛い仕草を見る余裕は来夢にはもうない。
「ん~・・・。子持ち味?」
その瞬間、来夢の辛うじて残っていた闘志を燃やす炎も消え去り、瞳からも光が消え失せた。
「図星だそうだ。パーフェクトだレミリア。」
「感謝の極み。」
そう言ってレミリアはドレスをつかんでお辞儀をした。
「お、お願い・・・娘だけは・・・。」
「安心したまえ、娘を失うつらさは私にもわかる。いただくのはお前の血だけだ。」
そう言うと、レオナルド伯爵は来夢の喉元にかぶりついた。
「ガアッ!・・・れ・・・・・む・・・。」
来夢は、自分の体に流れる血が徐々になくなっていく感覚とともに足先から冷たくなっていくのを感じた。
同じころ、博麗神社では彼女の娘が何かを感じ取りとったのか、スカーレット城がある方角へ向かおうとした。
「何をしておる!?危ないぞ!!」
来夢のペットのしゃべるおじいさん亀は、娘を引き留めようとして前足で彼女の足を力いっぱいつかんだ。
「放して玄爺!このままじゃ、このままじゃ・・・お母さんが死んじゃう!!!」
そういう彼女の眼には涙が浮かんでいた。
彼女の勘は親譲りでよく当たる。だからこそ、行かせるわけにはいかなかった。
「来夢を・・・母親を失うつらさは、わかる!わかるぞ霊夢!!だが、今!今ここで敵の本拠地に乗り込めばお前さんは確実に死ぬ!親の仇をとれなくなるぞ!!」
それを聞いて霊夢は力なくその場に座り込んで泣いた。
母親からは、どんなにつらいことがあっても決して泣くなと言われていたので、玄爺にわからないようにすすり泣きながら涙声でしきりに母を呼ぶしかなかった。
「母さん・・・お母さん・・・。」
「・・・・・。」
そして、ついに鬼と渡り歩いた幻想郷最強と謳われた巫女は吸血鬼に血を吸いつくされるというあっけない最期を迎えた。
「フフフフフフ・・・・ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!」
彼は、声高らかに笑いその笑い声は月明かりがきれいな夜空にこだました。
「ところでお父様。子供を襲わないというのは本当かしら?」
「ああ、本当さ。なぜなら敵対勢力の子供は、大人になればレジスタンス!つまり我々の遊び相手になりうるからだ!!」
そう言って、彼は心底楽しそうに目をぎらつかせた。
「うー!」
レミリアは可愛くうなずいた。
「そして!集まってきた哀れなレジスタンスたちは、我々吸血鬼が犯し蹂躙し吸血して一部を新たな戦力として迎え入れてやる!」
「そしてまた、わざと残したその子供たちを大人になるまで待つというわけね。」
「そうだ。そうしてできたスカーレット家の武装集団で幻想郷を燃やし尽くしてやる!我々をがっかりさせたことを後悔させてやる!」
「うー!!」
「さて、そろそろ我々の新しい仲間もお目覚めになるころだ。」
すると、そばで転がっていた来夢の死骸が不気味なうめき声を上げながらゆっくりと起き上がった。だが、その表情は生者の物ではなく目は白目をむいており、だらしなく開いた口からはよだれがとめどなく垂れていた。そして、彼らと同じように鋭い牙が生えていた。
「Buna dimineata(おはよう)!そして戦場へようこそ来夢君。」
「ヴー・・・。」
「うー!」
「では、諸君!!」
そう言って彼が指をパチンと鳴らすと、どこからともなく西洋の妖怪や悪魔が闇夜から目を光らせながら現れた。
それを見届けた後、レオナルド伯爵は彼らを背に右掌を広げて前に突き出して彼らにこう告げた。
「掃討戦を始めよう。」
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