転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
転生二次は星の数ほどあるのだから、一つくらいこんなのがあってもいいでしょう。
ウルトラ警備隊転生が無いなら、自分で書くしか無いじゃない!
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙~↑!!!」
どこか遠くで、聞き覚えのある悲鳴が聞こえる。
その絶叫が、ほかでもない自分の口から発されていると理解すると同時に、俺の意識は深い深い沈黙の海へと再び沈んでいった。
「……ガ……しろ……」
ズルズルと引き上げられていく感覚。
まるで錨を巻き上げるようにゆっくりと、覚醒していく。
「おい、しっかりしろソガ! おい!」
「う、うう……」
「良かった! 生きてるぞ!」
「こいつ! 心配させやがって! ……こちらアマギ、ハイドランジャー2号のサルベージに成功しました」
俺の周りで、やけに嬉しそうな声がする。
騒がしいな、頭が痛いんだから静かにしていてくれないか。
「おい、大丈夫か? 俺が分かるか? ん?」
まだ焦点の定まらぬ視界の中に、こちらを覗き込む男の顔が迫ってくる。
意思の強そうな太い眉をこれでもかと下げ、普段からはとても想像できない程に心配げな声を上げる、このエラの張った強面を……
俺はよく知っている。見間違えるはずもない。
「アラシ隊員……?」
「……おまえ、俺の兄貴といつ知り合ったんだ? ……まあいいや、冗談が言えるくらいなら、大したことねえさ」
強面が破顔すると同時に、その上からひょっこりと、鼻筋の通った、やけに神経質そうなしかめ面が見下ろしてくる。
「おい、人様にさんざん心配かけておいて、それか。見損なったぞ、ソガ隊員」
「ソガ……?」
「……これは駄目だ、酸素はギリギリ足りていたはずだが……」
「……なんで? なんでアマギ隊員がここに?」
長身の男がため息をつきながら、無言で俺の口へと、酸素吸入器を押し付けてくる。
「間に合ったとは思うんだが、少し記憶の混濁が見られる。アンヌ、すぐにメディカルチェックができるように準備しておいてくれ」
「わかったわ」
酸素が体中の血管を駆け巡り、脳ミソがフル回転し始めるのを感じるが、それでも現状をサッパリ理解できないぞ。
俺の目の前で、ブルーグレーの制服に身を包んだアマギ隊員が腕時計型のビデオシーバーで、通信をしている。
相手は声からしてもアンヌ隊員だろう。それは分かる。
シートの向こうで計器を確認している巨漢は、フルハシ隊員だ。オレンジ色じゃないし間違いない。
さっきは顔しか見えなかったし、仕方ないだろ。酸素が足りなかったんだよ!
うん、それは分かる。でもね、わけわかんない。
なんでそれが分かるのか、ってのが理解できないんよ。
だって、なぜなら彼らはテレビの登場人物なのであって俺は……
ソガ隊員 年齢25歳 隊歴3年 九州出身だ。
これが一番わけからん。
まあ、分からないことだらけだが、意識がハッキリしてくるにつれて、一番聞かなきゃならないことを思い出す。
「アマギ隊員、奴は……?」
「ああ、ラフマニーフはお気に召さなかったようだが、シューマンのピアノ協奏曲を流し始めたら大人しく帰っていったよ。個体によって、好みの周波数があるのかもしれん」
……そうか、それを聞いて安心した。港の避難は間に合ったか。
「しかし、魚雷をレーザーで撃ち抜いて起爆なんて芸当が、よくぞ咄嗟にできたもんだ」
「いくらハイドランジャーの耐圧殻でもあんな至近距離じゃ自殺行為ですよ。お陰で爆沈したかと思いました」
「そこはほら、アマギ大先生の設計を信じてるからこそ、さ」
「だったら、あの人騒がせな悲鳴を上げるのも我慢して貰いたいもんです」
「まあまあ、ソガ隊員命がけのネコだましが炸裂したお陰で、港は無事なんだから。あとは隊長に絞ってもらえ」
安心したからか、眠くなってきた……次目覚めたらメディカルセンターかな……
まるっきり状況が把握できないし、どうしてそうなったか納得すらできないけども、一つだけハッキリと理解できる。
オレ、ウルトラ警備隊のソガ隊員になっちまったみたいだ……
書きたい場面だけ書いていくかもしれないし、更新するかもわかりません。