転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
カットするか悩みましたが、一応、本編の流れを知らない人でも、話がつながるようにと思って入れることにしました。
4話的には重要なシーンばかりですからね。
極東基地は大わらわであった。
マックス号と共に消息を絶ったはずのアマギ隊員が観測用ロケットで帰還したのだ。
しかも、救出されたアマギ隊員の意識は朦朧としており、駆けつけたキリヤマの顔を見るなり、気絶してしまった。
アンヌが急いでメディカルチェックを行うと、全身の筋肉が激しく硬直しており、長時間の緊張状態に晒された事によって体力を著しく消耗してしまっている……との見立てだった。
このような極限状態で、ロケットの侵入コースを設定し、あまつさえ大気圏突入を成功させるなど、常人ではとても考えられない。
ウルトラ警備隊に選抜された男の精神力は、まさしく本物としか言うほかないだろう。
しかしアマギ隊員の状態から、マックス号が何らかの攻撃を受けた事は明白だったが、肝心のアマギ隊員が目を覚まさない事には、動きようが無い。
こうして一人用のロケットで彼を送り込んで来たからには、可及的速やかに伝える事が有るという事に違いないのだから。
アンヌが筋弛緩薬や覚醒剤を投与してアマギの意識を取り戻そうと必死に治療を施すが、間に合うだろうか。
一方その頃、ホーク2号で帰還したフルハシ隊員から発される僅かな違和感を、直感的に捉えたダンは、密かにその後をつけた。
しかし、フルハシ隊員が動力室に怪しげな機械を設置したのを見咎めたまでは良かったが、ゴドラ星人の瞬発力によって先手を取られ、カプセルの中に閉じ込められてしまう。
勝ち誇るゴドラ星人からシュワシュワときめの細かい泡のような物が分泌され、その全身を覆ったかと思うと、中からはダンに瓜二つの姿が現れた。
「ハッハッハ、原子炉が爆発するまで、大人しく寝ているんだ、ウルトラセブン! フッハッハ!」
カプセルを破壊できず、為す術もないダン=セブンを見下すように挑発すると、借り物の姿で悠々と原子炉を後にする。
「あと15分で君の体は木っ端みじんさ! ハッハッハ!」
ゴドラ星人は成長し、サイズが拡張するにつれ、より高度な擬態化能力や飛行など、様々な特殊能力を身につけていく恐ろしい宇宙人だが、この個体のように、目にしただけの姿を何種類も使い分けられるようになるには、50m級まで成長する必要があった。
……それには数百年の時間を要し、これほどの戦闘力を誇る兵隊ゴドラは母星にも数える程しか居ない。
星を支配する最上位個体の、言わば親衛隊のような存在であり、彼が今回の作戦に投入された事は、ゴドラ星人が如何に地球侵略に重きを置いていたか、その本気度が伺える。
わざわざ、基地の破壊に時限式の爆弾を使ったのも、この貴重な個体が離脱する時間を確保する為であった。
基本的にゴドラ星人は、種の繁栄の為なら個の生命など、いくらでも捨て石にするような精神性を有していたが、そのゴドラ星人という種全体から見ても、このレベルの個体が失われるのは避けたい程の戦力なのである。
作戦失敗時には何を置いても母星に帰還することを、最上位個体から厳命されていた。
そして、地球防衛軍とウルトラセブンが爆破されるのを見届けるという重要かつ、非常に栄誉ある任務は、より下位の、しかし優れた擬態能力を持つ程度には成長した中堅個体が引き継ぐことになる。
もちろん成功の暁には、基地と運命を共にすることになるが、その報酬として、目の前で強大な敵が悶え苦しむ最期を特等席で見られるというのだから、ゴドラ的価値観ではお釣りが来るくらいだ。殺到した志願兵の中でも特に優秀な個体が、日頃の恩賞として任務を賜ったという経緯がある。
ダンとしては、助けを求めた防衛隊員が、自分を襲い、ウルトラアイを奪っていった女であると気付いた時の驚きようは無かった。
……最も、この個体が床に落ちていた
彼らの文化に装飾品という概念は無いため、警備隊の使う武器の一種かと思ったのだ。
咄嗟にダンがそのネックレスに反射させた光線でカプセルを破壊する。
獲物を閉じ込め上位個体に献上する為に改良されたカプセルは、内部からの刺激には一切反応しないが、捕食側がハサミを突き立てた際には、さながら包み焼のパイ生地のように、何の抵抗もなく崩れるようになっていた。
ゴドラ星人とは、宇宙でも稀にみる、侵略と捕食がセットになったグルメな種族なのだ。……武器と食器が同義なのだから。
なんにせよ、アンヌの愛がセブンの窮地を救ったとき、その献身性はアマギの意識と基地の命運すらも救ってみせた。
「……大変だ、時限爆弾が爆発するゥー!」
「何、時限爆弾!? どこにあるんだ!」
「第二動力室の……原子炉の傍!」
慌ててキリヤマが動力室へと駆けつけると、そこではウルトラセブンと、未知の異星人らしき存在が揉み合っている!
それも、なんとあのセブンに対し、格闘戦で優位に立っているではないか!
加勢しようとするキリヤマであったが、それよりも早く頭に響いた不思議な声に、反射的に従うことにした。
《隊長、時限爆弾を早く!》
確かにセブンの指差す方向には、怪しげな装置があった!
間違いない、例の時限爆弾だ!
キリヤマの脳裏に、かつて撃滅した宇宙艦隊の残骸を見分していた時の感想が過ぎる。
いくら異星人の作る物とはいえ、兵器の構造というのは、単純であればあるほど、根っこの構造は、我々のそれとさして変わりがないものなのだな――と。
もはや迷っていても同じこと、直感的にヒューズのような部品を引き抜いた!
点滅の停止した装置を片手に、キリヤマは安堵する。
いつだったか、時限装置も回路の一種に変わりは無いと嘯いていた、今は医療ベッドで寝ている部下を命一杯労ってやろう等と、つい気を抜いたが、背後で悶える気配によって一気に意識を引き戻される。
油断大敵、セブンがエメリウム光線で救ってくれたと悟った時には、彼はもうすでに次の行動へ移っていた。
ダンへの擬態を訝しんだアンヌを、人質として引きずっていたゴドラ星人の前に飛び出すと、慣れない《腰の武器を使う》という行為にもたつくゴドラ星人をアイスラッガーで牽制する。
セブンの必殺武器を頭部に受け軽傷を負ったゴドラは、ポインターで逃走を図るも、セブンの飛行速度からは逃げきれないと悟るや、母星で受けた圧縮処置を解除して、本来のサイズへ戻り、セブンに格闘戦を挑んだ!
攻防は互角といったところであったが、ゴドラ星人は自身の使命を思い出した。
そうだ、ゴドラ繁栄のため、自分は何としてでも母星に帰還しなけらばならないのだ。
かくなる上は!
ゴドラ星人はここまで成長するに至った自身の肉体に一縷の望みをかけた。
彼らの最も強固な部位は、共生する海綿動物に覆われていない、甲殻による装甲だけで構成された背面なのだった。
現にその甲殻の強度は、キック一発でセブンをノックダウンさせ、先程アイスラッガーの一撃すらも弾き返した実績がある。
もうこの個体には他の手段が残されていない中での、一か八かの賭けだった。
セブンに背を向け飛び立つゴドラ星人の背面にエメリウム光線が炸裂する!!
……果たして賭けはセブンの勝利に終わった。
駆け付けたキリヤマとアンヌは人間大に戻ったセブンに満面の笑みで駆け寄る。
今回もまた、絶体絶命の危機を救ってくれたセブンはなんと、地球の言葉を解するという事が判明したのだ。
もちろん言いたいことや聞きたいことが山ほどあったが、それらを飲み込み、まず今一番伝えたい事を、万感の思いを込めて、キリヤマは赤いヒーローへと述べる事にした。
「ウルトラセブン、基地は救われた。……ありがとう!」
《隊長、これを私に》
しかし、セブンは一つ頷くと、時間が惜しいとばかりに、キリヤマの持っていた時限爆弾を受け取って宇宙へと飛び去って行った。
そう、事件はまだ終わっていないのだ。
等身大のセブンとキリヤマ隊長が会話するシーンほんとすこ
この一件があったからこそ、ウルトラ警備隊とセブンの絆は強固なものになっていくのではないでしょうか。
いくら共闘してくれる相手とは言え、言葉が通じるか通じないかというのは、かなり重要だと思うのです。