転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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確殺の0.4秒(Ⅱ)

「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝……なんだ夢か」

 

まったく、変な夢を見たせいで体がだるい。

今日は射撃大会だってのに、よりによって最悪の目覚めだ。

 

「ソガ隊員、あまり顔色が良くないですね? 隈が出来てますよ。大丈夫ですか?」

「ああ、ダン。あんまりよく寝付けなかったみたいでな。でもまあ、大丈夫だよ」

「アンヌも張り切って宴会の準備をしていますから、頑張って下さいね!」

「ハハハ、だから優勝は無理だってば……」

 

なんならそれより大事な事があるんだよなぁ……

 

―――――――――――――――――

 

 

射撃大会予選、5秒のカウントの後、ホールの中にブザー音が鳴り響く!

 

俺はヨシダ隊員と向かい合って、ビームライフルを撃ちあっていた。

 

「あっちゃぁ……流石ですねソガ隊員。今朝は調子が悪そうだったとモロボシさんが心配していましたから、自分にもチャンスがあるかと思ったんですが……」

「いやいや、オレもまさかヨシダ隊員と当たるとは思わなくて、ヒヤッとしたよ」

「まったく、今年はもう少し上に行けるかと思っていたのに、自分のくじ運の悪さが恨めしいですよ」

 

にこやかに握手を交わし、対戦相手を交代する俺達。

もちろん胸を撃ち抜かれたヨシダは無事だ。

 

ビームライフルと言っても、人型兵器を一撃で撃破して、戦艦並みの攻撃力を持っているのか! と仮面の赤い人が驚くアレじゃない。

現実世界にもある、れっきとした競技用の銃だ。

 

赤外線とかで当たったか分かる銃の玩具あるだろ?

あれのもっとしっかりした奴さ。

 

左胸につけた警備隊マークのワッペンに、小さい受光部が仕込んであって、ウルトラガン型のライフルから出たキセノン光が当たると、秒数や部位を判定するって仕組み。

 

まずはこのビームライフルで早撃ちの対人競技を行い、勝ち上がった者で次のステージだ。

ただでさえ競技者が多いのに、競技項目も沢山あるんだから、これくらいやらないと時間も弾薬消費も馬鹿にならんからね。

 

早撃ちを二回戦やれば、あっという間に競技者は4分の1。

 

次はまたしてもビームライフルの狙撃競技。

今度は10m先の的に立射姿勢から60発を撃って、点数を競う。

 

これは瞬発力も要求される早撃ちよりは、ずっと得意だ。

ノロマなオレでも、しっかり狙って撃てば、原作ソガの狙撃能力をそのまま活かせるからな。

 

こんな感じであらゆるシチュエーションの競技を1日がかりでやっていくのだ。

 

野外の実銃射撃場に進めるのは、上位のほんの一握りというわけさ。

ヤナガワ参謀は今日も節約に余念がない。

 

いくら寝不足気味とは言え、ソガスペックにかかれば余裕余裕!

 

あっという間に、最高得点で本戦出場を決め込み、トントン拍子で進んでいく。

さて、あとはヒロタとの決勝が待っている……

 

―――――――――――――――――

 

ヒロタの私室をノックする音がある。

 

「どうぞ……」

 

訪れたのは、ソガだった。

 

「何しに来たんだ?」

「実は、君に聞きたいことがあってね」

「……どんなことだ?」

 

ポケットに手を突っ込むと、ソガから目を逸らし背を向けるヒロタ。

 

「なあヒロタ……お前何か俺に隠していることがあるんじゃないのか?」

「隠す……? バカをいえ」

「しかし、お前の態度はどうもいつもと違うようだ。なあ、ヒロタ……俺たちは同期生じゃないか……何か悩んでいることがあったら、素直に話してくれないか?」

「うるさい、貴様に話すことなど、何もない……さあ、出てってくれ!」

 

聞く耳をもたずにソガを拒絶するヒロタ。

 

「仕方がない……、じゃあ俺の方から言おう……あの時、俺を撃ったのはお前だろう」

「なにぃ?」

「いや、俺だけじゃない……お前は、あの男たちとグルになって、ミナミ、スズキの両隊員も殺したんだ!」

「フフ……、悪い冗談はよせよ。何を証拠に、そんな言い掛かりを付けるんだ」

「証拠は……、その顔の傷だ! その傷は……俺に撃たれてできたものだ」

 

素早く銃を抜くヒロタ。しかし、ソガの方は既に拳銃をヒロタの体へ押し当てていた。

 

「……銃を捨てろ! さ、早く!」

 

ソガは、ヒロタを牽制しつつ、連絡をとろうと室内電話の受話器を耳に当てた。

 

「ウルトラ警備隊を頼む……もしもし、もしもし!? ウッ!!」

 

しかし、受話器から謎の音波が発され、昏倒してしまう。

部屋にヒロタの笑い声が響き渡った……




作中で触れたビームライフルは、射撃競技で実際に使われているものです。
カメラのフラッシュ光と同じく、キセノンビームを発して、受光部で受けるという仕組み。

ゲーセンや遊園地で射撃ゲームなんかにも利用されてますね。

最初のモデルでは1973年に登場し、その年には国体の正式種目となってもいます。

セブン放映当時の1967年にはまだ早いですが、劇中設定として有力な1980年代には既存の技術という訳です。

それに、ウルトラガンを実用化してる世界ですから、こういった競技用のアイテムもそりゃあ進歩してるだろうなという事で、防衛軍で正式採用させてもらいました。

こうすれば、実銃ではできない対人戦の訓練や競技も出来ますしね。

的も弾もタダじゃないんだ byヤナガワ参謀

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