転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
「大丈夫よソガ隊員。ドロシーやアオキ隊員の時の教訓を活かして、キタムラ博士とアマギ隊員が催眠覚醒装置を作っておいてくれたのよ」
「待てアンヌ、俺は……」
長大な顕微鏡のようなものを、俺の顔へ被せてくるアンヌ。
画面の中には、極彩色の世界が映し出され、模様が様々なパターンで変化していく……
ぐるぐると目まぐるしく回転する視界、眺めていると激しい頭痛に襲われた。
まるで脳ミソをガンガン殴られるような……でも、なぜか目が離せない……うう……気分が……悪い……
そうしていると、やがて、脳裏にいくつかの光景が浮かんできた……これはいったい……やめてくれ……
どんどんオレの意識は遠のいて……
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「……ハッ! ここは……」
『ようこそ、ソガ隊員』
気が付くとオレは、四肢を拘束され、怪しげな回転装置に繋がれていた。
目の前では、青い毛をふさふさと生やした鳥のような異形が、真っ黒な瞳でこちらを見上げていた。
「き、貴様は……!?」
『アルファケンタウリ第13番惑星に住む、ペガ星人だ……』
「ペガ星人……それがオレに何の用だ?」
『ソガ隊員……君には私の虜になってもらう……人工太陽開発計画を妨害するためにな』
「何ッ!?」
ソガが藻搔いても、拘束は頑強でちっとも外れやしない。
『君は、ヒロタ君に勝つためには、どんな事でもしたいと思っているのだろう? どうだ、私に協力すれば、君を望み通り勝たせてあげようじゃないか。あれだけ懇願していたんだからね』
「なぜそれを!?」
『電話線だ。君達の原始的な通信網くらい、簡単に傍受できる。私は。この円盤の中にいながらにして、君達の会話を全て聞いていたのだよ。だから、君に目を付けた』
「そ、そうだったのか……!」
『……とはいえ、受話器からの音波催眠だけでは、夢遊病のようにここへ来てもらうのがやっとだったからね。その特殊催眠機で、しっかりと私の命令通りに動く手足になって貰おう……君は、私のモノだ、ソガ隊員』
「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝!!!!!!」
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「隊長! 護衛班は全員ショックガン装備で固めるのはいかがでしょうか」
「なに? ショックガン?」
「そうです。ショックガンであれば、急所を外しても確実に敵を無力化できますし……敵を殺してしまうのではなく、生け捕りにして、事件の全容を吐かせてやるんです。それに……万一乱戦になったり人質を取られても、博士への誤射を考慮せず戦えます」
「しかし……ショックガンは少しばかり大ぶりだ。短銃身の拳銃の方が即応性と取り回しで敵に勝るのではないか?」
難色を示すキリヤマ。
コンマ0.1秒を争う護衛任務であるからこそ、より威力のあるウルトラガンではなく、実弾拳銃を装備する予定なのだ。
狭い車内から早撃ちを行うのであれば、銃身は短く、信頼性のある拳銃こそが適任だった。
「そのための人員厳選ではありませんか。射撃大会上位入賞者で固める意味が、そこにこそあります」
「ふむ……なるほど。今回の護衛のみならず、今後も見据えた積極的な策という事か。キリヤマ隊長、ソガ隊員の献策を取り入れてみよう」
「ありがとうございます!!」
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羽田空港へ秘密裏に到着したリヒター博士。
博士を出迎え、護衛に入る隊員達。
一位のアオキは宇宙に行ってしまった為、繰り上がって2位のミナミと4位のソガは博士と共に1号車へ、3位のヒロタと5位のスズキは2号車へ乗り込んだ。
空港を後に基地に向かう2台。
しかし、その車列へ強引に割り込んでくるダンプカー!
敵は待ち伏せしていたのだ!
「ソガ隊員は博士を!」
リヒター博士をソガに託すと、車を降車しダンプカーに向かうミナミ隊員。
それを確認したオレは、隣のリヒター博士をショックガンで気絶させると、胸のホルスターから銃を引き抜いて、彼の頭に向けて引き金を……
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「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝……やめてくれ! やめてくれぇえええええ!!!!」
「ソガ隊員! ソガ隊員!」
頭を装置の下から引き抜き、だらだらと汗を流したソガは、ベッドの上で勢いよく上体を起した。
荒々しい息を吐き、肩を上下させる彼を、アンヌが心配そうに見やる。
「何か思い出したのね……?」
「思い出す……? ああ、そうさ……思い出した……俺は……オレは……なんてことを……」
「ソガ隊員、一体何があったというの……?」
「やめろ! やめてくれアンヌ! ……違う! そんな筈じゃなかったんだ!」
「あ! 待ってソガ隊員!」
しばし頭を抱えていたのもつかの間、弾かれたようにメディカルセンターを飛び出したソガ。
慌ててアンヌが後を追いかけようとするが、大きな覚醒装置を抱えていた彼女は僅かに出遅れてしまった。
そんな……ペガ星人の標的が……オレだったなんて!
じゃあ、つまり……今回スパイだったのはヒロタではなく……
オレは……この手で博士の影武者やミナミ隊員を……
そんなはずはない!!
きっと何かの間違いだ!!
私室に飛び込んだソガは、後ろ手に鍵を閉めた。
一歩遅れたアンヌが、扉を叩き、懸命に彼の名を呼ぶ声がする。
ソガは数秒の間、扉にもたれ掛かり、その場で息を整えていたが……やがて意を決した表情で、壁に吊るされた背広の方へと歩いて行く。
襲撃当時に自分が来ていた服だ。
恐る恐る……震える手つきで胸元をまさぐると……重たく冷たい感触が指先に触れた。
いやだ、みたくない。
それでも、その本心に反して、彼の指がジャケットの胸元から引き抜いたのは……
ずしりと硬い、一丁の武骨な拳銃であった。
黒光りするソレは、確かな手ごたえと共に、ソガの手にじっくりと馴染んで……
あまりにもしっかりとした造りのソレを見た瞬間。
彼は、あの時、あの場所で何が起こっていたのかを、今度こそ正確に、全て
「は、はは……」
膝から崩れ落ちた男の口は、震えながら吊り上がっていき……力無く空気が漏れ出すのを止めようとはしなかった。
もう彼には、そんな気力がなかったのだ。
「は、ハハははアははHあはははハはははは……アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!」
ただ狂ったような笑い声が、暗い室内に木霊した。