転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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とりあえずこの話は吐き出しておこうと思いまして。
たまりに溜まった感想返信は、今話が終わってからのんびりまったり返していきます。

また、今回の主人公の言動は、かなり賛否両論あると思いますが、是非とも『最後まで』読んでいただければなと思います。


――――――――

髑髏の火炎竜(ピクシブ名『D×3』)様から前話の挿絵とエンドカードを頂きました!
ありがとうございます!!

原作では、ヒロタの心に付け込み、勝利の代償としてその魂の所有権を奪う……そして自身は宇宙船から一歩も外にでないまま、操った地球人で計画を進める様は、まさに悪魔のような星人でしたが、その狡猾さが、手前に伸ばした右手とは裏腹に、後ろ手に隠されたもう一方という構図からにじみ出ていますね……!

それとは打って変わってコミカルなエンドカード……かわいいのはズルいww
風船爆弾になってるセンスよ……!
この時期、気候で体調が崩れやすい作者にとっても、低気圧はとても嫌いな言葉です。

皆様もお体にお気をつけ下さい。


盗まれなかったウルトラアイ

山中に、未確認物体が降下したとの目撃情報が入った。

 

パトロール中のポインターではアマギが無線に怒鳴っている。

 

「何をぼやぼやしてるんだ! 落下地点くらい確認できないのか!」

「防衛基地のレーダーには、何千という怪事件がキャッチされているんですよ!」

 

無線の相手はソガだ。

 

「だから、コンピュータがあるんだろう! お前みたいなウスノロが、よくもウルトラ警備隊員になれたもんだ……!」

「おいアマギ、いいかげんにしろ。我々は、警察から連絡を頼りに探そう」

 

仕方ないなと苦笑いするフルハシがアマギを止めた。

珍しく感情的な後輩たちを見て、まだまだ青いな……とでも言いたげだ。

しかし、これ幸いと尻馬にのるソガ。

 

「そうしていただきたいですね、ウスノロの僕じゃ、その未確認飛行物体とやらは……」

「うるさい!」

 

乱暴に通信を切ったアマギ。

怒り心頭だ。

 

「奴と話していると、アタマにくる!」

 

憤懣やるかたないアマギを、フフフと宥めるフルハシがアクセルを踏む。

ポインターは月の光を頼りに、落下地点へと急いだ。

 

 

―――――――――――――――――

 

 

オレは今、とても不機嫌だ。

別にアマギと喧嘩したからじゃない。

むしろその前からイライラしてたから、彼のしょうもない嫌みを受け流せずに、ああなったと言える。

アマギには悪い事をしたと思うが、人間なんだからこればっかりは仕方ない。

 

そういえば本編でも、この時のソガは珍しく投げやりというか、卑屈になっていて、アマギと同じような口論をしていたような気がするな。

 

あっちは多分、致し方ない事とはいえヒロタを殺してしまった事がかなりショックだったのだろう。

それが後を引いて、あんな感じになったと言うのがオレの推測だ。

 

ところが、こっちの世界じゃ全員は救えなかったとはいえ、少なくともヒロタはピンピンしてるので、オレ的に及第点だったと思ってる。

じゃあなんでこんなにカリカリしてるかと言うと……

 

今度の事件が、俺の大っ嫌いな話だからだ。

 

地球を惑星間弾道ミサイルで破壊することにしたマゼラン星は、工作員として一人の少女を送り込んでくる。

彼女の名はマヤ。

その使命は最大の障害たるセブンを妨害するために、変身アイテムであるウルトラアイを盗む事。

 

今まで、ピット星人やゴドラ星人にも奪われてたし、あまつさえ雪の中にポトリなんて事までやらかしてるので、今更『盗まれたウルトラアイ』も何もないのだが……とにかくダンはまたしても変身できなくなり窮地に陥る。

 

しかし、マヤは仲間が助けに来てくれると信じていたが、マゼラン星からキャッチした通信は『迎えにはいけない』という、実質的な死刑宣告だった。母星の裏切りをダンから聞かされ動揺するマヤ。

お優しいダンは、彼女に「この星で共に生きよう」とまで告げて説得する。

 

彼の言葉に改心したのかは分からないが、マヤはウルトラアイをダンの顔に装着し……

飛び立つセブン。しかし、マヤは失意の内に自決し、地球を救ったセブンがかえってくると、彼女のネックレスだけが残されていた……

 

 

という感じ。

 

 

……ふざけんな。

 

いやね、怪獣が出なくて地味とか、後味が悪いとかそういう事ではなくてね……!

むしろ、ウルトラセブンという作品において、このエピソードがあるからこそ世界観に深みが出ると言うか、今となっては予算不足によって生み出された筈の話は、後世で評価されるに足る、作品に必要な回だったというのは分かる。

 

でも、嫌いだ。

 

何が嫌いって、マヤ……というかマゼラン星人が嫌いなんだよオレは!!

 

狂った星だから破壊しますって……おい、ふざけんな。

 

そんでもって、マヤもマヤだよ。騙されて利用されたとかなら分かるが……彼女は自分の行動が地球にどういう結果を齎すのかをきちんと理解した上で来たのだ。

騙されていたのは、その破壊対象に自身が含まれるか否かという点だけで……実質的に、今までの敵と何ら変わらないのである。

 

そりゃあ、彼女は可憐な少女だ。母星に裏切られて可哀そうだろう。……でも、自らの意志で地球を侵略どころか破壊しにやってきた工作員には違いないのだ!

 

それを一体、なにを悲劇のヒロイン面しとんねんお前、という話。

 

しかも自分は仲間が助けてくれるから大丈夫と思っていたら、裏切られたので任務放棄しますとか……工作員としても下の下じゃないか!

そんなブレブレの覚悟で、よくもまあ他所の星を破壊しようなんて言えたもんだな!?

自分本位にも程がある。

 

 

防衛軍基地と殉じるつもりだったゴドラ星人とか見習ってどうぞ。いや困るけど。

 

 

そしてなにより一番許せないのはマゼラン星だ。

 

母星の為にと使命を果たした仲間を見捨てる時点でもう宇宙のゴミなんだが、送り込んだ工作員がよりによってこの使命感ガバガバのマヤとか……舐めてんのか?

それならそれで、最後まで「待っていろ」と嘘を吐き通すとかあっただろ。

 

とは言え、ペダン星並の優秀なスパイを選ばれてたら今ごろ地球は木っ端微塵なので、またしてもこっちが困るだけなんだけどさ。

 

別に、これまでの侵略者の肩を持つ訳ではないが、寿命が限界とか、物資が無いとか……彼らの生存や利益に関わるそれなりの理由があった。

ところがマゼラン星は、狂った星はただ破壊するだけと来たもんだ。 

 

ギエロン星の代わりに、R1号ぶち込んでやろうかと、本気で悩んだくらいだぞ。

まあ、決めたのはどうせ上層部連中で、他の住民にまで罪は無いんだろうけども。

 

とかくマゼラン星に対しては、マヤを切り捨てた事も含めて、セブンも相当にキレていたんじゃないかと思う。

なんせ、セブンが機械をいじくったミサイルの軌道は……180度回頭するのだ。

 

あれはあくまで演出上の都合であって、どこかの恒星に向けただけなのかもしれないが……せめてもの意趣返しとしてそのまま送り返した……という可能性が無いとは言い切れない。

 

どうせ自分達の兵器を撃ち落とせなくて滅ぶとか、そんなマヌケな事はないだろうが……少なくとも作戦が失敗した事は分かるだろう。

 

お前たちの悪辣な裏切りの結果が返ってきたのだ、自分達でなんとかしろ。というメッセージ……というのはオレにとって都合のいい妄想であろうか。

 

 

挙句に帰ってきたらマヤは自決してましたとか……胸糞悪いにも程がある。

 

「何故、他の星ででも生きようとしなかったんだ……僕だって、同じ宇宙人じゃないか」

 

彼にここまで言わしめた罪は重い。ダンのそれはそれは悲しそうな声よ……

どうしてこんな奴らの為に、優しいダンが傷つかなきゃいけないんだ!

 

 

 

あーあ、本当にムカムカする。

 

何が一番気分が悪いって……

 

 

オレのこれからしようとしている事も……あまりダンには顔向け出来ない事のような気がするからさ。

 

何をするかって? 

決まってる。

そんなの……ひとつしかないだろ。

 

オレは、操縦桿を握る指に力を込めた。

 

 

―――――――――――――――――

 

フルハシがハンドルを握るポインター。

その向こうから走ってくるダンプカーとすれ違う。

警備隊の優れた動体視力が、ダンプの運転席に座った人物を捉えた。

 

「おい、今の……女に見えなかったか」

「ああ、イカす女の子だった……」

「チクショー、ダンプなんて運転しやがって……ん?」

 

しばらくいくと、ライトが山道に倒れている男を照らし出す。

 

「おい、どうしたんだ!?」

「しっかりしろ!」

「…光…の中……、女が…」

 

重傷を負っている男は、それだけ言い残しこと切れる。

訝し気に周囲を見渡すフルハシとアマギ。

やがてフルハシの指さした先では、高熱で焼かれ濛々と水蒸気を上げる草地。

 

「猛烈な噴射の跡だ」

「これは只事じゃない。さっきの発光体と何か……」

「すると、あの女が……行こう!」

 

ポインターに戻ったアマギは、無線でダンを呼び出す。

 

「ポインター1号よりポインター2号へ」

「はい、こちらポインター2号」

「若い女が運転するダンプが山を下った。検問を頼む!」

「若い女ですね。了解!」

 

タイミングよく、ダンの目の前にダンプカーが迫ってくる。

車道に飛び出し、大きく腕を振って止めようとするダン。

 

しかし、ダンプカーはそれを意に介さず、ダンを轢くのも辞さぬ勢いで通過していく。

 

間一髪でダンプを躱したダンはポインターに乗り込むと、ダンプの追跡を開始する。

 

 

すると、上空から謎の発光体が現われ、ダンのポインターに閃光を浴びせかけるではないか!

目の眩んだダンはハンドルを切り損ね、崖下に落下していくポインター……

 

背後でポインターが落下した事を悟ったダンプが停止し、運転手の少女は降車しようとドアを開け……

 

 

その時!

キーンと耳をつんざくエンジン音が響いたかと思うと、丸い翼に月明かりを反射させ、ホーク3号が夜の森に姿を現した!

 

不意の迎撃に慌てて高度を取り、逃げ去ろうとする発光体。

しかし、ホークはUFOを追う事はせず、まっしぐらに突き進んだかと思うと……

 

下部の爆弾槽を開き、一粒の鉄塊を放り投げた。

紡錘形の黒い塊は、重力に引かれていき……

 

凄まじい勢いでダンプの荷台を突き破ると、地表で思い切り弾ぜた!

数トンの車が、紙切れのように吹き飛び、ゴロゴロと転がっていく。

横倒しになった大型車は、やがて燃料に引火し、大爆発を引き起こした!

 

運転席が丁度下敷きになっており、とても脱出する暇は無かっただろう。

 

黄色いダンプだった残骸が、轟々と燃え上がり、森の木々を照らし上げる。

 

 

「ふん……ざまあみろ……」

 

3号の爆撃でマヤを抹殺したオレは、知らず知らず強張っていた体をシートに沈めた。

 

これが今回のやるべきことだ。

ダンとマヤが接触する前にマヤを……殺す。

 

あのダンが誠心誠意説得しても、自殺するんだ。

ただでさえオレは、彼女に対して好感を抱いていないのに、心にもない説得で死ぬのを止められるわけもなし。無理して止めてやる義理もなし。

ダンにすら出来ない事を、どうしてオレにやれる道理がある?

 

どうせ死ぬなら、どのタイミングで殺したって文句を言われる筋合いはないというわけさ。

むしろこうしてやった方が、彼女の為ですらある。

 

このまま行けば、彼女は故郷の恥ずべき裏切り者だが……敵に殺されたなら、使命に殉じた悲劇の英雄だ。

身内の誰かを人質に取られていたとか、そういう事情があったとしても、これなら悪いようにはされまいよ。

 

彼女と出会い、その境遇を知った時点でダンは心を痛めるだろうが……出会う前に死んでしまえば、単なる侵略者の女。

 

ダンは彼女を救えなかったと後悔する事もなく、マヤは裏切られた事実すら知らず、普通に作戦が失敗したので地球にミサイルは飛んでこない。

 

誰も傷つく事の無い、完璧な作戦だ。

 

オレは、ダンの心の平穏の為なら、どんな事だってやってやるさ。

彼の思う程、心の綺麗な人間じゃないんでね……

 

その事実が少しばかり、心を苛むが……これがオレの生きる意味なのだから。

 

 

 

民間車両に向けて、過剰な程の破壊力を叩き込んだホークは、ぐるぐると上空を旋回しながら、発光体の行方を探っていたが、やがて諦めたのか基地の方へと飛び去っていった……

 

 

木々の合間から、銀色の翼を見送る影……

 

 

森の中で黒く捩じれた鉄の塊が、炎で照らされた星空を見上げていた。

 

―――――――――――――――――

 

 

メディカルセンターから治療を終えたダンが出てくる。

 

「ダン、すまん。俺がモタモタしていたために怪我をさせてしまって……アマギがあんまりポンポン言うもんだから、すっかり頭に来てしまったんだ」

「いやぁ……うっかりしていた僕が悪いんです。皆に心配かけて……」

 

今回はダンが狙いだったから仕方ないんだけどね……

だが、その企みも打ち砕かれた!

なんて気分がいいのだろうか!

 

「じゃあ、気をつけてな……」

「はい……」

 

ところがダンは渋い顔で、胸元をさするばかり……

待てよ? なんでお前そんなソワソワしてんの?

 

……いやいや、お前、まさか!?




というわけで37話「盗まれたウルトラアイ」でした。


もうね、今回の話は、なんといっても見敵必殺!
マヤが何かする前に退場いただくという事で……解決!

いやぁ平和だなぁ!!

え? なんか忘れてるって?
またまた、そんな。

次回の更新は午前0時です。

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