転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
軌道上に浮かぶステーションV2。
通信室ではとある怪電波を受信する。
それは地球から、宇宙へと発されていた。
「奇妙な電波です」
「マゼラン星へ、マゼラン星へ……第一任務完了しました。迎えの円盤を送ってください」
通信機からは女の声が聞こえて来るではないか。
「マゼラン星雲……?」
「任務を完了したとか言っていましたが、いったい何のことでしょう?」
「……ひとまず地上基地に報告だ」
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作戦室では、V2から送られた怪電波を分析していた。
「発信源は、K地区のプラネタリウムセンター。おそらく、もういないだろう。見たとおり娯楽場が多い。隠れ場にはもってこいの地域だ」
「ええ……、ボウリング場にジャズ喫茶、地下に潜ればアングラバー……」
「こいつは若い子ですね。ダンプに乗っていた娘も17、8でした!」
フルハシが怪電波の発信源と、発光体と関係のありそうな少女を結びつける。
しかし、ダンプはソガが爆撃したはずだ。
もしや寸前で脱出していたのか……?
「完了しました。これでK地区から発信される電波という電波は、漏らさずキャッチできる筈です」
「よし、あとは網にいつかかるか。その時を逃さないことだ……」
三日が立ち……その間、怪電波の発信は途絶えていた……
ついに四日めの午前2時。
レーダーが怪電波をキャッチする。
「アマギ、解読器の用意を」
「隊長……発信源は、スナックノアです!」
早速、発信源へ向かう急行する、フルハシとダン。
「アマギ、どうだ?」
「確かに、マゼラン星に向けられてます」
「通信の内容は?」
「迎エハ、マダカ……迎エハ、マダカ!」
「それだけか?」
「その繰り返しです」
「うむ……迎えはまだ、か……」
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スナックノアでは、大勢の若者が、無軌道に踊り狂っていた。
グループ・サウンズのギターに合わせ、ただ目的も無くゆらゆらと揺れる人、人、人……
煙草の煙が充満し、うっすらと霞がかったような部屋で、酒と、娯楽、踊りに興じる退廃的な地球人達。
後から合流したソガとアマギは、ブルーグレーの制服に身を包んだフルハシが、所在なさげに立っているのを見つけて合流する。
この狂った空間の中で、彼一人だけが職務を全うしようとする様は、非常に悪目立ちし、浮いていた。
だが、そんな非日常すらも、若者たちの目には映らない。
ここではフルハシ達こそがはみ出し者なのだ。
その中へ私服で紛れ込んだダンは、テーブルに座りつつ、鋭い眼光で店内を見渡す。
彼の視線の先には、もう一人の異物。
白いワンピースに身を包み、下手糞なゴーゴーを踊る少女の姿があった。
リズムに乗り切れず、さりとて周囲に合わせる気が端から無い立ち振る舞い。
ケタケタと笑い合うアベックの群れの中で、たった一人彼女の顔だけが、ぼんやりと虚空を見つめながら、ただ機械的なステップを踏んでいた。
やがて、ダンは店の中心で浮いている少女に、テレパシーで呼びかけた。
「聞こえるか、僕がわかるか?」
「だれ……? 地球人ならテレパシーは使えないはずよ。わかったわ……、おまえは、セブンね……!」
語り掛けられハッとし、しばし辺りを見渡すも、セブンが接触してきたと分かった途端、平然と踊り続ける少女。
「そうだ、お前は何者だ?」
「私はミーヤ。それ以上を教える義理があるかしら?」
「ウルトラアイをなぜ盗った?」
「それが私の任務だから……」
「なに!」
そう語るミーヤのテレパシーは、非常に平坦な物で、感情の起伏が感じられない。
自身の行動に対して、なんら感慨を抱いていないようだ。
「地球を侵略するつもりなのか?」
「こんな狂った星を……? 見てご覧なさいこんな星、侵略する価値があると思って?」
いままで無表情で体を揺らしていた少女が、初めて歯を出して笑う。
心底可笑しいとでも言うように、腕を振り上げ、ステップを踏みながら、嗤う。
「迎えはまだか……迎えはまだか……」
しかし、ダンが電波の内容でカマを掛けると、一瞬身体が止まる、ミーヤ。
テレパシーで繋がっている彼女の脳裏で、僅かに思い描かれる発信源。
タカタン、タカタン、タッタ、タタタンタッタ、タカタン。
リズムボックスの出す音源に混じって、符号が巧妙に隠されているのをダンの聴覚が捉える!
しかし、ダンの気がリズムボックスへ向いた一瞬の隙をついて、ミーヤは姿を消していた……
ダンの報告を聞いたソガが照明を撃ち落とし、真っ暗闇になったスナックから、リズムボックスが押収されたのだった。
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作戦室で押収したリズムボックスを解体し分析するアマギ。
「このリズム……」
「これを繰り返し、マゼラン星に送るんだ!」
タカタン、タカタン、タッタ、タタタンタッタ、タカタン。
「返信が入りました!」
「アマギ!」
「恒星間弾道弾、既ニ発射セリ。迎エニ及ブ時間ナク……」
翻訳機から打ち出されたテープをアマギが読み上げると、警備隊の表情がサッと変わる。
「恒星間弾道弾というと……隊長、マゼラン星が地球にミサイルを!」
「それじゃあの娘が?」
「恐らく何か、特殊な任務を帯びてやってきたのだろう……」
「迎えには来ないって、どういう意味なの?」
「裏切られたんだよ……、自分の星に……」
複雑な表情で俯き、ぼそりと呟くダン。
「隊長、計算の結果、ミサイルの地球到達は、午前零時ちょうど!」
「なにッ!?」
皆の視線が時計に集中する。現在午後5時。
「あと7時間か……」
その時、作戦室の非常ブザーがけたたましく鳴り響く。
「こちらステーションV2.巨大なミサイルが宇宙より接近中……巨大なミサイルが宇宙より接近中!」