転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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他人の星(Ⅳ)

いつかの公園。

月明かりの下で、ブルーグレーの戦衣を纏った男と、闇を塗り固めたような影法師が、深い深い地の底まで穿たれた巨大な溝を間に挟んで、正面から対峙していた。

 

「何をしているんだ! この穴は何だ!?」

「ペガッサから運んできた爆弾ダ。まもなく地球の中心に届くダロウ……そして地球を粉砕するんダ……」

「何のために?」

「私たちの愛するペガッサ市ヲ、守る為ダ!」

 

影法師は、自らがこよなく愛する故郷の為に、とある密命を帯びてやって来た宇宙人だった。

……だが、彼は事故で病床にあったが故に、たった一つの、しかして致命的なまでに残酷な信実を、まだ知らないのだ。

そんな事をする必要は、もうどこにもないというのに……

 

「ペガッサは……破壊したよ……」

 

影法師が余りにも痛ましくて、告げる男は、顔を背けずにはいられなかった。

その表情には、両者を救えなかったという無念さが、これでもかと張り付いている。

 

「うそダ! 地球人の貧弱な科学デ、あの強大な宇宙都市を……うそダッ!!」

「地球が無事なのは、ペガッサが破壊された何よりの証拠じゃないか!」

「私たちの計算デハ、地球がペガッサと衝突するまでニ、まだ充分な時間がアル……」

「僕は見たんだ……ペガッサの最期を……」

 

男はつい先程まで、宇宙で必死に呼びかけていたのだから、こんな悪趣味な嘘を吐く必要も無かったし、口にしたくも無かった。

むしろ……嘘であったなら、どんなに良かったか!

 

「なんということをするんダ!? ペガッサは宇宙が生んだ最高の科学なんダ。私はとっくに地球を破壊する準備を終えてイタ。アンヌの部屋からだって、この爆弾を地球の中心にぶちこむことができたんダ! それをしなかったのは最後の最後マデ、私たちの科学の力がこの事態を何とかしようと……」

 

信じていたのに!!

努めて冷静に、穏やかに語っていた影法師は、そう最後まで言い切る事が出来なかった。

ふつふつと混み上がってきた憎悪と怒りが、津波のように溢れて、彼の最後の理性を真っ黒に塗りつぶしてしまったから。

 

「……復讐シテヤルッ!!」

 

振り上げた両の拳を握りしめ、感情を激発させる影法師。

 

本当はもうそんな事をしなくても良いのに、彼は爆弾を止めるという選択肢を完全に捨て去った。

手の中にあったコントロール装置を、怒りに任せて粉々に握り潰したのだ。

小さくて繊細なパーツが、指の間からハラハラと零れ落ちる。

重大な使命を背負った英雄が、ただ一人の復讐鬼へと成り下がった瞬間だった。

今の彼には、個人的な恨みを晴らす事しか頭になく……

破滅はもう、止まらない。

 

しかし、それでも諦めない者がいた。

 

「ヤメロ!」

 

爆弾を追いかけようと、穴へ身を乗り出す男に向けて、腕を突き出し短い制止をかける影法師。

 

「……無駄ダ」

 

ただの地球人には、地底爆弾を止める事などもはや不可能。

僅かな時間とは言え、確かな友誼を結んだ眼前の男には、絶望のまま奈落の底へ身を投げるのではなく……ただ破滅の道連れとなって貰いたかった。

影にはもう、一欠片の感傷に浸るくらいしか、やることが無かったからである。

 

……だが対する男には、爆弾を止める為に、残された最後の手段があったのだ!

 

「デュワッ!」

 

激しい閃光が辺りへ飛び散り、男の体を炎のように包み込む。

 

眩い輝きの中から、真っ赤な太陽の化身が現れた時、影は心底驚いた。

地球人だと思って友情を育んだ相手が実は、宇宙正義を自称し、あまつさえそれを体現しようとする星の出身だったと、この時はじめて悟ったからだ。

 

その時彼が抱いた感情は、筆舌に尽くしがたい。

 

激情に促されるまま、すかさずプラズマディスペンサを引き抜くと、最大出力でトリガーを引く。

 

起動した装置が瞬時に空気中の水分を取り込み、それを凝縮したプラズマ光球として解き放つ。

 

分厚い岩石の壁をも容易く破壊する威力のエネルギー弾がマシンガンの如く連写されるが、それを左右にステップして躱す真紅の戦士。

 

一刻も早く爆弾を解除するために、黒が持つ危険な武器をなんとかしようと、頭頂部にある実体剣を投げ放つ赤。

 

夜の闇を切り裂いて、銀の煌めきが月明かりを反射する。

 

甲高い硬質な音を立てて、工作員の持つプラズマ銃を、その右手から叩き落とした宇宙ブーメランだったが、勢いが付きすぎていた為か、弾みで軌道が変わり、影法師の頭頂部を掠めてしまう。

 

誓って言うが、この時の赤には、相手を傷つける意思は全くなかった。ただ、地球の破壊を前にした焦りによって、念動力によるコントロールが多少甘くなっていたのかもしれない。

 

そうでなければ、あの必殺武器は、黒く柔らかい外套膜を切り裂くだけに留まらず、その奥に隠された堅い頭蓋殻に弾かれる事もなく、それすらをも、悉く断ち割っていたに違いないからだ。

 

頭部の傷を掌で庇いながら、一目散に走り去る哀れな黒。

彼の背中が、夜に溶けるかのように、遠ざかっていく。

 

図らずも友人を傷つけてしまった正義の使者は、影法師を追いかけようと一歩を踏み出すも、思い留まり、潜航する爆弾を求めて、深い地の底へと落ちて行った……

 

 

 

―――――――――――

 

誰かが俺を呼ぶ声がする。

 

「……ガ……きろ……」

 

水底じからズルズルと引き上げられていく感覚。

まるで錨を巻き上げるようにゆっくりと、覚醒していく。

ごぼりと浮き上がった気泡が弾けるが如く、ソガの瞳が見開かれた。

 

「……ハッ! 俺は……? どこだ……?」

「フム、多少の意識の混濁はアルガ、会話に支障は無さそうだナ」

「誰だ!?」

 

芝生に寝転がされた態勢から、声のする方を向くと、そこには奇妙な生物が立っていた。

黒く、のっぺりとした鼻先から、左右に飛び出した鋭い目。

闇を集めて固めたのかと錯覚するほどに、つるりとしなやかな肉体を、白い貝殻が覆いつくし、まるでモコモコとしたセーターを着こんでいるかのようだ。

 

目を離した瞬間に、周囲の暗がりに溶け込んでしまいそうなその男を……俺はよくよく知っている……

 

「お、お前……ダーク!? ダークじゃないか!? 今までどこに居たんだ! 心配してたんだぞ!」

「キミに心配されるほど、落ちぶれちゃ居ないガ……まあ、それなりにやってイル」

「そうか……良かった……」

 

ホッと息をつくソガ。そうしてひと心地ついてから、自身が意識を失う直前の事を思い出し、胸元もとをぺたぺたと押さえる。

 

「き、傷が無い……! そうか、お前が助けてくれたのか!?」

「我々ペガッサの医療水準であれバ、あの程度を再生するのは造作もナイ。例え四肢が吹き飛んでも、元通りにする事だって出来るのサ。……もっとも、現状の設備デハ、完全にとはいかないガネ……数ヶ月は皮膚が引き攣れタリ、痒みが取れない筈ダ。君たちが元通りに動きたいなら、人工細胞が本来の組織と馴染むまで、リハビリを欠かさない事ダナ」

「充分すぎるくらいだよ! 命の恩人だ。ありがとう、ダーク! ……君たち?」

 

ダークの言葉尻に、引っかかるものを覚えたソガは、周囲を見渡すと、夜の空き地には、自分と、目の前の友人しか居ない事に気づいた。

 

「そうだ、ダンとマヤ……あのマゼラン星人は?」

「ダンはミサイルを阻止しに行ったヨ。そして……キミを撃った女は、ワタシが捕らえた。ダークゾーンの中で治療中だ。手荒な手段を使ったのデネ」

「そうか……じゃあ事件は落着か……」

「何を言ってイル? まだ午前零時を過ぎたわけではナイ」

「え? あ、そうなの……!? いやあ、じゃあ随分早い治療だったんだな……とにかく、地上からやれることは無いよ。俺は仲間を信じているからな。ケセラセラだ」

「なんと呑気ナ……」

 

まるで全て終わったかのように朗らかに話すソガの様子に、ダークはまるで頭が痛いとでもいう風に首を振った。

とはいえ、彼自身も地球が破壊される運命は回避されたであろう事は分かっていたので、それ以上言及しようとはしなかったが。

 

「……そうだ、ダーク。この後、俺の部屋に来いよ! 積もる話がいっぱいあるんだ! あの時は喧嘩別れみたいになってしまったけど……お互いに焦る事も無くなった今なら、チョコレートでも食べつつ、ゆっくりと……」

 

「トゥエルド・ポ・セクテュム」

「とぅえ……ぽ? なんだって?」

トゥエルド・ポ・セクテュム……ペガッサの言葉デ、『すまない、それは、できない』ダ」

「な、なんで……?」

「なぜダト……? これが誰の言葉カ、覚えていないノカ?」

「誰の……?」

 

『すまない、それは、できない』謝罪と、拒絶の言葉。

彼の顔と照らし合わせて、ソガが記憶をまさぐると、どこかで聞いたような気もする。

冷たい宇宙の闇の中で、通信機の向こうから聞こえる掠れた声で……

 

「……まさか!」

「そう、我々の愛する故郷を破壊シタ、憎き部隊を率いた男ノ……二つの種族の命運ヲ、たった一人でその肩に背負いこんだ偉大な男の……言葉ダ」

「キリヤマ隊長……」

 

ソガは確かにあの時、爆破を中止してくれというペガッサからの要請を、彼らの敬愛する上官が、喉の奥から絞り出すように断ったのを、通信機越しに聞いていた。

 

「なんで、お前がそれを……」

「あの時、君達の隊長ト、我らの市長のごくごく短い対談ハ、貴重なエネルギーを割いてマデ、市内全域に同時放送されていたのダ……通信を切ッタ後、市長は残りの市民へ向ケテ、脱出先を地球にするよう演説シ……その最後にこう言ったソウダ。『地球はきっと、美しい星です』……と」

「つまり……」

「全て同胞達カラ聞いたヨ……」

「そうか……」

 

地球に流れ着いた生き残りのペガッサ星人達と合流したのか。

 

「……良かった。お前が、ひとりぼっちにならなくて……それだけが、気がかりだったんだ」

「それなりにやってイルと、言ったダロウ……君たちの勧告を聞いてからハ、復旧を諦めてエネルギーを全て脱出に回したカラ、随分と多くの市民が助かったのは間違いナイ。……それにあの水! ワタシの助言があったとは言え、よくも短時間にあれだけの量をかき集めたものダ。アレを見て、君達の本気を疑う者は居なかっタ。あの水が無かったら、同胞たちの臨時コロニーの立ち上げは、より過酷デ、困難なものになっていたダロウ……皆に変わって、ワタシから、君に礼を言わせて貰うヨ」

「いや、いいんだ……というか、それなら……」

 

言ってくれれば、もっと援助が出来たのに。

そう言おうとして、彼の突き出した掌が、俺の言葉を遮った。

 

「とはいえ、全ての住民が脱出できたわけではナイ……市長をはじめ、多くの仲間ガ、若い世代をより多く送り出すタメニ、滅亡する街に残る事を選択シタ……出来るだけ家族ごと避難させようとしたらしいガ……残念ながら離れ離れになった者も多い。キミたち地球人ハ、同胞の恩人であると同時に、やはり故郷の仇なのダ! ……理性デハ分かってイル。あの時、地球がした事は、緊急的かつ正当な防衛行為でアッテ……そもそもの遠因は、他星の領域を不用心に航行した我々ト、理不尽な攻撃を仕掛けてきたカナン星にあるという事ハ。我々にキミ達を非難する資格はナイという事モ。……しかしワタシは、どうしてもキミの差し出した手ヲ、再び握る気にはなれそうもナイ……ワタシ自身の狭量さ故にダ……だからどうか気にしないでクレ。しかし、分かって欲シイ……」

「……」

 

頭で分かっていても、感情では納得できない……なるほど。

どこまで行っても、彼らと俺達の関係は、都市の破壊者と難民であるという事実は変わらない。

 

「キミたち地球人は、表情筋の数が豊かデ、考えている事がすぐに分かる。外から内心の変化を観測できるというのは愉快ダナ……」

「ダーク……」

「そもそも、キミ達以外の地球人ヲ、あまり信用していないという点は、以前から変わらナイ。ペガッサの難民が、助けを求めてその存在を明らかにした所デ、地球人が受け入れてくれるとはどうしても思えないんダ。人間にとって、我々は所詮、得体の知れない異邦人でしかナク……どうせ恐怖と侮蔑の対象となるダケダ。そうならないとは言わせないゾ。原住民や難民といった弱者への迫害は、キミ達の歴史が証明してイル。我々も密かに情報を集めて、慎重に検討した上でそう判断したのダ……正直言って、こうして個人的に地球人と接触するのも、仲間内での取り決めに抵触しかけてイル」

 

まあそれは……そうだろうな。俺だって自分が同じ立場だったら、はいそうですかと仲良く出来るかどうか分からない。

 

「でも、じゃあそのお前が、どうして地球人の味方をしてくれたんだ?」

「……何か勘違いしているようだが、我々としてハ、侵略者に防衛軍が負けようガ、地球人が何人死のうガまったく興味はナイ。この星を我が物顔で占領している種族が、すげ変わるだけダ。なんなら、他の宇宙人の方が地球人よりも話が分かる可能性がある分、種族によっては歓迎すらするダロウ。……だが、地球を破壊するとなったら話は別だ。この星には、大切な同胞達が大勢暮らしているんダ。地球は決して、人間だけの物では無イ。キミ達地球人は、そういう意識が特に希薄だしナ……今回の事ハ、あくまで自分達の生活を守ったに過ぎナイ」

 

俺の質問にため息を吐きながら、ダークが言う。

つまるところ……

 

「単に利害の一致か……」

「そうダ、そのついでに人命を救助しただけデ……まあ、命の恩人という点デハ、キミにも借りがあるシナ……」

「お、なんだなんだツンデレか~?」

「ツンデレ? ツンデレとはナンダ?」

「……あー……なんというか、気高さ故に、他者への慈愛の心を審らかに出来ない……複雑な立場の者の総称だ」

「あまりに用途が限定的過ぎやしないカ? 地球は状態を示す言語ガ多すぎるゾ」

「桃が川を下る擬音があるくらいだからこれくらい普通……というかツンデレの使用頻度は高いぞ」

「そうなのか……今度、翻訳機に登録しておくとシヨウ」

 

マズイ、彼の辞書に余計な語彙を増やしてしまった……

 

「とはいえ、今のところは地球人が外敵に対して防衛力を行使する事ヲ、邪魔したりはしないサ。だが……今回のキミの振る舞いは……拙かったナ」

「なんだって……?」

「ハッキリ言おうカ? 率直に言って……()()()()よ。」

「失望しただと……?」

 

なんだ、何かダークの癪に障るような事をしたか?

 

「ワタシはこれでも……ソガ、キミの事はそれなりに買っていたつもりダ。地球人にしてハ、人間以外の者に対しても、思いやりと誠実さを持って対話する事が出来る稀有な存在ダト。キミが、ペガッサを救う為に随分ト心を砕いてくれた事ハ……ささやかな希望ダッタ。地球人が本当にアンヌやキミのような者達ばかりなら……いつかペガッサ市民が正体を隠しながら、日陰の中で身を縮込める生活が終わるかも知れないト……だが蓋を開けてみれば、その君ですら、宇宙人と見れば即座に爆撃する冷酷な軍人ダッタ」

「……見ていたのか」

「ああ、見ていたとも。今回だけではナイ。キミが、キュラソーの捜査官を歓待するトコロも、ワイルド星の外交官から謝罪を受け入れるトコロも、怒れるアンノンの眼前に身を投げ出して必死に懇願するところも! ……そして、あの哀れな生き物の墓標に、ダンと二人で平和の祈りと懺悔を捧げるところもずっと見てイタ! それが……どうして、地球に足を踏み入れた宇宙人を、話も聞かずに殺してしまったんだ……? キミは知らないだろうが、キミが戦闘機で襲った者と、さっきの女は別人ダ」

「それは……」

 

なるほどな、確かに何も知らない者から見れば、オレは確かにただの不法入国者を問答無用で殺したわけだ。

マヤがマゼラン星のスパイで、地球を破壊する計画の為に来たというのは、あくまで視聴者だったオレだからこそ知りえる情報なわけで……

そりゃあ、ペガッサの人々も姿を現さないわけだよ。

不法入国がバレたら皆殺しにされると恐れているんだ。

 

これはちょっと……我ながら下手をうったな……

なによりも、知らない内に彼の信頼を裏切ってしまったというのが……辛い。

 

「単なる旅行者ではないとなぜ言い切れる? キミ達警備隊が追っていた発光体から、逃げていたかもしれナイ。そもそも、マゼラン星のミサイル攻撃は、同胞を殺された復讐だと主張されたら、どうするつもりだったんダ?」

「……ダンプの持ち主を襲った奴だと思ったから……仕方なかったんだ。というか、実際にスパイだったわけだし」

「苦しいナ。第一……工作員ならば問答無用で殺傷するというナラバ……なぜ、ワタシを殺さナイ?」

「……え?」

「彼女らと同一視されるのは甚だ不本意ダガ……地球を破壊しようとした工作員というなら、ワタシも同罪ダ。なんなら、直接に爆弾を撃ち込んだのはワタシなのだから、彼女らよりも罪は重い筈ダ」

「それは、でも……違う、お前はまず、俺達と友達になろうとした! 最初に平和的な解決法を提案してきたじゃないか!」

「彼女も、キミが爆弾を落としたカラ、その提案を出来なかっただけではないノカ……? なぜ彼女には友達になろうと声をかけてやらなかったんダ……?」

「うっ……」

 

思わず言葉に詰まる俺。

それはそうだ、なにせマヤはもう死んでしまった。

事情を聴取する事も、事実確認や弁解する機会を与える暇なく、俺が殺したのだ。

でも、こうするしか無かったんだよ。

彼女を野放しにしたら……

 

俺が手を汚しさえすれば、V2もダンも、救えると思ったんだよ……

 

何も言い返せず、ただ顔を伏せる。

するとどこからか、ざり……ざり……と、何かを擦り合わせるような音が聞こえて来た。

 

視線を上げると、ダークが腹を抱えて肩を揺すっているではないか。

どうやら、これが翻訳機を介さない、彼ら本来の笑い声らしい。

 

「いやはや、悪カッタ。少しばかり意地悪が過ぎたナ。だが、キミから言ってくれるのではないかと思っていたんダ。意趣返しという訳では無いが、ワタシも嘘を吐かれて思うところが無かったわけではないのダ」

「意趣返し……? 俺に?」

「そうだ、なぜマゼラン星の工作員にはあれほど悪辣に振舞えるキミが、ワタシに掌を返してすり寄ってきたノカ……当ててやろうか? キミは初めから、我々の目的……というか、人と成りを知っていたんじゃナイノカ?」

「……は?」

 

ダークはやっとこさ、ざりざりと笑うのをやめて、俺の目を真正面から覗き込んだ。

 

「キミは、この時代の人間デハ無いナ?」

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