転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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セブンは………

荒野を行くポインター。

運転手はソガ。

 

険しい顔で周囲を注意深く警戒しながらの運転が、決して信号無視や飛び出しを懸念しての安全運転ではない事は明らかだ。

 

もはや襲撃を確信していると言って良い程に、真剣な様子のソガへ、助手席のダンが遠慮がちに声をかける。

 

「あの……ソガ隊員……」

「なんだ?」

「止めて貰えませんか」

「なに!? 何か見つけたのか!?」

「いえ、ちょっとお話が……」

「ああそうか、アロンの事だろう?」

「それもありますが……」

 

口籠もるダンを置き去りにして、早合点したソガはハンドルを離さないまま、そのまま奧へと進んでいく。

 

「いいかダン。アロンが現れたら、俺が奴を引きつけるから、お前はポインターの通信機で応援を呼ぶ。これでいこう」

「えっ? いいえ、その役目は僕がやります」

「まあまあ、安心しろって! そのためにわざわざエレクトロガンを積んで来たんだから。アマギの報告書見たろ? アロンの皮膚が半分岩石だと言うなら、アレは効く……はずだ。なんせワイルド星人の隠れてた洞窟を吹き飛ばした実績があるしな。逃げ隠れしながら撃つのは俺の十八番だぜ?」

「……」

 

確かにソガ隊員の言う事にも一理あるが……

 

「何をそんなに焦っているんです? ソガ隊員」

「……焦ってる? 俺が?」

「ええ、僕からはそう見えます」

「なる程なぁ……そうか、焦ってるか……」

 

思っても見なかったという風に呟くソガだが、そう言われても仕方有るまい。

なにせ控え目にとはいえ、ダンが制止したにも関わらず、ポインターは未だに荒野を突き進んでいる。

普段の彼であれば、そうはならなかったはずだ。

 

「そうかも知れん。我々は前回の戦いで、セブンをろくに助けてやれなかったからな……」

「前回と言うと、あの嵐の夜?」

「そうだ」

 

ソガは、ガッツ星人がアロンを捨て駒にしてセブンの戦闘能力を測定している事を知っている。

 

原作においては、その戦闘は39話開始時点より前の段階で、既にあったものとして、ガッツ星人が記録映像を再生するという形で語られ、そこに警備隊の姿は一切ない。

 

だからこそ、そのアロンに対し、なるべく警備隊側の攻撃でダメージを稼ぐ事で、ガッツ星人のデータ収集を妨害出来ないかと画策していたのだ。

だが、蓋を開けてみれば想定以上の強敵だった。

 

よもや数カットしか出番の無かったマイナー怪獣が……いやむしろ、原作において活躍が全く描写されなかったからこそ、アロンがここまで厄介だとは知らなかったのである。

 

ミクラスの活躍とホークによる撃墜というプロセスを経て、内部からの巨大化という、ソガすらも見たことが無い方法で一匹目を倒した時には小躍りしていたものだが……二匹目が嵐の中で現れた際、ソガは最悪のパターンに思い当たってしまったのだ。

 

原作において示唆されたアロンとセブンの戦闘は、あれこそがカプセル怪獣やウルトラ警備隊の援護があった上での結果であり……セブン以外は、ガッツ星人にとっては取り沙汰するまでもない事柄として、映っていなかった(カットされた)だけなのではないか?

 

……つまり、今の状況こそが、()()()()()()()()()()()()なのではないか、という事に。

 

そして……

 

「結果的にセブンのワイドショットを使わせてしまった」

 

苦々しげな言葉を聞いて、今度はダンが思いがけない表情をする番だった。

 

「……それの、なにがいけなかったんでしょうか?」

「そりゃそうだろう。ありゃあセブンの一番の切り札だろうから、きっとエネルギー消費も一番デカいはずだ。大技ってのはな、そう何度も使えないから大技って言うんだぞ。それを気軽にポンポン撃たせる訳には、いかんだろうが」

「……はぁ」

「このままじゃメダルが取れないからって、クアドラフルだのトリプルルッツ……じゃないや。えっと……鉄棒で毎試合ごとに大車輪を披露しろって言われても困るだろ? そんなの出来てフルハシ先輩くらいのもんさ」

「……なるほど?」

 

なんだか分かったのか分からなかったのか判然としない顔で、ダンが首を傾げるが……

 

「ハッ! ブレーキ!」

 

鋭く叫びながら、ダッシュボードへ手を伸ばし、電磁バリアのスイッチを押すダン。

急ブレーキによる制動で、ハンドルへ強かに頭を打ち付けたソガの目の前で、地面がザックリと抉りとられていく。

 

そのまま進んでいれば、間違いなくお陀仏だ。

生唾を飲み込む二人の眼前で、明るい黄土色の砂丘がゆっくりと立ち上がったかと思うと……その表面の色がみるみるうちに濃くなっていき、カッと開いた瞼の下と嘴の中に、それぞれ真っ白な水晶体と、真っ赤な肉の色がチラリと見えて、それが紛れもない生命であるとようやく分かる。

 

白眼を剝いていた怪獣の眼窩の中で、石英の宝玉が裏返り、殺意と悪意の籠もった瞳がギョロリとこちらを見下ろした。

 

「野郎! 保護色で隠れてやがったのか!?」

『ガアアアアア!!』

 

なんと、道路脇の小高い丘だと思っていたのは、皮膚表面の構成分子をルービックキューブのように組み替えて、体色を欺瞞したアロンの頭部だったのだ!

カマキリのように鋭い鎌が、ポインター目掛けて振り下ろされる。

 

慌てて座席から転がり出た二人の後ろで、ポインターが真っ二つに断ち割られて爆発した。

アロンの豪力の前では、ポインターのバリアも装甲も、全く太刀打ちできないのだ。

 

例によって、微弱な電波障害が撒き散らされており、腕のビデオシーバーでは基地に繋がらない!

 

初手で連絡手段(ポインター)攻撃手段(EHガン)を一度に奪われたソガには、効きもしないウルトラガンを乱射しながら、空気を読んでこの場から大きく離れるように走り去る事だけだった。

それこそダンと、お互いの姿が見えなくなるくらいまで……

 

――――――――――――――――――

 

『デュワ!』

『ガアッ! ガアアアア!』

 

素早くセブンがエメリウム光線を放つも、全く効果が無い。それこそ、先程からアロンの目玉付近に目掛けてしきりに発射される、か細いウルトラガンの光条とまったく同じ。

 

両者の間には威力にして絶大な開きがあるというのに……この怪獣にとっては、どちらも牽制程度の痒みすら齎さないのだ!

 

いくら効きが悪いといっても、以前の個体に対しては羽を破壊するくらいの効果はあったはずなのに……驚愕に目を見開くセブンの前で、アロンの嘴の隙間から黄色い気体が漏れ出すのが見えた。

 

『デュ!!』

 

猛毒の硫黄ガスが来る!

そう思い距離をとったセブンであったが……開かれた嘴から噴射されたガスが、そこまで勢いのあるものでは無かった為に、思わず拍子抜けした。

 

以前はそれこそ横殴りの豪雨の中でも、まるで工業ブロワーのような力強さでセブンを押し返してきたものだ。

あの時はミクロ化していたとはいえ、セブンの飛行能力に打ち勝つ強さの噴射力というのは相当である。

しかし今回はどうだ、以前は束のような収束力だった黄色いガスも、先程までセブンが立っていた場所にですら、到達するころにはすっかり拡散してしまっている。

今度の個体は耐久性のかわりにガスの噴射が苦手なのか……いや、まて? 拡散!?

 

『デュワー!!』

 

念力で一帯に充満した黄色い霧を吹き飛ばしたセブンであったが、一足遅かった……ガスの先にいると思われた怪獣は、その姿を忽然と消してしまっていたのである。

 

先程の奇襲を思い出し、セブンは納得する。なるほど、どこかに隠れているな……?

 

その隠れ身の技量へ、相当自信があるらしい今度の奴にとっては、硫黄ガスは武器ではなく、タコが吐くスミの如く、単なる目くらましの煙幕として使えれば充分なのか。

 

敵の気配を探ろうと意識を集中したセブンの耳が、レーザー音と小さな水音を捉える。

振り返れば、崖の上からソガがしきりに地面にできた無数の水たまりへ向けて、手当たり次第にレーザーを打ち込んでいるところであった。

 

この荒れ地は水はけが悪く、つい先日の豪雨によって湖や川が溢れ、そこら中に大小様々な水たまりが発生していたのだ。

大きいものでは、それこそセブンの全身を映せる程の……池といって差し支えないものまである。

 

一番近くのそれを足で踏みしめるセブン。ばちゃんと捻りのない水音で、泥水に映ったの巨人の姿があっけなく歪む。

今のは踝まですら沈まない程に浅い、それこそ水たまりという形容が相応しいものであったが……問題は、泥で濁っているために、踏むまでその深さが分からなった事だ。

 

これがもしも、深い穴であったならば……

 

辺りを見渡すセブンの瞳が、キランと輝く。透視力だ!

 

 

カシャ

 

 

すると泥水が透過され、一つの水面にアロンの顔が浮かび上がる。

その穴の幅は狭く、とても怪獣が身を潜められる程に深い穴が開いているとは誰も思わないだろうが……だからこそ、敵の姿を探して不用意に歩きまわれば、恐ろしい罠にかかってしまうはずだ。

きっと、あらかじめ穴を掘っていたのだろう。

 

セブンが巨大なL字を組む。

敵はまだ見つかっていないと思って、まったく動いていない。これはチャンスだ!

 

待ち伏せは非常に効果的な策ではあるが、その場所があらかじめ分かっているならば、そこへ最大火力を叩きこまれるリスクも承知して然るべきなのである!

 

『ダァ―――!!』

 

極太の太陽光線が、オゾン層の軽減すら受けずに水浸しの地上へ叩きつけられた。

怪獣が丹精込めて掘った竪穴ごと、光のスコップが乱暴に暴いてしまう!

 

泥飛沫を盛大に噴き上げて、アロンの巨体が地上へとかち上げられる。

苦し気なうめき声でのたうつ怪獣。

膨大な熱量で、水分と言う水分が一瞬で蒸発し、アロンのいた周囲だけが、泥濘からあっという間に砂地へと変わってしまうほどの凄まじい威力!

 

……しかしなんと、真に驚くべきはセブンの方であった。

アロンが、その目に凄まじいまでの怒りと恨みを籠めて、砂塵の中で立ち上がって来たからだ!

 

地面や水がクッションになったとでもいうのか? いや、例えそれで僅かに威力が減じたとしても、生物がまんじりともせずその身に受けて、生き残れるような、まして闘志を燃やして立ち上がれるような代物ではないのだ。それがセブンのワイドショット、まさに文字通りの必殺光線だったはず!

 

これは流石にセブンをして心胆寒からしめた。痛覚のない石人形でも相手にしているかの如き恐怖が、赤い足を一歩下がらせる。

こんな化け物相手に、例えエレクトロHガンであっても、たいしたダメージを与えられなかっただろう事は明白だ。

 

何ギガトンの爆弾にも耐える物理耐性だけでも厄介だったのに、その上ビームすらも効かないなんて。

もはや自分に残された武器は……

 

その時、セブンはうなじの辺りがチリチリと灼けるような感覚を覚えた。

常識外の強敵に、第六感が激しく警鐘をならしているのかと思ったが……いや、違う。こ、これは……アイスラッガーが白熱しているんだ!? なぜっ!? というか、熱い!?

 

思わず後ろを振り返ったセブンは、今度こそ足元が崩れ落ちる程の絶望を味わう事となった。

なんと崖の上から、ソガ隊員がウルトラガンを構えて自分に向けてレーザーを発射していたからである!

 

一体なぜなんです、ソガ隊員! まさか……今度のアロンは人間の脳を操れるのか!?

 

心の底から信頼していた相手に、後ろから撃たれるという、考え得る中でも最悪の状況に、セブンは膝から崩れ落ちそうになったが……次の瞬間、自分の後頭部を狙っていたレーザーが狙いを変えてアロンの首筋を舐めるようになぞったのを見て、別の意味で崩れ落ちそうになった。

 

ソガの意図する事を正確に読み取ったからである。

 

それから何度も何度も、自分の頭頂部と敵の首をレーザーが行ったり来たりするのを眺めながら、セブンは戦闘中だと言うのに、呆れのあまり溜息を吐きそうになった。

なんという事はない。彼は……アイスラッガーを使えと言っているのだ。

 

よくよく集中してみれば、何事かを必死に叫んでいる。

 

「超獣に片足突っ込んでるような奴は、さっさと首を落とせ!」

 

何を言っているかよく聞こえないが……つまり遠すぎて、声が戦闘音でかき消されてしまうから、彼はレーザーで気を引いたのだ。

それでもいくら急いでいるし、特に効かないからとは言え……味方を撃つというのは、その……うん、ソガ隊員ならやりかねない。

 

以前、彼はアイスラッガーを『頭に括りつけた包丁』呼ばわりしていたので……彼の中で、これは僕の肉体とは別という認識なのだろう。

なるほど、ソガ隊員からしてみれば、ヘルメット越しに小さい石ころをぶつけて気を引く程度の行為なわけだ。

 

……とても、彼らしい。

彼にその、ひどく雑で、投げやりで、横着な部分があるのは薄々察してはいたが……その対象に自分がなってみると……なんだかとても……心地よい。

 

今までどこか壁のような、一種のよそよそしさを感じていたが、それが取っ払われるとこうなるのか。

これが地球人であったならば、きっと気分を害するところなのであろうが……

 

込み上げてくる不思議な笑いを堪えながら、セブンは既に少しばかり熱を帯びた頭頂部の武器に両手を添える。

 

一匹目がアイスラッガーを迎撃していた事で、アロンの動体視力には捉えられてしまうのではないかと懸念していたのが……そういえば、目の前で素早くステップを踏むこの個体は、一匹目よりもずっと背丈が小さいのだという事に気が付いた。

ガスを吐いたり、姿を隠したり、多芸な一方で……肉体面の成熟具合は劣っているという可能性に賭ける事にしたのである。

 

セブンが態勢を整えたのを見てとり、ソガのレーザーが敵の顔面に狙いを変える。

 

『ジュワッ!!』

 

アイスラッガーは大暴投。

アロンの左側をすり抜けていくではないか。

そこへチカチカと細いレーザーが左目に突き刺さり、煩わしそうに左手を払った瞬間!

 

敵の後方でぐるりと弧を描いた銀のブーメランがアロンの首を右側から綺麗に刈り取った!

 

 

カシャ

 

 

頭部を失い、ばたりと倒れる怪獣の四肢。

 

 

セブンの躰を光の螺旋が包むと、崖の上にはモロボシ・ダン隊員が立っている。

 

 

カシャ

 

 

さあ、早くあのせっかちな隊員と合流しなくては。しかし……

 

ソガ隊員、助けて貰っておいてなんですが……

 

他の人にはあんまりしない方がいいですよ、そういうの。特に……アマギ隊員とかアンヌには。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

空中に映し出されたホログラム。

セブンの瞳が眩く輝く。

 

「せぶんノ、透視力、普通ノ、物質ナラバ、簡単ニ、見通シテ、シマウノダ」

 

闇の中で声がする。

二つの白い瞳が、じっと映像を見つめている。

誰かに説明するかのように、ゆっくりと、丁寧に、自問自答する鳥人。

 

「あい、すらっがー、……えめりうむ光線ト、共ニ、せぶんノ、万能武器ノ、ヒトツダ」

 

怪獣の首がどさりと落ちる。いかなアロンの防御力といえど、その上から叩き切ってしまうとは、恐ろしい切れ味だ。

 

「シカモ、脳波こんとろーる、出来ル」

「軌道も自由自在というわけか」

 

虚空に響く、二人目の声。

しかし、この空間には一人しかいない筈だが……

 

いや、正確には居なかった。

つい今しがたまでは。

 

「使用ノ、直前ニ、奴ノ、脳波ヲ、検出シタ」

「早速分析して波長を割り出してしまえ」

 

頷くガッツ星人の前に、もう一人のガッツ星人が現れる。

今まさに、脳内会議が、脳外会議に切り替わった瞬間。

 

議論とは、一人では出来ない行為だ。

であればもう一人そこに、作り出せば良い。

 

そう、分身だ。

 

ガッツ星人は、自分の分身を作り出し、それに向かって得られた事象の解説を繰り返す事で、より理解度を深め、さらなる真理を探究するのだ。

 

しかし、単なる分身ではない。自身のコピーではなく……別人を疑似的に作り出す。それこそが、ガッツ星人の妙技であり、秘訣だ。

 

ガッツ星人は、分身を作り出す際に、その思考傾向にあえて偏りを作る。重んじる価値観、目の付け所、ひらめきのプロセス。それらを一旦自分から切り分けて、別の存在に分け与える。そうすれば、例え基の人格は同じであっても、議論を進めるに足る別人、となる。

 

議論とは、異なる意見、見地から何度も何度も琢磨する事によって、議題の完成度を高めていくものだ。

 

この、思考パターンの違う人格を何通りも用意し、それらを脳内で、時に分身として直接に話合わせる事で、ガッツ星人は計画を決定する。まったく別の意見を持つ者達が、納得できるまでに話し合われた時……誰も文句のつけようが無いモノが出来上がるのだから。

 

……しかし、そんな事が可能なのだろうか?

 

「せぶん攻略の糸口は見つかったか」

「コレヲ、聞ケ」

 

《そりゃそうだろう。ありゃあセブンの一番の切り札だろうから、きっとエネルギー消費も一番デカいはずだ。大技ってのはな、そう何度も使えないから大技って言うんだぞ。それを気軽にポンポン撃たせる訳には、いかんだろうが》

《そりゃそうだろう。ありゃあセブンの一番の切り札だろうから、きっとエネルギー消費も一番デカいはずだ。大技ってのはな、そう何度も使えないから大技って言うんだぞ。それを気軽にポンポン撃たせる訳には、いかんだろうが》

《そりゃそうだろう。ありゃあセブンの一番の切り札だろうから、きっとエネルギー消費も一番デカいはずだ。大技ってのはな、そう何度も使えないから大技って言うんだぞ。それを気軽にポンポン撃たせる訳には、いかんだろうが》

 

「やはりか」

「ソウダ、我々ノ、推測、シタ通リダ」

 

ガッツ星人の分身は、単なる分身ではない。

それぞれが、考え、理解し、行動する。

 

本来であれば分身とは、自身を分解、つまり切り分けていくのであるから、元のオリジナルよりも劣るはずだ。

だが、ガッツ星人の分身は分身であって、分身でない。

彼らは……質量を持った【情報】なのだ。

 

ガッツ星人の知能であれば、この宇宙における多くの情報を理解し、計算することが出来る。星の歴史、量子の動き……それらの膨大な情報を、一つの空間に圧縮したならば……情報は見かけ上の質量を持つに至る。

 

なぜなら、物質とは、生命とは、それすなわち情報の集合体に過ぎないのだから。

 

物質を分解すれば、あらゆる情報が手に入る。逆に、あらゆる情報を詰め込めば、それはもはや物質足り得るという事だ。

 

あとは、その情報が正しく、そして……そこに【在る】と断定できる観測者さえいればよい。

ガッツ星人がそこにて、目の前に自身と同等の情報が存在し、それが【ガッツ星人】であると認識さえできれば、事象はそのように収束する。

 

そして顕現したもう一人のガッツ星人が、観測者たるガッツ星人を認識し、またそう定義すれば、両者間に何者も疑問を差し挟む余地はないのである。

 

宇宙とは、空間に揺蕩う、無限の情報と、それを定義する観測者達によって、無数に形を変えるのだ。

 

この科学的哲学……ではなく、【哲学的科学】こそが、ガッツ星人の導き出した真理である。

 

「我々ノ、狙ウ、せぶんハ、実ハ、うるとら警備隊ノ、だん隊員ナノダ」

「だったらダンを倒してしまえば簡単ではないか」

「イヤ、せぶんヲ、倒サナクテハ、我々ノ、目的ハ、成功シナイ。せぶんヲ、倒セバ、人類ハ、タチマチ降伏スルニ、違イナイ、カラダ」

 

彼らの目的とは、地球を手に入れる……等というちっぽけなものではない。

地球を手中に治める事が、自分たちの『強さ』を全宇宙に知らしめる為に、効率が良いと判断しただけだ。

 

そう、強さだ。

 

ガッツ星人の強大さをより広範に、より正確に、遍く銀河の星々へ流布しなくてはならない。

 

それこそが、彼らの至上命題なのだから。

 

 

ガッツ星は、星全体が活火山で覆われた、非常に過酷な星だ。いつもどこかで噴火が起こり、大気は高濃度の硫黄ガスに満ち満ちている。

 

彼らの祖先は、そんな星に住む鳥類の中で、最も進化した種だった。

まさに弱肉強食。強くなくては生き残れない。

厳しい生存競争を勝ち抜いたのが、彼らの祖先だったわけだ。

その生存欲求は当に筋金入りで、生息地である火炎林の熱から身を守る為に、卵の殻は非常に強固で分厚く、その中で雛は、嘴で堅い殻を叩き続け、それを2年も3年もかけて破壊できた者だけが、ようやくまともに生を受ける事を許される。

 

獅子は子を崖から突き落とすと言うが、それすら生温いと言わんばかりの生存選択。

弱者は、この世に生まれ出ずる事すらも許さぬという、強者絶対主義が、ガッツ星人の根幹にある。

 

そして、あまりにもストイックな、しかして単に強すぎるオウムに過ぎなかった彼らが、ガッツ星人として次のステージに登ったのはあの出来事があったからこそ。

 

ある日、ガッツ星は地軸のズレにより大規模な地殻変動に見舞われた。

星の全域が割れ砕け、マントルプリュームによって炎と死のガスに覆われた時、非常に知能の高い、それこそ野生動物が到達できる最高到達点ぎりぎりまでに成熟した彼らの頭脳は、星の終わりと自身らの破滅を正しく理解したのである。

 

もしくは日々の研鑽によって研ぎ澄まされた野生の本能の発露だったかもしれないが、とにかく彼らは個体や家族等という単位ではなく、「種」そのものが一匹たりとも生き残る事無く悉く死に絶える事を予想した。予知と言ってもよい。

 

そうして、自分達の死が確定したその瞬間に、彼らはそのすべて、つい先ほど殻を突き破ったばかりの雛に至るまでが、それを拒絶した。

 

『例え星が死のうとも、こんなにも強い我々が死ぬはずがない。いや、死んで良い筈が無い。なぜなら……』

 

『『『我々は無敵なのだ!』』』

 

次の瞬間、すべてのガッツ鳥が覚醒……いや、生命の限界という殻を突き破って一斉に()()した。

 

こうして銀河にガッツ星人が爆誕したのである。

全てのガッツ星人が同時に発揮した超能力によってマントルは押しとどめられ、星の終わりは回避された。

 

当然ながらガッツ星人以外の生命は全て死に絶えたが、彼らは生き残ったのである。生命の進化を数段一気に飛び越して覚醒した超人類として。

行き過ぎた自己肯定感と、生存欲求が、種としての滅びを受け入れる事をよしとせず、その運命を撥ね除ける事に成功したのだ。

 

詰まるところ、宇宙にとってガッツ星人達は、そこで絶滅させるにはあまりにも……根性がありすぎたという事らしい。

 

 

「我々はアロンを使ってセブンの能力を分析したこれを基にして戦えば必ず勝てる!」

 

 

敵を知らば百戦危うからず。

比喩でもなんでもなく、ガッツ星人にとってはそうなのだ。彼らが勝てると確信し、疑念を差し挟む余地がなくなった時、彼らは勝つ。

 

彼らが目覚めた能力は、一種の『願望実現能力』であり、パーソナルリアリティ(自分だけの現実)を宇宙に反映させるための力とでも言えば良いか。

 

全ての生命はこの力を大なり小なり持っているものであるが、通常それは現実を改変するに足るほど強固なものではなく、意志の強さで望んだ結果を引き寄せる確率がほんの少しだけ上がるといった程度に過ぎない。

 

それも当たり前で、皆が皆この能力を持っているので、それぞれの望みが干渉したり、それぞれが観測した階層の違う宇宙の姿が互いに重なりあって、ちょっとやそっとの力ではそうそう動かす事が叶わないからだ。そして、この力が強くとも、事象を捻じ曲げるのならば、その結果やプロセスをどうすればいいのか? 力が作用した後の世界の姿も正しく認識していなくてはならない。

 

宇宙とは、無数の観測者によって収束させられた結果だからだ。

 

普通の人間が「そこに見えない壁がある」と言い張っても、それは妄想の域を出ず、他者に否定され、何よりもまず本人が心の底からそれを信じる事が出来ないために、それは存在しえない。

しかしこれが、非常に権威のある物理学の名誉教授が述べた見解であればどうであろうか?

「不可視ではあるが、Aという粒子とBという現象の観測結果として、そこになんらかの物質が存在する」と主張された場合、何人かの人間はそこに首を傾げながらも理解と納得を示してしまうのではなかろうか。その瞬間、両者の間には朧気ながらもそこに壁があるという認識が生まれ、宇宙がそう観測されるのだ。

 

ガッツ星人程の頭脳であれば、より精密に、より深く、それらの現象を正しく理解し、その上で……「そこにバリアがある」と主張できる。なんなら、既に持っている科学力でもって、ある一点に差し掛かった粒子のベクトルを操作して、あたかもそこへ壁があった場合の大気の流れを再現出来るかもしれない。

 

この非常に高度なパントマイムを見せられた宇宙は……納得し誤認するのだ。そこに不可視の壁が存在する前提で、その姿を変える。現実が改変されたあとは、そこに別の物質が侵入しても阻まれる。なぜなら、()()()()()()()()()()

 

雲霞の如く攻め寄せるガロ星人の物量を捌き切り、得意の洗脳戦術すら寄せ付けないとなると、それに負けない高度な分身能力を持っているに違いない。

ヴァイロ星人の切り札である生物機械兵器すらも退けたというならば、あの火力を寄せ付けないバリアと、その装甲を貫く光線を持っていて当然だ。

 

ガッツ星人が他星に攻め入り、その尽くを下すにつれて、ガッツ星人がどういう存在であるかを、銀河中が認識していく。

彼らは勝てば勝つほどに、その力を増し、より強大になっていくのである。

 

さてここに、あらゆる侵略者を撥ね退け続ける星がある。地球というらしい。

そこにはウルトラセブンというM78星雲人がいて、様々な星人を打ち倒して来た。

 

では……そこを陥落せしめた時、ガッツ星人はどういう存在か?

 

ウルトラセブンより強いという事は、彼が下してきたあらゆる星人達が束になってかかっても敵わないという事だ!

 

ゴドラよりも強靭で、メトロンよりも狡猾で、ぺダン星よりも凄まじい兵器を有し、ペガッサよりも優れていることなどもはや語るべくもなく銀河中が認識するだろう!

 

 

そう彼らの目的は、ウルトラセブンを倒し、地球に敗れ去った全ての種族の上に立つ事なのだ!!

 

そうすれば、名実ともに、あらゆる戦いに負けた事のない無敵のガッツ星人が誕生する。

そうなったら、もはや宇宙のどこにも彼らを止める事などできない。

 

宇宙警備隊など、相手にすらならないだろう。なぜなら、M78星雲人では彼らを倒せなかったのだから。

 

勝利、絶え間ない勝利こそが彼らの【哲学的科学】に唯一にして絶対必要なものなのである

 

 

この計画における最大の障害は、それを言い張るガッツ星人本人の頭脳が、そうであると強く信じる事が出来るか否かという事だが……

 

何も問題はない。

 

 

ガッツ星人は賢いから強いのか? 否。

ガッツ星人は超能力が使えるから強い……違う!

 

 

まったくもって的外れもいい所だ!

 

 

逆だ。すべてが逆!

 

 

ガッツ星人は、()()()()()()()()()()()()なのである!!

 

「ソウダ、せぶんヲ、倒ス、抹殺計画ハ、完了シタ」

「これから地球の引力圏へ入る……」

 

《これより、セブン抹殺計画を開始する》




パーソナルリアリティってのは、勿論とあるラノベから取ってきた言葉ですね。
ただ、ガッツ星人の頭脳であれをやったら、レベル5だの4だの超能力が全部使えるようなもんってことです。

だって、ガッツ星人ならそれくらいできてもおかしくない……でしょう?
なにせあのセブンに勝った星人なんですから。
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