転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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セブン抹殺計画 第一段階

「隊長!」

「どうだった?」

「異常ありません」

「またですか……」

 

作戦室に戻ってきたフルハシとアマギ。

その顔はなんとも不機嫌そうである。

通報を受けて遊園地へと慌てて出動したのに、空振りだったからだ……

 

 

「ああ、まったくひどいイタズラだよ! これで4回目の出動ですからね……」

「まぁ、そうボヤくな……」

 

隊長がにこやかに肩を叩いて慰めるが、なんとも不服そうである。

そんなフルハシへ、何かを後ろ手に隠しながら、妙にウキウキした様子でアンヌが近づいてくる。

 

「はい、フルハシさんに小包が届いているワ……遥か、アフリカから!」

「「へぇえ!」」

「アフリカからぁ?」

 

警備隊のメンバーが、わくわくした顔を隠しもせずに覗き込む中、思いがけない贈り物に、どことなく嬉しそうなフルハシが包みを開けていく。

箱の上に置かれていたメッセージカードを、横からアンヌが素早く抜き取って見れば……そこにはとても可愛らしく丸っこい筆跡で、丁寧な挨拶が書かれていた。署名には……ナツコの文字。

 

「アラ!? 女性からよ!」

 

一気に声のトーンが上がり、隣のアマギに文面を見せるアンヌ。彼女のミーハーな面がうっかり顔を出してしまったらしい。

とは言え、見せられたアマギはと言うと、カードをちらりと一瞥しただけで、あとはすっかりフルハシの手元にある蒼い輝きに夢中となっていたが……

 

「はわぁ……綺麗な宝石ですねぇ……!」

「え~……フルハシさん、お元気……」

 

勝手に手紙の内容を朗読し始めたアンヌから、フルハシがそれを取り返して後を引き継いだ。

その為に一旦、脇に置かれた宝石を、今度はアマギがサッと取り上げて、しげしげと眺めては矯めつ眇めつする。そんなアマギの肩越しに、興味深げな視線を送るダン……

いや、コイツらやりたい放題だな。

 

それとダン。いくらその石に見覚えがあるからといって、作戦室で透視を使うな。

なんか今、お前の目がチラッと一瞬光って見えたぞ。

……そうか、この時にこの石の正体を見破っていたのか。

 

だからって、物欲しげに先輩をチラ見するんじゃないよ。オレからは全部見えてるんだぞ。

 

「……私がサファリラリーへ参加した折りに、土地の有力者からいただいたものです。珍しい宝石なので半分お分けします。あまり高い宝石ではありませんが、原住民の人たちが首飾りにしているそうです……フルハシさんはどういう風に使うかしらん」

「へぇ~うまくやりましたねぇ! するとその女性はつまり、先輩のですよ……?」

「いやや、この人はねェ、つまり……、そのォ……ボクの妹の友達なんだよぉ……」

「妹さんの友達ネェ~? なるほどなるほど、それで?」

「えっ……へへへ……そうあんましつこく聞くなよ……ハハハ……」

 

そういった話題とは無縁そうなフルハシに訪れた、仄かな春の気配を敏感に察知したアンヌが、茶目っ気たっぷりに彼を追求する。

そんな和やかな雰囲気を引き裂いて、緊急警報が鳴り響いた。

 

「また警報です!」

「第三地区だな……」

「デマだ! デマだ! ほっときゃあいいんだ!」

 

怪訝そうなダンに、上機嫌なフルハシが、水を差されたせいか投げやりに言い放つが……

 

「フルハシ!」

 

そこへ隊長の叱責が飛ぶ。

 

「そう簡単に決めつけちゃイカン! たとえ千回の通報が千回とも嘘でも、出動するのが我々の義務じゃないか!」

「はっ、軽薄でした……」

「せーんぱい。この前俺に、なーんて言いました、っけ……?」

「うっせぇなぁ……蒸し返すなよぉ……」

「ひひひ……」

 

この人はなんというか……スイッチの切り替えが激しいタイプなんだろうなぁ、多分。

目の前にひとたび敵が出現しさえすれば、矢も楯もたまらず突っ込んでいくけれど……逆に言えば、はっきり()()と分かる形で困難が提示されないと、なかなかエンジンがかからんのだろう。

 

自分の目で見たもの以外はまったく信じないが、一度でも認識したならば、どこまででもそれを信じて猛進するという、典型的な例だ。ヤスイさんや、後のペロリンガ星人の件でも、それがハッキリと示されている。

 

まあ、そこがいいところでもあるんだけどね。

怪事件の調査には全く役に立たないが、いざ戦闘となればこれほど頼りになる奴はおらんと言うのが、前回身に沁みて分かったよ。

 

まさに人間としてのモロボシ・ダンの対極に位置するような人材だ。

こういう人がいるから、調査パートでどちゃくそ活躍するくせに、こと戦闘となるといまいちパッとしないダンという存在が、警備隊において重宝される下地になっているような気がする。

 

本当はパッとしないどころか、一番目立つところで戦ってるんだけどさ……防衛軍目線じゃ、どうしてもな。

昼行燈ここに極まれり。いや、逆か?

 

「ダン、アンヌ!」

「「出動します!」」

 

ヘルメットを持って出て行く二人を見送れば……さてさて、オレの役目を果たす時だ。

先輩、そしてアマギくんや、ちょっとちょっと。

 

「ねぇ先輩。その宝石……ちょっとアマギに見て貰った方が良くないですか?」

「「ナンデ!?」」

 

二人の返事がシンクロする。

フルハシは宝石を大事そうに掻き抱き、アマギは面倒事が降って湧いたような顰め面。

おい、お前さっき無邪気に眺めてただろうが。

 

「だって……アフリカから持って帰って来た珍しい石でしょ? 中近東といやぁ……昔、バローンだがバラージだか言う砂漠から隕石が発見された事があったって、資料室で読みましたよ」

「……それがこの宝石に一体何の関係があるっていうんでぃ!」

「俺ぇ……嫌ですよ? この次に赤い石が持ち込まれて、それが合体して……基地が丸ごと四次元空間に飲み込まれたりするのは……」

「四次元空間……?」

 

二人が顔を見合わせるが……ハッとしたようにフルハシが手をポンとついた。

 

「そういやぁ、兄貴に聞いたことがある! ような……ないような?」

「その青い石が、無限へのパスポートじゃないって保証は、今の所、どこにもありゃしませんぜ?」

「お前……それは……杞憂ってもんじゃねえか?」

「でも、一晩貸し出すだけで、皆が枕を高くして眠れるんです。アマギだって、別にあのコレクションみたいに、番号付けて保管する必要はないんだ。異常が無ければ、先輩にそのまま返してあげりゃあいい。どうです? 代わりと言ってはなんですが、サエコさんおススメのお洒落なキーチェーン……あげますよ?」

「……じゃ、じゃあ……くれぐれも大切に頼むぜ?」

「……ええ……」

 

オレの言葉に、アマギと再び顔を見合わせたフルハシは、渋々と青い宝石を彼に手渡した。

そしてそれを渋々と、本当に渋々と受け取ったアマギは、なんとも言えない顔で分析室に歩いていった。

 

……勝ったな。風呂入って来る。

 

 

――――――――――――――

 

 

夜のビル街。

ダンとアンヌはポインターを降りて、警報器をチェックするが、異常はない。

水質計や振動計のチャート紙を引き出して確認するも、おかしな波形は見られず、ただ単にアラーム機能だけが起動しているのだ。

異常と言えば、それ自体が異常な事ではあるのだが。

 

納得いかない様子で、アラームのスイッチを切るダン。

 

「何も変わった様子はないなぁ……」

「また、誰かのいたずらだったのかしら?」

 

二人が車に戻ろうとすると、ポインターの後ろに、無人の車が近づいてきた。

 

「あっ……あれは……? ダン!」

 

運転手が居ないにも関わらず、じわじわと前進する車。

すると今度は、前方から強烈なヘッドライトが二人を照らす。

いや、前方だけではない!

路肩に止めていたポインターを囲むように、四台の車が、がっちりと道路を固め、その進行を妨害してきたのだ!

 

ポインターから降りたダンの目がキラリと輝く。

超能力で透視をかけると……車の運転席には、巨大な鳥類の頭部が、妖しく笑っているではないか!

 

「誰だキミは!」

 

ダンが誰何すると、運転席にいた怪物はテレポートのように車外へ一瞬で移動する。

 

『我々は、いかなる戦いにも負けたことのない、無敵の、ガッツ星人だ!』

「ダメ!」

 

唐突に現れた怪鳥を直視してしまい、思わず目を背けて座席に蹲ってしまうアンヌ。

そもそも、幼少の頃の経験から、鳥恐怖症を抱えていた事のあるアンヌにとって、ヒト型の胴体に巨大なオウムの如き頭部を備えたガッツ星人の容姿は、あまりにもショッキングなものであったからだ。

 

「ダメ! ……ダメダメ、しっかりしなくっちゃ……」

 

父の友人宅へ遊びにいった際、籠に飼われていた巨大な(当時のアンヌにはそう見えた)オウムが翼を広げて彼女の顔を覗き込み、人間の言葉をしきりに叫んだ事がある。たまさか、そこの主人が口の悪い人物であった為、『鳥に罵倒される』という経験をしてしまった彼女は、オウムや九官鳥といった鳥が恐ろしくてたまらなくなってしまったのだ。

 

とはいえ、現在はそれも克服して生活や任務にも支障はない。もともと彼女が医師を志したのも、後に施術された催眠療法によって、人の恐怖を取り除く事が出来るという事実が、少女に天啓のような使命を与えたからである。

 

だからこそ、彼女は外科治療と並行して、心療療法も学び、あまつさえそれをモノにしてしまう等と言う、とんでもない偉業を成し遂げることが出来た。

 

目を閉じ、自分に暗示をかけて……勇気をふりしぼり、指の間から敵の姿を焼き付けて……そして、ダンの横に並び立つのだ。

なぜなら彼女はウルトラ警備隊だから。

 

「……ようし!」

「アンヌ、君は逃げろ!」

「ダメダメ、絶対にダメよ! ……絶対逃げないわ!」

『ダン……我々の挑戦を、受けるか?』

「我々の……?」

 

アンヌが戦線に復帰しても、まるで意に介さず、ガッツ星人はダンにだけ話掛ける。

まるで彼女の事など、目に入ってすらいないようだった。

 

1対2になったというのに、まるで怯まぬガッツ星人の言い草にダンが首を傾げると……

二人の後ろに、もう一体のガッツ星人が現れる。

さらには周囲に蠢く無数の気配。姿を現さずとも何体かの敵が隠れているのだろう!

なるほど、我々とはそういうことか!

 

 

敵は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のか!!

 

 

「つまらないことは止めろ! ……アンヌ、基地へ報告するんだ」

「でも……」

「やつらは、僕が何とかする」

「ダメダメ、アタシだって、たいした腕前なのよ……見くびらないで!」

 

ウルトラガンを引き抜いて、戦意を漲らせるアンヌ。

そんな彼女の肩を掴み、強引にこちらを向かせたダンは、真正面から女戦士の瞳を覗き込んだ。

 

「キミにだから……頼むんだ!」

 

そこに、庇護者としての誇りや、女子供への慈悲といった色は一切無かった。

ただ、頼もしい戦友に対して、状況の打開を託したいという、信頼の光しかない事に、アンヌは遅ればせながら気付いた。

 

「どうして……?」

「彼が言っていたのを、聞いていただろう?」

「彼……アッ……!」

 

――――――――――――――――――――

 

いつかのメディカルセンターで、包帯を解いたソガが、肩をぐるりと回す。

 

「どうかしら? 具合は」

「うん、大分良くなって来たよ。いやあ、流石の名医だな」

「良かったですね、ソガ隊員」

「でも、またあんまり無理しちゃダメよ」

 

余った塗り薬や包帯を、トレイに乗せて棚に戻るアンヌの後ろ姿に、ソガが何気ない風に呟いた。

 

「いやしかし、アンヌが女で、本当に良かったよ」

「……ちょっと、それどういう意味?」

 

ムッとした様子の白衣天使が、聞き返す。

慌てた様子で、耳打ちするダン。

 

「ソガ隊員らしくもない。失礼ですよ」

「ああ、いやいや! そういう意味じゃない! 悪かったよ。逆だ逆!」

「逆ぅ? いったい何が逆だって仰るのかしら、ソガ隊員?」

「つまりな、ウルトラ警備隊の一員として、アンヌほど相応しい奴はおらん、という話だ」

「……?」

「お世辞が下手ねぇ……」

 

呆れた様子で薬品を棚に戻していくアンヌと、怪訝なダン。

 

「お世辞じゃない。俺は大真面目に言っとるんだ。俺が言いたいのは、戦闘における脅威度の事さ」

「脅威度……とは?」

「ダン。おまえがもし侵略者の立場で、ウルトラ警備隊と戦うなら、まず誰から襲う? ああ、お前自身は抜いていいぞ。今のお前はモロボシ星人だからな」

「えっ……」

 

酷く困惑した様子のダンは、かなりの時間悩んでいたが……やがて、それはそれは気まずそうに、おずおずと回答した。

 

「……キリヤマ隊長」

「素晴らしい! 初手で指揮官を倒すのは100点満点だ! じゃあ次は?」

「……ソガ隊員、でしょうか……早撃ちで遠くから狙撃されたくありません」

「ほう、嬉しいこと言ってくれるね。じゃあ次」

「フルハシ隊員……彼は強過ぎるので、そこを超えないと、後の二人を守られてしまう」

「そんで?」

「アマギ隊員に秘密兵器を開発されたらお終いですので、最後に……」

「……アンヌと」

 

ダンの視線がゆっくりとアンヌの方を向いた。

青い顔をした彼にとっては、大切な仲間達を倒すのがとても辛い事なのだ。それが例え想定の中であったとしても。

だが……

 

「残念ながら、お前に侵略者としての才能はゼロだ。よかったな、断言してやるぞ。向いてないわ」

「……え?」

「隊長の後は、零点もいいところだよ! まったくダメ! ダメダメ侵略者! そんなんじゃセブンすら引き摺りだせないね!」

「はぁ……」

 

チッチッチと指を振ったソガは、すっかり怒気を収めて、話に耳を傾けているアンヌを指さした。

 

「真っ先に倒さなきゃならんのはコッチだよ! もしも俺が侵略者なら、むしろ隊長よりも先にアンヌを消すかもしれん」

「私?」

「なぜ?」

「彼女がドクターなのに、優秀な兵士だからだ」

 

真剣な顔でソガが続きを話す。

 

「いいか? 戦闘で一番効果的なのは、相手の回復手段を潰す事だ。人間はすぐ病気になったり怪我をして、戦えなくなる。でも医者がいれば、ほっといたら死ぬような奴が助かったり、怪我を直していつか復帰できるんだ。だからこそ、真っ先にやるべきで、一番やっちゃいけない事が、医者を殺す事なんだ。報復で自分達の医者を殺されたらかなわんからな。最低の行為だよ」

「最低の……」

「そして医者がいれば、兵士も戦える。死ななかったら、助かる可能性があるんだからさ。医者のいないところで怪我なんかしたら、死んじまう。怪我したくないなら怖くて戦えねえよ」

「確かにね。でも、私を当てにして、毎回無茶をされる方の身にもなって欲しいわ」

「「ゴ、ゴメンナサイ……」」

 

無茶の筆頭達が揃って頭を下げる。

 

「話を戻して……だから彼女さえ排除すれば、あとはジリ貧なのさ、アマギなんてちょっと出血したらすぐおっちんじまうし、俺や先輩なんざ放っておけばいい。何回も戦えば、疲労して消耗して、それが積み重なって勝手にいつか死ぬ……さて、もう一つ、集団戦において大事な事があってな? 敵の数を減らす事だ」

「確かに、それは大事ですね。仲間は多い方が有利だ」

「ではこれも分かる筈だな。定石は弱い奴から削ること!」

「それで……アンヌを?」

「へっへっへ、そういえばここに、見るからに弱っちい女で、そのうえ貴重な軍医殿が居るなぁ! ソガ星人は当然、アンヌを殺しに行く。するとどうなると思う……? 答えは……死ぬ」

「私が?」

「いや、俺が」

「え、ソガ星人が死ぬんですか?」

 

神妙な顔で頷くソガ。

 

「だって俺は彼女を『弱い医者』として襲いに行った。ところが、アンヌは……弱いか? パラライザーを片手で早撃ちして、ウルトラホークでドッグファイトできるような女が、弱い……? それなら俺は辞書の『か弱い』を書き直さなきゃならん。……お前のような女医がいるか!」

「ハッハッハ! なるほど、つまり僕のような考えの宇宙人からは見逃され、ソガ隊員のような考え方の宇宙人には激烈なカウンターに成り得ると!」

「そういう事! とんでもないトラップだよ。俺は実の所、戦闘においては敵を如何に油断させるかばかり考えている。だってそれが一番効果的なんだからさ。しかし、アンヌはその存在こそが、俺の求める究極系なんだな、これが。フルハシ先輩がヨヨヨ……と泣き崩れても、敵の同情を誘えるか? 絶対無理だね。だからこそ俺は、アンヌこそが警備隊で一番恐ろしいと思うわけさ」

「……ふーん、ソガ隊員は、私の事をそんな風に見てたの。トラバサミみたいな女で悪かったわね」

「あの、いやこれはね。あくまで戦闘の話であって、そりゃあアンヌさんは可憐な乙女でございますですよ、ハイ……」

「ウフフ……」

 

とはいえアンヌも、つーんとした表情をしつつも、まんざらでは無かった。

なにせ、今まで「女だてらに」だとか「もしも男であったなら」といった類の言葉は山ほど聞いてきたし、軍隊において、女としての面を評価されるのはいつも容姿の事で、それは「華がある」という程度の事でしかない。

 

外面を褒めそやされて、別に悪い気はしないでも、能力面を評価する際には常にマイナスとしてしか見られなかった点。それが悔しくて、そう言った男達を黙らせる為にも、彼女の努力は一層激しいモノととなり、舐められまいと肩ひじ張っていた時期もある。

 

そんなアンヌにとって、自身が『女である』事をこうまで好意的に……好意的? ……少しばかり首を傾げたくはなるものの、紛れもない『強み』として評価された事は無かったような気がする。

 

少なくとも、恥も外聞もなく泣き叫び偽の降伏をしてまで、敵の異星人を油断させる事に注力するような男が、どう足掻いても勝てないと、真剣に言っているのだ。

 

きっと彼の中では、自分という存在は、地球を守る為に必要な要素なのだろう。

それならば、この無礼な物言いも、今日の所は許してあげてもいいかしら。

 

そう思ったのだ、あの時に。

 

――――――――――――――――――――

 

 

アンヌの脳裏に、あの時の会話が想起される。

と同時に、ダンの思惑も理解した。

 

彼は言っているのだ……『敵の油断を利用しろ』と。

 

それはアンヌにとって、とてもとても屈辱的で耐え難い要請であったが……それを飲み込み頷いた。

 

なぜなら、モロボシ・ダンは容易く人の矜持を冒涜するような男ではない事など、誰に言われるまでもなく彼女自身が分かり切っていた事であり、その彼をして、そのような頼みをせざるを得ない程に、事態は逼迫しているとダンが考えている事が、ありありと伝わってきたからだ。

 

「ハイ!」

 

アンヌが返事をすると同時に、なかなか返事を返さないダンへ痺れをきらしたのだろう、ガッツ星人と名乗る敵が大型の銃を取り出し発砲してきた!

 

ダンが大きく前転して回避し、ビルの谷間を全速力で駆け抜けていくと、二匹のガッツ星人も彼を追って姿を消した。

本当に彼らは、自分を敵としてすら認識していないのだ、という事実をまざまざと見せつけられ、アンヌはカチンと来たが……自分がするべき事は、ウルトラガンを引き抜いてダンの応援に駆け付ける事では無い。

 

真に許せない敵であるならば、絶対に目にもの見せてやる。

私が怖くないと言うならば、それもよろしい。自分よりもずっと恐ろしく、そして……自分よりもずっとずっと意地の悪い悪魔のような男達を召喚するだけだ!

ポインターのマイクをひったくるように掴むと、基地へと緊急コールを入れる。

 

「隊長! 隊長!」

「どうした、アンヌ!」

「ガッツ星人に囲まれて、身動きができなくなりました!」

「よし、了解!」

「ホーク1号出撃準備OK!」

「でかした!」

 

彼女の敬愛する果断な上司は、短い報告に二つ返事で出撃を決定し、彼女の信頼する用心深い同僚は、ずっと出撃の機会を伺っていたらしい。

彼らならきっと、この状況を打開してくれるに違いないのだから。




Q・M78星雲人なら誰でもいいの?

そうです。その実態がどうあれ『地球を守っていたM78星雲人が負けた』と聞けば、宇宙の大多数は、≒『宇宙警備隊員が負けた』のだと勘違いするからです。

というのも宇宙人にとって、他の星で見かけるM78星雲人とは、その殆ど全てが宇宙警備隊員(もしくは宇宙の平和維持に寄与するなんらかの組織に属する者)なのではないか?と思われます。

原作の殆どの宇宙人が、「そもそも地球にセブンがいる事に驚く」か「セブンを倒さなければ地球が手に入らない」と考えているようですが、これは彼らがセブンが恒点観測員だと知らなかったからではないか?と考えました。

その証拠に、誰も恒点観測局に「おたくの職員が他所の星で越権行為してて困ります」と通報しなかったでしょう?(笑)

こうすればセブン上司がすっ飛んできて、馬の首星雲に左遷されるので、彼らの計画はずっと容易くなった筈です。

セブンの本職について触れてくるのなんて、平成版のラスボスであり、自称恒点観測員を名乗るガルト星人くらいまで居ませんでしたからね。

なのでガッツ星人的には非戦闘職のセブンを倒しても、むしろ組みし易い非戦闘職を倒す事で、対外的に『宇宙警備隊員を倒した』と喧伝できるのでとても安上がりですらあります。

そして、それを聞きつけたマン兄さんやゾフィーが駆け付けても全く困りません。
なぜなら、そこにいるのは『宇宙警備隊員を倒したと、宇宙の大多数から目されている』ガッツ星人だからです。
その時には、その認識に相応しい強さを手に入れているので、セブンと戦闘した時以上のガッツ星人を相手に戦う事になります。

マン達もマン達で「いくら警備隊員ではないとはいえ、あのセブンを倒した相手だ。どんな手段を使ってくるかわからないぞ」くらいは考えると思うので、本職のバリバリ戦闘員である彼らの想像すらも上回る『どんな手段』も使えるようになるでしょう。



Q・アンヌって鳥恐怖症だったの?

俺の宇宙ではそうなんだよ。
とはいえ、原作においてアンヌが鳥を怖がるシーンなんて一つもなく、強いてそれらしいシーンをでっち挙げるならば、イカルス星人の四次元空間に引っかかった鳥の死体を、ダンが透視した時に消えてしまった件を、アンヌが目にする前にダンが超能力で消してしまった。と解釈するくらいでしょうか。

ではなぜそんな設定をでっち上げたかというと、原作のシーンであまりにもアンヌが怖がり過ぎていて、その後に意地でも戦おうと何度も引き返してくるからです。

そりゃあ実際に等身大のガッツ星人(というよりウルトラシリーズの全ての宇宙人)が目の前に現れれば、ナツコさんでなくとも、大の男である作者ですらも、チビリ星人になる自信しかないですが、アンヌに関して言えば、これよりもっと怖い目にあってきているのでは……と。

人間がいきなりワイアール星人化したり、自室やポインターの後部座席からキュラソ星人やらペガッサ星人がひょっこりはんとかの方がもっと怖くない?

じゃあ、ガッツの姿が彼女にとって致命的だったからこそ、意地になったのではいか?という解釈になりました。

アマギも爆発物と高所恐怖症だし、ある程度克服済みならば、別段おかしくはないと判断しました。

Q.どこから設定増築分?
ガッツに関して言えば
・火山活動の活発な惑星
・卵の殻が厚く、生まれるのに2、3年かかる
というのはwikiにも書いてある設定で

・マントルプリュームを生き延びたらしい
というのは平成版で再登場した際の彼らの言より。

それ以外は作者の妄言なので、別の場所で「ガッツ星人は気合と思い込みの力でマグマ押し返したんですよね」なんて言おうものなら、変な目で見られてしまいますので、ご注意下さい。

しかし、コメント欄で集まるわ集まるわ類似例。
SFスキーが集まってると、こういう知識が一瞬で集まるから良いですね。
中にはこの能力に『ギガロマニアックス』という固有名詞まで付いてる作品があるようで、解説ページを読みに行ったら、そのものズバリな事が書いてあったので感動しました。知ってる方にはこちらの例の方がしっくりくるかも。
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