転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
今年も本作をよろしくお願い致します!
地球侵略を狙うガッツ星人は、セブンを倒すことが早道だと考え、怪獣アロンを使ってその能力を探り、セブン暗殺の計画を立てて地球にやって来た。
苦戦するセブンのエネルギーは、刻々とゼロに近づいていった。地球の平和を守るために活躍するセブンは、遂にガッツ星人の手に落ちてしまった。
そのころ地球防衛軍は、キリヤマ隊長の指揮の下に、ダン、ソガ両隊員の捜索を続けていた。だが、ウルトラ警備隊が救出したのはソガ隊員だけである。
ガッツ星人は、夜明けと共にセブンを処刑すると通告してきたのである。天文班からの報告で、夜明けは5時21分とわかった。どうしても、それまでにセブンを救出しなくては、地球人がガッツ星人に降伏するという事態が、起こるかもしれないのだ。
「……隊長、おかしな発信音をキャッチしました」
「なに?」
「宇宙ステーションの回路を使っていますが、ステーションからのものではありません!」
「よし、録音して直ちに分析するんだ!」
「そんなことをするやつぁ……いったい誰だ?」
「しめたッ! きっとダンだ! 奴が拘束を振り切って連絡してきたんだ!」
「えっ!?」
しかし発信音は、新たな雑音に掻き消されてしまう。
「クソッ! 妨害電波です」
「よし!そこまでを分析室にまわせ!」
「はっ!」
「よっしゃああ! 妨害電波キター! 待ってましたぁ!」
「なに!?」
アマギが分析室に駆け込むのを見送ると、先ほどまで、あんなにも情けない事を言っていたソガが、突如として小躍りしそうなくらい喜び出した。
アンヌの平手打ちをくらって、ついに頭がイカれてしまったのか……?
「ソガ隊員、待っていたって……さっきの通信を? それとも妨害電波を?」
「どっちもさ! これでキミから引っ叩かれる必要も無くなった! 茶番に付き合わせて悪かったなアンヌ。ナイスアドリブ!」
「え、ええ……ちょっと強く叩きすぎたかしらと心配したんだけど……」
「それは、ばちくそ痛ぇ」
先刻の仲違いが嘘のように話始めたソガとアンヌ。
周りで見ていた一同は、その変わり様に面食らってしまった。
「待て、茶番とは一体……」
「はっ! 実はですね。ガッツ星人は我々の会話をどうやら随分前から盗聴していたようなんです」
「なにっ!」
「奴らの円盤の中で、俺の発言がばっちり録音されていたのを、えらい自慢げに聞かされました。ガッツ星人は、セブン対策の為に情報を集め、用意周到な策を練ってきたんですよ」
「なるほど! だからあんなに強いセブンが、手も足も出ずにやられちまった訳か! 卑怯な奴らだ! おかしいと思ったぜ」
「……それで一芝居打ったのか。奴らに我々が絶望して、諦めたと思わせる為に」
「んもう! 本当に意地悪なんだから!」
「悪ィ悪ィ。やっぱ宇宙人も美人の涙には弱いと思ってさ……これで許してくれよ。な? な?」
そう言って、真っ赤に腫れた横面を見せるソガ。
「お、おい! だったらこんな早くネタバラシしちまったら、駄目じゃねえか!」
「チッチッチッ……そこでこの妨害電波ですよ」
「ふむ……なるほど、考えたな」
「……どういうこったい?」
「さっきの通信は、恐らく牢屋から脱出したダンが、敵の通信機を使って連絡してきたに違いありません! 奴の事だ、何か重大な敵の秘密を掴んだのかも」
「確かにダンならやりかねない……」
こういう時、その生存力に対して、ダンの信頼度が天元突破しているのは有難い。
ソガはニヤつく顔を、努めて冷静に保ちながら説明する。
「そんな、自分達の弱点に関わるかもしれない情報と、仲違いで空中分解寸前の弱小人類達の会話。どっちがガッツ星人にとって重要です?」
「そうか、それで妨害電波を……」
「この基地に、妨害電波を上から被せて通信関係を全て塗りつぶしてしまうという事は、逆にこっちの盗聴も出来なくなるという事です。ま、奴らにとってそんなリスクは、もはや無いも同然なんですけどね……」
「だが、そうではない。違うか、ソガ?」
「ええ、こっちの逆襲計画が奴らに筒抜けなのは、とてもマズいですから」
「……皮肉なものだな。奴らはこちらを邪魔したつもりで、自分達を妨害してしまったのか」
ソガは意気揚々と、作戦室の机へ、ずっと書き込んでいた計画書を広げた。
それはガッツ星人の立てたセブン暗殺計画の内容について。
なにしろ、彼らが語った内容をほぼそのまま記してあるのだから、信憑性はお墨付きだ。
彼はそれを、『セブンの正体がモロボシ・ダンである』という部分だけ都合良く隠して、全て公開した。
……いや、むしろ。
ガッツ星人の喋っていない部分まで、やたらと細かく補足がしてあるではないか。
ソガは、ガッツ星人の存在をこれ幸いと、自分の知っている原作知識のうち、言いたくても言えずにいたあれやこれやを、全て奴らの責任におっ被せてぶっちゃけてしまうという暴挙に出ていた。
M78星雲の宇宙警備隊……?
セブンのカプセル怪獣……?
太陽エネルギーや必殺技の数々……?
ソガ、お前どこでそんな知識を……?
はい、全部ガッツ星人が教えてくれました。
本当なんです……信じて下さい。
当人達に聞こえていないのを良いことに、まさしくやりたい放題だ。
とはいえ、そのような事は些事でしかない。
なぜなら、それらを聞いた警備隊の面々にとって、真に驚愕すべき事実だったのは……
「……まさか、ウルトラセブンが戦士でもなければ、軍属でも無い、単なる善意の第三者だったとは……」
机の上へ肘をつき、組みしめた両手の上に額を置きながら、タケナカはその弱り切った表情を隠した。
今まで、セブンの肉体面や精神性については何度か議論を重ねた事もあったし、その幾つかが多少なりとも当たっているという確かな手応えを、決して短いとは言えない期間共闘してきた中で、掴んでいたつもりだった。
だが……全くもって思い上がりも甚だしい事ではないか。
実のところ人類は、やはりセブンの事を、何一つとして理解など出来ていなかったのだ。
彼を、信頼できる個人として尊重しながら、この世界に生きる尊い生命として見ようとしていたつもりが、その実、彼の宇宙における社会的属性や、果たすべき役割がいったい何なのか、という視点がすっぽりと抜け落ちていたという事実に、今更になって気付いたのである。
あれほどの強さを持ちつつ、積極的に地球防衛に協力する姿勢を見せてくれていたので、てっきり軍人や警察機構、よしんばそういった組織が無い文化だとしても、戦士階級的な、所謂、戦闘行為や荒事を生業とする類の者なのだとばかり思っていた。
無意識的に、セブンもまた、自分達のような地球防衛軍と同一の『他者を守る事に責任を持つ側』なのだと。
ところがどうだ。ソガがガッツ星人から聞いたところによれば、彼は恒点観測員という……地球人で言えば国土地理院の測量司や、文部省や外務省の査察官などに近い職務を遂行する、どちらかと言えば役人的な性質の強い立場なのだと言う。
いわば、大航海時代の航海士が、たまたま立ち寄った漁村を、ヴァイキングの襲撃から守ろうと、義憤に駆られて立ち上がったようなもの。
彼我の戦力に、圧倒的な隔たりがあるから気づけなかったし、属する国というか星が違うが故に、地球の管轄下に無いというだけで、『軍人』であるタケナカ達からすれば、彼もまた、守るべき『文民』に違いないのである。
ところが、彼の正体であるM78星雲人というのは、とある事故によって、大人から子供に至るまで、数万単位の寿命や超能力を有するようになった種族なのだという。
そしてその力を、全宇宙に秩序と平穏を齎す為に使う事をこそ至上とする、崇高な精神と決意を宿した人々なのであるとも。
例えその宇宙警備隊とやらに属していないとしても、目の前にいる弱者へ手を差し伸べずには居られないのが、光の国に住む者の国民性らしい。
ウルトラセブンは、銀河を股にかける平和の使者なのだと思っていたら、天の川を飛び越えて駆けつけてきた、飛びっきりの義勇兵に過ぎなかったのだ。
「……てぇ事はなんだい? 俺達は、ちょっと力自慢の一般人に、今までおんぶにだっこだったって事かよ!? アイツは……セブンは何の義理もないのに、俺達の為に戦ってくれていたんだって……それで今、そのせいで命の危機にあるって……そういう事かよ!!」
「まあ、そうなりますね」
「そんな、そんな事が……あってたまるかっ!」
「……痛恨の極みです」
情けないやら、悔しいやら。
様々な感情がない交ぜになって、机を力強く殴るフルハシ。
キリヤマは、彼ほどに激情を露わにする事は無かったが……その内心は、部下に負けず劣らず荒れ狂っている。
「これでセブンを見殺しにしてしまったら……私たちウルトラ警備隊は、いったい何の為にいるのか、分からなくなってしまうわ! アマギ隊員のいつかのナーバスを全然笑えないじゃない!」
「そうだ! この戦いは、もはや地球の支配権どころの話ではない! ここで諦めてしまったら、我々、地球防衛軍の存在意義そのものが揺るぎかねん! ガッツ星人のセブン処刑は、なんとしてでも絶対に阻止するんだっ!」
タケナカが激憤と共に立ち上がった時、作戦室にアマギが飛び込んできた。
「隊長! さっきの通信内容が解読できました!」
「でかしたっ!」
「ダンはいったい、何て言ってきたんだい!?」
「ダン……?」
「なに? ダンが敵の円盤内から秘密通信を送ってきたのではないのか?」
「……いいえ、残念ながら発信者はダンではありませんでした」
アマギの返答に、目に見えて落胆する一同。
この通信こそが、縋るべき一縷の望みだと思っていたからだ。
だが……アマギとソガだけは、全く違う表情をしていた。
「ですがその送り主は、もっと驚くべき人物ですよ……さっきの発信音は、なんとセブンの脳髄から出ていたんです!」
「なんだって! セブンが生きていたのか!?」
「はい! 彼が超能力を使用する際に観測される脳波パターンと、波長がぴったり一致しました!」
皆の顔が、一様に明るくなる。
「しかし、マグネリュームエネルギーがないと、体を動かすことができないといっています」
「マグネリュームエネルギーといっても、まだ合成に成功していないだろう……?」
「これを見てください」
アマギが解読結果をタケナカに手渡す。
「水素の4個の原子を融合させて、ヘリウム1原子に変化させたときに、そのエネルギーを固定させる……しかし、困ったな……」
「……何ですか?」
「うん、その水素を融合するのに、ダイモード鉱石が必要らしいんだ。それから後は、妨害電波で消されてしまった」
「しかしダイモード鉱石か……アフリカ産の鉱石なんだが、アフリカの原住民の一部でしか使われていない代物だな……果たして、この日本中を探しても、持っている人がいるかどうか……」
タケナカもその鉱石の事は知っていた。
なにせ、新エネルギー開発の為に、他ならぬアマギ・ソガの連名で、この鉱石の確保依頼が陳情されていたからだ。
だからこそ、その入手難易度の高さが分かってしまう。
ヤナガワ参謀と協議した結果、調査チームの編成や派遣に莫大なコストがかかる上、満足いく質の物が手に入る確証も低く、確保計画を見送るしか無かったからだ。
だがそんなタケナカとは対照的に、アマギの顔は少しだけ余裕が見える。
「いえ参謀。実はもう、石の持ち主に見当はついているんです」
「なにっ?」
「皆さん、ダイモード鉱石は、アフリカの原住民が使っている……どこかで聞き覚えがありませんか?」
「……アフリカの原住民!?」
「そうよ! そうだわ!」
アマギの言葉を聞いて、ハッとした様子のソガとアンヌが、フルハシの方へ振り向いた。
作戦室中の視線が、ただ一人困惑する巨漢へ集中する。
「……なんだい、アフリカの原住民と俺と、どういう関係があるんだ? そりゃ、俺の面はねぇ! ……あっ!? そうだ!!」
慌てて作戦室を飛び出したフルハシは、自室の扉を蹴破らん勢いで開け放つと、ベッド脇の引き出しから、ハンカチで大事に大事に包んだモノを取り出した。
武骨な指で布切れを払い除けると、その下からは、夏の大空の如く澄んだ鉱石が、電灯の光を反射してキラリと顔を覗かせた。
まさしく青天の霹靂。
「あった…!! ……神様、神様!!」
フルハシは瞳を僅かに潤ませて、この呆れる程の幸運と偶然を、それを彼に齎してくれた全てに向かって、心の底から感謝した。