転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
空にあったセブンが幻であったら、いったい本物のセブンはどこにいるのか。手がかりは全くつかめない。夜明けは近い!
「くそう……あとはセブンを見つけてこいつをぶち込むだけだってのに……」
「肝心の本人が見当たらないんじゃなぁ……」
作戦室で悩むフルハシの袖を、誰がが引っ張る。
「ん? ナツさん……申し訳ないけど今はね、相手してる余裕がなくってさ」
「違うわ、フルハシさん。見くびらないで。アタクシだって地球人の端くれ。今まで散々セブンに助けて頂いたのは変わりないんだから、その恩を返す義理は、アタクシにだってあるはずよ」
「義理ってねぇ……」
「要はセブンの場所が知りたい。セブンの場所っていうのは、あのヘンな動物の巣を見つければいいんでしょう?」
「ナツさんにかかりゃ、ガッツの秘密基地も、枯れ枝で出来てるみてぇに聞こえてくるなぁ……」
「おんなじよ、おんなじ。ジバチの巣をどうやって見つけるかご存じ? 匂いでおびき寄せたハチに、紐を結わえた餌を運ばせて、それを追いかけるのよ」
「ほーん、匂いねぇ……ガッツ星人が涎たらして飛びつきそうな餌がありゃな」
「いるじゃない、ここに」
そうしてナツコは、その場でくるりとターンを決めて見せた。
「……え?」
「あちらはニセモノの石を掴まされてカンカンに来てる筈だワ。そこへアタクシがフラフラ出て行けば……」
「そりゃあ名案だ! ……とでも言うと思ったかい? ナツさん、いくらなんでもそりゃあ危険過ぎるよ」
「でも、他に手がありまして? それにね、カンカンなのはアタクシもおんなじ。あちらさんに一泡吹かせてやらないと気が済まなくってよ」
「おいおい……」
「それに……いざとなったら、フルハシさんが助けてくれるでしょう?」
「参ったなぁ……」
参ったなぁ……じゃないよフルハシ先輩。
こういう流れだったのか、あの作戦。
いやはや、流石のナツコ女史だ、感服いたしました。
発信機つけたナツコさんの車を囮にして、その後ろをフルハシがポインターで追っかけるというすげえ原始的な作戦……原始的すぎて逆にガッツ星人にブッ刺さったアレは、ナツコさん側からの発案だったか。
「でもね、その必要はありませんよ、お二人さん」
「ソガさん!?」
「良かった……なんか策があるんだな!?」
「ええもちろん。……ナツコさん、貴方は地球人の鑑だ。その覚悟は立派なもんだよ。俺は敬意を表する。貴方みたいな人が沢山いるから、きっとこの地球はずっと勝ち続けてこれたんだ」
「ソガさん……」
「でもね、今回ばかりは俺に活躍を譲ってくださいな。民間人を盾に使ったとあっちゃ、ガッツ星人に面と向かって啖呵が切れなくなっちまいますから。そりゃあ、どうにもならない時は、喜んでお力をお借りする所なんですが……まだ、俺の手札は品切れちゃいないんでね」
「……仕方ありませんわね。今回は大人しくしておきますけれど、そのかわり……期待してよろしいんですね?」
「お任せください!」
俺が自信満々に取り出したるは、紙切れ一枚!
「……これは、電報?」
「ええ、誰からだと思います?」
「おや、マナベ参謀から返事が来たか」
「タケナカ参謀……いくらなんでも解答がお早いですよ……」
「マナベ参謀からだって?」
参謀や隊長の声に、皆が集まってくる。
「我々は現在、セブンの居場所が分からんわけですが、まあガッツ星人のおひざ元に居るだろう、という事は何となく察せます。つまり、セブンを見つけなくとも、ガッツ星人の居場所が分かれば、その周辺を探せばいい」
「ガッツ星人の潜伏場所だって、正確な位置は分からんぞ」
「いいや、分かるね。なんせ奴らはその手がかりをずっと垂れ流し続けてる……時にアマギ、セブンの通信はあのあともっかい拾えたかい?」
「いいやまったく。あれからずっと妨害電波で邪魔されっぱなしだ」
「いいねぇ! じゃあその妨害電波は誰が出してる?」
「それはもちろんガッツ星人が……いや、まてよ……妨害電波?」
「防衛軍には、妨害電波に滅法強い兵器があったよな?」
「……新兵器、キリー!」
「うむ、あれなら逆に、妨害電波にくらいついてゆく……」
多分、ガッツがやってるのは、ノイズジャミングとかいう、ばっちくそに強力な電波で他の電波を上から塗り潰すタイプの電波妨害だ。
ふつうは特定の周波数帯に向けてやるもんだが、なんとガッツ星人様はそれを全帯域に向けてやっている。流石としか言いようがないが、単純であるが故に対処が難しい。
対抗するには、間に何個も中継点を設置したりとこれまたゴリ押しで対処するしかない。本編のフルハシカーは、その後ろに何個も地上部隊の通信所があったからこそ成せた技だろう。
ところが、この方式はその強力さ故に、周囲からはその発生源が一目瞭然となってしまうという欠点がある。ガッツ星人にとったらデメリットでも何でもないけど。
ようは大声で『俺が一番強いぞー!』と叫んでいるようなものだ。電波妨害の仕方まで、自己顕示欲の塊みたいな奴らである。
そして今回はそれが仇になる。
新兵器『キリーミサイル』
いつかの散歩する惑星を、進退窮まったマナベ参謀が、これを使って吹き飛ばそうとした事があったが……結局使われないまま死蔵されていた。
特筆すべきはその威力……ではなく、妨害電波にくらいついていく、という特性の方だ。
分類としてはパッシブ方式と呼ばれる誘導方式になるんだろうが……普通、このタイプのミサイルは、撃つ前に、目標となる周波数を入力してから撃つ。そうしないとあっちゃこっちゃ飛んで行ってしまうからね。
ところがキリーはそんなまどろっこしい事しない。撃ちっぱなして、ハイ終わりだ。
内容がなんであれ、一番強力な電波の発生源に向かってひたすら飛んでいくように設計されている。ある意味で狂ってると言えなくもないが……この世界じゃ一番理に適っているとも言える。
なんでって? 大抵の敵が、未知の周波数を使ってて、かつ、地球のどの周波数よりも強力な電波を巻き散らしてる事が多いからだよ!
具体的にはユーフォ―とかUFOとかゆーえふおーとか! たまにキングジョーとかまで飛んでくるし。
だから敵がいるタイミングで引き金を引いたら、十中八九敵に向かって飛んでいくやろ……みたいなゆるゆる設計思想で作られているのが、このキリ―ミサイルちゃんである。参ったね。
一応、基地のミサイル系統の装備は、陸軍の管轄だから、使用許可はマナベ参謀に貰わないといけないのだ。
「今この瞬間、地球上で一番強い電波を発してるのは、間違いなくガッツ星人ですから、奴らの所へすっ飛んでいきますよ」
「しかし、その隣には今度こそセブンがいるんだぞ……」
「大丈夫大丈夫、さっきの見たでしょう。キリーミサイルだろうが変わりませんよ。俺達の大事なセブンは、ガッツが必死こいて守ってくれますから。むしろ、こっちも死ぬ気で攻撃しないと、俺達が行くのがバレてしまいます。ガッツには、『え、まさか地球人、火力で押し通るつもりなの?』って思って貰わなきゃ」
「うーむ……」
その点、キリーの大火力はおまけとはいえ、良い隠れ蓑になるかもな。
「本命はあくまでも我々です。マグマライザーで地下からバリアの中に潜り込んで、マグネリウムをピピーっとね。キリーもマグマも、どちらもガッツ星人の知らない初見殺しです。だからこそうまく行きます。この作戦に全てをつぎ込むべきです! ……奴等はね、既知では絶対に殺せないんです。常に未知をぶつけ続けて、訳が分からないうちに不意打ちで素早く殴り倒してしまうしかない。そういう手合いですよ」
「……よし、こうなったら全火力をガッツへ集中するより他あるまい。内陸へ砲撃可能な全艦艇を、最寄りの湾港へ集結させられないか試してみる。砲兵隊の指揮は、マナベ参謀が採って下さるだろう。君達が突入するまでの目くらましくらいは、任せてくれたまえ」
「了解いたしました。諸君……この作戦にセブンの、ひいては地球の命運がかかっているのだ。いいな! 総員出動!」
「了解!」
「ナツさん、ここで待っててくれ。俺達がきっと、セブンを助けてくるから!」
「フルハシさん、気を付けて!」
―――――――――――――――
かくして、地球防衛軍の総力をあげた、盛大な反抗作戦が開始されようとしていた。
極東基地の側面、崖にカモフラージュされたミサイル発射口が展開し、ランチャーに懸架された二本のキリーミサイルが、鋭い切っ先を露わにする。
それだけではない。
基地の各所に隠されていた、ありとあらゆる発射口が開いては、今か今かと攻撃の時を待っていた。
「全サイロアクティブ」
「各セクションのミサイルハッチ、一番から八番、解放確認!」
「よろしい。キリー以外の誘導兵器は、まだ諸元入力しなくていい。第一射の着弾地点が確認出来次第、観測結果を元に地点爆撃を行う」
「ハッ! 再通達します」
「各駐屯地、全兵装オールクリア」
「マナベ参謀からも各部隊展開完了との事です」
「……キリヤマ隊長、そちらはどうか?」
「準備完了。いつでもどうぞ」
「うむ。……これより作戦を開始する! キリーミサイル、発射!」
「発射!」
その言葉と共に赤いボタンが押し込まれ、極東基地から一本の矢が放たれた。人類の反撃を知らせる鏑矢が。
拘束から解き放たれたキリーは、しばらく中空をひた走っていたが、やがて、ひとところから強烈な電波が発されている事に気付いた。
嗚呼、我慢ならん。
驕り高ぶった者達が、その所在を所構わず喧伝しているではないか。キリーミサイルは忽ち怒り狂って、そちらの方角へ向け、一直線に飛んでいった。
飛んで飛んで、ひた走って。推進剤の許す限りの速度で、風を切り、音を置き去りに、彼我の距離をあっという間に飛び越えて……
轟音。
泉ヶ丘西方の崖っぷちを、とてつもない衝撃が揺さぶった。
キリーは核兵器ではないものの、直径1キロの浮遊島を余裕で消し飛ばす事が出来るのだ。
例え夜間飛行であっても、周辺を哨戒していた偵察機からは丸見えであったし、泉ヶ丘を遠巻きにしていた歩兵分隊からでも、もはや双眼鏡を必要としない程度に立派な爆撃マーカーが屹立していた。
妨害電波によって、レーダーと通信網が妨害されたとしても、まだ人類には立派な目と手足があった。
たかがその程度の妨害では、この野蛮な種族に戦いを諦めさせるには、全くもって足りていないのである。
「キリー着弾!」
「火球は空中で発生したとの報告あり。目標地点には、常時バリアが展開されている模様!」
「各部隊からの観測情報、来ます」
「集計値より、敵本陣はポイントD-40-kと推定」
「よし! 聞いたな!?」
「ハッ! マグマライザー、発進!」
「位置情報を各部へ通達。マル・サン・ヨン・ゴー時点で総攻撃を開始する。時間合わせ!」
ここからが正念場だ。
警備隊の到着まで、ガッツ星人の興味を引き続けなくてはならない。
「……時間だ。ミサイル
タケナカの号令で、極東基地の持ち得る、全ミサイル攻撃能力が唸りをあげて発揮されていく。
各駐屯地からも同時発射された、大小合わせて計数百発のミサイル群が、ガッツ星人の潜伏場所に殺到した。
しかし、地上から伸びた光の奔流が、上空をひとなぎすると、バリアに阻まれるまでもなく、その全てが火球へと変わった。
「ミサイル、全て迎撃されました」
「流石だな。……しかし、分かっていた事だ。ウエノ通信士!」
「ハッ!」
「第一、第二打撃戦隊に、艦砲射撃を要請せよ」
「了解!」
沿岸に停泊していた戦艦群に対し、手旗信号が送られる。
「参謀直々のご命令だ。一発も外すんじゃないぞ」
「丘の上で止まっている相手に、どう外せと仰るのです」
港に大輪の華が咲く。ガッツ星人の透明なドームが、横合いから凄まじい速度と質量でもって殴りつけられる。
それでもビクともしないバリアー。まさに人智を超えた技術なのだ。
「艦砲射撃の第一射、敵のバリアに防がれました!」
「狼狽える必要はない。我々は粛々と役目を果たすのみだ。次の装填まで、攻撃を引き継ぐぞ」
前線指揮所でマナベが沈着に指示を下す。
泉ヶ丘一帯をぐるりと取り囲んだ砲兵隊は、彼の素早く構築した電信網によって、その全てが掌握下にあった。
「第一から第八陣地は、目標地点に30秒間の自由砲撃を加えよ。座標の振り分けは把握しているな?」
「問題ありません」
「よろしい、第九以降の陣地は別命あるまで待機せよ。これより砲撃を開始する」
マナベの計算され尽くした統制射撃が、ガッツ星人のドームに降り注ぐ。グリッド状に細分化された敵陣に、余すところなく、かつ、一切のムラなく均一に、鉄の雨が降り注ぐ。
練度に裏打ちされた名人芸は、とある目的を孕んだものだ。すなわち、敵のバリアはどこまでの範囲を覆っているのか?
不可視のバリアも、その範囲外にある地面を砲撃から守る事は出来ず、バリアの外だけは、無惨に耕し尽くされていく。
そうして、その様子を歩兵隊がしっかり観測し、後方にフィードバックしていくのだ。
そして。
「敵からの迎撃が止みました」
「今だ! ミサイル第二陣、発射!」
流石のガッツ星人も、ミサイル以下の体積で飛翔する砲弾に対して、いちいちその全てを撃ち落とそうとはしないのではないか。タケナカの読みは当たっていた。
なぜなら、彼らのバリアは非常に強固であるが故に、そうする必要がないからだ。
そして、その油断こそが、人類の付け入る隙となる。
艦砲射撃や砲兵隊の爆撃が降り注ぐ中、発射されたミサイル群。それをガッツ星人は素通しした。
地球人の火力では、自分達の防御が抜けない事を、この時点で確信していたからである。
位置がバレた後の初手は、何が飛んで来るか分からない為に迎撃したが、なんの事は無い、最初の一発が一番威力のあるものだった、というのは些か拍子抜けと言うべきか。
そんな余裕と共に見守っていたミサイル群が、一斉に赤い雲を吐き出したのを見て、ガッツ星人は思わず舌打ちを禁じ得なかった。
……小賢しい真似を。
地球防衛軍は、ガッツ星人が迎撃を止めたころを見計らって、特殊噴霧装置付きのミサイルを織り交ぜたのだ。
不可視のドームが赤く色付き、その全容を露わにしていく。
「上手くいったぞ! 上空の爆撃編隊に発光信号を送れ!」
「はいっ!」
基地のサーチライトが、最大出力で明滅し、作戦空域のギリギリを旋回しつつ待機していた、大型爆撃機の群れにゴーサインを届けた。
「待ちくたびれて、帰ろうかと思ってたところさ」
彼らは、各飛行場からスクランブル発進した、寄せ集めの特別編隊である。
腹の爆弾槽には、それこそ各基地からかき集めた、ありとあらゆる兵器が満載となっており、重力に引かれてのダイビングを、今か今かと待っていた。
「全機、不法投棄のお時間だ。……お行儀悪くいこうぜ」
でっぷりと太った鴉達は、真紅に塗られた廃棄場の真上に到達すると、抱えていた荷物を一斉に投下した。
別に比喩ではない。
なぜなら、彼らの運んでいたのは、その殆どが年代物の爆発物であり、老朽化によって廃棄処分間近のものばかりだったからだ。
爆薬の廃棄処理というのは、実はそれなりにコストがかかる。例えどんな物でもゴミを捨てるには金がかかるものなのだ。……そう、金が。
ところが、それをなんとタダで全て引き受けてくれる者がいるという。備蓄は必要だが、古くなればなるほど、不発弾のリスクが高まり、実戦では新しい物から使われていく。この爆撃編隊を、一体誰が差配したかは言うまでも無い。
ましてや、各地の爆撃隊は、迎撃戦闘機に比べて出動機会が圧倒的に少ない。
なぜなら、セブンやウルトラ警備隊が迅速すぎて、彼らが爆装している間に事が全て終わっている……なんて事がザラだ。
後詰めの悲哀というべきか……贅沢な悩みであるのは重々承知だが、地球上の怪獣が一掃されてからこっち、彼らの活躍は余りにも減ってしまった。
それこそ怪獣頻出期は花形であったのに。
そんな鬱憤を晴らすかの如く、不良在庫の絨毯爆撃は驚く程に濃密に、かつ、執拗に成された。
勿論、全てが中古品と言う訳では無い。一部には、最新式の化学兵器や、特殊兵装、果てはEMP弾擬きのような物まで、盛大に落っことして行く。
……その全てが、正式採用の見送られた失敗作だったり、技術的知見を得る為だけに作製された試作品であったり……生産ラインに載っていない記念品の類である、と言う点に目を瞑れば、まさに新兵器のオンパレードだった。
ガッツ星人からすれば、僅かな可能性に賭けた地球人が、あの手この手でこちらを攻略しようとしているように見えた為に、その闘争意欲を非常に満足させる良質な出し物だったのだが……彼らはヤナガワという一人の地球人から、体の良いゴミ箱扱いされた事に、まだ気付いて居なかった。
ガッツ星人は、その崇高なる足掻き様で、こちらを満足させた礼として、白んでいく空に、高度を上げて去って行く爆撃編隊へ、対空砲の照準を合わせるが……再びの轟音と共に、大量の土砂が巻き上げられ、興が削がれてしまった。
二本目のキリーミサイルが着弾したのである。
ガッツ星人は、流れるような連携に賞賛を送りつつ、しかして効果の無かった地球人の攻撃を嘲笑うと、セブン処刑の準備を着々と進めていく。
エネルギーが無くなったとはいえ、M78星人の肉体は強靱だ。
まずはその自己認識を塗り潰してやるところから始めなくては。
赤く色付いたドームの中で、楔型のドローンが三機、悠々と浮かび上がり、十字架に納められたセブンの頭部に、粒子状の自我崩壊因子を浴びせていく……
ガッツ星人は、セブン処刑という地球における最大の目的を前にして、興奮の最中にあった。
だから、気づけなかった。
ドームの中で、地面が僅かに隆起していく事に……
――――――――――――――――――
「隊長、振動音が消えました!」
聴音機に繋がれたヘッドホンを耳に当てながら、フルハシが振り返る。
「よし、ここだな。マグマライザー上昇!」
「了解!」
キリヤマの号令に合わせ、アンヌがレバーを引くと、マグマライザーの車体が徐々に傾き、上へ上へと登っていく。
エネルギー管理に専任しているアマギが頷いた。
「マグネリウムエネルギー、安定しています。いつでも撃てます」
「よし、後は任せるぞ、ソガ」
「……はい!」
レティクルを操作する指が、手袋の中で汗ばむのを感じる。
そして……
一瞬の浮遊感と共に、俺達の視界が、一気に開けた。
銀のドリルで岩盤を穿ち抜き、マグマライザーが地上に姿を現したのだ!
参謀達主導の総攻撃は、ガッツ星人への目眩ましという目的とは別に、もう一つ、ある重大な狙いがあった。
それは、地中潜行中のマグマライザーに、浮上地点を教える、というもの。
ガッツ星人のバリアは凄まじい。
全ての攻撃を遮断するだろう。
それはつまり……バリアの内側に入れば、砲撃による音も振動も地下まで全く伝わってこない、という事だ。
通信は効かないし、地中にいるので目も見えない。そんな我々にどうやってバリアドームの境目を知らせるかと言うと、バリアやその周辺の地面を延々叩き続けて、音が聞こえなくなったら、その上にドームがあると分かる。
めっちゃ簡単でしょ?
「アッ! セブンだ! ケースに捕まっている!」
「今度こそ本物だろうな!?」
「大変、もう攻撃されているわ!」
「じゃあ本物だ!」
エンジン出力を上げて、どんどんセブンに接近していくマグマライザー。
こちらに気付いたのか、ドローンの1機がこちらに機首を向けて、レーザーを撃ってくる。
「きゃあっ!! ……負けるもんですかっ!」
ハンドルを握るアンヌが、アクセルを全開に突撃する。
レーザーが車体に直撃するが、それでも怯まず前進あるのみ。
機体の装甲自体が、空力特性を得るための重要なファクターになるホークと違って、マグマライザーの車体は破損しても、直ちに走行に影響がない。
地中潜行中はモノコック構造がモノを言うが、被弾時はブロック状に仕切られた内部構造が空間装甲のように働いて、中枢部を堅く防御する。
機体表面に穴が開こうがどうしようが、エンジンさえ無事なら、ひたすらにタフだぜ、こいつは!
「俺達を止めたきゃ、富士山でも持ってきな!」
「そのままつき進め!」
装甲版が弾け飛び、各所から炎を吹き出しながらも前進し続けるマグマライザーを見てとり、ドローンはセブンを攻撃するのを止め、三機で取り囲み、その機体の最も脆弱な部分を狙い撃った。
戦車の泣き所は足回り……すなわち、前輪の車軸と、キャタピラ部分である。
「やめて! やめなさい! うううう……!! ああっ!」
「うわあっ!」
履帯が千切れ、タイヤがごろりともげていく。
それでも余力で数メートルは進んだものの、ついに停止してしまうマグマライザー。
「くそっ、駄目か!」
「……いいや」
スコープを覗き込むソガが、ニヤリと笑う。
彼の目には、ぐったりと項垂れる巨人の額、今は明かりの消えてしまった緑のランプがしっかりと見えていた。
「遅かったなあっ!」
彼がトリガーを引くと、黒い土竜の鼻先から、青白い光が帯のように放たれる。
それは、狙い違わずセブンの額に吸い込まれ、警備隊の面々からは、赤い巨人の体が、一瞬輝いたように見えた。
「いっけぇええええ!!」