転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
沖合いのグローリア号は、依然として対地攻撃を続けている。
ダン達のいる海岸だけでなく、近くの漁村にも無数の砲弾が着弾し、恐ろしい被害を出していた。
しかし、グローリア号の浮かぶ海面に突如として噴き上がる水柱!
ホーク1号の上空支援が開始されたのだ!
ターゲットを対地攻撃からホークへ移すグローリア号。
そもそも、シンイチ少年を回収に向かった同胞達の、撤退支援の為に浮上したのだ。
まんまと彼らが逃げおおせた以上、地上への攻撃は優先度が低い。
「今だ、ここは僕に任せてください。みんなは住民の避難を!」
「分かりました、モロボシ隊員。ご武運を!」
ホークが潜水艦を引きつけている間に、海岸へ走るダン。
海上では壮絶な撃ち合いが行われている。
「フルハシ隊員、グローリア号の前面に飛び出しては駄目です。背後の死角から攻撃しましょう」
「そうは言うけどな……今日はなんだか調子が狂って仕方ねぇんだ」
「やっぱりか……アルファ号の3番エンジンだけ出力調整が甘いようですね」
「……アルファ号だと? ガンマ号じゃなくてか?」
「いったい、いつまで予備機のつもりなんですか! 元のアルファ号は、昨日オーバーホールから帰ってきたでしょう! 今、僕らの乗っているのが、正真正銘のアルファ号ですよ!」
「……ああっ! そうか、それで妙に感覚が違うと思ったぜ! 合点がいった!」
アルファ号は、ガッツ星人に手酷くやられた影響で、長期間のオーバーホールに入っていた。
昨日までは予備機を使っていた関係で、番号が繰り上がっていたのだが……フルハシは、ようやく慣れた予備機の機動におけるちょっとしたクセが、どうにも邪魔をしてしまっているらしい。
異星人の円盤を墜とす為に開発された、偏執的とも言えるグローリア号の対空砲火の前では、その微妙なズレが致命的な隙を作ってしまった。
「あっ、やられた!」
「ちくしゃう、ガンマ……いや、アルファ号を捨てよう!」
「僕はベータ号へ!」
「俺はガンマ号へ行く! ……クソッタレ、返して貰った途端にまたオーバーホール送りか! 俺としたことが、ずいぶんヤキが回っちまったぜ」
しかし、分離した事が功を奏したのか、グローリア号の死角から挟み撃ちにする事で、敵を翻弄していくフルハシとアマギ。
グローリア号は設計上、単一の敵に対しては絶大な火力を発揮できるが、複数の敵を攻撃するのは向いていない。
元々が単艦運用するのではなく、複数艦で互いの死角をカバーしあうつもりだったのが災いした。
中に乗っているノンマルト達は、グローリア号を奪ったは良いものの、種族的に戦い慣れしていなかった為、目標をどちらに絞るか決めあぐね、咄嗟の判断が付けられなかったのだ。
迷った末、彼らは大人しく撤退する事に決めた。
海面が泡立ち、海底怪獣ガイロスが姿を現す!
殿としてノンマルト達が呼び出したのだ。
「あっ! ガイロス!」
「あのタコ野郎……生きていたのか! ソガの奴め、自分で言った癖に、トドメを刺し損ないやがった!」
「……いや待って。見て下さい、奴の触手を!」
アマギが注意深く観察すると、ガイロスの触手は八本全てが揃っているではないか。
「奴の触手は僕達で一本千切ったハズです。それが揃っていると言う事は……我々の倒したものとは別個体かもしれません!」
「なんだと!? チクショウめ、海底にはあんなのがウジャウジャいるってのか!? たまらんね!」
ガイロスが岸辺に向かっていくため、二人はグローリア号を追跡するのを諦めざるを得ない。
村は先ほどのグローリア号による砲撃で、無数の家屋が倒壊している。
防衛隊員達が救助作業を行っているが、そこへ怪獣が上陸したら、さらに被害が拡大してしまうだろう!
彼らにガイロスを野放しにする選択肢は無かった。
怪獣を攻撃する為に接近したアマギが、冷静に敵の能力を看破する。
「ははん……カラクリが分かりましたよ、フルハシ隊員。奴は再生したんです」
「じゃ、やっぱり仕留めきれてなかったのか! あれだけロケット弾を撃ち込んだってのに、やっこさん不死身かよ!」
「いいえ、逆です。腕を再生したのではなく……腕から再生したんですよ!」
「なんだと!」
アマギは、眼下の怪獣の持つ触手が、脇腹の一本だけ異様に長く太い事を見てとった。
その不釣り合いな腕が生えているのは、奇しくもあの時に千切れた……いや、千切れたと思った場所と、同じ部分なのである。
一本だけが大きいのではなく……それ以外が一回り小さいのだ!
「さっきの戦いでは、我々が腕を切ったんじゃない。身の危険を感じて、奴の意思で自切したんだ、きっと!」
「トカゲのシッポみたいにか?」
「タコの腕も同じ事ができますし、再生する事も知られています」
「腕から頭まで生えてくるって!?」
流石にタコの再生力はそこまでではないが、同じく海の生き物であるヒトデならば、千切れた腕の一本から残りの体が生えてくる事をアマギは知っていた。
改めて見てみれば、ガイロスはタコと言うよりはクモヒトデか何かのようにも見える。
どちらかと言えば頭足類ではなく、棘皮動物に近いのかもしれない。
さらに記憶と照らし合わせて観察すれば、確か目元にあたる部分には、口かと見紛う程にひときわ大きな吸盤があったはずだが、今はそこに不揃いな肉腫が盛り上がるばかりで、あたかも口髭を蓄えたかのようになっている。
まだ再生が完全ではないのだろう。
「タコの足は、一本だけは繁殖用だともいいますからね」
「じゃあ奴が腕を落とさねえように戦わなくちゃならねえのか?」
「もしくは切断面の組織をレーザーで焼いてしまうか、です」
「そっちのが簡単だ!」
フルハシはそう言うが、敵はしぶとい。
上陸を阻止しながら、分裂能力までケアしながら戦うとなると、ホークの燃料と弾薬が保つかどうか……
何せ今は分離してしまったので、それらの残りも三分の一になってしまっているからだ。
だが、実を言うとアマギは、今この地球に、あの怪獣をより簡単に始末する方法が存在する事を知っている。
それは……アイスラッガー。
ウルトラセブンの持つ、あの宇宙ブーメランは、凄まじい熱量で白熱するため、切断面が灼かれてしまうと言う特性を持つ。
そうでなければ、エレキングやテペトの出血があの程度で済むハズが無い。
熱でたんぱく質が変質してしまえば、そこから再生する事はもはや不可能だ。
アイスラッガーで切断される事は、あのガイロスにとって、さながら吸血鬼が心の臓へ銀の杭を打たれるような物である。
しかし、ここまで考えて、アマギは頭を振り、思考の全てを端へと追いやった。
なぜなら、ノンマルトの主張がもし、本当だったとしたら……果たしてウルトラセブンはここに現れるのか?
人間にその力を貸してくれるのだろうか?
むしろ……
あの白銀の刃が、こちらへ向けられる事がないと言う保証は、一体何処にあると言うのだろう?
地球人は、彼に守って貰う資格があるのか?
そんな恥ずべき疑念が、彼の脳裏に浮かんで仕方なかった。
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ガイロスが現れた事で、ダンは人々を守るべく、ウルトラアイを装着しようとした。
その時、ダンの前に、シンイチが現われる。
「君!?」
「ノンマルトは悪くない! 人間がいけないんだ! ノンマルトは人間より強くないんだ! 攻撃をやめてよ!」
ダンはシンイチの視線から逃れるように別の岩陰へ移動し、ウルトラアイを掲げるが、またしても目の前にシンイチが先回りしていた。
「やめて! やめて!」
ダンの背中に、少年の声が追い縋る。
「ウルトラ警備隊のバカヤロー!!」