転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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ノンマルトの使者(Ⅴ)

 

次の瞬間、俺達は応接間に戻ってきていた。

 

目の前には、ヤオが驚愕の表情で座っている。

 

「ソガ隊員! さっきの言葉は……! 卑怯ですよ!」

 

「ええ失礼。実はあなた達ノンマルトが、テレパシーによる接触を図ってくるのは予想していましてね。まあ、悪用する気がなかったのは、結構な事でしたが。例えその気があったとしても、我々には催眠解除装置がありますので、私を洗脳してどうこうしようとしても無駄だった訳です。いやあ、試すような真似をして申し訳ありませんでした」

 

「え? あ……ええっ!?」

 

俺が急に澄ました顔で、訳分からん事を言い出したから、ヤオが目を白黒させて慌てている。

 

ほんま、そういうとこやぞ。

 

ノンマルト、腹芸弱すぎ問題。

縄文時代で、外交術の進化が終わってるような海底人なら、それが当たり前なんだがな。

 

原作での支離滅裂さを考えたら、ヤオはこれでもまだ良くやってる方ではある。あるが……

共犯者として甚だ不安になってくるわ……

 

「さて……あなた達がかつて、侵略者によって肉体と精神を強制交換された挙げ句、奴隷として海底に押し込められたアトランティス人だ、という主張は理解しました。現生人類の文化や思想が、もとはその侵略者由来の物だという事もね」

 

「え、ええ……」

 

「そして、支配層から侵略者が消えた後も、ノンマルトは細々と地上へコンタクトを試みたが、一顧だにされず、あげくの果てには、当時の支配者達からガレオン船団による逆侵攻を受けたので、これをガイロスにより撃退し、以後国交断絶に至る……と。私の理解は概ねこのようなところですが、お間違いありませんか? ヤオ代表」

 

「はい……それは、そうですが……」

 

いいからキョロキョロすんな。

余計な事言わずにじっとしてろ。

 

めっちゃ怪訝そうな顔で、しきりにアイコンタクト取ろうとしてくるが、彼女の内心はテレパシーなんぞ使わなくても分かる。

 

多分、『それもう言っちゃうの?』だ。

 

いいんだよ。むしろ、今からさっきの話を、もう一回する方が白々しいわ!

 

話してないフリと、聞いてないフリ。

出来るんか? お前。

 

「ソガ隊員……?」

 

「ハァ……」

 

出来んやろなぁ……

 

こんな足引っ張りを抱えて、海千山千の参謀達の前で一芝居打つなぞ、御免被る。

 

俺のソロ芝居ですら、いつ見破られるかハラハラもんなんだぞ。

 

とりあえず、絶対に隠さなきゃならない部分以外は、もうオープンにぶっちゃけて、実態との差をなるべく無くすしかない。

 

あたかも、俺がイニシアチブを取ったかのように見せつつ、ヤオ達の主張を別室の上司達に伝えなければ。

 

……本当に使者の仕事か? これが?

超過労働手当てを、請求したい。

 

「それで? あなた達ノンマルトの要求はなんなのです? 地上返還などを求める気は無い、と仰いましたが」

 

「我々はただ……生きたい。それだけです。生存圏を脅かされる事なく、自分たちの暮らしが、したい……」

 

「ふむ……しかし、ノンマルトの攻撃によって、地上側も死者を出している。それは、ご理解いただけますね?」

 

「はい。わたくし共が過激派を抑える事が出来なかったが故の、失態です。本当に申し訳ないと思います。後で、遺された者達にもお詫びをしに行こうと……」

 

「待った待った。……ははあ、ノンマルト的にはそうなる訳ですか。どうも我々は、価値観や認識にズレがあるようですな」

 

「ズレ? と仰いますと?」

 

「ま、種族や歴史の違いから来るものでしょうが……賠償の仕方については、後ほどご相談していただきましょう。少なくとも、ヤオ代表がその足で頭を下げに行くのは、よした方がいいでしょうね」

 

「そういうものですか……」

 

ヤオが項垂れた隙に、応接室の鏡に向かって首を竦める。

完全にお手上げのポーズ。

 

頼む、隊長! 伝わってくれ……!

 

コイツら、俺達が想像するより、遥かに救いようがないです……っ!

 

基本的に、幼稚園児か小学生だと思って接してやってください!

 

参謀! 賠償請求の件……ほんとお願いしますよっ! 養命酒御供えするから!

 

「ええと……過激派はなぜ、我々人間を攻撃し始めたのです?」

 

「それは……地上人はノンマルトの領域を侵した上、大地を固定しようとしました。それでは、我々の使うエネルギーが、届かなくなってしまう。海嶺から噴出したウルトニウムが、海溝に沿って流れてくるのを、我々は回収していましたから」

 

「……そうなの?」

 

「ええそうです。なぜこの地球上で、これだけ土地の狭い日本にばかり突出して、怪獣の出現が多いか考えた事はありますか? 彼らは、巨体を維持する為に、膨大なエネルギーを必要とします。だから普段は、地底奥深くで眠っていますが……地表付近にウルトニウムが溜まりすぎると、それに惹かれて集まってくるのです。日本は、周りが海溝に囲まれているから……我々が回収しなければ、あっという間に地中がエネルギーで飽和してしまうでしょう」

 

「マジ……?」

 

「はい……まじ? です」

 

思わず、鏡の方を見てしまった。

なかなかぶっこんでくるやんけ……

今そんな事言わんといてくれるか?

 

「あなたがた地上人は、地球の怪獣を一掃したと思っているようですが、それは比較的浅い場所にいた者達でしかなく、ザバンギが抑えている地層の下では、さらに多くの怪獣達が眠っています。そうですソガ隊員、現に我々ノンマルトの都市が破壊された後は……」

 

「わー! ストップストップ! あんまりね、一度に言われても僕たち困っちゃうからね、そのへんにしといてね~」

 

「……そうですか」

 

とりあえず余計なことまで口を滑らせそうだったので、慌ててヤオを押しとどめる。

いや、そんな不服そうにされてもね……

 

それとも、わざとやってる? 

いや、そんな意趣返しが出来るなら、最初からこうなってないな。

この天然が。

 

「……というか、そういう事なら、ちゃんと言ってくれりゃ良かったのに……今だってこうしてさ」

 

「証拠がありません。あくまで我々の主張でしかない上に、先程のビジョンも因子……相性の良い方にしか見せられませんし……どうせ信じては頂けなかったでしょう」

 

「……チッ。だったらもっと前から協力しとこうや、そこは! 今までだって、いくらでも機会はあっただろ」

 

「協力、ですか?」

 

「それこそ、ミミー星人の時なんて何やってたんだよ。あんたらの縄張りだって、ずいぶん荒らされたはずだ。その時に共闘でもなんでもしときゃあ、ポッと出の宇宙人とは思わなかったよ、こっちは。今までさんざん地球の危機をスルーして、俺達ばっかり戦わせたくせに、ムシが良すぎるとは思わ……」

 

そこまで俺が言った時、ヤオの頬にサッと赤みが差したかと思えば、剣呑な表情でこちらを睨みつけてきた。

 

その拳は、膝の上で堅く握りしめられ、何かを耐えるように下唇を噛んだまま、わなわなと震えている。

 

「な、何だよ……」

 

「くッ! いえ、なんでも……ありません……ッ!」

 

なんだ? まさか地雷踏んだ?

 

「文句があるなら、言ってみろよ。聞いてやろうじゃねえか」

 

「……でしたら、お言葉ではありますがっ! わたくしたちは、戦いました! あの、おぞましくて凶暴な宇宙エイが襲来した時! わたくしたちは、必死で戦ったんです! アレを都市から遠ざける為に、どれだけの狩人が死んだとッ! ガイロス達だって、たった一匹を遺して無惨に食い散らされました! そ、それを……!」

 

「え、エイ……?」

 

「あなた方地上人は、あらかじめ警告を貰ったんでしょうが、我々には誰も……教えてくれなかったっ! ほとんど奇襲のような形で、アレに、襲われて……集落が、ふ、二つもいっぺんになくなったんですよ!? たまたま狩人が、変な喋る人形を拾ってきたから、残った全ての氏族を都市に結集させて……! それこそ地上人にとっては、船と飛行機で容易く殺せるような相手だったのでしょうとも! ですが、我々ノンマルトにとっては、まさしく悪魔のような敵だったんです……っ!」

 

「わ、分かったよ……」

 

さっきまでの、しおらしい態度から一転、殆ど金切り声で叫ぶヤオ。

完全にヒステリーを起こしてしまっている

 

「いいえ! 分かっておりませんわ! あの時は折悪く、盟友達も自分の事で手一杯で力を借りられず、わたくし共だけで対処せざるを得なかった……だいたい、あの怪獣が地上人の飛行機から攻撃を受けた時、海の中へ逃げ込んでしまわないよう、我々は命懸けで追い立てました! そりゃあ、地上人が倒してくれるかもしれないと、利用した事は認めます。しかし、結果として……そんな有様だったのに、今度はあの鉄のヒトデに立ち向かえと! そうおっしゃるのですか!? そもそも、海にあんな大きなゴミを沈めたのは、あなた達でしょう!? なんなら彼らは、海底を掃除してくれました……」

 

「悪かった、悪かったって……よく知りもしないのに失言だったよ、マジで」

 

泣きながらキレ散らかすヤオ。

よっぽど悔しかったと見える。

 

というかこいつ、はじめの大人しさはどうしたんだよ……

 

あ、もしかして……

 

「あの一件で、ノンマルトは大きな痛手を負いました……そもそもガイロスだって、岩を退け、土を掘り、集落の拡張を手伝って貰っていたに過ぎない……地上人が、怪獣頻出期などと呼んでいる時期も、わたくし達が力を失った何よりの……証明ではありませんか……わたくしとて、記憶が、もっと早く……戻って……いれば……」

 

……思うんだけどさ、ヤオ。

 

お前は……オレなんぞと精神感応なんか、するべきじゃなかったんじゃ……無いか?

 

その時、背後で扉の開く気配がする。

 

ヤッベ……

 

「すみません隊長、すぐに落ち着かせますから、どうぞ御容赦を……今のはね、俺が……わる……かっ……」

 

「ヤオ代表、今の言葉は、本当かね」

 

応接室の入り口に立っていたのは、キリヤマ隊長では無かった。

カーキの軍服に身を包んだ……

 

「ヤマオカ長官……」

 

長官は、俺を一瞥する事無く、ただ真っ直ぐに、泣き崩れるヤオを見つめていた。

 

「本当も何も、嘘など申しません……嘘をつくのは、人間だけです……」

 

「そうか、ではその怪獣というのは……もしやボスタングという名前では無かったか」

 

「えっ?」

 

「ボスタング……そう……そうだわ。あの人形はそんな事を言っていました……」

 

「うむ……」

 

涙を拭いながら頷くヤオを、じっと見下ろす長官。

 

なんだ? なんでわざわざ長官が……

 

「ノンマルトの主張。まだその全てを受け容れるわけではないが……少なくとも、彼女らがつい最近に地球へ来た、余所者では無いという部分を、私は信用する」

 

「長官!?」

 

「あ、ありがとうございます……しかし、なぜ……?」

 

「私も……あの場に居たのだ。ボスタングが砕け散る様は、この目にしっかり焼き付いておる」

 

「なんと!?」

 

普段の厳めしい表情を、まったく崩す事は無かったが、ヤマオカ長官の声音はどこまでも穏やかだった。

 

「海底からでは預かり知れぬ事ではあったと思うが、あの時の我々は、警告があったにも関わらず、半信半疑で準備が不充分だった。通達が遅れた為に、大型の貨客船が、海域から逃げ遅れてしまっていたのだ。あの船には、500人の乗客が乗っていた……」

 

「そんな事が……」

 

「航空隊の発進にも時間がかかる。ボスタングは音に反応するというので、救援が来るまではエンジンを止めて息を潜める事になり、一度は難を逃れたが……再び浮上した怪獣が、貨客船の方へ向かうのを見て、私達は囮として単艦で戦いを挑む事にした。あの時に、船上にいた全員が、死を覚悟したものだ。だが、結果として支援が間に合い、私はこうして命を拾う事となった……」

 

そう語る長官は、一瞬ではあるが、はじめて口元に小さな笑みを湛えると、踵を合わせ、顎を引き、実に見事な敬礼を送った。

 

「ノンマルトが航空隊の到着まで時間を稼いでくれていなければ、私の船はおろか、客船も沈み、さらなる被害が出ただろう。地球防衛軍を代表して、諸君らの勇敢なる戦士達に敬意を表する。彼らは、自らの仲間だけでなく、500人の命を救ったのだ!」

 

「あ、ああ……っ!」

 

「ボスタングが深く潜行せず、爆撃と艦砲射撃によって撃滅された事など、それを見た当事者しか知り得ない情報である。協力者があれほどに警戒していたにしては、やけに呆気ないと思っていたのだ。ようやく得心がいった。あれは、ノンマルトとの戦闘で、奴が傷付いていたからに違いない」

 

「そんな……ことは……」

 

ヤオは口元を押さえて、嗚咽を漏らすまいとするが、その目からは、真珠のような雫がとめどなく溢れてカーペットを濡らす。

 

それでも彼女は、必死に首をふって長官の認識を改めようとした。

 

あの口ぶりでは、怪獣に致命傷を与えるほどの戦いなんて、とても出来なかったであろう事など、誰が聞いても明白だからだ。

 

そんな事は、長官だって百も承知のはず。

 

だがたった今、事実はそうなった。

ノンマルトはかつて、地球の為に人類と手を携えて、宇宙からの外敵を屠ったのだ。

 

「地球防衛軍は恩知らずではない。とはいえ、ノンマルトが此度の戦闘で地上に被害をもたらした事もまた、許すことは出来ない。ついては……ヤナガワ参謀!」

「はっ」

「早急に、地上側の損害を取りまとめ提出せよ。遺族への賠償は防衛軍が肩代わりする」

「畏まりました」

 

いつの間にか入室していた参謀達から、神経質そうな面持ちの男が一歩前に出ると、きっちりとした敬礼を見せた。

一刻でも時間が惜しいのか、敬礼するやいなや、スタスタと退出していく。

 

「次、タケナカ参謀!」

「ハッ!」

「現在の哨戒海域に、ノンマルトの集落を考慮しつつ艦艇配備を見直す事。彼らとのホットラインを確立し、共同で海の警戒網を構築せよ」

「必ずや、実りのある物にしてみせます!」

 

気合いを漲らせて頷いた男は、こちらを一瞥すると、ノンマルトの代表を激励するかの如く、力強い頷きを寄越してから退出した。

 

「そしてマナベ」

「ハッ……」

「キミには、彼らの主張の裏付けを頼みたい。各支部と連携し、調査チームを編成するのだ。同時並行して、地下の発掘準備も進める事。なにか手懸かりが掴めるやもしれん」

「拝命いたします……ヤオ代表、詳細な聴取の為、後ほどお時間を頂きたい。それまでに質問事項は、簡単に纏めておきます」

「はい……そういう事でしたら、いくらでもご協力させてくださいませ」

「それまではこちらでお寛ぎ下さい……では」

 

長官に対して、丁寧に腰を折った男は、あくまで沈着さを保ったまま、ヤオを客人として遇しつつ、職務を遂行しに出て行った。

 

「ヤマオカ長官……わたくし共の言葉を信じて下さって……感謝の次第もありません」

「いや……我々は共に、過去の怨恨を断ち切り、より強大な困難に立ち向かうべき時が来たというだけの事。地球防衛軍は……この星を守る忠勇なる戦士達の誇りを、無碍にするような組織ではないのだ。そして勿論、そちらにも相応の労役は担って頂く」

「……覚悟しております」

「その代わりに、矢面へ立つ事は、我々の仕事として命の限り全うすると、ここに宣言する」

 

そう言って長官は、踵を返し部屋から出て行こうとして……護衛のように扉の傍へ控えている、警備隊長へ敬礼した。

 

「キリヤマ隊長…… よくぞ、やってくれた。此度の事は地球にとって、歴史的な快挙と言えるだろう」

「過分なお言葉に、感謝致します」

「キミは、良い部下を持ったな」

「……自分には、勿体ない男であります」

「その手綱を握り、進言を聞き入れるのもまた、指揮官の務め。苦労をかけるが、これからも頼むぞ」

「恐縮です! ……ソガっ!」

「は、はいっ! なんでありましょう!」

「良くやった。お前はこのまま代表がお帰りになるまでの護衛につけ。ただし、任務の後は……」

「メディカルチェック……ですかね?」

「分かっているなら、よろしい。では長官、こちらへ……」

 

そうして扉が閉められる。

コップを持って、鏡の貼られた壁に近付くと、それを耳にあてた。

 

「ソガ隊員……なにをしているのです?」

「……おっ、マジで監視無いんだな。大丈夫かよ」

「あの……」

 

まあいいや、別にそこまでする事もない。彼らは味方なのだから。

 

「おめでとうヤオ。いや~、物事ってどう転ぶか分からんもんだね。塞翁が馬ってやつ?」

「声を荒げて申し訳ありませんでした……お恥ずかしい」

「いいじゃないの。結果オーライさ。思ってたよりあっさり行って笑っちまったけど……ちゃんと話し合えば、こんなもんだよな。やっぱコンタクトの取り方が下手すぎたんよ、おたくら」

「……そうですね。わたくし達も、今の地上人を……もっと信用するべきでした。あんな事をする前に、歩み寄っていれば……」

 

真っ赤な目でそう呟いた彼女は……ひどく寂しげに見えた。

 

「なあ、なんでセブンを頼らなかった? 彼なら……」

「……むかし、わたくしの妹が、彼にこう聞いた事があります『なぜ人間を守るのか』と……」

 

俺の問いかけを遮り、涙の跡をつけたまま首を振るヤオ。

 

「彼はなんて答えた?」

「その時は、何も……しかし、あなた方がタキオンと呼ぶ、時の残滓となったわたくしは、後に彼がその答えを出す瞬間を聞いていました……『地球人を、愛しているからだ』……とね」

「……」

「彼の言う地球人は……我々では無い。彼と共に戦い、同じ時を過ごした、地上の人々を愛しているからこそ、セブンは……人間の為に立つ事が出来る。我々を守る義理など、はじめから持ち合わせてはいない」

「それは! そんな言い方は、無いだろ……」

「勘違いなさらないで。彼はもう充分に傷付き、戦った。その肩に……これ以上の重荷を背負わせたくは無かったのです」

「お前……」

 

その時彼女が見せた微笑みは、とても澄んだもののように見えた。

だからかもしれない。

ずっと引っかかっていた疑問が、口をついて出てしまった。

 

「なにがなんでもセブンを救ってくれる者……どうしてノンマルトを指定しなかった? その者が、セブンを救う手段として、お前達の救済を選ぶかどうかなんて……あまりにも、賭けだ。最悪、セブンがその存在を知る前に殲滅する……そんな未来もあったはずだ」

 

現にオレは……

 

「わたくしもまた……貴方と同じです。ソガ隊員」

「同じ……?」

「確かに、彼が地球人の味方をした罪で、馬の首星雲に幽閉されたと聞いた時……残滓として剥き出しの精神しか持たなかったわたくしが、いい気味だと嘲笑わなかったと言えば、嘘になる。しかし……今ならば、セブンの気持ちが分かるのです……人間は決して、不実な生き物ではない。罪を赦し、悔い改める事が出来る。そう教えてくれる人が……わたしにはいたから」

「何が言いたい?」

 

彼女は、右の手のひらをじっと見つめた後……憑きものが落ちたように、破顔した。

 

「人間とノンマルトが、仲良く夕顔の花を愛でる……そんな未来が見たいと、思っただけの事ですよ」

 






というわけで、第42話「ノンマルトの使者」いかがだったでしょうか。

ようやく暖めていた裏設定の数々を放流する事が出来て、感無量です。

ちょくちょく感想欄でも鋭い防衛隊員の方が何人かいて、冷や汗掻きながら、しらばっくれるのが心苦しかったですね(笑)

ノンマルト編が近付くにつれて、皆さんが教えてくれる他の二次創作でも、ノンマルトに関する解釈は膝を打つようなものがいっぱいあって、やっぱりこの話はファンの想像力を掻き立てる名作だったんだなぁ……としみじみ思いました。

本作は『原作の描写こそが真実』を前提として、そうなった経緯をもっともらしく後付けする……というスタンスで書いています。

『地球人は侵略者の末裔』というノンマルトの主張が本当であったなら? に端を発し『明らかに地球における進化の系譜から外れた容姿』を両立させる為に、本作バースのノンマルトはこうなりました。

そして、当初から度々指摘のあった、『ソガの中身、セブンに狂い過ぎ問題』
そもそも召還陣に書かれた文言からして、とち狂ってたから……というオチ。

侵略者と半分同化したような地球人と、正統性はあるけどもう後戻り出来ないノンマルト、というややこしくて面倒くさい事態を、エイヤッと解決するなら、これくらい歪んでないと無理、と召還術式君が判断したみたいですね。

まあまあ、いつでも殺せるから、今殺さなくても良くない?
後からネチネチ言われるの面倒くさいし、どうせなら利用価値見いだそうぜ!
じゃないとセブン泣いちゃうし……


そういう人格にワンチャンかけた……という事でした。
ま、召還当初のまま来たら、普通に失敗してたと思いますけどね!

原作時点での行動が滅茶苦茶だったノンマルトですが、いくらアトランティスがオーパーツ文明でも、所詮は狩猟採集中心で暮らしてたスピリチュアル原始人なんて、感情重視の性善説論者やろガハハ、という偏見ガチガチの作者のせいで、種族単位で引きこもりコミュ障にされてしまいました。

その煽りをいちばん受けたであろう、ヤオさん。
彼女はこの後、地上側の歴史調査が進むにつれて、日本の文献に、使者として地上へ潜伏していた頃の自身の名前が載っててひっくり返ったり、その時に力を貸した者達に惨殺されたのが、ソガの先祖と分かり思わずニッコリした後、それは中身ではなくガワの方であると気付いて慌てたり……という日常を送る事になりますが、それはまた別のお話。

さあ、こっからは最終回までラストスパート!
この地球がどこへ向かうのか、今後ものんびりお楽しみ下さい。

最後にひとつ。
ソガ隊員、すまん。
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