転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
「げ、撃沈っ!?」
聞こえてきた報告に、思わず立ち上がり叫んでしまう。
「ま、待って下さい! 2隻ともですか? 1隻ではなく?」
『そうだ。それもほぼ同時にやられている。ローレライシステムがある以上、単なる魚雷攻撃や機雷との接触ではなく、全く未知の攻撃に晒されたのだろう……やはりその一帯には、敵の基地があると見なければならん』
「……クソッ!」
俺はテーブルに拳を叩き付けた。
なんてこった……オレのせいだ。
ハイドランジャーの撃沈を防ぐどころか、原作以上の被害にしてしまった……
しかし、いったい何が起こったって言うんだ?
そりゃあ、単純に数を増やしたから余裕だなんて思ってたわけじゃない。
最悪、1隻は奇襲で沈んでしまうかもしれない事は承知の上だったさ。
でも、もう1隻が情報を持ち帰るなり、反撃するなり出来るんじゃないかと思っていたんだ。
それが2隻同時だって……?
サロメ星人は何をしたんだ……?
くそっ……ちゃんと覚えてないのが悔やまれる。
オレは今回、冒頭部分でモブ兵士の乗ったハイドランジャーがやられてしまう事は覚えていたが、その詳細な攻撃シーンはすっかり忘れてしまっていたのだ。
ぶっちゃけ本当に魚雷だったのかすら、あやふやなくらいで、この後ダンが奴らに捕まる経緯もほとんど思い出せないという状態。
だから、あまりはっきりした事が言えず、念の為に戦力増強しといた方がいいんじゃないスかね? 程度のフワッとした入れ知恵しか出来なかった。
訳も分からぬ内に2隻同時にやられたとなると、一番可能性が高いのは、ニセセブンにやられた線だが……まだあれはこの時点では完成していないハズ。
でなければ、あの女がこうしてダンを誘い出す為に姿を見せたりはしない……と思う。
サロメ星人は、ロボットのウルトラセブンを秘密裏に建造したが、エネルギー源となるウルトラビームの数式だけは分からず、ダンを捕らえて口を割らせたいのだ。
だからああして、意味ありげにこっちを挑発してダンを孤立させようとしている。そうはさせるか。
次に考えられるのは、水中翼船にカモフラージュした宇宙船がやけに強かった印象があるから、そっちにやられたのかもしれない。
なにせ、あのウルトラホークと互角の空中戦を繰り広げて落とされなかったくらいだからな。
あれ? ホークはニセセブンにやられたんだっけ……?
まあ、とにかくラストまで健在だったのは確かだ。
でもウルトラホークと互角の性能というのは、並み居る敵円盤と比べたら凄まじい高性能と言えるが……逆に言えばホークを瞬殺出来る攻撃能力が無いとも言える。
ガッツやクール星人の円盤程には、圧倒的有利だったとも言えないなら、それがハイドランジャー2隻分の戦闘力と言うのも可笑しな話じゃないか。
……わからん。
オレが不甲斐ないばかりに、無駄に犠牲を増やしてしまった……みんな、すまん……
『幸い、最初の攻撃情報から、敵基地の大まかな位置は割り出してある。尾行している女の様子はどうか?』
「今のところ別に。……でも、水中翼船でどこからともなく現われることや、我々の関心を引こうとする点など、どうも只の女じゃなさそうですね……」
考え込む俺に変わって、ダンがラジオ型通信機に返答する。
『一刻も早く正体を掴むんだ。我々もそちらに急行する』
「了解!」
通信で一瞬目を離した隙に、女は姿を消していた……
そこへアンヌが戻ってくる。
「アンヌ、ハイドランジャーがやられたぞ」
「ええっ? それでソガ隊員がそんなに怒ってるのね……」
「別に怒っちゃいないさ……」
「よく言うわ、鏡でも覗いてみなさいな。それより見て、ダン。彼女これを忘れてったわ」
アンヌが差し出したのは、つい数分前で止まっている腕時計。
「見ろよ、ハイドランジャーがやられた時間で止まっている。……あの女を捜すんだ!」
「いや、そんな暇はない。直ぐに隊服に着替えるぞ」
「えっ!?」
館内を探したってどうせ見つからないんだ。
それなら先回りしてやる。
……と思っていたのだが……
「アッ! あの車!」
「チキショー……。アンヌ、検問所と本部に連絡!」
「はい!」
俺達が駐車場に戻ると、来たときと同じ赤いスポーツカーが、丁度ホテルから出て行く所だった。
なぜだ? 一直線に急いで来たのに……!
ダンと一緒に黒いセダン(あくまで潜入捜査だから、ポインターは目立つと許可が出なかったのだ。もう向こうには最初からバレてんだって! 隊長のケチ!)へ乗り込み、女の後を追う。
「赤いスポーツカーです」
『赤いスポーツカーですね? お任せ下さいモロボシ隊員!』
「なんなら射撃してでも、止めてくれ」
『ええっ!? なんて事を言うんです、ソガ隊員!』
「やっぱ駄目か?」
「当たり前でしょう……」
ハンドルを握りながら、呆れた声でダンが言う。
サロメ星人は見た目だけなら、地球人と全く変わりないヒューマノイドタイプなので、どれだけ怪しくともこの時点では、宇宙人の侵略者であると確証がないのである。
それを知ってか知らずか、首に巻いた赤いストールをマフラーのように風へなびかせて、悠々と逃げるスポーツカー。
そうかそうか……じゃあやっぱり……
「自分でやるしかないわなっ!」
「ちょっと! 危ないですよ、ソガ隊員!」
窓から身を乗り出して、前方を走るオープンカーのタイヤを狙おうとしたが……
あ、やめろ! 煙幕は卑怯だろ!
後部からモクモクと濃い煙を吹き出して、こちらの視界を妨害してきやがった!
ええい、数撃ちゃ当たるわ!
くらえ! くらえ!
「うぐ、見えない……」
「あわわ、落ちる落ちる!」
「早く引っ込んで下さい!」
視界不良の中でダンが懸命に運転するが、崖際のカーブから落ちないかヒヤヒヤだ。
ついでに俺も窓枠から滑り落ちそう!
「大分、引き離されてしまいましたね……」
「……しょうが無い、捕獲は諦めるか」
「いえ、まだまだ見失ってはいません! 諦めが早いですよソガ隊員!」
「いや、そうじゃなくてな……」
知り合いの隊員に頼んでおいた検問所にさしかかる。
「オーイ! 止まりなさーい! その車、止まれ、止まれってうひゃああ!」
作業員に扮した隊員が、腕を振り立ちはだかるも、逆にアクセル全開で突っ込んでいく!
ひき逃げ上等の突進に、慌てて横っ飛びに転がる防衛隊員。
オープンカーは、立ち入り禁止の立て看板を粉砕し、そのまま……
ボカーン!
「うわっ!?」
「あーあ……」
突如巻き起こった爆発に、ダンが急ブレーキを踏む。
「い、いったい何が……」
「ああ……地雷埋めといた」
「じ、地雷っ!?」
「うん、どうせ灯台まではこのルート通るわけだしさ」
「だからって……公道ですよ!?」
「その為に立ち入り禁止の検問所なんじゃねえか。はーあ、せっかく親切に教えてやったのに、素直に止まってりゃあ、死なずに済んだものを」
「……最近、だんだん雑になってきてません?」
半眼でこちらを詰るダンはスルーして、セダンから降車する。
検問所の前で腰を抜かしてる隊員に手を貸してやらねば。
「は、はわわ……はわわ……」
「おいおい、大丈夫か? 随分体はったもんだねぇ……そんなに無理せず、遠くからバズーカでも撃ち込んどきゃ良かったのに……なんかゴメンね?」
「わたしにそんな事できるわきゃあ、ないでしょー!? そ、そんな事より、あれは……」
「工兵隊に頼んで対戦車地雷を設置してもろたんよ。ホラこの前、穴掘ってくれたじゃん?」
「えっ! あれって落とし穴じゃなかったんですか……!?」
「落とし穴で侵略者が倒せるかい」
顔なじみの隊員が、その福々しい顔を真っ青にしながら身震いしている。
市民の避難誘導とかで、道路封鎖にも慣れてると思って頼んだんだが……
いやあ、悪いことしちゃったかな……
「ソガ隊員、そちらは……む!」
ダンの瞳がキラリと光る!
彼が振り返った岩陰に……ヒラリと真っ赤なストールが翻った。
「アッ、あの女!」
「ヒイッ! 幽霊!」
「生きてやがったのか……! 待て!」
「ちょ、ちょっと! ソガ隊員! 一人にしないで下さいよぅ!」
ウルトラガンを引き抜き、崖下の岩場に降りていく。
「どこだ! 出て来い! ……そこかっ!」
岩場にちらりちらりと舞うように現れては消える人影に向かって引き金を引くが、紙一重の差で捉える事が出来ない!
つか、そっちの岩場からそっちの岩場に出て来るの、どう考えてもオカシイだろ! お前、テレポート使えたのかよ!
ちくしょう……おちょくりやがってぇ……!
頭に血が昇り、岩場のさらに奥へと足を踏み出そうとするも……
「ま、待って! 待って下さい!」
「は、離せ! 早くあいつをなんとかしないと……!」
「いったい何を追ってるんです? そっちは崖ですよ! 危ないから! あ、アラーッ!?」
「うわあっー!」
後から追いついた防衛隊員が俺の袖を引いた……と同時にツルリと足を滑らせたので、盛大な水音と共に、二人一緒に潮溜まりに落ちた。
「ぷっは! やってくれたね……全く……」
「うへぇ……しょっぱいです。アイテテテ! 蟹が!」
「相変わらずドジだねぇ……ハハハ」
お陰で頭が冷えたけどな。
「ダン、すまんが手を貸してくれ……ダン? あれ、ダンどこいった?」
「ありゃ? さっきまでそこに……」
「しまった……ッ!」
―――――――――
その頃ダンは、女を追って全力疾走していた。
ソガが先走って岩場へ突撃した際に、翻弄される彼を後ろから見ていたダンの動体視力は、ソガの周囲を岩から岩へ、恐ろしいまでのスピードで飛び移る、謎の女の姿を僅かに捉えていたのだ!
(あの速さは、とても人間の目で追い切れるものではなかった……むしろソガ隊員でなければ、存在を認識する事すら出来なかったに違いない……)
岩場の中心にいた彼からは、恐らく敵が瞬間移動でもしているように見えたハズ。
走る瞬間が見えない程の超スピードとは……それも、岩場をハイヒールで。やはりあの女、只者ではない。
そして、そんな相手を追うともなれば……ダンも
人間態で出せる、限界ギリギリの速度で走るとなると、オリンピックの世界記録を余裕でダブルスコアつけて塗り替えてしまいかねず、そんな姿を他の隊員に見られるわけにはいかなかった。
それに……
(敵の狙いは、恐らく……僕だ)
去り際に一瞬だけ立ち止まり、こちらを振り返った女の表情……まるで、着いてこいと言わんばかりだったではないか。
(それに彼は……疲れている。今、巻き込むわけにはいかない)
やはりダンは、ソガが常に無く疲労を滲ませている事を気にしていた。
特に今回のような、爆発からも生き残り、人外のスピードで動き回る相手に、今のソガ隊員は……言っては悪いが足手纏いになりかねない。
先ほどだってきっと、翻弄されるだけですんだのは、あちらがダンとそれ以外を、引き離したがっていたからに過ぎないのだ。
敵が本気を出した時……常人である彼らは手も足も出ず、無惨に殺されてしまうのではないか?
その懸念がダンに、岩場から走り去る女の姿を見咎めた時、誰に言うでもなく一人で追いかける……という選択をさせてしまったのだった。
(この状況……まるでガッツ星人のやり口を思い出す)
あの時も、ソガ隊員を人質にされ、やむなく変身する羽目になったが……その経験が、ダンの深層心理において、少なくないトラウマを残している事に、本人すらも気付いてはいなかった。
(……という事は、敵は僕との直接対決を望んでいるに違いない)
ダンをおびき寄せ、それ以外は無価値と嘲笑うあの態度……余程の自信家と見える。
(いいだろう。奴が正体を現した時が勝負だ。今度は冷静に、敵の出方を見極めてやるぞ! 何度も同じ手が通用すると思うな!)
ガッツ星人との戦いで得た反省。
そしてそれを活かし、ゴーロンを退けた自信。
それが、今回は仇となった。
「ハッ! 待て!」
灯台まで女を追い詰めたダンは、階段の上に翻る赤いストールを見つけ、彼女を追いかけようと……
「ぐわあああああああっ!?」
手すりから、大量の高圧電流が流れ込み、ダンの意識は暗転した。
女と油ダンは、セブンの華よ!