転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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セブン対セブンの激闘(Ⅳ)

 

「な、なんでガイロスがここに……」

 

「まさか、ノンマルトが裏切ったのか!」

 

「野郎! やっぱり怪しいと思ってたんだ! 今度の通報だって、俺達を誘き出す為の嘘だったに違いねえぜ!」

 

「そんなはずないわ!」

 

「じゃあアレはなんだってんだ! 隊長! 早く奴らの本拠地を叩きに行きましょう!」

 

「ま、待って下さい! 隊長アレは……」

 

ガイロスを見つめる隊長の背中に、咄嗟に待ったをかけるが……言葉が出て来ない。

 

なんて言うんだ?

 

俺にも何が起こってるか分からないのに?

 

隊長を止めたとして、それが絶対に正しいという保障など何処にも無い。今度こそ本当に過激派が陰謀を企てたのではないと、何故言い切れる?

 

こんな流れ、原作には無かった。

 

だからもう、なにが正しくてなにが間違っているかなんて、俺には……

 

「ソガ」

 

「は、はい……」

 

「あの怪獣は、殺す。これは決定事項だ。お前が何を言おうが、もはや知った事ではない。奴は事もあろうに我々の目の前で、船を襲い、人々の命を奪ったのだ。言い逃れは出来ん。絶対に許すことは出来ない!」

 

「そ、その通りです……」

 

「しかし!」

 

隊長がくるりとこちらを振り向いて、あの鷹のように鋭く全てを見通してしまうような眼差しで俺を真正面から貫いた。

 

「貴様に一つだけ確認する。ソガ、彼らは信頼に足る隣人か、それともこのように醜い裏切りをする下衆共なのか! どっちだ! 言ってみろ!」

 

「……ッ!」

 

その時、俺の脳裏に浮かんだのは……あのとき彼女(ヤオ)の見せた、晴れやかに吹っ切れたような微笑みだった。

 

「……彼らは無実です! あの怪獣は、ノンマルトとは一切関係ありません!」

 

自分達だけでなく、ウルトラセブンにも救いがあって欲しいと願った、夕顔の花のように儚く罪深い、純粋な思い。

 

それはきっと……本当の事に違いないからだ。

 

そうでなければ、黄昏の向こうから、わざわざオレなんぞを呼び出したりするものか。

 

「誓えるか! 今、ここで!」

 

「……私の誇りにかけて! あれは、我々と彼らを引き裂こうとする何者かが、裏で操っている偽物です! 断言します!」

 

そうだ、サロメ星人はもともとニセセブンを造るような奴だ。偽物の一つや二つ、新しく造ったとして何もおかしくないじゃないか。

 

今度こそ俺が、自信満々に声を張り上げてそう叫ぶと、隊長は僅かに口角を吊り上げた。

 

「……その言葉が聞きたかった」

 

「隊長……!」

 

「全員! これより我々は、ノンマルトを騙る正体不明の侵略者を攻撃する! まずは手先であるニセガイロスを撃滅し、海底基地に総攻撃をかけ、ダンを救出! いいな!」

 

「「「了解!」」」

 

「ホークに急げ!」

 

脇に駐機してある1号に乗り込む直前、フルハシ隊員が俺の肩を叩いて苦笑した。

 

「おめえが言うなら、仕方ねえな。俺は信じるよ」

 

「……ありがとう、フルハシさん」

 

「ま、お前も気張れや」

 

「……よかったわね、ソガ隊員」

 

「うん」

 

「ウルトラホーク、発進!!」

 

 

そうして直ぐさま空に上がった俺達は、海面で暴れ狂いながら、次の獲物と定めたらしき客船へ向かって泳ぐガイロス目掛けて、急降下爆撃を仕掛ける。

 

『ーーッ!』

 

「へ、おめえが飛び道具の一つも持ってねえって事は、こっちもとっくに分かってんだよ!」

 

「海底調査をハイドランジャーだけで編成したのは失敗でしたね……恐らく岩壁に擬態して、待ち伏せしていたんだ」

 

「あの怪力で、船体を引き裂いてしまったのね。でも、自慢の触手も空には届かない!」

 

「みんなの敵討ちだ! くらいやがれ!」

 

ロケットを雨あられと降らせる事で、大ダコを釘付けにし、周辺海域から船舶が逃げる時間を稼ぐ。

ウルトラホークはガイロスに対して、絶対的な優位性を誇っているかに見えた……

 

レーダーを監視していたアンヌが、金切り声で叫ぶまでは。

 

 

「一時の方向より、小型の何かが高速で接近!」

 

「なにッ! ミサイルか! 避けろフルハシ!」

 

「みんな掴まれっ!」

 

前方から突っ込んできた飛翔物を、間一髪のところで避けるウルトラホーク。

 

なるほど、ガイロスを囮にして、ミサイルで狙い撃ちにするつもりだったのか。

 

だが、五人体制のホーク1号に死角は……

 

「待って! さっきのミサイルが急旋回! 追って来ます」

「なにッ!」

「だが、この距離なら……うわっ!」

 

機体に小さく衝撃が走る。

 

「キャアッ!」

「何だ! 何が起きている!?」

 

窓の外を、幾筋もの光条が前方へ抜けていった。

 

「レーザーです! 後方のミサイルがレーザーで狙撃してきました!」

「そんな馬鹿な!」

「フルハシ隊員! 回避機動をとってください!」

「クッソ、舐めやがってぇ……!」

 

きりもみ旋回からの急降下でレーザー攻撃を躱すも、その隙を突こうと突っ込んでくるミサイル。

 

「そうはいくかよっ!」

 

フルハシがもう一段ブースターを炊いて、急加速により衝突を回避する。

 

ミサイルと機体が交叉する一瞬、急加速で彩度の落ちた視界の中で、俺は見た。

 

「……人だ……人が飛んでる! ありゃミサイルじゃない!」

「なんだって!」

「見間違いだろっ!」

 

アンヌが慌てて双眼鏡を覗けば、みるみる驚愕に染まっていく表情が、その内容を如実に伝えてきた。

 

「……ほ、本当だわ! 手と足が……頭もある! り、両足から……踵からジェットを吹き出して……そ、空に立っています!! そんな! こっちに来るわ! 逃げてぇえ!」

「全速力で振り切れ!」

「やってますよ!」

「差が開かないわ!」

「冗談だろ!? こっちは今、マッハ3だぞ!」

「向こうはマッハ2出てる!」

「人型でマッハ2!? バッカじゃねえの!?」

「僕だって計器の故障かと思ったさ!」

 

観測計を瞬きもせず見つめていたアマギが、思わず信じられないと呟きを漏らす。

 

「ホークの最高速度は、マッハ4でしょうが!」

「馬鹿野郎! そりゃ直線距離の話だ! 真っ直ぐぶっ飛んでみろ、レーザーで狙い撃ちにされてえか!」

 

回避の度に速度は落ち、マッハ3という数字すら、ごく僅かに一瞬到達するような状態だ。

 

音の壁を越えた世界は、単純な数字だけでとても語れるものではない。

 

そうこうしているうちにも、レーザー攻撃によって少しずつダメージを受けた機体の空力性能は、みるみる下がっていき、両者の差は開くどころか縮まる一方である。

 

なにせ最高速度で勝っていても、旋回半径どころか、その場で急制動と急発進を繰り返す向こうの方が、機動性において段違いなのだから。

 

「……こんにゃろう、あったま来たぜ! 隊長、もう限界です! まともな空戦じゃあとても勝てません! コブラをかましちまっても構いませんか!」

 

「なに! それで後ろを取れる程甘い相手で無いのは、お前もよく分かってるハズだ!」

 

「いえ、オーバーシュートなんて生っちょろい! 翼でそのままぶん殴ってやるんです!」

 

「なんだと!」

 

隊長とフルハシ隊員がなんか言ってら……

 

隣でガタガタ震えてるアマギは内容を理解してそうだから教えてもらおう。

 

「アマギィ! どういう事!?」

 

「機首を垂直にして急ブレーキをかけるつもりなんだ……翼の剛性をそのまま武器にしようとしてる……有り得ない」

 

「有り得ないって!?」

 

「いくらVTOLと重力制御があるからって、本来マッハ機動でやるもんじゃない! その上でぶつけるなんて! 自殺行為だ!」

 

「え、ちょ……ま」

 

「よし、フルハシやれ!」

 

「了解!」

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ーッ!!」

 

正気の沙汰じゃねェエエエエ!

縦軸方向に急激なGがかかるのを感じ、目と歯を思い切り食いしばる。

こ、れ、背が、ちぢむ、ん、じゃね?

 

直後に左手側から盛大な衝撃と破砕音を食らって、機体はそのままスピンスピンスピン……

やめてやめて。

 

あ、気絶しそう……え? ダメ?

後生だよ。そんな厳しい事言わないでくれ。

 

「ご、な゙、ぐ、ぞぉお゙おおおっ!!」

 

どっか遠くで、フルハシが獣のような咆哮を上げている……

 

「みんな、無事か!」

 

隊長、冗談キツいっす……

 

「て、敵は?」

 

アマギとアンヌがグロッキーな気配を感じつつ、フラッフラの頭で索敵する。

 

いや、流石にマッハ2でウルトラホークの翼に突っ込んだんだ。ペチャンコか真っ二つか……

 

「って……うっそだろ……へ、へへ……」

 

俺は、見てしまった。

 

窓の外、クレーターの如く大きく陥没した翼の中心で、人間大の存在が、華麗にヒーロー着地を決めているのを。

 

ゆっくりと立ち上がったその敵は、何の感情も窺えない昆虫のような瞳でこっちを確かに見た。

 

その姿は忘れもしない。

 

悪魔のようなツートンカラー……あれは……

 

 

―――――――――

 

 

「ご覧、ダン。これが今回の目玉だよ」

 

サロメリーダーがサッと布を取り去った時、その下から現れたのは……

 

「む……?」

 

白と黒に塗り分けられた様々な形の駒が置かれる、チェス盤のようにしか見えなかった。

 

その隣には、何らかの棋譜めいた記号の書かれた紙束が積まれているが……これがいったいなんだというのか。

 

ただ、盤面の端では、巨大な昆虫らしきモノが、白のクイーンによって磨り潰されていたが、もはや原型の分からない程にボロボロで、相当以前に殺されたのではないかと思わせた。

 

そう気付いたダンが、目を凝らしてよくよく見れば、駒の間には蜘蛛の巣が張っていたり、埃が積もっていたりと……まるで何処かに放置されてあったものを、そのまま持ってきたかのような……

 

「フフフ、ダン。君が分からないのも無理はない」

 

「なんだコレは?」

 

「実はね、ただの遊戯盤ではないのさ。高度に暗号化されてはいるが……これは、ある兵器の設計図なのだ」

 

「なに、設計図?」

 

「さよう。もちろん独自性が強すぎて、流石の我々にも、この暗号を解き明かす事は終ぞ出来なかった」

 

「でもね、何も自分達だけで全てやってしまう必要なんてないの」

 

「我々サロメのやり方は、他者の美点を素直に認め、それを柔軟に取り入れるというものだ。模倣できる部分は模倣し、出来ない部分は……協力を取り付ければ良い」

 

「協力……だと!」

 

「そうさ。パズルが解けない時は、それを作ったものに直接聞くに限る。その成果がコレだ! おいで……」

 

「ハイ。御主人様。」

 

「おっ! お前は……!」

 

サロメ星人に呼ばれ、暗闇からコツコツとハイヒールの音を響かせて現れたのは……

 

「女が、二人……!?」

 

「「ウッフッフ……」」

 

不敵に笑う青い装束のサロメ女の隣へ、真っ赤なストールを靡かせた、全く同じ顔の女が並び立った。

 

「さあ、お前の正体を見せてやるんだ。……チェンジ!」

 

サロメ星人が号令をかければ、ハイヒールの女が鍵のようなデバイスを耳に差し込んだ。

 

「スイッチオン! ワン、ツー、スリー! ゴー!」

 

閃光と共に弾け飛ぶ衣服、そして……皮膚!

 

稲妻の向こうから歩み出たシルエットに、ダンは戦慄し、思わず喉をゴクリとならす。

 

悪魔のようなツートンカラー。

 

その姿は忘れもしない……

 

「ま、まさか……」

 

「久しぶりだろう? ウルトラセブン。紹介しよう、チブル星人と我らサロメで共同開発した、アンドロイドゼロシリーズだ! ハッハッハッハ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「なんだって! ゼロシリーズ!?」

 

「その通り! みたまえ、これを!」

 

サロメ星人が腕をサッと一振りすれば、床からモニターがせり上がり、とある光景が映し出された。

 

「アッ、ウルトラホーク!? みんな!」

 

そこでは、仲間達が何かから必死に逃げようとしている。ホークの後方に、何か小さな……トリか?

飛行機だ! ……いや、アンドロイドだ!

 

両足からジェットを噴出して、自由自在に空を飛ぶアンドロイドの姿!

 

「我々はまず、セブンの性能をより向上させる為に、幾つか基礎研究用の等身大プロトタイプを造った。今、奴らを追いかけているのも、そのうちの一体だよ。かつてのゼロワンを基に、そこへ飛行能力を付与したゼロツー……せっかく造ったのに、ただ廃棄するのも勿体なかろう? うまくウルトラホークを撃墜してくれれば御の字だな。いいぞ、そこだ! 頑張れ!」

 

次に画面が切り替われば、ダンはまたしても信じられない光景を目にする事となる。

 

「ガイロス!? なぜここに……!」

 

ガイロスは自分が倒したハズ。

それに、ノンマルトだって、地上の人々と手を携えて生きていこうと和平を誓いあったのではなかったか?

 

「あれも、我々のアンドロイドだ」

 

「あれがアンドロイド? ……まさか!」

 

「いやあセブン。君は本当に良い検体を提供してくれたよ」

 

「状態の良い怪獣の死体が一気に二体分。それも、全身が筋肉の塊だなんて、最高だわ」

 

「我々も、チブルのアンドロイド技術を巨体に適応するのは初めてでね、一体分はセブンの強化に使って、残りは念の為に、人工筋肉の制御実験兼、水中戦用サイボーグにしてみたのさ。純然たるアンドロイドではないため正確にはゼロシリーズではないが、作製順に当て嵌めて言うなればゼロエイトか。結果は良好」

 

「そして、思わぬ効果も見込めそうよ」

 

「ノンマルトと地球防衛軍を仲間割れさせ、戦力を分散消耗させる。おまけにそこへセブンが現れて人類を攻撃すれば、いよいよもって、宇宙正義に見限られたかと奴らは絶望するだろう! 何の前触れもなくセブンが裏切るよりも、よっぽど説得力があるじゃないか。我ながら良いシナリオだとは、思わんかね?」

 

「流石ですわ! これで彼らは全力で戦う事が出来ません! 完璧な計画です!」

 

「ガイロスは人類の罪の象徴だ。奴らはそれに、再び向き合って尚、セブンの相手が出来るものかな? ハッハッハッハ!」

 

「アッハッハッハ!!」

 

「貴様達は……ッ! なんという事を……ッ!」

 

ダンは怒りのあまり噛みしめた奥歯が砕けるかと思うほどだった。

 

彼が瞳に真っ赤な炎を燃やす様を、サロメの男は満足げに眺めると、ニンマリ笑って、ダンの肩へ親しげに手を置いた。

 

「そこでお前に頼みがある」

 

ギロリと睨みつけるダンの眼光を涼やかに受け流し、サロメ星人シハカタは、さも当然といった口調で言い放った。

 

「ここで死んでくれ。モロボシ・ダン」

 

 





《みなさまにお知らせします。午後十二時の時報とともに、明日の続きが更新されます。あとしばらくお待ちください》
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