転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
『AGRAAAAAAAAA!!!!!!!!!』
「あ! アギラだ! アギラですよ!」
「セブンに向かっていくぞ……」
「やっぱり、本物のセブンはどこか別の場所にいるんだわ!」
待ってたぁああ!!
ありがとうアギラ!
お前が来てくれるとだいぶやりやすいよ。
戦力的にも、説得力的にも!
……ごめん嘘。
実を言うと戦力的にはあんまり期待してなかった。
確かに今の状況だとその巨体で敵の注意を引いてくれるだけでありがたいのだが……
……問題は、そのままブチ殺されかねんと言う事だ。
『Dywaaaa』
「あ! 危ない!」
ほら、言わんこっちゃない!
ニセセブンが額に手を翳す!
エメリウム光線だ!
『AGRAAAAAAAAA!!!!!!!!!』
しかし、アギラはその場をサッと飛び退いてエメリウム光線を躱す。
「……えっ?」
なに今の?
マグレ?
……いやマグレ避けでも凄い!
もう充分仕事果たしたよ!
でも次は無いだろうから、早く帰って!
『Dywaaaa』
ちょ! それはマズいってば!
ニセセブンが頭頂部に手を添える。
……ヤバイヤバイヤバイ!
その構えはほんまアカン!
「と、止まれェー!」
だがいくらエレクトロガンを乱射しても、ニセセブンは止まらない。
そして放たれるアイスラッガー!
あ、これは死んだ……
あまりにもショッキングな絵面を予想し、戦闘中だというのに思わず目を覆ってしまった。
カッキーン!
「……ん? 何いまの音は?」
ここはズバッ、だの……ドヒュ、ではなくて?
恐る恐る指の間から覗いてみれば……な、なんと、アギラがエネルギーを集中させた角でアイスラッガーを跳ね返し続けているではないか!
あの! アギラが! アイスラッガーを!
跳ね返し……ハァー?
「は、はははははぁー!?!?!?」
顎が外れるとは、このことか……
「おい、ソガ! 何やってる! 攻撃が止まってるぞ!」
「いや! だって! 見て! アギラが! アイスラッガー跳ね返して……いや有り得んでしょそれは……」
なんなら、今日イチ信じられん光景なんですけど。
「あん? 何がおかしいんだ? アギラはセブンの仲間だって言ったのはおめえじゃねえか! だったらセブンの攻撃くらい見切ってても当然だろ?」
「え、そうなん?」
「むしろ、ちょっと楽しそうに見えるわね……」
「ええ……?」
ソガが困惑するのも無理は無いのだが……これこそ、ダンが自身と同等以上の能力を持つであろうニセセブンの相手に、アギラを選出した最大の理由でもあった。
敵がこちらの能力をコピーしているという事は、対峙した時に、須くエメリウム光線やアイスラッガー、果てはワイドショットといった、どれもまともに命中すれば即死級の危険な技を容赦なく放ってくるという事。
生半可な怪獣では、足止めどころか、時間稼ぎにすらならない。
しかし、アギラは普段から仮想空間内にて、セブンによる戦闘訓練を受けており……特に、反射神経を鍛える為にセブンが操るアイスラッガーを角で弾き返すという
もとよりアギラは、敏捷性の高い種族であり、その瞬発力や動体視力は、ロボットであるウインダムを除けば、カプセル怪獣の中で一番優秀なのだった。
お陰で、アイスラッガーの軌道を読むことにかけてはカプセル怪獣イチ。エメリウム光線やワイドショットの構えも完全に覚えてしまっており、技の出だしの時点から回避行動に移る事が出来ていた。
そうでなければ、流石のダンであっても、一瞬で無駄死にするしかないような相手にぶつけたりはしない。
「う、うおおおっ! アギラ鬼TUEEEEEEEEEE!!! なんだかよく分からんが、アギラ最強! アギラ最強! このまま逆らう奴ら全員ぶっ飛ばしていこうぜ!」
……のだが。
『Dywa』
『AGRAA!!??』
一気に距離を詰めてきたセブンに、顎を蹴り上げられてひっくり返るアギラ。
そのまま抑え込まれ、めった打ちにされてしまう。
「オイオイオイ! さっきまでの威勢はどうしたんだよ!」
「……ありゃダメだ。体格も腕力も、おまけに多分体重まで全部においてセブンに負けてら。接近戦で勝てる要素が一つもねえ」
「そ、そんな……! おいてめえ、アギラになにしとんねんはよ退けや! アギラ逃げろ! あ、効かない……」
「しかも一番大事な闘志がイマイチ足りてねんだよなぁ……ガッツを出せ! ガッツを!」
「言うとる場合ですか!」
アギラはセブンに締め上げられて、ただジタバタと藻掻いている。
なんて痛々しい姿だろうか。
俺たちも援護射撃を加えるのだが、ちっとも堪えた様子が無い。
そりゃそうだ。
ウルトラセブンに歩兵の携行火器で太刀打ちなんかできるもんか。
「おい! 後ろだ! もうガイロスが上陸してきた!」
「なんだって!」
振り返れば、触手の化け物が八本の足を器用に使い。陸地へと上がってくる所だった。
水中では分からなかったが、その触手の根元は軒並み金属部品で固定されており、腹部と背中には、ひときわ巨大な箱のようなものが取り付けられていた。
やはり、あれはサロメ星人の作ったニセガイロス……というか、もしかしなくともフランケンシュタインの怪物のように、死体を利用したサイボーグ怪獣なのではなかろうか。
そうか、セブンがアイスラッガーでキレイにナマス切りにしたから、死体が再利用可能な状態で残ってしまっていたのか!
……確かに原作では見たことがないが、技術力にあかせてメカ怪獣を仕立て上げるってのは、如何にもサロメ星人がやりそうな事である。
それが分かったところで、ピンチには変わりないのだが……
「アンヌとアマギはガイロスを牽制しろ! セブンは我々でカタをつける!」
「し、しかし……ただでさえ火力が足りてないのに、この上、分散してしまっては!」
「だが背後の敵を無視する事も出来ん! セブンにガイロスが合流してみろ! アギラはたちまち縊り殺されてしまうぞ! それだけはなんとしても阻止するんだ!」
「く……了解!!」
―――――――――
「でぇやあああ!!」
走るダンを、幾筋もの粒子砲が襲う!
アンドロイドの一体が、右手の四本指から滝のようにビームを発射してくるのだ。
お陰で真っ直ぐ進む事が出来ない。
「ええい……これでもくらえ!」
試しにウルトラガンで狙撃してみたのだが、敵の装甲には焦げ跡がつくばかりで、非常に効果が薄い。
「くそ! これならどうだ!」
ウルトラガンが効かないと見るや、ダンは腰のポーチから小型爆弾を一摑み取り出すと、背後に向けて、それを一斉にバラ撒いた。
煙と火花が敵のセンサーを惑わし、ダンの姿を一瞬隠す。
「今だ!」
銃撃が止んだタイミングを見計らって、上階へ向けて駆け出すダン。
『ゴゴゴゴゴ……』
だが、煙の向こうから、通常よりも一回り体格の大きなアンドロイドが両腕を広げて、ダンを抱き竦めてしまおうと襲いかかってきた!
「だぁーッ!」
咄嗟にジャンプし、頭上のパイプへ飛び付いたダンは、そのまま鉄棒の要領でぐるりと一回転。
遠心力を乗せた大車輪キックをアンドロイドの頭部へお見舞いし、その巨体を仰け反らせた!
「うぐっ……」
もちろんその反動はダンの両足に多大な負荷をかけ、ズキンとした痛みが走る。
だが、そんな痛みなど無いかのように華麗な着地を決めたダンは、ついにウルトラアイの納められたケースの前に辿り着く。
とはいえ、ケースは未だクレーンに吊り下げられたまま。
「レバーは……あそこか!」
必死に機械を操作して、なんとかケースを此方へ寄せようとするダン。
「ん? なんだこの匂いは……それに……熱いぞ? まさか!」
これは……新兵器研究所の工房で、何度か嗅いだ事がある!
ダンの鼻腔をくすぐったのは……まさしく鉄の灼ける匂いだった。
「じゅわっ!」
素早くその場を飛び退いたダンの目の前で、クレーンの操縦機械が真っ赤に赤熱し、原型も残さずでろでろに溶けていく。
「しまった……!」
機械の背後から現れたアンドロイドが口から猛烈な火炎放射を行って、周囲を一瞬で火の海に変えてしまったのだ。
どんどんと火に呑まれ崩れていく足場。
「こうなったら……」
ダンは、バックルのボタンを押し込むと、変身デバイスの入ったケースを、ウルトラガンで撃ちぬき破壊した!
落下していく真っ赤な宇宙グラス!
「だぁっー!」
意を決し、ウルトラアイを追って空中に身を躍らせるダン!
すると、ただ自由落下するしかなかった赤い眼鏡が、僅かに軌道を変えて、ダンの方向へと……正確には、彼の身につけているバックルに吸い寄せられるように、飛び込んできた!
そしてそれを……ミラクルマンは空中で顔面キャッチするのだ!
『デュワッ!』
ウルトラアイがスパークする!
光に包まれたダンの体が、そのまま階下へと落下していき……
―――――――――
「駄目です! 全然注意を引く事が出来ません! まるで痛覚が無いみたいだ!」
「こっちを向きなさい! ……ねえったら!」
アマギ達の攻撃をまるで意に介さず、一直線にアギラとセブンの方向へ進むニセガイロス。
「マズい! これでは挟み撃ちです!」
「こうなったら全員でガイロスに攻撃するんだ!」
「止まれェー!」
その時!
ガイロスの腕が突如爆発し、一本が根元から盛大に千切れ飛ぶ。
『ーー!?』
困惑したように動きを止めるガイロス。
だが、戸惑っているのは何も怪獣だけではなかった。
「なんだ、いまの攻撃は?」
「わ、分かりません!」
再びの爆発。
ガイロスの腕が六本に数を減らす。
そして今度は、僅かに砲声すら聞こえてきた!
沖からだ!
「あ、あれは……!」
水平線の向こうに、異形の戦艦が見える。
二又に分かれた艦首に、それぞれ備えられた大口径砲からは、朦々と黒煙が吐き出されていた。
照りつける太陽の光を反射し、眩く輝く無敵の特殊装甲!
「え、MJ号だ……MJ号がきたぞー!」
「なに! 本当か!」
「あの色! あの形! 間違いありません!」
同時に全員の通信機が鳴り響く。
『ようやく通信可能域まで来たか……こちらマックス号Ⅱ世! ウルトラ警備隊聞こえるか! 援護する!』
この汽笛のようなバリトンは!
「アラキ艦長!」
『やれやれ、海底人達からウルトラ警備隊のピンチだと聞いて駆け付けてみれば……これはいったいどういう状況だ? なぜセブンと仲間割れしている? 謎の海底基地を追うという話では無かったのか?』
「艦長! 詳しい事は省きますが、あのセブンとガイロスはニセモノです! 敵のサイボーグです! あ、あとアギラは味方です! 撃っちゃ駄目です!」
『なに!? ……よし、ひとまず全火力をガイロスへ集中! 緑の怪獣を援護せよ!』
―――――――――
「シハカタ様! せ、戦艦です……!」
「なに! 怪獣といい戦艦といい、次から次へと出て来おって……!」
これではもしも本物が出て来た時に、数の優位をとられてしまうではないか。
この時サロメ星人達は、ダンが素直に工場の爆発で死んでくれるとは思っていなかった。
本来の歴史であれば、完全に油断していたかもしれないが……なにせ、今回のセブンはまだ一度きりしかビームランプが点滅していないのだ。
なので、少しでもセブンの戦闘力を削ぐ為に必死だった。
捕らえたダンの神経を逆撫でしていたのも、怒りや絶望で、少しでも判断力を鈍らせてくれれば御の字と思って、わざとやっていたくらいなのだから。
サロメ星人は自分達の最高傑作たるゼロセブンが、戦闘力においては完全に本物を上回ると確信していた。
しかし、その周辺を取り巻く環境までは、再現仕切れない。
ガッツ星人の計画書には、セブン第三の能力として、本人以外からの援護が特記事項として記されていた。
なので、本人の120%いや150%の能力を持ったセブンを作ろうと、本物と戦う前にその余剰分を削られてしまっては意味が無い。
そこで今回、サロメ星人が用意したアンドロイドシリーズこそが、彼らのカプセル怪獣でありウルトラ警備隊だったのである!
だが、ここで大きな誤算が生じてしまった。
「そもそもなんだあの戦艦は!? あんなものは計画書にも書いておらん! 全くガッツ星人め、杜撰な仕事をしおって……!」
「ですがご心配いりません。幸い相手は船です……いくら強力な砲を積んでいようとも、水の中にいる以上我らガイロスの敵ではありません!」
「おお、そうだな! やれ! あの悪趣味な戦艦を真っ二つにへし折ってしまえ!」
『ーー!』
サロメ星人の号令で、ニセガイロスは海中に没し、少しばかり減ってしまった八本の足をくねらせて、陸上とは比べ物にならない速力を発揮した。
「敵怪獣、接近!」
「魚雷で近づけさせるな!」
「効果ナシ!」
「うわっ!」
直ぐさまMJ号に取り付いて、長い触手で雁字搦めにしてしまった。
そのまま全身の筋肉を一気に収縮させ、タンカーすらも引き千切る怪力でペチャンコにしてやろうと……!
『ーー!?!?』
「はっはっは。よりにもよって、このマックス号Ⅱ世に格闘戦を挑もうとは……クレイジークレーン展開!」
「クレイジークレーン展開!」
ガイロスがいくら力を籠めてもビクともしない。
それどころか船体下部から、黄金の輝きを放つ巨大なクレーンが波を断ち割って出現したかと思うと、先端の武骨なカニバサミで、ガイロスの頭部をガッチリと固定した!
『ー!!!』
「形態移行!」
「アイキャプテン! 艦首沈降開始します!」
「艦首沈降開始! ベント開けーぃ!」
マックス号Ⅱ世の二又に分かれた艦首がズブズブと海中に沈んでいき、それに引き摺られる形で、艦後部とガイロスも一旦水中へと姿を消す。
「艦首着底確認!」
「よろしい! では艦尾起こーせー!」
「艦尾起こします! メイーンターンク! ブロー!」
「重力方向切り替えよろし!」
指揮所のクルーたちは、ほんの僅かに、体の引かれる方向が90度入れ替わった事を悟った。
ざばりと海水を滴らせながら、戦艦の後部が水面から付き立つ!
「艦尾離水確認!」
「艦底部ロケット噴射!」
「重力軽減機関始動!」
「量子変換システム、正常に作動中!」
猛烈な勢いで噴射されるロケットの束!
あらゆる機関のサポートを受け、輝く大鉄塊がその身を起こしていく。
そしてついに!
「本艦、これより……直立します!」
海を割り、水飛沫を噴き上げて、MJ号の艦尾……いや、
『ーー!?』
「ば、馬鹿な! あれはまさか……っ!」
「有り得ません、地球人が……ぺ、ペダ……ッ!」
驚愕するサロメ星人達の眼前で、敵船の右舷が動いた。
そうして無敵の大戦艦は、自らの
「本艦はこれより、格闘戦に移行する! ……マックスジョー! 交戦せよ!!」
『グワッシ! グワッシ!』
黄金の巨神の胸奧で、七色の輝きが二度目の雄叫びを上げた!