転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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セブン対セブンの激闘(Ⅶ)

 

ニセガイロスの眼前で、巨大戦艦が直立し、円らな瞳で敵の姿を見据えていた。

 

強靱で頑丈な四肢。

 

太陽を照り返す黄金の装甲。

 

頭部と胴体が一体となった、土偶を思わせる独特のシルエット!

 

その姿はまさしく、かつて襲来したキングジョーそのものであった!

 

「これより本艦は、敵怪獣を格闘戦で粉砕する! 右舷で敵の脇腹を掴め!」

 

「右舷アーム展開!」

 

『グワッシ』

 

鉄柱の如き右腕が、ガイロスの脇腹を抑える。

 

「そんな馬鹿な! なぜペダン軍の巨大戦車が動いているんだ! 破壊されたハズでは無かったのか!?」

 

「ハハハ!! 見たか! これぞマックスジョー! 科学の力よ!」

 

そう、これこそがMJ計画の真髄。

ペダン事変で神戸港に沈んだキングジョーをサルベージし、防衛兵器として再建するのが最終目的だったのだ!

 

勿論、その制御系統を始めとした諸々は、ライトンR30爆弾の攻撃で完膚なきまでに破壊されており、人類の技術だけでは再建など夢のまた夢であっただろう。

 

しかし、これまでに鹵獲した、数々の異星人兵器を解析して得られた新技術群と、なにより友好を結んだ他惑星の技術者達との協力により、ついに物言わぬ残骸だったキングジョーは、再び起動の日の目をみた。

 

有りと有らゆる叡智がひと所に結集した結果、かつて破壊の限りをつくした機械仕掛けの悪魔は、光り輝く鋼鉄の守護神として、新たに生まれ変わったのだ!

 

「地球人がこんな兵器を動かせるはずがありません! 何かの間違いです!」

 

「いいぞ! そのまま引き千切ってやれ! ペダニウムエンジン全開!」

 

マックスジョーの宇宙コランダムで成形された風防の中で、銀河に轟く最先端の光波エンジンが唸りをあげて、左肩から伸びた巨大クレーンと、重機の如き右腕を、それぞれ別の方向へと引っ張った。

 

ミヂミヂと不快な音がしたのは一瞬だけで、次の瞬間には爆薬でも爆ぜたような轟音が断続的に響き渡る!

 

一本一本が、海峡大橋の金属ワイヤー程にも太く強靱なガイロスの筋繊維が、そこへかかる負荷に耐えきれず次々と断裂しているのだ!

 

『ーー!』

 

「いくらニセモノとはいえ、海の隣人達の旧友を、これ以上辱めさせる訳にはいかん! 一気に決めるぞ! 左舷ライザードリル準備!」

 

「ライザードリル回転開始!」

 

そして今度は左腕の先端に装備した、黒鉄の土竜を高々と振り上げる。

 

「ぶちかませ!」

 

千切れ掛けていた肩口目掛け、銀の円錐が突き込まれた!

 

死体を繋ぎ止めていた拘束具が弾け飛び、肉片と共に海面へ撒き散らされながら、凄まじい水柱を立てる!

 

「ウオオォォオッ!…」

『!!!!』

 

そのまま純粋な膂力によって、真っ二つに引き裂かれるニセガイロス!

 

「デストレイ、発射ァー!」

 

マックスジョーの双眸から、眩い光の奔流が放たれる。

哀れな怪獣の死体は蒸発し、もはや二度と誰かに眠りを妨げられることがなくなった。

 

「敵怪獣、沈黙!」

「いよーし! やったぞー!」

 

圧倒的な戦果に、艦内で歓声が爆発する。

だが歴戦の艦長は、それよりも大きな発砲音の如き声で部下たちを諫めた。

 

「まだだっ! まだ我々には、戦うべき最大の相手がいる!」

「……ウルトラセブン」

 

ブリッジクルーに緊張が走り、副長がゴクリと生唾を飲む。

 

「……よもや、本艦の初陣の相手がよりによってセブンのニセモノとはな。宇宙人はこのような手しか使わんのか?」

「ガイロスばかりか、セブンの姿まで騙るとは……!」

「……だが」

 

艦長が制帽を深く被り直す。

 

「相手にとって不足なし! やはりあの敵を撃破するべきは本艦をおいて他に無い! 不届き者を粉砕し、我らのセブンを取り戻すぞ!」

 

「「「アイ、アイ、サー!!」」」

 

―――――――――

 

海底工場に光が満ちる。

 

そしてその光が収まった時、基地の最下層には真紅の戦士が立ち、此方へと向かってくるプロトアンドロイド達を見据えていた。

 

(……やはり、エネルギーが足りない……か)

 

しかしその姿は、普段の地球人態と変わらぬ大きさでしかなく、雲を貫く巨人の姿となるには、些か出力不足であった。

 

サロメ星人によって、アイスラッガーからエネルギーを絞り尽くされてしまったせいで、残されていたのはごく僅かな量しか無かったのだ。

 

まずは海上に出て太陽光を浴びなければならないが……

 

(すんなり行かせてはくれなさそうだ……なっ!)

『デュワッ!』

 

一体のアンドロイドが、右手の親指をコッキングのように引き下げる。

 

そして、ピンと真っ直ぐに伸ばした残りの四本指から、一斉に荷電粒子銃を撃ちかけてきた!

 

『ダァ!』

 

セブンが凄まじいスピードで工場内を走り抜けるが、その動きを正確に追いかけてくる。

しかも、敵はそれだけで無い。

 

『ゴゴゴゴゴ!』

『デュワ!?』

 

セブンのさらに一回り以上体格の大きなアンドロイドが、五本の指をしっかりと組み絞めて、ハンマーのように振り下ろしてきた!

 

咄嗟に避けるが、床は大きく陥没し、飛び散った破片が礫のようにセブンの体を襲う。

 

『ゴー!』

 

その状態から腕を薙ぎ払い、床から周辺機材から、何から何まで手当たり次第に投げ付けてくるではないか。

 

もはやこの工場は用済みであり、事ここに至っては、セブンの処刑場でしかないのだ。

 

『デュワー!』

 

飛来物を避けようとしたセブンは、背後から迫る炎に表皮を舐められ、苦悶の声を上げる。

 

よもや太陽の子であるセブンをして、なお苦しめられる程の火炎放射とは!

さしもの彼も、マグマや太陽に突っ込んでしまっては堪らない。

それらの表面温度は摂氏6千度とも言われているが、このアンドロイドの吐き出す火炎は、それに近しい威力があるのだ!

 

思わず膝をつくセブンであったが、休んでいる暇などない。

遠くからその場へ小型のミサイルが飛んできたからである。

 

『デュ!』

 

エメリウム光線で迎撃すれば、凄まじい爆発が巻き起こり、爆風だけでセブンの体を吹き飛ばしてしまう!

 

『ジュワーッ!?』

 

ミサイルの飛んできた方向を見れば、先程の銃撃型アンドロイドが片膝をついた姿勢でこちらを向いており、噴進煙は彼のぽっかりあいた膝から始まっていた。

 

右手にレーザーバルカン、膝にはマイクロミサイル。なんという火力だ、これでは人型戦車ではないか。

 

(一度に相手しては駄目だ……まずは連携を崩すんだ!)

 

特技の異なる者同士がチームを組んだ時の恐ろしさというのは、セブン自身が誰よりも理解している事である。

 

だからこそ彼は、この中で最も厄介で、連携の要となっているアンドロイドに、あえて真正面から勝負を挑んだ!

 

『ダァー!!』

『ゴッ!!』

 

びりびりと空気が震え、余波だけで周辺機器が全て割れ砕けてしまう程の勢いで激突する、パワーファイターと重戦士!!

 

3体のうち、最も巨躯を誇るこの接近戦型アンドロイド……ただ単に身体能力だけを追求して強化されているのであろうこの機体は、一見、攻撃の射程が短く優先度が低そうに見えるが、その実、ひたすらに頑丈かつ単純であるが故に、つぶしが効きやすい。

 

なので遠・中距離の二体を先に倒そうとしても、この機体がその恵まれた基礎性能と重装甲で、素早く護衛のように動き、邪魔をしてしまうのだ。

 

だからこそ、余力のある内にコイツから……倒す!

 

『デュ……ワ……』

『ゴゴゴゴゴ』

 

五本の指をガッチリと絡ませ、自慢の握力でもって相手を押し倒そうと力比べする両者。

あまりの圧力に、二人を支える金属製の床がひび割れ、歪み、陥没するほど。

 

だが、その驚異的なパワー勝負の結果、徐々に押されていくのは……なんとセブンの方であった。

半ば予想していたことではあれど、これには銀河一の力自慢も内心舌を巻く。

 

コンセプトとしては、出力でセブンを圧倒できる人工筋肉と基礎骨格の研究……といったところだろうか。

なるほど、チブルとサロメの共同開発というのも伊達ではないらしい。

 

そして、そんな劣勢のセブンの背後で、件の無慈悲な砲撃アンドロイドが、片膝をつき真っ赤な背中へ狙いを定めた!

 

『……死ネ。』

 

折れた太ももから、ギラリと覗く殺意の先端。

 

セブン、危うし!!

 

『ジュ……アアッ……!』

 

――おっ! この防衛軍イチの怪力無双フルハシ様に、真っ向から腕力勝負を挑むたぁ、いい度胸だな! ダン!

 

 

極限状態に置かれたセブンの脳裏に、いつかの柔道場で聞いた野太い銅鑼声が響く。

 

 

――でもよ、俺の武器が、自慢の筋肉一本だけだと思ったら……大間違いだぜっ!

 

 

(……そうですね、フルハシ隊員。貴方は存外……技巧派でした!)

 

『デェアーッ!!』

 

背後でついにミサイルが発射!

 

すると突然、セブンは体重を後ろへ落とし、押し返していた敵の腕を一挙にグンと引き戻した!

 

そして、素早く両足を相手の腹部に滑りこませたかと思うと、地面についた背中を支点に使い、敵の巨体を遠心力のままに後方へ投げ飛ばす!!

 

決まったッ! これぞフルハシ直伝、ウルトラ巴投げ!

 

重戦士の巨躯が宙を舞い、そのままセブンの背後へ迫っていた陽電子ミサイルと激突!!

 

途端、目も眩むような閃光と共に、けたたましい爆発が雷と部品を四方八方へまき散らした。

跡形もなく粉砕される近接型アンドロイド!

 

工場の爆破まで、残り5分。

 

『ジュワ! デェア!?』

 

だが、勝利の余韻に浸る暇もない。

上空から飛来したアンドロイドが、灼熱のカーテンで包み込もうとしてきたからだ。

 

すぐさまセブンは、傍にあった機材を腕力と念力の合わせ技で投げつけると、壁に張り巡らされた配水管をアイスラッガーで鋭く切り裂いた!

 

アンドロイドは防御の為に、飛来物を自慢の火力で一瞬のうちに融解させてしまったが、その代わり、チーズのようにとろけた大量の金属を頭から被る事になる。

 

『ムムッ。』

 

もちろん、耐熱性を高められたボディがそれで傷つくことはなかったが、そこへタイミングよく吹き出した水流が直撃したので、急激に冷え固まった金属で全身を戒められてしまった。

 

『デュ!』

 

しばし時間を稼ぐことに成功したセブンは、振り返って狙撃アンドロイドに吶喊する。

それを右手の粒子マシンガンで素早く迎撃するアンドロイド。

今度は四本の指を巧みに動かし、セブンの動きを制限してしまうではないか!

 

『グ……ダァ!』

 

手足に何発かくらってしまったセブンは、堪らず強行突破を諦めて、物陰に退避する。

 

(なんという精密射撃だ、これでは近づけない。まるでソガ隊員の早撃ちじゃないか……まてよ?)

 

彼はサロメ星人の言葉を冷静に思い出した。

あのアンドロイドの電子頭脳には、今までのセブンの戦いに関するデータが一通り入っていると……

 

それはパワーやスピードといった、単純なスペックだけの話に留まらず、些細な行動のクセから思考傾向、好みの戦術、選択した技から次へ繋がる一連の動作に至るまで。

 

それらの情報を複合的に学習させれば、セブンのあらゆる戦闘パターンを、何万通りもシミュレートする事ができる。

 

(なるほど、だいたい私の取りそうな行動は、最初から全てお見通しという訳か。道理で素早い訳だ)

 

どのようなルートを通っても、電子頭脳の演算結果から、絶対に先読みされてしまうというのならば……!

 

……よろしい!

 

(やれるもんなら……やってみろ!)

 

『デュワーッ!!』

 

物陰から飛び出したセブンは、なんの回避もとらず、ただエメリウム光線を馬鹿みたいに乱射しつつ、破れかぶれで一直線にダッシュした!

 

当然そんな考えなしの突撃が通用する筈もなく、予想外の行動にアンドロイドが戸惑ったのも最初の数秒のみ。

 

次の瞬間には凄まじい量の火線が殺到し、銃撃と逸れたエメリウム光線によって、セブンの立っていた場所の配管は無残に破壊し尽くされてしまい、蒸気が盛大に吹き出した。

 

『でゅわわわーっ!』

 

蒸気の向こうで、セブンのシルエットが身悶えるように折れ曲がったかと思えば、喉も引き裂くような声量で、工場内へと響き渡る断末魔。

 

『でゆわ。じゆわ。だあ……がくっ』

 

煙のカーテンから千鳥足で現れた真紅の戦士は、胸を押さえながら苦し気に呻くと、二、三歩ほどよろめいたところで、無防備に倒れ伏してしまった。

 

『……???』

 

標的が急に動かなくなった為に、困惑したように途切れ途切れの駆動音を出しつつ、左右に首を傾げて、少しでも多面的にセブンの死体から情報を得ようとするアンドロイド。

 

このような行動は、どの予測ルーチンに入っていない。

 

『……死亡証明システムヲ。執行!!』

 

だが、動きをとめたならば、チャンスだ。

機械仕掛けの死神は、確実にターゲットを破壊するために、最も威力のある左腕の電磁ナイフを展開し、ピクリとも動かない敵に接近する。

そして、足元の標的に紫電を纏った必殺の刃を振りかぶり……

 

『ダァー!!』

 

……交叉。

 

立ち上がったセブンがアイスラッガーを頭部にもどすと、アンドロイドの頭部がグラリと揺れて、火花を散らしながら工場の床を転がった。

 

爆破まで――残り、2分。

 

 

―――――――――

 

「いかん! こちらのサイボーグ怪獣がやられた! ナディカ、早くあのカプセル怪獣にトドメをさすんだ! せめて一対一に持ち込め!」

 

「はい! ゼロセブン、敵の機動力は充分に削いだはずよ。やっておしまい!」

 

『Dywaaaa』

 

ニセセブンが、打撃によって痛めつけられ、動きの鈍ったアギラの喉元を鷲づかみにし、頭部のアイスラッガーに手をかける。

 

「させるか! 機関最大船速!」

「背部ロケットエンジン全力噴射!」

「……吶喊!」

 

巨大な水柱を上げ、海中から全身を引き抜いたマックスジョーは、重力低減の恩恵を最大限に享受しつつ、ペダンエンジンの齎す大出力にあかせて、さながら釣り鐘に打ち付ける鐘つき棒のように、アイスラッガーを振り上げるセブンの側面へ、そのまま頭部から突っ込んだ。

 

「総員、耐ショック姿勢!」

『グワッシ』

『Dywaaaa』

 

これには流石のゼロセブンと言えど派手に吹っ飛ばされ、森の木々を薙ぎ倒しながらダウンする。

 

そして、マックスジョーは各部のジェットを器用にふかしつつ、その重量からは考えられない程ふんわりと、地面に着地しようとした。

 

それでも衝撃を殺しきれず、周囲の土が肩口まで巻き上げれる事までは防げなかったが。

 

「各員、損害知らせぃ!」

「機体ダメージ小!」

「姿勢制御正常に機能中! 地上での歩行に問題ありません」

 

ユーエイトの稼働により得られた、二足歩行に関する姿勢制御のデータは、マックスジョーへ十全にフィードバックされており、浮力の助けが及ばない陸上においても、しっかりとバランスを崩す事無くその巨体を二本の足で支える事に成功していた。

 

そして今や、セブンがワイドショットで完膚なきまでに破壊し、撃墜してしまったペダン星人の司令船に代わり、マックスジョーのポッカリ空いた腹部には、無傷で鹵獲されたペガ星人の巨大円盤がそのまま納められている。

 

重量制御だけでなく、急激な気圧変化や衝撃にも耐えられるよう頑丈に設計されていたペガ円盤は、水上航行どころか水中潜航、空中浮遊に陸上歩行とあらゆる場所を戦闘空間として想定されている万能戦艦マックスジョーのコックピットとして、船体がどのような状態に置かれようとも、乗員を周囲から隔離するのに役立っていた。

 

『Dywaaaa』

 

起き上がったゼロセブンが即座に額からビームを放つ。

 

「うわっ!」

「エメリウム光線だ!」

「回避不能!」

「狼狽えるな!」

 

だが、マックスジョーの胸部を正確に狙い撃った光線は、その装甲をほんのりと赤く色付かせる程度の役目しか果たさなかった。

むしろ背後のアギラを庇うように、より前面へと一歩踏み出すマックスジョー。

 

「あのセブンですら、最後まで破壊出来なかった最強の装甲だぞ! ましてや偽物の貴様が、本物にすら為し得なかった事を出来ると思ったか!」

 

マックスジョーは再建に当たって、本来のキングジョーが持っていた、分離合体機構までは流石にオミットされてしまっている。

故に鈍重な動きと相まって、素早く敵の攻撃を回避出来る可能性は皆無。

 

しかし回避の必要など……無い!

 

ペダニウムの正面装甲は、純粋な剛性では殆ど宇宙一と言って良い、無敵の素材なのである。

究極の防御力と、無尽蔵の出力を持つ、銀河に轟くジャガーノート!

 

「……撃ち返せっ! 主砲用意!」

「マックスカノン、発射準備完了!」

「ってぇー!」

 

二股に分かれた艦首……つまり両足首に装備され、モード移行により艦後方を向いていた巨大な主砲が、最大仰角で無防備な敵の上半身に狙いを定め、下段から不意打ち気味に砲弾を撃ちこんだ。

 

『Dywaaaa』

 

「マックスジョー前へ! このまま畳みかけるぞ!」

 

 

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