転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
さあ、書き上がりました!
……と言っても前編だけですが。
本当は完結してから一挙投稿のつもりだったんですけど、各方面から『ツヅキハマダカ』の電報が、マヤかな?ってくらい送られてきたので、そんなに楽しみにして下さってるならと、クリスマスプレゼント代わりに前編だけ公開。
そういえば去年のガッツ星人も年明けで前編と後編分けたんだったなぁ……と懐かしくなりました。
そして、色々悩んだんですが、やっぱり『セブンの最終回』としての完成度では、もう原作が完璧すぎて、どう足掻いたって越えられないのは明らかなので、『本作の最終回』としてのやりたい展開マシマシではっちゃけることにしました!
だから、あのシーンやあんなシーンまで、まるっとスルーして、もはや別物みたいになってしまっているかもしれませんが、どうかご了承ください。
もしも原作を未視聴の方がいらっしゃいましたら、是非とも読む前に一度、(可能ならば)最終回の前後編だけでも鑑賞することをオススメしますよ。
視聴済みの方? そりゃもうこの機に再上映です!
それぐらい素晴らしい最終回です、あれは。
みんなセブン最終回見て。見ろ。
午前三時二十分。
ベッドの中で1人の男が苦悶の表情を浮かべながら、うなされていた。
寝汗でじっとりと濡れたシャツが肌に張り付き、より一層の不快感を煽る。
「ウッ……うう……っ!」
寝苦しさに堪えかねたのか、突然ガバリと身を起こし、荒い息を吐く男。
「ハァ……ハァ……」
霞む視界に目を細め、壁にかけられた時計盤をなんとか読み取る。
――もうパトロールの時間だ……
ベッドからのそりと這い出し、ブルーグレーの隊服に袖を通すと、途中で何度も意識を飛ばしかけながら、普段の倍以上の時間をかけて、ようやく支度を整えた。
念の為に、アンヌから貸し出された検温計を咥え、血圧計を巻くと……
「……よし」
示された数値は脈拍100、血圧140、熱も38℃以下しかない!
――まだ充分に許容範囲だ。
満足げに頷いた男が、隈の目立つ幽鬼の如き顔で自室を出れば、普段は隊員達が忙しなく行き交う廊下も、深夜帯故に人っ子ひとり居ない。
重たい足を引きずり、ウルトラホーク発着場までの暗く長い道を、ふらふらと寂しく歩を進める。
支度にずいぶんと手間取った事もあり、ボイラー室を通って近道を試みるも、配管を跨いだ際に思った以上に足が上がらず、つんのめる男。
危うく転ぶところだったと言うのに、声を上げる事すら億劫なのか、短い溜息を吐き出して、すごすごと引き返していく。
――ああ、結局遅れてしまうじゃないか。
普段ならしないような愚かな判断ミス。自分は、いったいどうしてしまったのだろう。
半ば倒れ込むようにして、扉の開いたエレベーターに突入すると、壁にぐったりともたれかかり、手許も禄に見れないまま勘を頼りに階下のスイッチを押す。
かと思えば、次の瞬間には目的の階に着いていた。
ホークの格納庫は、この広大な極東地下基地の下も下、最下層にある。
故に、エレベーターと言えどそれなりに時間がかかるはずなのだが……
なんという事はない、僅かな間とは言え、彼は確かに立ったまま失神していたのだ。
明らかにパイロットとしての資格を欠いた状態であるにも関わらず、男は自らを省みる事無く歩きだす。
かつん……こつん。
背を丸め、目線が足元に向いたまま、手摺についた腕だけが体を前に引っ張っていく。
そんな時だ、彼の進行方向から1人の若い隊員が、口笛でも吹きそうなくらいに軽やかな足取りで、タラップを駆け上がってきたのは。
「AMスリーゼロゼロ現在、大気圏外ポイント728方面パトロール完了。異常ナシ!」
「……交代しよう」
「うん」
狭い段差上で、すれ違いざまに交わされる短い引き継ぎ。
普段通りの、何気ないやり取り。
本来であればそれで終わるはずだったのに。
「……ソガ隊員!」
背後からかけられた声に振り向けば。
「どうしました? 顔色が冴えないようですけれど」
手摺に体を預け、心配そうにこちらを覗き込むモロボシ・ダンが、そこにいた。
「どっか悪いんじゃないですか?」
「いや……」
気まずそうにソガが目を逸らすも、その声に覇気は無く。
「代わってあげましょうか?」
同僚を案じ、 シフトの交代を提案するダン。
あまり褒められた行為ではないが、さりとて特段に強く禁止されている訳でも無い。
ウルトラ警備隊ともなれば、緊急時以外の勤務に関しては、隊員個々人にある程度の裁量が認められている。
決められた業務に穴を開けるのはもっての外だが、逆に言えば、それが円滑に廻ってさえいれば、多少の事は大目に見よう。
当人の責任が及ぶ範囲であれば、さらなる任務の遂行に励むのは、むしろ推奨されるぐらいであるし、請け負って貰った側も、それでこれ幸いと遊び呆けるような愚か者はまさかいないだろう……という信頼に基づいた、ある種の大らかさ。
もちろん、彼らの厳しい上官から直接見えない場所に限る、と言う但し書きは付くが……それを遵守している限りは、部下達の間でどのような取引があったのか気付きこそすれ、鬼の隊長も目を瞑ってくれるのである。
とは言え、普通はスケジュールに余裕のある者が申し出るような事であり、ダンは今し方パトロールから帰ってきたばかり。
これで今からソガの分も交代するとなれば、休憩も挟まずに連続飛行へ飛び立つ事を意味する。
余程、当人達の仲が良いか、さもなくば相当なお人好しかのどちらかでもなければ、自発的に提案できるものでもない。
当然、それに対する返答も決まっている。
ましてや……
「大丈夫だよ。元も子もないしな……」
「元も子も……?」
「気持ちだけ貰っとくよ。んじゃ」
怪訝そうに首を傾げるダンに踵を返し、ホークへ向かおうとする隊員に対し。
「ソガ隊員!」
「ん?」
階下で再び振り向いたソガに向けて、ダンが何かを優しく投げ渡した。
それを慌ててキャッチしてみれば。
「……飴玉?」
「チョコレートじゃなくて、すみませんね。コレしか無くって。アンヌがくれたんですよ」
「いや……飴玉も好きさ」
紙に包まれた小さな気遣いに、垂れ下がっていたソガの口角が、僅かに微笑む。
「疲れた時は糖分補給! ……でしたよね?」
「……よく覚えてるじゃないか」
「元気出してくださいよ!」
二人はニヤリと笑って、まあるい甘さを口に放り込んだ。
―――――――――
「そう、元も子もないんだよ」
――こんなところで、ダンに頼る訳にはいかねえ。
――せっかく順調に来れたんだ。
ソガは、大気圏外を警戒飛行するホーク2号の中で、そう独りごちる。
ウルトラセブンの最終話において、ダンはこれまでの戦いで受けた負傷のせいで、全てのエネルギーを使い果たし、エメリウム光線すら撃てない程に弱っていた。
その影響は、人間態時にも顕著に現れており、脈拍360、血圧400、熱が90℃近くある……という衝撃の独白から始まり、あの完璧超人モロボシ・ダンが、バスケはできない鉄棒も出来ない、オマケに居眠りで敵を見過ごした上に、弾は当たらないわ、撃墜されるわで、そりゃもう酷い有様だったのだから。
勿論の事、人体からそんな数値が出たらもう、それは即死していなければおかしいレベルなので、彼はメディカルセンターでアンヌの治療も受けられず、最終的に基地からも逃げ出さねばならない羽目に陥っていた……ような気がする。
「……元気そうで良かった」
そのことを考えれば、先ほど挨拶を交わしたダンは、ニコニコと普段通りの好青年のままであり、原作と比べいかに体力を温存できているか、ようやく目に見える形で確認できたので、ソガは人心地つけたような気すらしていたくらいだ。
最近ずっとそれを気にしていた反動か、張り詰めていた緊張が解け、解放感で窓から見える周囲の星々がクルクルと回っているようにも感じられる程。
そう今、この宇宙空間全てが、彼のこれまでの貢献と尽力による功績を讃え、祝福しているのだ。そうに違いない。
「大きな星が点いたり消えたりしている……アハハ。大きい……彗星かな? いや、違うな。彗星はもっとバアッーて動くもんな……」
その時、2号の緊急ランプが点灯し、通信が鳴り響く。
『こちらステーションV3、こちらステーションV3!』
スピーカーからは、ステーションV3の指揮官であるクラタ隊長の緊迫した声が聞こえてきた。
『ホーク2号応答せよ!』
「はいこちらホーク2号……」
『ポイント701方面に飛行物体発見! 現在マッハ1.3のスピードで移動中! 進行方向地球! こちらの呼びかけに応答ナシ! 直ちに追跡、撃墜せよ!』
「了解!」
――よし、ここでさっくり撃墜してやるぜ! 第48話、完!
意気揚々とホーク2号のイオンブースターで加速すれば、六角形と台形を組み合わせたような、いかにもなUFOを射程に捉えた。
ゴース星人の円盤だ。
いかに彼らの機体が高性能でも、宇宙空間においてならば、準亜光速すら引き出せる2号を振り切れる相手はそういない。
「くらえ!」
敵の姿をレティクルに捉えたソガが、レーザーの発射ボタンを押し込んで……
攻撃を
「……は?」
『ホーク2号、何をやってるんだ! 目は開いているのか! ボヤボヤするな!』
「は、はい!」
クラタから通信ごしに叱責され、レーザーを乱射するソガ。
しかし、撃っても撃っても当たらない。
ソガから見えるゴース円盤は、ゆらゆらと二重にブレたり、三機に増えたり……
なんという事だ! これがゴース星人の恐るべきカモフラージュテクノロジーなのだろうか!?
「くそ! 幻術か!? 卑怯者め……」
ソガはゴシゴシと目を何度も擦りながら、必死に攻撃を続けるも、レーザーはまるで命中せず、そうこうしているうちに大気圏内にまで侵入を許してしまう。
実を言うと、ホーク2号は例え地球の空であっても、最高速度がマッハ5と、3種類のウルトラホーク中最速を誇る超高速機体である。
しかし、それは純粋な速度だけ見た際の話であって、ブースター頼りのロケット型である事からも分かる通り、空戦における機動性……特に旋回性能については、他の二種と比べれば劣悪を通り越して、ほぼ皆無と言っても差し支えない。
宇宙という、垂直方向に常時かかる重力もなければ、空気力学も意味をなさない特殊空間では、高度なドッグファイトなぞ、そうそう起こり得る事ではなく、瞬きの如き超高速のヘッドオンが全てを決める。
それに特化して設計された2号では、大気圏内でも自由に三次元機動を行える円盤との相性は最悪だ。
狭い射角を嘲笑うかのように、ジグザグとした動きでアッという間に懐へ潜り込まれ――尤も、今のソガ相手には、そんな動きすら必要無かったかもしれないが――逆に円盤からのビームをモロに食らってしまった。
『バカもん! 搭乗者は誰だ!? 名前を言え、名前を!』
「はい……私は……ソガ隊員です!」
『ソガ……? そんなはずはない! あの人がこんな無様な射撃をするもんか!』
『臆病ガンマンが弾の撃ち方も忘れては、ただの臆病ではないか! キサマそれでよくウルトラ警備隊の隊員が務まるな! 邪魔だ! どけどけ!』
進路上に、別の戦闘機が割り込んでくる。
V3からわざわざ飛んできた、ステーションホークだ。
『ケツに火がついてるぞ』
『ふん、不時着して昼寝でもするんですね。防衛軍のエリートさん』
「……」
胴体部分から激しく出火する僚機へ、親切にも警告してやるクラタ達。
しかし、応答がない。
『……聞いてるのか!? 目の次は耳までイカレたか? おい、このツンボ!』
――誰かが遠くで何か喋ってる……
『隊長! ウルトラホークの軌道が安定しません! このコースでは地面に激突します!』
『……気絶する前に安定装置も押せんとはな!』
――っるせぇなぁ……どのボタンか分からんかっただけやんけ……
微かに聞こえてくる揶揄が、自身に向けてのものである事だけはなんとか理解したが、もはやそれに言い返す気力すら起きず、黒煙の充満するコックピットで、一度だけ咳き込むソガ。
『……あばよ』
『ソガ隊員ッ!!』
――死んだわ、これ。
引き延ばされた時間のように、地面がゆっくりと迫るなか、うっすらとした視界の端で、まるで太陽のように暖かく真っ赤な掌が、ちらりと見えたような気がして。
彼はそこで意識を手放した。
……と、ここでアンケートをひとつ。
当作をここまで読んで下さったみなさんは、いったいどういうファン層の方が、どれだけいらっしゃるのか、純粋に気になったもので……
貴方は原作『ウルトラセブン』を観たことが
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ある
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ない
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なかったが、本作をきっかけに視聴した。
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他昭和ウルトラシリーズは観ていた
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平成ウルトラシリーズは観ていた
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令和からだゼェェット!
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そんなにシンが好きになったのか(完全新規
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その他(感想欄かDMにでも)