転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
本当は全部書き上げてから開始したかったんですが、あまりに間が空きすぎたのと、自分のモチベ管理のためにも書きながら公開していくことにしました。
少なくとも5話分は書き溜めてあるので一か月は毎週日曜日に連投できます。
さあ、後編スタートです!
医務室のベッド上で、一人の男が身悶えている。
それは、ウルトラ警備隊のモロボシ・ダン隊員だ。
いかにも彼の正体こそ、我らがウルトラセブン!
だが彼は、これまでの度重なる戦闘で、激しくエネルギーを消耗しており、その状態でパンドン、ウリンガの二大怪獣と戦わなければならなかった。
辛くもパンドンは退けたものの、代わりに重症を負わされ、今まさに死の淵へ瀕していたのである!
苦しむダンの手を、ぎゅっと握りしめるアンヌ。
「ダンは今、必死に死神と戦っているんだわ……」
「頑張るんだ、ダン!」
「負けるんじゃないぞ! ダン!」
アマギとフルハシが、彼の枕元に駆け寄り、口々に励ましの言葉をかける。
しかし、普段であればそこへもう一つ、ダンを案じる声があるはずだった。
その強い違和感に、キリヤマが半ば無意識のうちに視線を彷徨わせるが……医務室を隅々まで見渡したところで、どこにも目当ての隊員はいない。
当然だ。ソガ隊員はゴース星人によって、連れ去られてしまったのだから。
「……」
「ダンさん……」
不安げな顔で小さくそう呟く隣の女へ、思わず複雑な表情を向けるキリヤマ。
彼の見つめる女の顔は、まるで写真のようにアンヌ隊員と瓜二つ。
だが彼女の言葉を信じるならば、その肉体はアンヌの遺伝子を使ってクローン生成された容れ物に過ぎず、中身はユーリー星人という宇宙人で、しかもなんと二匹目に現れた怪獣ウリンガの母親代わりだという。
――彼女達さえ来なければ……
こうはならなかったのだろうか、という仄暗い考えを、キリヤマは努めて頭の隅へと追いやった。
この親子もまた、出自はどうあれゴース星人の被害者らしい。
ならば、地球防衛軍としては保護すべき対象だ。
しかし……
念入りな下準備を終え、恐らく大規模な攻撃を仕掛けてくるであろうゴース星人。
その彼らに利用され、手駒とされている超人兵士ウリンガ。
敵の手に落ち、生死不明のソガ。
そして、今まさに命の灯火が尽きかけているダン……
積み重なったそれらを思えば、いかなキリヤマといえど、視界の彩度が急激に褪せていくような錯覚にすら陥ってしまう。
――いかん。こんな時こそ、指揮官が毅然とせずしてなんとする。
そこまで考えたところで……
「ううっ! ……ぐぅ」
「はっ!?」
「ダン!」
ダンの様子が一変する。
皆が見守る前で、急に静かに、動かなくなったのだ。
少し離れた位置に立っていた二人も、慌てて駆け寄り彼の顔を覗き込む。
もしや本当に息が止まってしまったのか……!?
緊張が走るメディカルセンター。
固唾を飲んで見守る仲間たち……
……だがその中で一人だけ、女神の如き微笑みを浮かべている者がいる。
アンヌだ。
「……大丈夫。峠は越したようだわ」
彼女だけは、ダンの呼吸が安定したものへ変わった事に気付いていたのだった。
ホッと胸を撫で下ろす隊員達。
ダンの命が助かったという事実のおかげか、医務室の空気が一気に、弛緩した和やかなものへと変わる。
……否、本当はその場にいる全員が、意図してそのような雰囲気を醸し出すよう、努力したに過ぎない。
そうせねば、もう一つの懸案事項で、神経がまいってしまいそうだったから。
……人間だれしも、気が滅入ってばかりはいられないものだ。
ましてや彼らの任務は、常に死と隣り合わせの過酷なもの。
そんな中だからこそ、時には道化のように莫迦をやって、
……だが、その役を率先して熟してくれていた者は、ここに居ない。
だったら全員で少しずつ、分担していくしかないではないか。
今まさに、この危機的状況だからこそ、あの飄々とした声が、自信満々にニヤリと笑うあの顔が、欲しくて欲しくてたまらないのに……必要な時に限って居ないだなんて。
明るく振舞えば振舞うほど、余計にソガの存在が浮き彫りになって、皆の胸にぽっかりとした喪失感が到来しかけるが……それでも彼らは笑顔で頷き合う。
そうしていれば、どこからかひょっこり帰ってくるかもしれないと、淡い期待を寄せているからだ。
アイツなら、放っておいてもまた、得意の口八丁で敵を騙くらかし、なにがしかの隙を作っては脱出してくるに違いないさ。なにせ、ヤツには前科がごまんとある。
驚くなかれ、ウルトラ警備隊にはミラクルマンが二人もいるのだ。
その片割れが今、こうして死の淵から生還したのだから、その相棒もきっとそうするだろう。
……いや、そうでなくてはならない。
血と包帯に塗れながらも、静かに眠るダンの寝顔は、仲間たちへ確かな希望を与えていた。
「……さて」
気を取り直し、例の女へと向き直るキリヤマ隊長。
「貴方の仰るウリンガという……」
「……」
「……宇宙人の子供についてですが」
「はい」
怪獣――という言葉を飲み込んで、なんとか配慮した表現を用いる事が出来たのは、彼の不屈の精神ゆえだ。
尤も、セブンの息子……などと言う、なんとも度し難い形容詞を選択するよりは、よほど気が楽だったという事もあるが。
「彼を傷付けず解放する為に、我々もなるべく努力はします……がしかし、彼我の戦力に圧倒的な隔たりがある以上、取れる選択肢もまた非常に限られる……という点はご留意頂きたい」
「はい……それは勿論……ただでさえ、ウリーの方が力で上回っているのに、そこからさらに手加減をしろと頼むわけですから……余裕が無いと言われても……仕方ありません。分かっては、います」
「……その為にはまず、我々も彼の事についてもっと知る必要がありますし、貴女からも、こちらへ出来る限りのご協力を願いたいのです」
「ええ……! 私に出来る事でしたら、何でもいたします! それがあの子の為になるのなら……!」
キリヤマの言葉へ、僅かな希望を見出し、必死に頷きを返す宇宙人の母親。
地球人側としても、戦力の減ってしまった今は、猫の手も借りたい状況だ。
その上で、協力者の子供が人質になっているというのなら……それを助ける為、上から引き出せる戦力にも幅が出る。
「ではまず……貴方のお名前を伺っていませんでしたね」
「名前……?」
だがいきなり、女性の表情が曇ってしまう。
その顔が、なまじよく見知った者の顔であるので、こちらからは、その内心も手に取るように分かるというのが、目下唯一の利点だろうか。
「何をそんなにお困りなのです?」
「そう言われましても……私達ユーリー族は、常に精神感応で会話をしていましたから……名前で互いを区別する必要が無かったんです」
「もしや……あなた達の種族には、個人名という概念が……無い?」
「その通りです。アマギさん」
「名前が無いだって? そんなんで、どうやって生活するってんだい」
「……例えばこのように」
女が目を瞑った瞬間、アマギやフルハシの脳内に、赤いチャンチャンコのような装束を着た、幼児の顔が思い浮かぶ。
その子が、気が強く悪戯っぽい表情のまま、得意げに鼻の下を擦るさまが、とてもとても愛しくて……彼女が如何にウリーを大切に思っているかが、瞬時に理解できたのだ。
勿論、みんなウリンガが人間態を持っているなんて、今の今まで微塵も思っていなかった。
ともすれば、先ほど見かけたあの甲冑姿を、小さく縮めたままの姿をイメージしていたと言っていい。
それがあのビジョンを見た瞬間、説明されるまでもなく、その子がウリンガなのだと悟ったし、彼女達が母星でどのような暮らしをしていたか……そして、二人っきりでの放浪の旅がどれほど辛かったか、その全てが手に取るように分かったのである。
とはいえ……
「うっ……ちょ、ちょっと勘弁してくれ……こいつぁ……俺にはちょいとキビシイや」
「ぼ、僕も……無理ですね……いや、精神感応とやらがどんな物かは……理解しましたけど……」
頭を押さえてその場に蹲る二人。
「す、すみません……地球人には相性が悪かったようですね……」
「んもう、二人とも今のでギブアップなの? そんなんじゃ男が廃るわよ」
「ま、待ってくれ……なんでアンヌは平気なんだぁ?」
「……さあ? みんながビンカン過ぎるんじゃないかしら」
「もしかしたら、私の肉体がアンヌさんのものだからかも知れませんね」
「なるほど……しかし、名前も無いのでは、あなたをどう呼べば良いのか……」
「確かに……」
そんな皆の困り顔を見て、腕組みをしていたアンヌは、すぐにパアッと笑顔を咲かせ、立ち尽くすもう一人の自分に抱き付いた。
「分かった! この際、アナタもアンヌって事にしましょうよ! それかもう、そのままユーリーにしちゃうのはどう? 今ここにいるユーリー星人はアナタだけなんだし」
「えっ?」
「私ね、フルネームは『
「おいおい、それだと
「うーん……じゃあ、縮めて『ユリアン』とか?」
「そ、そんな大それた名前は頂けません! 私のような者が名乗るのは、あまりにも不敬です……」
「……そんなに?」
「さあ? ……まあでも、ユリアンは男性名だからね」
略称を大慌てで否定するユーリー=アンヌ。
大きく手を振り、全力で辞退するその様子に、アンヌとアマギは顔を見合わせ、首を傾げた。
「……分かりました。そういう事でしたら、私の事は単にユーリーとお呼びください。アンヌさんの仰るように、ここにいるユーリー族は、私だけですから」
「アンヌでいいのに」
「勝手にお姿を盗んだ上に、名前まで借りては申し訳がありません」
「そういうものかしら……」
釈然としない様子のアンヌは一先ず脇へと置いて、謎の女改めユーリーへと再び向き直るキリヤマ隊長。
「うむ……ではユーリーさん。敵基地の場所等は分かりますか?」
「……申し訳ありません……ずっと基地内に軟禁されていて、場所までは……あの時は、ウリーが戦う気配を感じて、ただその近くへ行きたい一心でテレポートしただけなのです……むしろ、ウリーが外にいたおかげで、ようやく私も脱出する機会が得られたと言った方がよろしいでしょうか」
「ふむ……因みに今はそのテレポート等は?」
「それは……駄目です……今はウリーの気配が辿れなくて……ここからは遠いようですね」
「……そうですか」
少しばかり言い淀んでから、残念そうに首を振るユーリー。
その様子に、キリヤマは僅かに片眉をピクリと動かし、口を開きかけたが……それ以上なにかを追求する事は無かった。
「なるほど、一旦ウリンガがあのサイズにならなければ、見つからないわけか」
「超能力ってわりには、役に立たねえ能力だなぁ……」
「ちょっと、フルハシ隊員!」
アマギの解釈に対し、なんとも直截な感想を述べるフルハシ。
「少しはユーリーさんの……」
同僚の物言いを嗜めようとしたアンヌが、一歩踏み出しかけた……その時!
ズドォオン!!
「キャア!」
「うわっ!」
「な、なんだっ!?」
激しい揺れが医務室を揺らし、薬品棚から放り出されたビン達が、床へ叩きつけられて、けたたましい断末魔を上げる。
その後も、断続的に続く小さな揺れに耳をそばだてれば、地上の方から爆発音らしきものが聞こえてくるではないか。
「これは……まさか!?」
隊員達のビデオシーバーが一斉に鳴り響く。
「どうしたっ!?」
『大変です! 我が基地はいま、円盤群より直接攻撃を受けています!』
「なにっ!?」
驚愕に染まる隊員達の顔。
『初擊で、要塞主砲スパイナーガンの排莢口を狙い撃ちにされました!』
『炸薬に誘爆し、被害甚大!』
『現在、その他の要塞砲および隠蔽トーチカで迎撃していますが、敵の数が多すぎます!』
またしても起きる大きな揺れ。
フルハシが咄嗟にベッドへ覆い被さり、倒れてくるサッシを背中で受け止める。
「ダン! 大丈夫か!」
「うっ! うぐぐ……っ!」
「ダン……」
それでも、ベッドから直に伝わる衝撃そのものが傷に響くのか、またしても額に大量の脂汗を浮かべ、うめき声を上げるダン。
不規則で弱々しい息吹が、巨漢の広い額へかかった。
あの闊達な青年が、今はゼェゼェと苦悶に喘ぐしかないなんて……大切な仲間の命が、遂に尽きようとしている事を、嫌でも肌全体で感じとってしまう。
……その途端!
湧き上がる悔しさに、これでもかと歪ませた顔を、怒りの絵の具でみるみる真っ赤に染め上げて、フルハシは般若の如き形相で振り返った!
「……こんなところで、ダンを殺させてたまるかっ!!」
赤熱の肉弾戦車が、バッと医務室を飛び出していく。
「待って! 僕も、僕も行きますっ!」
「3号を使え! ……アンヌ、ダンを頼む」
「ハイ!」
慌ててその後を追いかけるアマギの背中へ、短い指示を投げかけたキリヤマ隊長は、作戦室を目指して部下たちとは逆方向の廊下へ姿を消した。
すると彼らと入れ替わりに、珍しく慌てた様子のキタムラ医師が、息せき切ってメディカルセンターへ駆け込んでくる。
「どうかねっ!?」
「発作は収まりましたが、今ので……!」
「これでは手術どころではないな! 早くモロボシ隊員を固定してやるんだ! アンヌ隊員、止血帯と毛布の用意を! ……そこのキミ! 見てないでキミもこちらを手伝いなさい! これから負傷患者が沢山来るからね!」
「……は、はい!」
呆けた様子で立っていたユーリーへ、即座に白衣を押しつけると、これ幸いと助手に指名してしまうキタムラ博士。
「……ふむ、キミは筋がいい。このまま鎮痛剤の処置も頼みましょう」
「分かりました!」
ユーリーが、アンヌの記憶もある程度は引き継いでいた為に、単なる素人以上の働きが出来たのは、埒外の僥倖だったと言える。
ひとまずダンを、緩衝材代わりの毛布でくるみ、ベッドから転がり落ちてしまわないように部屋の隅へバンドで固定してから、なんとか三人で新たな怪我人達の受け容れ準備を整える事ができた。
……数分後、軍医のアラキ隊員が重傷者を担いで合流した時、目まぐるしく働く医師達の中、あまりの忙しさでアンヌが遂に分身したのかと仰天する事となるが。
メディカルセンターは既に鉄火場の様相を呈し始めていた。
―――――――――
だがそれ以上に、蜂の巣を突いたような騒ぎの場所がある。
基地の要、作戦室だ。
「おい、三番砲塔! どこ狙ってる!? 貴様はサイロを守れ! 隣と呼吸も合わせられんのかッ! このスカタン!」
手にした受話器へ向かい、ツバでも飛ばす勢いで捲し立てると、そのままガチャンと叩きつけるクラタ隊長。
メディカルセンターにいるキリヤマ隊長に代わり、急遽の臨時指揮を執っている彼は、何度も爪先を踏み鳴らし、全身で苛立ちを表現していた。
というのも……
「どうなっとるんだ、この基地は!? 敵の墜とし方を誰も知らんじゃないか! さては長いこと地面に潜りすぎて、みんなめくらになっちまったんじゃあるまいな!」
思っていたより随分と練度が低い。……低すぎる。
勿論、低いといってもそれはあくまで富士山よりも遥かにそびえ立つ、クラタの要求値と比べての話であって、防衛軍全体の水準からすれば充分に精鋭と言えるだろう。
現に、夜空へ伸びる火線は多く、完全な奇襲にも関わらず、こうして即応出来ている。それはクラタも分かっていた。分かってはいたが……
しかしどうしても……
だからこそ、もどかしさばかりが募る。
すると。
「……お言葉ですが、クラタ隊長。当基地は先のアロンとの防衛戦により、多数の死傷者を出しました。砲術科に関しては半数以上が補充要員である事をご留意頂きたく」
「なにぃ?」
すぐ隣で、コンソールに向かいながら各セクションとの連絡を中継していた隊員が、ヘッドセットを外して訂正を述べてくるではないか。
――この期に及んで言い訳とは生意気な!
眉根を寄せて睨みつけかけたが……ふと、その声にどこか聞き覚えがあるような。
はてさて、いつ知り合ったのかと指先で何度かこめかみを叩けば……そうだ、ステーションとの定時連絡を担当している長距離通信士じゃないか。
確か名前は……
「ヨシダ! 今から俺の声を全ての砲座へまわせ!」
「は、……ハッ!」
ヨシダ通信士が、急いで手許のツマミを幾つか弄るのを横目に、クラタはマイクを手に取った。
「V3のクラタだ。この馬鹿野郎共が! お前達の撃ち方は全くなっとらん! 敵を追いかけようとするな! 逆にこちらの弾を追わせるくらいのつもりで撃て! とにかく広く弾をバラ撒くんだ! 夜空で塗り絵をするんだよ! 下手くそが、引き金を引くより先に、いっちょ前に狙いをつけやがる! ウルトラ警備隊にでもなったつもりか!? そういうのはな、射撃大会で入賞してからやれ!」
基地内に過激なクラタ節が炸裂し、オペレーター達は目を白黒させるが、モニターに映る映像では、目に見えて火線が分散し、暗闇よりも曳光弾の輝きが画面を占める割合が次第に高まっていく。
すると今度は、編隊を組んだままスルスルと光の束をくぐっていた円盤達が徐々に隊伍を崩していき、銃弾の隙間で制止して、同じ場所へ留まる時間が、先ほどまでよりも明らかに増えてくるではないか。
これまでは、攻撃が律儀に自分達の方向へ飛んできていた為に、反重力飛行特有の三次元機動を活かし、回避方向を360°全周から選択できたが、網目のように銃弾を張り巡らされたせいで、迂闊な方向へ逃げるわけにいかず、各々の回避に集中せねばならなくなったからだ。
「そうだ! 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる! モグラはモグラらしく、めくら撃ちしてりゃあいいんだ! ……安心しろ、さっきBブロックの対空銃座へひとり、腕の良いのを送っといた! キサマらの仕事は、そいつが当て易いように、敵の足を止めさせる事だっ! いいなっ! 通信終わり!」
「クラタ隊長……」
「ヒヨッコばかりなら、最初からそう言え」
フンと鼻を鳴らしたクラタは、ひとまずこれで時間が稼げたと、基地内の状況へザッと目を通す。
「おい、48番の隔壁が降りてないぞ。ガスが基地全体へ回っちまう」
ヨシダの隣で、忙しなく防火活動を指示している隊員の肩を叩くと、いかにも生真面目そうな顔が困った様子で振り向いた。
「まだ退避が完了していないんです!」
「……ええい、貸せ!」
通信機をひったくり、通話ボタンを乱暴に押し込むや否や、先ほどと同じく罵声を繰り出すクラタ。
「救護班! なにをモタモタしてるんだ! 隣の区画はとっくに火の海だぞ! キサマらのせいで隔壁が閉じられんだろうが! 味方を殺す気か!? 歩ける奴だけ連れていけ!! ……なーにをゴホゴホ言ってやがる。咽せてばかりじゃ聞こえんぞ!」
すると今度は無線の向こう側から、張り上げすぎて半ば裏返ってしまったような叫びが叩きつけられ、思わずクラタは受話器を耳から遠ざけた。
「かけがえのない部下だぁ……? お前! よくもこの俺に逆らえたもんだなっ!? 所属と名前を言ってみろ! ……なにぃ? 輜重科ぁ? なんでそんなとこにいるんだ!? さっさと逃げんか、この大間抜けが! もういい! 知るか! お望み通り、墓石には『強情で死んだ』と彫っといてやる! 勝手にしろ!」
そのまま受話器を叩きつけて一言。
「隔壁を下ろせ」
「し、しかし……! まだ彼らが!」
「チッ……どいつもこいつも……」
舌打ちを隠そうともせず、目の前の隊員を睨みつけるクラタ。
しかし相手が、それを意にも介さず、四角四面な表情でまっすぐこちらを見返し続けるものだから、ますます不機嫌そうに口を曲げていく。
「キサマは誰だ」
「ハッ、ウエノであります……」
「そうか、ウエノ。……よく聞け、7秒だ」
「ハ、7秒……?」
突然の事に思わず怪訝な顔をしてしまうウエノだったが、クラタは彼の困惑なぞ知った事かとしゃべり続けた。
「隔壁のスイッチを押す。そのあと7秒! きっかり7秒で、区画の電源を無理矢理落とせ。そしたら真ん中に、ちょうど担架が通るくらいの隙間が空くはずだ」
「な、なんですって!」
「あんなものはな、上と下さえ堰き止めちまえばいいんだ。そうすりゃガスの巡りは遅くできる。……だがな、キサマが1秒でも間違えれば、さっきの鳥頭はお陀仏だ。俺の命令ではなく、お前のミスが、奴らを殺す! ……それでもいいなら、やれ」
「……は、ハイ!」
即座に配電盤へ向き直ったウエノが、呼吸を整えてから、神妙な面持ちでボタンを押し込んだ。
1……2……
瞬きもせず、タイマーを見つめる彼の鼻筋を、一筋の汗が流れ落ちる。
……5……6……
「今!」
整備士でもなければ知り得ない、非正規の手段でもって、48番区画の電源供給がシャットアウトされた。
ウエノはかつて、マンダス星人が送り込んできた散歩惑星により、電磁波で狂ってしまった電子機器の臨時整備を手伝った際、頑固な年若い整備員に叱り飛ばされたのを覚えていたのだ。
緊急装置も含めて駄目になるから、その操作だけは絶対にするな、と。
だから、これはきっと大目玉を食らう。
しかし、そんな事よりも彼は、今のが成功したのか失敗したのか、それだけが気がかりで仕方なかった。
集中の反動で浅く乱れる呼吸もそのままに、クラタを振り返るウエノ。
「ハッ……ハッ……わ、私は……やれたんでしょうか?」
「知るか。電源が無いんじゃ、確認の取りようがない。安心しろ……失敗したとして、どっちみち換気能力も死んでるんだ。丸焼きにされる前に眠ったまま逝けるだろうよ」
「そ、そんな……」
顔面蒼白となるウエノ。
その時、隣の49番区画から通信が入る。
「はい、作戦室! ……ええ……ええ! そうですか! では、もう誰も居ないんですね!? でしてら穴はすぐに塞いでください! それ以上は閉じられないので!」
「いや、そんな悠長な事してる暇があったら、隙間から爆薬でも放りこんどけと伝えろ」
またしても驚愕の顔で振り向く通信士だったが、今度は特に異議を唱える事も無く、その言葉をそのまま伝えた。
「やるじゃないか。よし、ウエノ。似たような場所があったら、同じようにしろ。俺はもう、金輪際そっちは見ない! いいな!?」
「ハイ!」
――ったく、こんな時に奴はいつまで待たせる気だ……?
「……ん? おいヨシダ。このランプはなんだ?」
「それは……ホーク3号が出撃準備に入っています!」
「なにぃ?」
その時、背後のドアが開いて誰かが駆け込んできた。
クラタが振り返る。
「遅いぞ、キリヤマ!」
「クラタ!」
「最初の攻撃で、滑走路を掃射されちまった。外に駐機してあったウルトラガードは全滅だ。俺が乗ってきたステーションホークもな」
「そうか……よく保たせてくれた」
「……よし!」
旧友の顔を見るやいなや、自身のヘルメットを引っ掴み、そのまま作戦室を出て行こうとするクラタの腕を、キリヤマが掴んで引き留める。
「どこへ行く?」
「ホーク1号はまだある!」
「やめろ。いま二子山をスライドさせたら、基地の中が丸見えになる!」
外敵に対し、幾重にも強固な防備を施した極東基地の、数少ない致命的弱点がこれだった。
ウルトラホーク1号と2号の発進口である4番ゲートは、二子山の分厚い岩盤で蓋をされているため、生半可な攻撃ではビクともしない。
だが発進の際だけは、大きくハッチを開放せねばならず、機体エレベーターの昇降口が地下の格納庫から吹き抜けの如く基地の中心を貫いている為、そこへ爆弾でも投げ込まれては、ひとたまりも無いのだ。
岩石の蓋は重く、素早い開閉はとうてい不可能であり、敵機に直上を抑えられた状態から発進しようとすれば、かなりの時間、無防備を晒す事となる。
本来はそれを補う為の長距離レーダーであり、即応可能なウルトラガードの迎撃編隊だったのだが、敵は低空飛行で岩肌を縫うように接近し、警戒網の死角を巧妙に突いて奇襲を成功させたのだった。
まるで、基地の構造を最初から全て把握しているかのような……
「くそっ!」
天井を顎でしゃくり、短く否定を述べる司令官の言葉に、突撃隊長はヘルメットを机へ叩きつけて悔しさを露わにする。
彼の本領は、空を縦横無尽に飛んでいてこそ発揮されるものだからだ。翼をもがれ、為す術なくやられ続けるなど、不愉快の極みでしかない。
しかし、そんな戦友の姿を見ても……いやむしろ、彼が内心の腹立たしさを全て代弁してくれたおかげで、より一層、キリヤマは冷静に振る舞う事が出来た。
「……だから3号を出す!」
「なんだと?」
「各砲座に通達! 奇数番号の者はこれより、Dブロック上空を5秒間隔で斉射せよ! 敵を滝の正面から追い払え! 偶数番は私が命じるまで待機、動きを乱した敵の中で、一番高度の低い機体を照準するんだ!」
隊長の放った号令に従い、基地の銃座が一つの生き物のように動きを変えていく。
先ほどまでとはまた違ったパターンの攻撃が、急に襲いかかってきたので、ゴース星人の円盤群は再び対処を迫られ、一瞬ではあるが激しく混乱した。
するとその隙を逃さず、妙に狙いの鋭い対空銃座が、敵を一機、火達磨へと変える。
『バカな やられたのか』
『まて おちついて よくみてみんか』
僚機が撃墜された事で、ますます浮き足立つ円盤達だったが、敵も然る者。中にはこの攻撃の狙いを看破し、滝へ目掛けて急降下をかける機体もあった。
なんといっても、基地の造りは全て分かっているのだから、いきなり密度を増した火線が、一体どこを守っているのか一目瞭然なのだ。
確かに3号の発進口は、基地側面にある滝の裏へカモフラージュされている為、ハッチが開いても外からでは気付かないし、機体が飛び出してくるタイミングも掴みにくい。
しかし、こうも分かりやすく援護射撃をしてしまえば、今から味方を空に上げますと言っているようなものだ。
進路確保の射撃ならば、誤射を防ぐためにハッチ周辺だけは、弾幕を薄くせざるを得ないはず。
『そこか』
歴戦の円盤乗りから見れば、滝から空へ、一直線に出撃ルートが描いてあるようにすら思えた。
『いいウデだ だからこそよみやすい』
分かってしまえば、それは即ち侵入コースと同義でしかない。
銃弾の無い空間をくぐり抜け、滝の正面へ辿り着いた時、激しく流れ落ちる水の裏側で、人工物の光がチラリと輝くのが見える。
『とった!』
「今だ! 撃て!」
……瞬間! それまで息を潜め、虎視眈々と狙いを定めていた残りの銃座が、一斉に咆哮を轟かせ、攻撃態勢に入った円盤を全方位から刺し貫いた!
たちまち火球へと変じ、爆発四散するゴース円盤。
「進路クリア!」
「ウルトラホーク3号、発進!」
漆黒のキャンバスで咲いた紅蓮の大輪を目眩まし代わりに、銀の翼が闇を引き裂き、飛沫の煌めきをまっすぐ曳きながら、戦場の夜空へ飛び出していく!
―――――――――
「ずいぶん好き放題暴れてくれたじゃねえか……!」
「フルハシ隊員! あれを!」
離陸直後の加速中を狙われないよう、ひとまず敵編隊から大きく距離を取って旋回する3号。
アマギが指差す先で、ゴース星人の円盤が何か大型ミサイルのような物体を、基地へ投げ落とすのが見える。
重力に引かれて、真っ逆さまに落下したソレは、着弾の瞬間、その大きさに見合った大爆発を引き起こすのかと思われたが……予想と反し、綺麗に地面へと突き立った。
ちょうど、柄の先で摘まんだ包丁を、砂場へそっと投げ落としたかのような、擬音で言えば『すとん』だとか『さくり』といった小気味よい音が聞こえてきそうな具合に。
「なんだ? 不発弾かぁ?」
「いえ……」
二人が訝しんでいたのも束の間、敵の投下した兵器は突然、錐のような先端を激しく回転させ始める。
そして後部から勢いよくジェットを吹き出せば、なんとそのままモグラのようにズブズブと地中へ沈んでいくではないか!
その光景は、二人に強い既視感を感じさせるものだった。
「アッ!? あれは……」
「まるで小さいマグマライザーだっ!?」
数秒後、地中から凄まじい火柱と土砂が噴出し、敵兵器の恐るべき全容を嫌でも理解する事となる。
「な、なんてこった……奴ら、マグマライザーに爆薬を詰め込んで、地底爆弾を作っちまいやがった……!」
「こんなもの、地下基地の天敵じゃないか!」
そうして大きく開いた破孔へみるみる群がり、次々にビームを照射して、その傷口をいっそう大きなものへ開いていく円盤達。
ゴース星人達はこの恐るべきバンカーバスターを、ミサイルサイロや格納庫のハッチといった弱点部分へ精密に投下する事で、地下に建築された極東基地へ甚大な被害を齎していたのだ!
「させるか!」
再び投下準備に入った円盤へめがけ急降下。
翼の根元に設置された連装ロケットポッドが次々に火を噴いて、瞬く間に敵を蜂の巣へと変えていく。
流石に、それほど強力な兵器を腹へ抱えた状態で被弾すれば、一撃爆散は免れないらしく、航空機に上をとられたと分かった敵機は、慌てふためいて逃げ惑う。
「フルハシ隊員! 1時の方向から来ます!」
そして、まだ切り札を持ったまま動きの鈍い味方を庇うように、三機で編隊を組んで立ちはだかり、ホークへ目掛けて突撃してくる円盤達。
恐らく、既にドリルミサイルを投下済みで身軽なのだろう。
明らかに動きが機敏である。
「こんにゃろう……!」
斉射されたビームの濁流を、鋭いバレルロールで掻い潜り、すれ違い様にミサイルとバルカンをありったけ叩きこむ名パイロット!
しかし、そこは腐ってもゴース星人の円盤だ。一機は炎を纏いながら墜落していくが、残りの二機は黒煙を上げつつもまだ飛行を続けているではないか。
「なんて往生際の悪い奴らだ!」
「小型艇ですら、あれほどの耐久性があるのか……」
アマギは今朝、あのパンドンなる怪獣を運んできた大型輸送機に、ホークの攻撃がまるで通用しなかった事を思い出し、唇を噛み締めた。
あれは機動性や攻撃力を削ぎ落とし、全てのリソースを防御力のみへ注いだ機体だからだと思っていたが、速力や武装も考えなければならない攻撃機までこれほどの難敵であるのなら、そもそもの基礎科学力からして地球より何倍も優れているという事である。
先ほどの地底ミサイルだって、例え使っている技術はマグマライザーと同じでも、それを機載可能な小ささに纏め、あまつさえ使い捨ての兵器にしてしまうという辺りに、地力の違いを見せつけられたような思いがした。
ただでさえ、ソガもいなければ、ダンも戦う事が出来ないと言うのに……
――こんな強大な敵に、我々だけで勝てるのだろうか……
アマギの胸中で不安が広がっていく。
……だが、そんな考えを引き飛ばすかの如く、突如爆発するゴース円盤。
動きの鈍ったところを、地上の対空銃座から狙い撃ちにされたのだ。
「ヘっ、ざまあみやがれ!」
炎を上げながら墜落していく敵の姿を見て、歓声を上げるフルハシ。
――そうだ、僕達は今までずっと、こうして力を合わせて敵を倒してきたじゃないか……
人類の武器は、科学のみにあらず。
その真骨頂は、団結の力にある。
それを思い出したアマギは、サッと頭を振って、弱気を撥ね除けた。
――そうだ、今はダンにもソガにも、頼る事は出来ないんだ。だからこそ……
「……僕らがやるしかない!」
「……? その通りだぜ!」
瞬く間に味方を墜とされ残った一機は、形勢不利とみてか、煙を噴いたまま撤退を始めた。
「逃がすか! 丁度いい、このまま敵の本拠地をつきとめてやる!」
ますます勢いづいて、逃げる敵の背を追いかけようとするフルハシだが……
「待ってください!」
「なんだ!?」
「基地はまだ攻撃を受けている最中ですよ!」
「あっ……」
フルハシは眼前の円盤と、背後の戦場を交互に素早く見やり、逡巡した。
手負いの機体を追えば、敵の尻尾をつかめる筈だ。しかし、基地は見捨てていく事になる。
とはいえ、今の攻防で流れは着実にこちらへ向いた。基地からの砲火もどんどん洗練され始めているので、残存部隊相手なら、彼らだけでも充分に凌げるはずだ。
……だが、ここでもう一押し、ホークが上空で敵を牽制し続けてやれば、基地内に格納されているウルトラガードや対空戦車が出撃しやすくなり、防御はより磐石なものとなる。それだけ決着も早くなるに違いない。
そして、そんな事をしていたら、さっきの奴を取り逃がしてしまうなんてのは、もはや言うまでもないだろう。レーダーを掻い潜ってくるような相手だ。肉眼でなければ追跡など不可能。損傷で速力が落ちている今が絶好のチャンス……
「……ハッ!?」
思わず目を瞑ってしまった彼の脳裏に、先ほどの光景が浮かび上がった。
ダンの額から滝の如く流れ落ちる脂汗。ベッドの上でだらりと力無く垂れる四肢。今にも止まってしまいそうな息遣い……
「……ちくしょうっ!!」
操縦桿を倒し急転換。
いったい何を迷っていたのか。
あそこには、死にかけのダンがいるのだ。
俺たちの大切な仲間が!
彼を守る為に、危険を冒してまで飛び出してきたのではなかったか。
「このフルハシ様の目が黒いうちは、基地にゃ指一本触れさせてやらねえぞっ!」
「敵の発射口をロック!」
「くらえっ!」
―――――――――
それから間もなく、ゴース星人の円盤群を辛くも撃退に成功し、ホーク3号が帰還した。
二人を労うキリヤマ。
「ご苦労、よくやってくれた」
「は……」
敬礼で応えるフルハシ達だが、その表情は優れない。
「どうした?」
「それが、少しでも敵の情報をと思って、昼間に戦った場所へ飛んでみたんですが……」
「セブンが倒したあの怪獣……パンドンの死骸が忽然と消えていたんです」
「なに! 死体が消えた?」
その報告に顔色を変えるキリヤマと、その背後で訝しげに聞き耳を立てるクラタ。
「ですから、実はあの時トドメを刺しきれず、どこかで生き延びているか、もしくは……」
「ゴース星人が回収したか、か」
「はい」
もしや、先ほどの攻撃はパンドンの回収を隠す為の陽動だったのでは……?
そんな可能性が、皆の頭に浮上する。
あれ程の大規模攻撃がもし、本命では無かったとしたら……俄には信じがたいが、少なくとも敵はまだ諦めていないのかもしれない。
皆が作戦室を見渡せば、そこらじゅうで隊員たちが走り回り、通信士達のもとにはひっきりなしに被害状況の確認報告が舞い込んでくる。
敵は要塞主砲や長距離レーダーといった、基地のメインとなる設備へ火力を集中投入しており、それらを潰されてしまったからには、極東基地の戦闘力は半減したも同然。
ただ不幸中の幸いであったのは、ミサイル発射口や長距離砲といった、直接的な火力から削る事を優先したらしく、ある意味ではそれら反撃用装備が弾除けとなった結果、動力炉や人員への損失に関してならば、地表部分の悲惨さに反し、比較的軽微で済んだと言えよう。
奇襲で抵抗手段をもぎ取ってから、悠々と基地攻略に乗り出すつもりだったのであろうが、ホーク3号が無理矢理飛び出してきた為、後半の攻撃予定が頓挫してしまったのではないか……と参謀達は見ている。
「敵が防衛軍の基地上空から直接攻撃してきたのは、これで二度目だ」
「例のガッツ星人とやら以来というわけか……だったら相手にとって不足はない。久しぶりに手ごたえのある連中だ」
「大口を叩くな。次にどんな手を打ってくるか、わからんぞ」
逸るクラタを、そう言ってキリヤマは窘めた。
彼はあの時、宇宙のV3ステーションにいたので、あまり実感が湧かないのだろう。
ここまで強固な富士要塞へ対し、もしも正面戦闘を仕掛けてくるような手合いがいた場合、それがどれほど周到に用意を重ねた上で、かつ、戦力に余裕を持たせた結果の選択なのかという事に。
なにせこの極東基地はこれまで、数多の侵略者が様々な破壊工作によって弱体化を狙い、そしてそれすら叶わず散っていった要衝だ。
それを、小細工無しで粉砕しようと言うのだから、自信の程は推して知るべし。
手酷くやられた鬱屈もあってか、多少、険悪なムードが漂いかけたところへ、折良くアンヌが戻ってくる。
尤も、彼女の顔色もまた、あまり優れたものとは言えなかったが。
「隊長。ひとまず重傷者の収容が終わりました」
「アンヌは、センターを離れて良かったのか?」
「ええ、アラキ隊員達が頑張ってくれていますから。本当に奇跡的なタイミングだったと思います」
近頃のソガやダンの不調を心配したアンヌが、無理矢理にでも定期検診を捻じ込んでやろうと画策していたのが、意外な形で功を奏した。
現在の極東基地には、医療担当の隊員がほぼ全員集まってきていたのだ。
とはいえ逆に、貫通爆弾が医務室を直撃していたらと思うと、もはや絶望しかない。まさに紙一重だったとも言える。
これに関してはやはり、敵円盤を弾幕で牽制し、外縁部から医務室のある基地直上までは決して侵入させなかった地上班の、面目躍如と言ったところだろう。
「でもメディカルセンターはもう定員オーバーです。いくつかのセクションを臨時病棟として間借りしている状態なんですもの」
「そんなにか……」
「なあおい、ダンは? ダンは大丈夫なのか?」
「大丈夫! 今は医務室の奥でぐっすりよ。ありがとう二人とも。もしもあのままだったら……」
「良かった……」
ホッと胸を撫で下ろすフルハシとアマギ。
ようやく良いニュースが聞けたという表情だ。
「そうだわ、アマギ隊員。申し訳ないけれど、科学班の仮眠室を貸してもらえないかしら。しばらく手術どころじゃないから、それまでダンを別の場所へ移動させてあげたいの。ほら、彼ってすごく耳がいいでしょう? ……今の医務室は、ちょっと……」
医師達の怒号と、怪我人の呻き声で満ちた空間は、控え目に言って地獄の様相である。
本格的な治療が可能となるまで、ダンには少しでも安らかな休息をとって貰いたいというのが、アンヌの思いであった。
容態の安定した患者を他へ移せば、その分、より重篤な者を寝かせる為のベッドが空く、という事情もあるが。
「もちろんだ! それがダンの為になるなら是非使ってくれ! その点、あそこは遮音もしっかりしてるし、なんなら医薬品も多少は置いてあるからね。ちょっと準備してくるよ」
「助かるわ!」
そうしてアマギが、本部を退室しようとした……その時!
警報が鳴り響き、作戦室のモニターが耳障りな砂嵐で覆われる。
「電波ジャックです!」
「なに!」
「しかもこれは……ぜ、全世界の、あらゆる帯域に向けて発信されていますっ!?」
驚愕するウエノの悲鳴と共に、モニターが像を結んだ。
そこに映っていたのは……
「「……ソガッ!?」」
何らかのカプセルの中、虚ろな目でこちらを見詰めるソガ隊員の顔であった。
ウルトラ警備隊の仲間達が固唾を呑んで見守る中、彼は遂にその口を開くのだ。
「地球防衛軍に告ぐ……」
貴方は原作『ウルトラセブン』を観たことが
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ある
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ない
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なかったが、本作をきっかけに視聴した。
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他昭和ウルトラシリーズは観ていた
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平成ウルトラシリーズは観ていた
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令和からだゼェェット!
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そんなにシンが好きになったのか(完全新規
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