転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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大変長らくお待たせしてしまいました。
作者が転居諸々でバタバタしておりまして、執筆時間をあまり確保できておらず、しばらく不定期更新のままとなります。

クライマックス寸前でテンポが落ちて申し訳ないのですが、完結までじっくり楽しみながらお待ちいただければと思います。


さて今日は記念すべき7月7日でセブンの日! なので日付変更と同時に投稿です!
ではどうぞ!


史上最大の決戦

 

荒れ地に穿たれた大穴から、真紅の巨人が飛び出した。

 

膝をついた彼は、胸の前で握っていた両手を地面の上でそっ……と開き、中で大切に包んでいた者達を解放する。

 

降り立ったアンヌが後ろを見上げれば、こちらをじっと見つめる巨人と交叉する視線。

 

そして彼女の口は、アンヌが頭で考えるよりも早く、その者の名を呼ぶ形に開いた。

 

隣に立つソガの耳には、彼女が無意識に発した、か細い問いかけが入ってきたが、あえてそれを無言のうちに聞き流す。

 

「ぉーい!」

 

月明かりの向こうからは、仲間たちがこちらに駆けてくる声がする。

恐らく、地下基地崩壊の振動を察知して、ホーク1号を飛ばしてきたのだ。

 

「アンヌ! ソガ!」

「隊長!」

「……無事で良かった」

 

ソガ、アンヌの両名を取り囲み、笑顔で肯く面々は五人。

その中にはクラタとヒロタの姿もある。

 

「こんにゃろめ! アオキを担いだヒロタ隊員しか帰ってこねぇから、俺ぁてっきり……全く心配かけさせやがって、こいつぅ!」

「すぐに来いと言っただろうが! なにをモタモタしていたんだ……!」

「お前が行った直後に、ゴース星人から妨害されてな……」

「おい、聞いていたより随分と少ないじゃないか。うちのアオキ以外にも、ぞろぞろと引き連れてたんだろう。他の面子はどうした?」

「彼らは……」

 

クラタ隊長からの問いかけに、アンヌは目を伏せるしかない。

 

地下で哀しい別れがあった事を察した面々の顔がさっと曇るが、その中からキリヤマが、努めて明るい態度のまま歩み出て、背後に立つ赤い巨人を見上げながら礼を述べた。

 

「ウルトラセブン! ありがとう! おかげで部下たちは救われた!」

 

セブンがそれに頷きを返そうとした時である。

 

彼の背後で地面が盛り上がり、岩盤に亀裂が入っていく。

そうして姿を現したのは、道化師の如き意匠の鉄仮面。

近づき触れる者をみな傷付ける、冷たい棘だらけの鎧を着込んだ、人工超兵ウリンガだ!

 

「ダン! 後ろだっ!」

『デュワッ!』

「なにっ」

 

アマギの発した警告で、奇襲に気付いたセブンは素早く踵を返すと、襲い来るウリンガの両手を掴み、抑え込みにかかる。

 

だが、その様子を見ていた警備隊の面々には、敵の出現によるものとまた別種の緊張が走った。

 

「……あ、アマギ……おめぇ……今、セブンのこと……何て……?」

「……」

 

震える声で問いかけるフルハシに、アマギは黙して語らない。

彼自身もまた、先ほどから混乱したままの頭を整理し、伝えるべき言葉を吟味しているようだった。

 

だが、その言葉を次いで口を開いたのは……

 

「そうよ! ウルトラセブンの正体は、あたしたちのダンだったのよっ!」

 

「アンヌ……」

 

先ほどあの逞しい腕に抱かれて、マグマライザーの掘り抜いた地下空洞を共に飛んだ時、彼女にはすっかり分かってしまったのだ。

そこから伝わるぬくもりと安心感の持ち主を、自分はよくよく知っているのだという事が。

 

アンヌの頬を雫が伝う。

 

「自分を犠牲にしてまで、この地球の為に戦っていたんだわ……!」

 

「でももうこれが最後の戦いです。ダンは、自分の星に帰らなくてはならない……」

 

「なんだとっ」

 

急に新事実を次々と叩き付けられ、目を白黒させるクラタが、そんな事は初耳だとばかりに振り返った。

 

確かな事実であると頷くアマギ。

 

「ダンは言っていた……明けの明星が輝く頃、西の空に、一つの光が宇宙へ飛んでいく……それが自分なのだと……つまり彼に残されたエネルギーはもう、今日の夜明けまで保たない!」

「そんな!」

「じゃあこの戦いが長引けば……」

「彼はどうなってしまうの!?」

「分からない……」

「ダン! なにモタモタやってるんだ! いつもみてぇに、はやく決着をつけちまえ!」

 

フルハシがやきもきしながら見守るセブンの戦いは、あまりにも精彩を欠いている。

ただでさえ、彼はエネルギー不足と怪我を抱えているのだから、普段通りの戦いが出来なくても当たり前の事なのだが、あらゆる格闘技に精通した生粋の武闘家であるフルハシから見れば、それだけの理由ではないように思えた。

 

「……ダンは……ウリーをなんとか助けようとしているんだわ……ユーリーさんの最期の願いを……叶えようとしている!」

 

「なにぃ!? それで全力が出せないってぇ!? バッキャロウ! 他人の心配なんかしてる場合か!! ダァン! お人好しも大概にしやがれ! 手加減すればお前の方が死んじまう!」

 

「だが、彼はもう光線技すら使えないのかもしれない……」

 

「そうなると、セブン……いや、モロボシに残された手段は、あのよく切れる投げナイフだけだ」

 

「ダメよ! そんなもの使ったら、本当にウリーを殺してしまう……!」

 

「チッキショウ……!」

 

その時、辺りに響き渡る地鳴りと悍ましい叫び声!

 

『ギャッ! ギャッーー!』

「こ、この声はまさか……っ!」

「いたぞ! あそこにっ!」

 

岩をかち割り地上にでれば、それは月明かりの下で全身を灼熱の溶岩の如く赤熱させた、双頭怪獣パンドンだった!

 

夜闇に歌う墓場鳥の如く、怪獣の嘴が不吉な二重奏で死をさえずる。

 

宿敵ウルトラセブンに終わりを告げる為、かの怪獣は地獄の底から不死鳥のように舞い戻ったのだ!

 

【挿絵表示】

 

「あっ!? 見て下さい、奴の手足を!」

「……再生しているっ!?」

「なんという生命力だ……」

 

セブンのアイスラッガーによって切り落とされた筈の四肢が再生し、その()()()()()()でのっしのっしと噴火口を踏みしめる。

 

そしてその姿に最も慄いていたのは……

 

「ばかな……! 義足じゃない、だと……!?」

 

ソガ隊員が精神の奥底で視聴していた番組の中で、後編に出現する改造パンドンは、セブンに切り落とされた片手と片足が金属製の部品に置き換わっており、赤と銀色のパッチワークとなっていたはず。

 

しかし、目の前の怪獣は全身赤一色だ!

もしやパンドンはもう一匹いたのか!?

それともギエロン星獣の如き再生力があるのか!?

 

「どうしたの、ソガ隊員!? さっきからアナタ、少し変よ!?」

「ソガがおかしいのは、いつものことさ! それよりマズいぞ! 奴さん、ステゴロじゃダンに敵わねえからって、武器まで持ちだしてきやがった! この卑怯もの!」

 

そう、フルハシの指摘通り、ソガ以外の警備隊が真っ先に警戒したのは、なんとパンドンがただ蘇っただけでなく、その上さらに武装している事である。

 

右手にはなにやら巨大な金属製の板……つまり怪獣用の盾を持ち、逆側の手にはなんと……

 

「銃だ! 銃を持っているぞ!」

 

怪獣が掲げた左腕には、巨大な筒の束が握られており、その先端から凄まじい勢いで光の礫が次々と飛び出した!

 

ウリンガと組み合うセブンの背中を、バルカンランチャーの連射が襲う。

 

『デュワァ……!』

「はっ!? ダン!!」

 

爆炎の中で苦痛に身を捩る部下の姿に、思わず叫ぶキリヤマ。

そして自らの腑甲斐なさを戒めるかのように、震える拳を握り絞めた隊長が振り返る。

その瞳の奧には焦燥や後悔、憤怒に慟哭――それら全てを塗り替えてしまう程に強い、強い強い闘志と決意の炎が揺らめいていた!

 

「……行こうっ!! 地球は我々人類……自らの手で守り抜かねばならないんだっ!!」

「「「了解っ!!」」」

 

それに同じ表情で肯きを返す6人の戦士達。

 

「これより、警備隊の全力をもってパンドンを撃滅する!! ホークを分離させて手数を稼ぐんだ! あの怪獣を、ダンの方へ一歩たりとも近付けさせてはならん! フルハシ、アマギはガンマ号へっ!」

「ハッ!」

 

ダンの為に出来る事がある。

張り切るフルハシは、敬礼もそこそこにガンマ号へ走っていく。

 

「アルファ号は俺が貰うぞ。文句は無いだろ、キリヤマ!」

「頼む、クラタ」

 

アルファ号の加速力を十全に引き出せるのは、精鋭揃いの防衛軍パイロットでも、一握りの上澄みだけである。

その最たる男が、自身の隣に指名するのは……

 

「さて……そうなると手荷物席が空いてるな。一緒に来い、お荷物ガンマン!」

「はいっ!」

「よし、ヒロタ君は私と共にベータ号へ。操縦は任せてくれ。射手として君の腕を借りたい」

「拝命しました」

「よしっ、いくぞ!」

「待ってください、隊長!?」

 

配置を決め、踵を返した隊長の腕をアンヌが掴む。

 

「私は、あたしはどの機体に!?」

「アンヌ……キミはここに残れ!」

「そんな! あたしも連れて行ってください……!」

 

懇願するアンヌの言葉に、キリヤマはただ真っ直ぐ、今も一人で困難に立ち向かう赤い背中を指差した。

 

「ダンは必ずやり遂げる! あの怪獣少年を殺すこと無く取り押さえて、きっとここに戻ってくる! そうなった時、誰かが彼らの手当てをしてやらねばならない。アンヌ、君には君にしか出来ない事をするんだ!」

 

「……っ!? 了解!」

 

ベータ号へ走っていく隊長とヒロタの背中を、敬礼しながら見送るアンヌ。

その肩を優しく叩く者がいる。

 

「そういう事なら、これはキミに預けていくことにしよう」

「アマギ隊員……? これは?」

 

アンヌは差し出された銀の箱を、不思議そうに受け取った。

彼女がそれを開けば、中には五色のカプセルが収まっている。

 

「ダンはこれを……大切な()()()()、と言っていたよ」

「えっ……? それってまさか……!」

 

ハッとして顔を上げるアンヌに、アマギは優しく頷いた。

 

「うん、恐らく()()()()()だろう。そして、本当にそうならば、僕よりもアンヌの方が上手く使ってくれそうだからね。正直僕は、誰かに何かをお願いするより、される方が得意な性分だから……」

「で、でもあたし……いきなり渡されても、この道具の使い方なんて分からないわ!」

「……確かにそれは、僕も聞いてなかったな」

 

二人が弱った顔をしていると、その後ろから、なにやらわざとらしい咳払いが聞こえてくる。

 

「ゴホンゴホン! えー、なんだ。俺は門外漢だから、あんまりそういう事に詳しくないんだが、武器のエキスパートとして客観的にアドバイスするならば……どんな武器や道具も、同じ使い方を想定された物は、例え作られた時や場所が違ったとしても、ある程度似通った形に落ち着くものなんだなぁ……これが」

 

「ソガ、何を言いたい?」

 

「いやぁ、()()()()気付いた事なんだけども、なんとなくそのカプセルのサイズと形がさ、俺のよく使う低性能爆弾と()()()()()()()()なものだからさ。もしかして、それもただ放り投げるだけの……すごく簡単な道具なんじゃないかなー! と、思っただけなんだよ。ほら、あれって凄く投げやすい形をしてるんだよなぁ……いや、それだけだよ、うん」

 

「ソガ、お前……なんだか、下手になってないか?」

 

呆れのあまり、細められたアマギの瞳から感じる温度が氷点下を切る。

その冷たさで、死にかけのダンにトドメを刺すつもりなのだろうか。

 

「失敬な!! ……と、とにかく! 使い方が分からないなら、とりあえず力一杯投げてみたらいいんじゃないか? 後で拾えばいいだろ? それじゃ! 早く行かないと、クラタ隊長にどやされちまう!」

 

「……逃げ足は速いままだな」

 

「でもお陰で使い方は分かったわ。ソガ隊員が言うんだもの。そうするのが正解なのね、きっと」

 

「だけど、ホークの中でひとまずマグネリウムエネルギーと繋いではみたが……少なくとも黄色のカプセルは空らしい。そして他の四つも上手く作動するかは正直分からない……半分くらいはあまり手応えが無くって……」

 

「充分よ。なんとかやってみるわ。そっちも、頼むわね」

 

「ああ!」

 

 

―――――――――

 

 

「すみません! 遅れました!」

「おお、何か忘れてると思ったら、でかい荷物を積み残してたか。俺としたことがなぁ……おい、モロボシを見殺しにするつもりかと思ったぞ! エンジンはあっためてある! 早く座れ!」

 

コックピットに慌ただしく入ってきたソガを、クラタが()()()出迎えた。

射撃管制を素早くチェックしていく射撃手に、安堵の溜め息を吐きながら、V3の突撃隊長はぼそりと呟く。

 

「……許せ」

 

「え? 何がです?」

 

「……どうした? 空耳じゃないか?」

 

とぼけるクラタに、ソガはニヤリと笑うと。

 

「……ははあ、さては俺がまんまと敵に捕まったんで、散々に言ってくれたんでしょう? おおかた……『警備隊の恥さらし』とか?」

 

あまりにも鋭すぎる指摘に、クラタは思わず目を見開いて、悪友の部下をまじまじと見つめてしまう。

まさか、コイツ――聞いていたんじゃあるまいな?

 

よもや、年下の部下からここまで得体の知れなさを感じたのは初めてだ。

 

「お、その顔はアタリですね? 種明かしをするとね、どうせアナタの事だから、それくらいは言うだろうなとカマをかけてみたんですよ」

「……ふん、肝が冷えるや」

 

操縦桿を握り、エンジンのスロットルバーを上げていく。

クラタの視線の先では、一足速く飛び上がったベータ号が、その小回りを活かした正解無比な攻撃で、パンドンの進行を食い止めようとしていた。

 

――こんな奴らを御していたか、お前。

 

いつだったか、キリヤマに寄越せと強請った事もあったが……正直、手に余る。

 

ウルトラセブンに千里眼のスナイパー――部下に持つなら、アオキぐらい素直な奴が丁度良い。

自分はまだまだ自由に飛んでいたいのだ。

 

「でも……そんな面汚しにわざわざ声をかけてくださったんですね。クラタさん」

 

「……なぁに、最近はちまちま敵を撃つのは全部アオキに投げてたもんでな、楽をするのが染みついちまった。それが大口叩いた挙げ句ぶっ倒れて来やがって。俺の振り回す機体から、敵をちゃんと狙えそうな代役は、生憎お前しかいなかったのさ」

 

「ヒロタだって、俺と同じ事くらい出来ますよ」

 

「けっ! 俺に背広組のエリート様を乗せて飛べって? 冗談言うな。そんなつまらん飛び方が出来るか! お行儀良い接待飛行なんか、アイツに全部やらせておきゃあいいのさ!」

 

「隊長が聞いたら怒りそうだ……ただまあ、クラタさんのお眼鏡にかなったと言うなら、光栄ですね」

 

そう言って嬉しそうに笑うソガ。

確かに彼らは得体が知れぬ。

得体は知れないが……それでも、気持ちの良い奴らだ。

 

確かに自分は最初、この隊員が捕まっている事を知りながら、敵の基地ごと爆破して、見殺しにしようとした。

だが、別に好き好んでそうしたかったわけでもない。

生きていて良かったと心からそう思う。

だからこそ、その事について、ひとかけらも呵責が無いわけではないのだ。

 

「じゃあクラタさん。光栄ついでだ。ダンを助けてくれたら、全部チャラにしてあげますよ」

 

「チャラだと……?」

 

「俺をマグマライザーで木っ端微塵に吹き飛ばそうとした事!」

 

「……気に入った!!」

 

離陸と同時、フルスロットルで飛び出す銀の鏃。

 

狙うは一直線に怪獣の顔面だ!

 

「くらえっ!」

 

ソガがトリガーを引けば、ミサイルポッドが次々と光を放つ!

 

撃ち出された攻撃は、寸分違わずパンドンの目玉に向かって飛んでいき……

 

その途中で急に差し込まれた金属板に激突し、夜の闇を明るく照らした。

怪獣の掲げた大楯に阻まれてしまったのである。

 

「くそっ! 惜しい!」

 

お返しとばかりに、パンドンは左手のバルカンランチャーでアルファ号を狙う。

 

もちろん、クラタの駆る機体を捉える事など出来ないが、凄まじい弾幕によって一旦射程外への離脱を余儀なくされた。

 

「チッ、面倒な野郎だな。……その点、そちらから見て奴の腕前はどうですか。ソガ先生」

 

「ええ、酷いもんです。落第点ですよありゃあ。でも、むしろ下手っぴだからこそ、避け難いという見解もありますが、そこのところいかがです? クラタ大先生?」

 

「まったくだ! 鬼に金棒とは言うがな、怪獣なんぞにあんな物を持たせやがって! 考えた奴ぁ、よっぽどのイカレポンチに決まってる!」

 

「俺達で豚に真珠としてやりたいですが……」

 

景気良くぶっ放すパンドンを見下ろし、舌打ちするソガ達。

隊長のベータ号が、怪獣の背後からレーザーを撃ちかけるも、敵は全く気にした様子が無いではないか。

 

「レーザーがまるで効いていない……!?」

 

パンドンの体表は熱線に対し耐性でもあるのだろうか? 

ホークの攻撃をものともせず、進んでいく。

どうやら空の敵を脅威では無いと判断したらしい。

 

標的はもちろんウルトラセブン!

怪獣サイズの連装砲が、ウリンガと組み合う彼を狙う。

 

『ギャッギャッー!』

『デュワッ!?』

 

ウリンガと同時にパンドンを警戒しなければならないセブン。ただでさえ劣勢な中で、これでは多勢に無勢だ!

そこへ降り注ぐロケット弾の雨!

 

「ダン! 離れるんだ! 怪獣は俺に任せろ!」

「……ダン!」

 

フルハシとアマギのガンマ号が、その潤沢なペイロードからなる鉄のカーテンを、怪獣とセブンの間に織り成したのだ!

 

凄まじい気迫の突撃に、思わず怯むパンドン。

その隙にセブンは距離を取り、怒り狂って我を忘れたウリンガとの念力対決に専念する事が出来る。

 

「こいつぁどういうこったい? やっこさん、いつからレーザーの効かねぇ体になっちまった?」

 

「おかしい……昼に戦った時は、ダンのエメリウム光線で確かに怯んでいたはずなんですが……しかし、それで決着が付かなかったのを見ると、もともと熱量攻撃には強いのかもしれません。なにせ、奴自身が炎を武器に使います」

 

「確かに、自分の吐いた炎でこんがり焼き上がってくれりゃあ、俺達もこんなに苦労しなくて済んじまうな。だったらロケットと爆弾で戦うしかねえか!」

 

「フルハシ! 狙われているぞ!」

 

「上等!」

 

ガンマ号の保有火力は、分離した3機の中で最も高いが、その代償として鈍重だ。機体も大きくよく目立つ。

パンドンの標的がそちらへ移る。

慣性のついた青い翼を無理やりに捻じ伏せて、豪快なターンを決めるフルハシ。

 

その一瞬の隙を埋めるように、飛び込んできた黄色いブーメランが縦横無尽に跳び回り、怪獣の狙いを掻き回す。キリヤマのベータ号は、まるで指揮者の振る棒の如く繊細な曲芸飛行で敵を翻弄した。

眼前を跳び回る煩い蝿に苛立ち、両腕をめちゃめちゃに振り回すパンドン。

 

その好機を逃さず、再び赤い鏑矢が上空から鋭く突き刺さる。まるでハヤブサの狩りを思わせる急降下!

さしもの怪獣も、この動きを脅威と見たか、楯を掲げて身を固める。

舌打ち一つで攻撃を諦め、地面スレスレを飛ぶアルファ号。

 

警備隊は見事な連携で、懸命に怪獣の足をその場へ縫い止めていたが、完全に攻めあぐねてもいた。

このままでは不利なのはこちら側。弾薬と燃料にも限りがある。

 

その時だ。

 

「……みんな、お願いよ! 力を貸してちょうだい! ダンがピンチなのっ!!」

 

地上のアンヌが、心からの祈りと共に、その手の中にあるものを振りかぶった。

 

「えぇーいっ!」

 

彼女の指から、四つの色が放物線を描いていく。

 

そして荒野に巻き起こる、猛烈な閃光と爆炎の嵐!

 

『GRAAAAAAA!!!!』

『FUAAAAA!』

『AGRAAAAAAAAA!!』

 

朦々と広がった白煙の向こうで、三つの巨大な影が並び立ち、一斉に凛々しい雄叫びをあげた!

 

「おおっ! あれは!?」

 

煙幕を切り裂き、雄々しい巻き角が。

 

「アマギ見ろよ! ミクラスの奴が来てくれたぜ!」

 

立派な襟巻きと太い尻尾が。

 

「アギラもいますよっ!」

 

そして……

 

「……ウインダム」

 

3匹の中心で胸を張る、白銀の騎士を認めたソガの口から、安堵の呟きが漏れる。

 

かつてガッツ星人の巧妙な罠にかかり、完膚なきまでに叩きのめされたはずのウインダム。だが、セブンの忠実な僕であり、機械生命体でもある彼は、決して死んでしまった訳では無かった!

 

治癒効果のあるカプセルの中でボディの再構築を行っていたのだ!

 

「みんな……」

 

……しかし殆どのメンバーが、勢揃いしたカプセル怪獣達を頼もしげに見つめる中、地上からひとり、彼らの背を仰ぎ見たアンヌの表情は険しい。

 

ウインダムの装甲は所々……いや殆どが無惨に削げ落ちたままであり、中の金属骨格や血管の如き配線が、剥き出しのままとなってしまっている。

 

頬のアンテナは欠けるか折れ曲がっているかのどちらかで、目のランプに至っては不規則に明滅し続けているではないか。その動きは明らかにぎこちなく、彷彿とさせるのは油の切れたブリキ人形。

 

彼は一度、完全に爆散してしまった身だ。肉体の修繕がまだ完全には追い付いていないのだろう。今のウインダムは、突貫工事のジャンク品同然であった。

 

そしてそれは何も、ウインダムに限った話ではない。

その隣で一生懸命に咆哮をあげ、襟巻きで敵を威嚇し続けているアギラも、既に息が浅く、以前現れた時よりも動きが緩慢だ。

 

それも当然の話で、なにせ彼はついこの間、アンドロイドゼロセブンという、非常に強大な敵と激闘を終えたばかり。

 

あの時も、既に散々痛めつけられていた上で、アンヌの願いを聞き入れ奮起し、擱座したマックスジョーを引き起こす大役を果たしてくれた。

 

その際、アギラの肉体が今までに無く強靱な姿に変貌したのを、警備隊の全員が目撃している。ソガ隊員はEX進化だなどと騒いでいたが……今は普段通りの姿に戻っているところを見ると、あれは一時的な強化だったのかもしれない。

 

であれば、急激な変化による負担も大きかっただろう。アギラにとっては厳しい連戦のようなもの。

 

3匹の中で唯一元気いっぱいなのは、体力自慢のミクラスぐらいのもので、その彼もエレキングやアロンとの死闘で傷を負っているはず。

 

主人であるダンが満身創痍な今、これまでそれに付き従って共に困難をくぐり抜けてきた彼らもまた、同じく疲労困憊なのは自明の理である。

 

「あんまり無茶はさせられないわね……」

 

なんなら、アンヌが投げたカプセルの一つは、起動すらままならなかったのだ。

あいにく4匹目の怪獣など見たことはないが、人知れず戦い、エネルギーが尽きてしまった仲間がいたのかもしれない。アマギ隊員の言っていた、補給の手応えが無いカプセルとは、恐らくこの四つ目とウインダムのカプセルであろう。

だが、それでも彼らの助力無くして、あの恐るべき怪獣を攻略するのは困難だ。やるしか無い!

 

「ミクラス! ウインダム! アギラ! 頼んだわよ!」

 

声援を背に、咆哮をあげる3匹。

 

『ギャッ!? ギャッ!?』

 

突然現れたカプセル怪獣達に驚いたのか、パンドンもホークを追いかけるのをやめ、そちらに相対する。

 

『GRAAAAAAA!!!!』

 

ミクラスが体を反らし、獅子舞の如くばっくりと開けた大口から、呆れるほどの肺活量でもって、周囲の空気を一気に吸い込むと、大きく膨らんだ胸に溜まったそれを、思いっきり吐き出した。

 

すると、彼の喉奧から飛び出すのは紅蓮の渦!!

ミクラスのバッファフレイムが、夜の闇を明るく照らす!

火を吐く大怪獣は、なにも貴様だけではないのだぞと言わんばかりの高熱量!!

 

『ギャッ、ギャッー!』

 

それに負けじと、パンドンも片方の嘴から燃え盛る火焔を吐き出し、バッファフレイムを相殺する。

 

火力自慢がお互いの意地をかけて火花を散らした為に、その一帯だけはまるで真昼の如き明るさだ!

両者一歩も引かない大勝負!!

 

『FUAAAAA……!』

 

ミクラスに加勢するため、ゼンマイ仕掛けの玩具のような動きで、敵へ狙いを付けるウインダム。

 

彼の額がキラリと輝いたかと思えば、光の帯がパンドン目掛けて伸びていく。ウインダムの代名詞レーザーショットだ!

 

しかし……

 

「アッ!? レーザーが……!」

 

光の束が勢いよく噴き出したのは最初のうちだけであり、両者の丁度半分程度の距離まで進んだところで弱々しくほどけていき、あとは夜の帳の中へ溶けるように消えてしまったのだ。

 

これにはウインダム自身も予想外だったらしく、ハッとした後にもう一度、懸命に力を振り絞ってみるのだが、レーザーは彼の額から一定距離までしか届かず、吹き戻しのように逆再生で戻っていくではないか。

 

『FUAAAAA……』

「きっとウインダムもエネルギーが限界なんだ……」

「ウインダム! 無理しないで! アナタの体は万全じゃないのよ!」

『AGRA!!』

 

それならばと、代わりにアギラが突撃の構えを見せるが……

 

『ギャッギャッーッ!』

 

そうはさせじと、パンドンの左手が動いた。

巨大なバルカンランチャーが凄まじい勢いで光弾を噴射し、3匹の周囲が爆発に包まれる。

 

『GRAA!?』

『FUA!』

『AGRAAAA……』

「みんな! きゃあっ!」

 

着弾の余波は、後方でそれを見守るアンヌにも影響を及ぼしかねない程に強力だ。なんという火力!?

その中心にいる3匹は苦痛で身動きする事すらままならない!

 

だがパンドンは、目の前でたくさんの獲物がどんどん弱っていく様を喜ぶあまり、失念してしまっていたのだ。

 

この戦場で警戒しなければならない相手は、怪獣達の他にもいた事を!

 

「火力をパンドンの武装に集中! 彼らを援護せよっ!」

「了解!!」

 

パンドンの注意がカプセル怪獣達へ逸れている間に、編隊を組み直した3機の翼が、敵の手元に一斉射!

 

例えその体にはレーザーが効かずとも、持っている武器まで無敵とは限らない。

 

狙い澄ました3条の光が、エネルギー弾倉と思しきパーツの継ぎ目に寸分違わず集中した。

 

『ギャ!?』

 

するとたちまち小さな爆発が連鎖して、パンドンは武器を取り落とす。もはや巨大ランチャーは弾けて使い物にならない。

 

「今よーっ! ミクラスぅー!! あの盾をなんとかしてぇーっ!」

 

『GRAAAAAAA!!!!』

 

朦々と立ち篭める砂塵の中から、怒れる雄牛が飛び出した!

捻れた角を振りかざし、台地を揺るがすミクラスの大突進!!

 

『ギャッギャッーッ!』

 

迫り来る大質量に、パンドンは二つの口から次々と火焔を吐き出し迎撃しようとするも、この猛牛が今更それで怯もうはずがない!

 

かつては、白黒の縞々野郎が引き起こした山火事に慌てた事もあったが、燃え盛る炎の熱さよりも、その後に食らった攻撃の方がよほど痛かった。痺れるほどに。

 

であればこの勇猛な戦士が、一度知った痛みを再び恐れる事などあろうか。

 

分厚い毛皮と筋肉の鎧にあかせて、紅蓮の渦を突破してくるミクラスを見て、もはやそれを阻むことなど出来ないと悟ったのか、右手の盾を前に構えるパンドン。

なんと真正面から、堂々とこの突撃を受け止めようというのだ!

 

火焔攻撃がパンドンだけの専売特許では無いように、怪力無双もまたミクラスだけではない。

そそり立つ嚇怒の魔獣は、巨岩を軽々と放り投げ、片手の一撃でウルトラセブンの額をも叩き割る、恐るべき豪腕怪獣なのだから!

 

『GRAAAAAAA!!!!』

『ギャギャッアアッ!』

 

二つの巨影がぶつかり合う。

大気が震え、天球を飾り立てる照明が全て滑り落ちたかと錯覚してしまう程の衝撃が、夜の荒野に轟いた。

 

それは、傍らで正気を失ったように暴れ続けていたウリンガが、思わず振り返るくらいの凄まじさである。

 

だがぶつかり合った当事者達はそこから微動だにしない。……どちらも弾き飛ばされる事無く、その場で立ち止まっているのだ。

 

つまりミクラスの突進が、パンドンによって完全に受け止められてしまったという事に他ならない!

肉弾戦一本の筋肉自慢は、ついに怪力勝負で敗北を喫してしまったのか……?

 

『ギャギャ――ッ!?』

『……GRA!』

 

八重歯の覗く厚ぼったい唇を吊り上げて、ミクラスが得意げに吼える。

なんと彼の額から生えた見事な二本角が、堅牢なはずの金属塊に深々と突き刺さっているではないか!

思わず慄く双頭の怪物!

どんな巨木よりも太く逞しいミクラスの腕が、盾の縁を左右からがっちり掴んで離さない!

 

「ミクラスが敵の動きを止めた! 今が好機だ! 背面に集中砲火!」

 

ウルトラホークのミサイルが次々とパンドンの首筋に着弾し、怪獣は痛みに暴れ狂う。

盾で防御しようにも、忌々しい筋肉達磨が貼り付いている為に、自由に振り回す事が出来ずにいるのだ。

 

盾を捨てればその場から離脱できるが、そうすれば対空防御手段を失うと分かっているパンドンは、意地でもこれを手放す訳にはいかない。

さっさと離れろと言わんばかりに、盾越しに見えるミクラスの頭頂部を至近距離から炎で炙りつつ、空いた左手で彼の腕を何度も殴りつける。

 

『GRAA……!!!』

 

それでも愚直なミクラスは、離してなるものかとますます力を込めてしがみ付く。しかし、いくら彼が恐れ知らずの勇士でも、痛みをまったく感じないわけではない。

食い縛った牙の隙間から、苦悶の悲鳴が漏れた。

 

『FUAAAAA……!』

 

苦難に耐える仲間の姿に、銀の騎士が堪らず動き出す。

ぎぎぎと不穏な軋みを全身から響かせながら、ぎこちない歩みを見せるウインダム。もはや彼の駆動系は、満足に走ることすらままならないのだ。

それでもミクラスの救援に駆け付けようと、左手側から敵に接近していくではないか。

 

だが、パンドンは尋常な怪獣ではない。例え右半身でミクラスを相手にしていても、奴にはもう一つの顔があるのだ!

 

『ギャーッ!』

『FUAA!?』

 

左側の首が吐き出した炎が、ウインダムの胴を舐める!

白銀の装甲は、ガスバーナーを直当てされたように忽ち赤熱し、煤であっという間に黒ずんでいくではないか。

 

普段であれば、生半可な炎など鋼の肉体は物ともしなかったであろう。

しかし今のウインダムは、装甲化が間に合わず、ただでさえ内部機構が剥き出しのままなのだ。

彼の大切な電子頭脳はろくに防御されていないばかりか、冷却機構も満足に働いていない有様。

 

精密機械の弱点もまた、熱なのである。

瞬時に沸騰した電解液が、口の端から白い泡となって漏れ出ては、外気に触れた途端、蒸気となって散っていく。

 

それでもウインダムは一歩、また一歩と、進み続ける事を決して止めはしないのだ。

 

「だめよっ! ウインダム、戻りなさい! それ以上は、今度こそ本当に死んでしまうかもしれないのよ!?  戻ってーっ!」

 

アンヌの叫び声が聞こえないのか、それとも遂に電子頭脳が熱暴走して、もはや止まる事すら出来ないのか。

 

壊れたブリキ玩具のように、ひたすら直進する事しか出来ない彼に、パンドンは吐き出す火力をますます上げていく。

 

「やめろーっ!」

 

ソガ達の射撃が敵怪獣に着弾するも、もはや身動ぎすらしない。

決して効いていない訳ではなく、むしろパンドンもそちらに構っている余裕など一切ないのだ。

無言でじりじりと迫り来る、鋼鉄の意志が誇る強靱さに、完全に呑まれているのである。

 

この馬鹿力を引き剥がすのに忙しい今、この不気味な動く鎧にまで取り付かれては堪ったものではない!!

コイツは必ずここで焼き殺さねば!

警鐘を鳴らす野獣の本能。

 

また一段と火勢が強まり、もはやパンドンの吐き出す炎は青みがかった光線のようになっていた。ジェット噴射の威力で、物理的にウインダムを押し返そうというのだ。自身の喉が灼けるのも厭わぬ必死の抵抗!

 

それでもウインダムは止まらない。

熱されすぎた彼の下半身は、今や完全に赤く染まりきっており、一歩踏み出すごとにヒューズが飛ぶ。

とっくに装甲は融解が始まっていて、防御力など無いに等しいにもかかわらず、決して諦めようとはしないのだ。

アンヌはその姿に、今も敵怪獣の後方でウリンガと死闘を繰り広げ続けている、彼らの主が重なって見えた。

 

「……ウインダム! 負けないでっー!!」

 

『FUUuu……AAAAA……!』

 

声援が赤と銀の背中を押す。

気付けば彼我の距離はあと僅か!

 

両手を伸ばせば、すぐそこに敵の首が届く位置に辿り着いたウインダム。

あと一歩、いや半歩踏み出す事さえ出来れば、一矢報いる事が出来る……!

 

……しかし。

 

『Fu、A……!』

 

ごぽり……と、ひときわ多い泡を吐き出して、銀の肩がガクリと下がる。

敵を目前にして騎士はついに膝を折り、その手を地面につけてしまった!

彼の電子頭脳が高温に耐えられなかったのだ……

 

「ああっ……!」

 

『ギャ……ギャギャースッ!!』

 

不屈の闘志が屈するのを目の当たりにしたパンドンの嘴からは、炎の代わりに歓喜と嘲笑の入り交じった鳴き声が飛び出した。

 

――勝ちだ! ついにやり遂げたのだ!

 

そんな感情が聞こえてきそうな程に高らかに、双頭の勝ち鬨が荒野に響き渡る。

 

そして、哀れな敗北者から興味を失ったパンドンは、今も盾を掴んだまま離さないミクラスの排除に全力を傾けるべく、両の頭についた四つの瞳で愚かな獲物を見下ろした。

 

『Fu……A……』

 

足元の鉄屑が何か言っているが、パンドンにとっては最早どうでも良い事だ。何も成せなかった者がいくら虚無を嘆いても意味などない。

 

もうこいつはこれ以上戦えないのだから。

 

ダメージの許容限界を越えたウインダムの姿が、光に包まれ薄らと消えていく……

 

 

……その瞬間!

騎士の背から、素早く飛び出す緑色の小柄な影!!

 

『AGRAAAAAAAAA!!』

 

それは、今までウインダムによってパンドンの視界からずっと隠されていたアギラだ!

頑固者の兄貴分が、命懸けで稼いだ助走距離を全速力で駆け抜けて、屈んだ騎士の肩を踏み切り板代わりに大ジャンプ!

 

アギラの額から生えた、鋭く太い一本角にエネルギーが集中し、夜空にまっすぐ光の筋を描く。

トップスピードで迷い無く飛び込む様は、さながら流星の如し!

 

『ギャッァーー!?』

 

完全な意識の外からの奇襲に甲高い悲鳴を上げるパンドン。

アギラの角が、敵の胸元目掛けて吸い込まれていく……!

 

「あっ!?」

 

しかしてその寸前で、迫るアギラの切っ先へと、何か赤い物質が、恐ろしく精密な動きで差し込まれるではないか。

それは、パンドンが咄嗟に翳した左の掌だった!

 

赤い盾と緑の矛が激突し、盛大に舞い散る火花。

衝突の威力が稲光のように煌めいて、夜闇を照らす。

 

「いけぇーッ!」

『AGRAAAAAAAAA!!』

 

 

結果は……

 

 

『ギャッアーーッ!?』

 

大きく吹き飛び、荒れ地へ倒れ込むふたつの巨体。

怨嗟の声をあげながら、激しい痛みに地面をのたうつ赤い魔獣……パンドンはついに、アギラの突進を受け止めきる事ができなかったのだ!

 

その手に持っていたはずの盾は、今もミクラスにしっかりと掴まれたまま。

もんどり打って倒れた拍子に、パンドンは盾の持ち手を離してしまったのである。

 

『GRAAAAAAA!!』

 

角に刺さっていた盾を引き抜き、月明かりの下で、天高く掲げるミクラス。

 

『FUAAAAA……!!!』

 

あがる戦士の勝ち鬨に、ウインダムは光の中へ消える寸前、ありったけの声で応える。

騎士のラッパが戦場に鳴り響き、反撃開始の合図を告げた。

 

……そうして銀色の巨体がすっかり光の渦に包まれると、アンヌの手元へ向かって、なにか小さな輝きが舞い戻ってくるではないか。

 

「……えっ!? きゃあ!」

 

咄嗟に両手を伸ばしてキャッチしてみれば、そこには青いカプセルが、得意げに月の光をキラリと反射しながら収まっている。

 

彼女にはそれがどうにも、堅物騎士が「どうだ」と胸を張っているように見えて……これが彼らの凱旋方法なのだと理解すると同時に、掌の中の存在へ心からの称賛を送る事にした。

 

「……お疲れ様、ウインダム。ダンもきっとアナタを誇りに思うはずよ」

 

 

カプセルをそっとケースに戻してから、今まさに立ち上がる巨大怪獣をキッと睨み据えるアンヌ。

 

彼らが教えてくれたのだ。

たとえそれが、どれだけ強大な存在であったとしても。

皆で力を合わせれば、倒せない敵などいないのだと!

 






記念すべき200話で、7月7日の投稿ですが……終わりませんでしたー!
最終回までもうちょっと長いことお付き合いくだせぇ!!

貴方は原作『ウルトラセブン』を観たことが

  • ある
  • ない
  • なかったが、本作をきっかけに視聴した。
  • 他昭和ウルトラシリーズは観ていた
  • 平成ウルトラシリーズは観ていた
  • 令和からだゼェェット!
  • そんなにシンが好きになったのか(完全新規
  • その他(感想欄かDMにでも)
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