転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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※ある描写について、同じ質問を数件頂いたので、この場で訂正、言及させて頂きます。

「アギラの体色が緑色になっているのは何か理由(成長、EX進化、見落とした独自解釈etc)がありますか?」

と、複数の方からご質問を頂き、作者は大量の疑問符を浮かべる事になりました。

その会話の中で分かった事なのですが、作者はかれこれ30年間ずっと、アギラを「緑の鱗と黄緑の襟巻き」を持つ怪獣だと認識していたのですが、どうやら本来は「灰色の鱗にオレンジの襟巻き」なのだそうで。

それを聞いて非常に納得致しました。
実は作者、色盲で赤や緑系統の色素判別が難しく(シンウル劇中でリピアの体色変化を認識しないまま、後から言われて始めて気付くレベル)、まあまあの色を雰囲気でしか区別できておりません笑

これが他の事なら書く前に周囲に確認とるのですが、物心ついた時から「セブンは赤」と同じレベルで「アギラ緑」と刷り込まれていたので、「間違えてるかも知れないので聞かなきゃ」という発想すらありませんでした……まさに青天の霹靂。

だってみんなアギラの事、「地味だ地味だ」って言うじゃん!? 「そら全身ほぼ緑に、差し色も同系色は地味やなあ……」って思うじゃん!?
灰色にオレンジとかそんなド派手な配色しとったんかお前ーッ!?

茶色一色のゴモラとかですら大人気なのに、ツートンカラーでも地味って、相当に本編での活躍が影薄かったんやな……と切なくなりました(涙)

恐らくこの小説を書かなかったら、一生このままだった事でしょう。言及して下さった皆様、ありがとうございます。

ただ、あまりにも本作内でアギラを緑と称した回数が多く、今更訂正するとなると労力が大きすぎるため、どうかこのままで行かせてください……!

アギラなんて登場の度に模様まで変わるくらいなんで、体色も成長段階で変わるんだな……とか、個体差かな……というふんわり解釈でお願いします!
俺のバースではそうなんだよ!

(これ以外にも怪獣の体色等で違和感のある箇所があったり、今後もあったらゴメンナサイ!)

少しばかり混乱を招くような描写をしてしまい、申し訳ありませんでした。
そして、「もし私が間違ってたらごめんなさい」と遠慮がちに勇気を出して聞いてくれた皆さん、重ねてありがとうございます!

おかげ様で推しの本来の姿を知る事が出来ました!
書いて良かったこの作品!



史上最大の人類

 

月明かりの下、体に纏わり付いた土砂を振り落としながら、ゆらりと立ち上がるパンドン。

 

両手の武装を失ってはいたものの、まだまだ肉体は壮健で、むしろ怒りによって益々元気になってしまったようにも見える。

アギラの飛び込み攻撃によって大きく吹き飛びはしたが、大したダメージにはなっていないという事なのだろうか。

 

カプセル怪獣達の全身全霊をかけた一撃すらも寄せ付けないとは、なんと恐るべき怪獣なのだろう!

 

嚇怒の炎を撒き散らし、周囲を燃え盛るリングに変えた不死鳥は、忌々しい敵を叩きのめす為に行動を開始した。

 

まずは大ジャンプ攻撃の反動で、崖にもたれるようにひっくり返っていたアギラの腹に向けて、次々と火炎を命中させていくパンドン。

 

『AGRAaa……!』

 

アギラは変温動物だ、高熱も低温も今の彼には地獄の苦しみでしかない!

 

 

『GRAAAAAAA!!』

 

それ以上させてなるものかと、ミクラスが再び突進をかけようとするが……

 

『ギャギャー!』

 

パンドンの広い視界はしっかりその動きを捉えていた。

弱ったアギラから標的をミクラスに移し、火炎放射で雄牛の足を狙う!

 

対するミクラスも敵から奪った盾をかかげ、迫る火炎を防ぎながら、先ほどのウインダムがそうしたように、じりじりと距離をつめていく……

 

しかし! そんなミクラスの横合いから、突然の衝撃が彼の巨大なこめかみを襲った!

 

『GRAAAAAAA!?』

 

困惑で口をあんぐり開けた表情のまま、もんどり打って盾ごと転がるミクラス。

 

見れば、パンドンが左手で何かを振り回しているではないか!

……なんと! それは壊れて使い物にならなくなったはずの巨大ランチャーの残骸だった!

 

もはや銃として弾を撃ち出すことはできないが、長くて太い金属塊である事には変わりない。

グリップ部分を逆手に握りしめ、トンファーの要領で振り回せば、盾を飛び越えて相手を打擲するには十分なリーチを獲得できるのである!

 

侵略のプロであるゴース星人の生物兵器は、最初から現地改修を旨として設計されていた。

状況に応じて武装を換装し、いざとなれば急拵えのブラックジャックすら振り回す汎用性こそが、すなわちサイボーグ怪獣の真骨頂!

 

「くそっ……! なんて奴だ! 厄介な事になったぞ……」

 

せっかく武装解除に成功したと思ったら、今度は近接武器を振り回し始めた敵に舌打ちするソガ。

 

デリケートな銃器ならば、たった一部だけでも機構を壊してしまえばそれで良かったが、単純な金属バットを使用出来ない状態にまで破壊するのは、殆ど不可能といって良い。

 

地球上のどんな生物も持ち得ず、人類がこの星で生態系の頂点に立つに至った唯一の長所は、周囲にある全てを武器として使う事が出来る圧倒的な器用さ!

例え石ころ一つであっても、敵を殺す道具に変えてしまう恐るべき野蛮さを、この怪獣も有しているのだ。

であれば、どれだけ武器を破壊したところで、この怪獣から真の意味で凶器を取り上げる事などできない。

 

そうする為には、腕を縛り上げるなりして両手の自由を完全に奪ってしまう他ないが、怪獣サイズの手錠などという馬鹿げた装備は、あいにくと警備隊の装備には無かった。

 

「何か奴に弱点はないのか!?」

 

「そんなもの……」

 

忌々しそうに呟くクラタの隣で、ソガは渋面を作るしかない。

そもそもパンドンは総合的な完成度の高い怪獣だ。

 

原作でも、至近距離からのアイスラッガーすら片手で掴んで投げ返すという、常識外れの強さを見せつけた。

 

あの時は、セブンが消耗していたが故に、念力で複雑な軌道を描けなかったとはいえ、奴の動体視力と瞬発力は並の怪獣を軽く凌駕している。

 

精神の奥底で、決着の瞬間をソガ隊員は何度も見た。

投げ返されたアイスラッガーを、振り絞った最後の念力で切り返し、パンドンの首を落とすダン。

 

しかしその直前、怪獣によって投げられた銀の軌跡は確かに、セブンの首筋がさっきまで存在していた空間をしっかりとなぞっているのだと気付いた時、ソガはゾッとしたものだ。

 

もしもパンドンが掴んだアイスラッガーを振りかぶった瞬間に、クラタとソガがカットに入らなければ、うまく体勢を立て直す事が出来ず、首が落ちていたのは間違いなくセブンの方であっただろう。

 

様々な要因が嚙み合った、まさに薄氷の上の勝利だったのだ。

 

だからこそ、何か明確な弱点があった訳でもなければ、特別に効きやすい攻撃があったわけでもない。

流石に首を落としさえすれば死ぬ、という事が最低限分かっているのは不幸中の幸いとも言えるが……

 

「(俺達の装備で、それだけの破壊力を持つ兵器は限られる。奴の動きを止めもしない内から撃ち込む訳には……)」

 

その時、悩むソガ隊員の視線が、吸い込まれるようにある一点へと固定される。

まるで後ろから誰かに、両手で頬をがっちりと挟み込まれたまま、強引に首ごと顔の向きを変えさせられたような心地だ。

 

高速飛行中にそんな現象が起きれば、普通はパニックに陥ってしまうかもしれない。だが、今の彼にはその原因に関する心当たりがあった。

 

「(……全く、大人しく寝てろと言っただろうが!)」

 

いきなりの所業に、犯人と思しき人物に向かって内心で毒づくも、()()()が単なる悪戯でこのような真似をする筈がない。

 

冷静に、その行為の意味するところを察するべく、自らの視線の先……相棒が指し示すパンドンの左腕をよくよく注視してみると……

 

「……ひび割れ? まさかな」

 

どことなく、曳光弾に照らされる怪獣の肘から先にかけて、幾重にも黒い筋が走っているような……しかし、ただでさえ暗がりである上に、パンドンが握った銃器を棍棒のように忙しなく振り回すせいで、いまいち判別がつかない。

 

元より、パンドンの体表は棘や鱗に覆われている。はたしてそれが模様なのか、実際に割れているのか……

 

――待てよ? ……銃だと……?

 

「……そうか! そういう事か! 相棒!!」

 

「なんだ、どうしたんだソガ!?」

 

「誰か、照明弾はないか!?」

 

もっと良く見ようと、ソガが無線で呼びかければ、それに応える声がある。

 

「……あるぞ! それも特大のが!」

 

「流石だぜ、アマギ!」

 

ソガは喜びに思わず手を叩く。

全く頼りになる戦友だ。

 

だが、その後に続いたアマギの台詞が、ソガの首を盛大に傾げさせる事になる。

 

「どっちに使う!?」

 

「……どっちって……え、何がだ?」

 

「何がも何も……ダンに使うのか、パンドンに使うのかと聞いているんだ! ……おい、まさか違うのか?」

 

「だ、ダンに使うだって!? 違うって、一体なんの話だよ!?」

 

嚙み合わない会話に焦るソガ。

そこへ、多少の苛立ちを含んだ声がスピーカーから飛び出した。

 

「人工太陽弾の話に決まっているだろ! お前の事だから、ダンのエネルギー補給か、パンドンの目潰しに使いたいという事じゃないのか?」

 

「じ、人工太陽弾んん!? ……積んであるのか、今!?」

 

「こんな事もあろうかと、基地にある特殊兵装は一通り搭載済みだ! ……その代わり、それぞれの弾数は僅かで、太陽弾に関してはガンマ号の一発だけだが……」

 

「……まったくお前は最高の男だ! 本当に!」

 

ヒュウと口笛を鳴らすソガの隣で、じっと話を聞いていたクラタも、中身に理解を示して何度も頷きを返す。

 

「ほう、太陽弾。そんなもんがあるのか。だったら俺達が月でやった事が出来るな、キリヤマ」

 

「例え僅かであっても、今のダンにはなによりの助けとなるはずだ。パンドンは我々の火力でなんとかすれば良い!」

 

「よし、やってくれ!」

 

「このタイミングで使ってしまって、本当に良いんだな!?」

 

「ああ! 俺の用事はダンのついでで充分さ!」

 

「分かった! やりましょう、フルハシ隊員!」

 

「よっしゃあ! 任せろ! 帰ってきた太陽エネルギー作戦だぜ!」

 

大きく翼を翻したガンマ号の下では、今まさにセブンが劣勢に立たされていた。

 

ウリンガが鎧の表面に生えた棘を千切って、次々と投げ付けてくるのを、逆手に持ったアイスラッガーで必死に捌き続けている真っ最中なのだ。

 

『デュ……! ジュワッ!?』

 

しかし、飛来する棘をいくら叩き落としても、地面に落ちた側からふわりと浮かび上がり、つららのように鋭く尖った切っ先を向けてくるのである。

きっと、ウリンガが念力で操っているのであろう。

 

『ふぅん! とあぁっっ!』

 

セブンが打ち落とした棘に、ウリンガが新しく投げた棘が加わり、相手をするべき飛来物はどんどんと増え続けていく一方だ。

これだけ大量の棘を一度に操ってなお余裕があるとは!

まさしくウリンガの超能力は底無しなのである!

 

その上、鎧の方も千切れた端から棘が再生し、次から次へと生え替わるではないか。このままではいずれ、セブンが捌ききれる量を越えてしまうのは明白だ。

 

冷気のナイフが真紅の戦士を全方位から取り囲み、一気に串刺しにしてしまうのは時間の問題かと思われた、その時!

 

「ダン! 受け取れぇーっ!」

 

夜空に原初の炎が爆誕した。

ガンマ号から射出された巨大な火球が、戦士達の頭上で大輪の華を咲かせたのだ。

 

降り注ぐ眩い光が、荒野で争う巨人達を照らし上げる。

 

『とわぁー!?』

『ギャアア!?』

『GRAAAA!?』

『……デュワ!?』

 

自身に残されたエネルギーは少なく、刻みつけられた数々の傷により、体は思うように動かない。

相対する敵は強大であるにも関わらず、その命を刈り取る事なく取り押さえなくてはならないときた。

 

なんという困難だろう。そのような事、到底出来はすまい。

……だが!

それでも!

 

――わたしは一人ではない!

 

人工太陽弾が空中で炸裂し、光源として存在できる時間などごく僅か。

その間に齎される光量など、今の消耗しきったセブンが本来必要とするエネルギー量から比べれば、雀の涙ほどしかない。

まさに焼け石に水といったところだ。……だが!

 

自分には、共に戦ってくれる仲間達がいる!!

 

その事実こそが、この困難な局面に立たされたダンにとって、なによりも力強く、なによりも暖かく彼の背中を押すのだ!

 

『ダァーーッ!!』

 

闇の中でいきなり現れた太陽に、他の全ての者達が戸惑う中ただ一人、その銀色に輝く胸を堂々と張り、柔らかで頼りない、それでいてどこまでも明るく美しい光の抱擁を全身で目いっぱい甘受するセブン!

 

そうしてから彼は、両のこぶしを再び強く握りしめると、いつものように胸の前で掲げ、ウリンガを真正面から迎え撃つ構えを取った。

 

どれだけ少なくとも。

どれだけ弱々しくとも。

第二の太陽がくれた輝きは、今のダンにとって、砂漠で渇いた喉に垂れた、一滴の朝露にも等しい!

それだけの活力を、彼の肉体に与えたのだ!

 

『デュワッ!!』

 

人工太陽弾が夜空に輝いていた時間は僅か数秒程度だったが、その一度の炸裂で戦場全体へ与えた効果はまったく目覚ましいものだった。

 

一つはダンに活を入れた事。

一つはウリンガの操る大量のつららを、熱量で溶かして吹き散らした事。

 

そしてもう一つは……

 

「見えたっ!!」

 

アルファ号の中でソガが叫ぶ。

彼の目線は、狼狽えるパンドンの左手をしっかり見据えて逃さなかった。

 

五本の指を持つ手の甲から肘に向かって、蜘蛛の巣のように細かいヒビが入っている事を……

そしてその亀裂の下から、即席の日光を反射して、人工的な銀の色がキラリと一瞬輝くのを!

 

「クラタさん……奴の左腕に、重量爆弾を最大加速で思いっきり叩き込みたいんです。やれますか!」

 

「誰に向かってもの言ってやがる! だが……こっちも命懸けだ。勝算はあるんだろうな」

 

「それは……その……」

 

一瞬だけ口籠もる。

そして。

 

「……勘ですッ!」

 

「充分だあっ!!」

 

クラタが操縦桿を引き倒し、アルファ号が急降下。

ほとんど直滑降のまま、眼下で慌てふためく怪獣めがけて一直線!

 

この時、パンドンは視界が突如として白飛びしてしまった事に驚き、大混乱に陥っていた。

 

パンドンは決して鳥目ではない。

確かにどちらかと言えば昼行性ではあるものの、それはあくまでゴース星に棲む獲物の多くが夜行性であり、昼の間にねぐらを襲えば狩りが楽だからといった理由でしかなく、その狩りの内容も内容だった。

 

その内容とは、洞窟内の小動物――もちろん巨大な彼らから見た場合の話だ――を自慢の炎で燻り出すか、さもなくばそのまま蒸し焼きにしてから、突入した穴の中でゆっくりと焼死体を貪るという方法であるからして、むしろ暗がりでもよく見える方である。

 

しかし、それが今回は仇となった。

地球における大多数の鳥類と同じように、パンドンもまた特殊な錐体細胞を持っており……彼はなんと、紫外線を直接に色として視る事が出来るのである!

 

だからこそ夜間や洞窟内でも、炎から逃げ惑う小さな影を捉える事が可能であり、岩の間でこんがりと旨そうに焼き上がって、ピクリとも動かなくなった肉塊を一欠片たりとも見逃す事はなかったのだ。

 

……そしてその凶悪な強みこそが、今の彼から視界を完全に奪い去ってしまっていた。

人工太陽の放った無数の紫外線を余すこと無く受け取った網膜は、その強烈な刺激によって、それ以外の色に対し不感症に陥ってしまったのである。

 

ソガがまったく意図しなかった事とは言え、パンドンに対する人工太陽弾は、フック星人に対してと同等の威力を発揮していた!

 

そんな白一色の世界でも、パンドンにはまだ耳と鼻がある。

彼の聴覚が、上空から迫り来る、サイレンの如き風切り音を捉えた!

 

このけたたましい羽ばたきはアイツだ!

執拗に此方の目玉をつつきにくる、あの痩せ細った悍ましい姿の鳥に違いない!

 

今のパンドンには盾がない。だからこそ数少ない急所である頭を精一杯に屈め、両手でしっかりと首筋を防御する。

奇しくもそれは、空爆に対する防御姿勢としても、お手本通りの満点解答だった。

 

……今回を除いては。

 

「そこだッ!」

 

ソガがタイミングよくボタンを押し込めば、機体下部の爆弾槽が解放され、重量級のバンカーバスターが投下される。

それは重力の鎖に惹かれるようにしてパンドンの左腕に向かって落ちて……否、そのように生易しいものではない。

アルファ号の加速度そのままに、文字通り最大速度で叩き付けられた!

 

……瞬間!

 

凄まじい破壊音と共に、真っ赤な破片が無数に飛び散り、爆炎を反射してチラチラと夜の帳を切り裂く様はまるで鮮血が噴き出したかのよう。

 

しかしてその下から露わになったのは、一滴の血も通わぬ、冷徹な金属の硬質な輝きだ!

 

「やっぱり思った通りだ!」

 

「な、なんだあれは!?」

 

「あれは……金属光沢!? パンドンの正体はロボット怪獣だったのか!?」

 

「いいえ隊長! よく見て下さい奴の指を! 右と左で本数が違うでしょう! 元々の腕は二本指……だが、左手は五本指だ! あれは義手なんです! 切り落とされた腕を、手術で機械へと置き換えたサイボーグ怪獣……言わば改造パンドンです!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「そうかっ! ダチョウのような二趾足のままでは、ああして物を掴むのがせいぜいだろう。だが、人間と同じく五本指ならば、戦況に応じてあらゆる武器を持たせて扱う事が出来る! 侵略兵器として使うなら、あちらの方がずっと合理的に違いない!」

 

「そうさアマギ! 銃を撃つ為には、引き金にかける人差し指が必要だ! だがその代わり、殴り合いに使うには、俺達の指はちっとばかし繊細にすぎる!」

 

「チクショー! それがバレねえように、ゴース星人の奴ら、偽物の皮膚で覆って隠してやがったんだな!」

 

「いいや、それだけではありませんよ先輩! これでレーザーが効かないカラクリも分かりました!」

 

「な、なんだって!」

 

「剥がれた結晶をよく見て下さい! 赤いでしょう!?」

 

質量爆弾のトンカチで力いっぱい叩かれた左腕は、どんどんとひび割れが広がっており、まるでレンガが崩れるように、赤く硬質な塊が剥がれ落ちていく。

 

本来ならば、その結晶は未知の物質であるはずだ。

例えアマギであったとしても、こんな戦闘の最中に答えを導き出す事が出来ようはずもない。

 

しかしその輝きと硬さの事を、怪獣の発揮した不可解な変貌と一つ飛びに結びつけられる突飛な発想の持ち主が、警備隊には存在するのだ。

 

彼はずっと必死になって考えていた。

肉体の本来の持ち主が、高速機動で戦闘を行うのに集中する傍ら、ちゃぶ台の前で古臭い画面に齧り付いて、映像の隅々まで嘗め回すように見ていた。

 

だからこそ気付けたのである。

アギラの突進を受け止めた左腕に、確かなダメージの痕跡がある事を。

 

そしてもう一つ。

 

「あれはね……あの鉱石は……!」

 

彼は、パンドンの左手が義手である事を知っている。

分からないのは……何故、両手両足が赤いままなのか。

 

だが、その腕がひび割れている……つまり何か硬い素材で覆われているのだと理解した時、天啓のように閃いたある仮説へ飛び付いた。

 

なにせ、それは頭をガツンと殴られるぐらいの衝撃だったので。

 

――ばあぁっかもぉん! そんなちゃちいレーザーが効くものか!――

 

男の記憶は、大半が時と共に薄れていくものだった。

だがそれはあくまでここにくる前のもの。

 

今の彼を支えているのは……こちらに来てからの思い出だ。

戦いの恐怖、怪我の痛み、そして……大切な人々と過ごした日々。

 

魂へ鮮明に焼き付いたそれらの中から、散りばめられたあらゆるヒントを抜き出して、最後に雷博士の怒号を頭痛と共に思い出せば、残すはあと一つのピースだけ。

 

それは、他の誰でもない、この男だけが持っている唯一の価値観。

 

――ここは、ウルトラセブンの世界なんだから!――

 

「奴の肌は……ウルトニウムだ!」

 

「なにっ! ウルトニウム!?」

 

「なるほどそうか! ウルトニウムはただ硬いだけでなく、レーザーを吸収します! 義手の装甲にこれほど相応しい素材はありません!」

 

「きっと奴の表皮にも沢山埋め込まれているでしょう。だからレーザーもミサイルも効かなかったんだ! なにせ地球の核なんだからな!」

 

「でも、そんなものどうやって攻略すれば……」

 

「おいおい、何を弱気になってんだ? 俺達には、金属部品に対して絶対的な優位を取れる特殊弾があるだろうが……?」

 

「……そうか! ライトンR30!」

 

「アマギ! ホークには何発ある!?」

 

「ハッ! アルファ号に一発、ベータ号に一発!」

 

隊長の問いに、素早くアマギが答えると、隣のフルハシが大声で歓声を上げた。

 

「よっしゃあ! でかしたぞアマギ! ぴったりじゃねえかぁ!」

 

「ぴったりですって? どういう意味ですフルハシ隊員?」

 

「おっと? 珍しく今回は、俺様の方が頭の回転速かったみたいだなぁ、アマギセンセよぉ!」

 

「う、うわっ!」

 

得意げに親指で鼻先を弾いたフルハシが、意気揚々とガンマ号を急旋回させる。

そして、さっきまでの鬱憤を晴らすかのように、ミクラスを鉄塊で殴りつけるパンドン目掛け、怒りの形相で大突進をかけた!

 

「アマギ! ガンマ号で一番威力のある武器はどれだ!?」

 

「こ、これです! 800㎜シンクロトロン砲です!」

 

「ぃよし!! ソガ! ウルトニウムかなんだか知らねえが、俺にもおめえさんの言いたい事はよぉく分かるぜ! ……つまりこういう事だろっ!?」

 

ガンマ号下部に懸架された、オルガンの如きエイト連装砲が、今度こそ失敗作の汚名返上とばかりに次々と火を噴いた。

40m級の巨大ミサイルすら一撃で粉砕する大火力が、闘牛に興じて踏ん張るパンドンの右膝を直撃する!

 

するとたちまちステンドグラスのように砕け散るウルトニウムコーティング。

 

その下からは、左腕と同じく金属質の義足がぴかぴかと顔を覗かせるではないか!

 

「やるじゃないですか! 先輩!」

 

「へへっ! 俺ぁな、しっかりこの目で見てたのさ! 昼間にダンが死力を振り絞って、最後に奴の右足と左腕をバッサリやるのをな! あいつの頑張りを、無いことにされて堪るかってんだ!」

 

「そうか! だから二発か!」

 

「よし! だったら……行くぞキリヤマ! 俺達が腕をやる、お前達で足をやれ!」

 

「同時攻撃という事だな。仕損じるなよ!」

 

「了解です、隊長! ……そういう事だヒロタ、聞いていたよな? そっちは頼むぞ! ……おい、聞いてるのか?」

 

「ああ」

 

「おいおい、さっきから一言も発さんじゃないか。本当に分かっているのか不安になるぞ」

 

「うるさい! 戦闘中にべらべらと……いつもこんなに喧しいのか?」

 

「お前さんの憎まれ口よりは慎ましいね!」

 

「ぬかせっ!」

 

2機のホークが爆撃のコースに入る。

狙うは金属部品の左腕と右足だ!

 

しかし……

 

「ッ!? 待てッ! 攻撃中止!」

 

「なんだっ! キリヤマ!」

 

「気付かれた! パンドンは此方の出方を窺っている!」

 

「馬鹿な! 奴はあの雄牛の怪獣にご執心のはずだ!」

 

「嘘だと思うなら、一度やってみろ!」

 

言われずとも、喧嘩っ早いクラタの事だ。

既にその時には二度目の空襲に入っていた。

 

もちろん、ライトンR30ではない通常弾での攻撃で試してみるのだが……

 

「なにっ!? 避けただと!? ……どういう事だ!」

 

「奴には頭が二つある! 例え一方がミクラスと戦っている最中でも、もう一方が上空を警戒しているんだ! 此方が義手を狙いだした事を、もう学習したに違いない!」

 

「カラスか何かなのか!? 奴ぁ!」

 

オマケに対空攻撃のつもりなのか、空に向けて火炎まで吐き出してくる始末。

 

「我々で気を引いてみましょうか!?」

 

「駄目です、フルハシ隊員! もう弾切れです! あとはもうビームしかありません!」

 

「それでは奴に圧力をかけられん……!」

 

「キサマらの足じゃ、炎に突っ込むだけ損だ。やめておけ!」

 

その時だ。

 

「隊長! こちらから援護してみます! ソガ隊員、しっかり頼むわよ!」

 

「待てアンヌ、援護ってどうやるんだ!? それも地上から!」

 

「カセット弾があるわ! いきなり足元から攻撃が飛んできたら、少なくともビックリして注意が下に向くはずよ!」

 

「無茶だ! やめろ!」

 

「大丈夫よ! 私には……アギラがついてるもの!」

 

「なんだって!?」

 

「行くわよ! アギラ!」

 

『AGRAAAAAA!』

 

ソガ達が驚きで聞き返すと同時、怪獣の雄叫びが響き渡った!

そびえ立つ灼熱の魔獣に次々と着弾するカセットシュート。

 

上空を旋回する忌ま忌ましい三羽ガラスを警戒していたパンドンは、全く新たな方向から攻撃を受けた事で咄嗟に身構える。

視線をむければその先には……オレンジ色のド派手な襟巻きがバタバタと忙しなく揺れているではないか!

 

その動きは、明らかにこちらを馬鹿にするものであり、パンドンからしてみれば、まったくもって癪に障って仕方が無いものだった!

 

亀のように縮こまって耐え続けるだけのミクラスを放り出し、怒れるパンドンは我を忘れてそちらへ走りだす!

 

だが、対するアギラは素早い身のこなしでそれを躱すのかと思えば……地面に伏せたまま、襟巻きを動かし続けるだけではないか!

 

……何を隠そう、先ほどの突進に渾身の力を注ぎ込んだアギラには、もはや立ち上がる力すら残されてはいない。

だからこれが、今の彼に出来る精一杯の攻撃である。

 

だが、大好きな家族が苛められているのに、自分一人だけへばっているわけにはいかないのだ!

 

眼前で金属塊を振りかぶるパンドンをまんじりともせず睨みつけながら、アギラは恐怖に震える心を押さえつけて咆哮した!

 

今までは相手が感情のないロボット怪獣ばかりで、アギラの威嚇はついぞ効果を発揮した事が無かった。

だがここにきて……逆に効き過ぎる程に効いてしまったという事か。

 

全てが高水準に纏まった優秀な侵略兵器であるパンドンの、唯一の弱点それは……

 

尋常ではなく気が散りやすいという点だった!

 

いくら脳が統合処理されたとは言え、意識が二つあるなどという、生物として常識外れの生態を持つパンドン。

 

彼らはその利点を持つ代わり、決して逃れえぬ哀しき性として、究極的な注意散漫を生まれながらに宿命付けられていたのである!

 

『ギャギャーッア!!』

 

「今だ! 撃て!」

「ライトンR30ミサイル、発射!!」

 

怪獣の肘と膝を覆う特注品のガントレットに目掛け、退魔のスティレットが鋭く飛んでゆく!

 

砕け散る腕と脚。

 

何が起きたか分からぬまま、土埃を巻き上げて嚇怒の巨獣が倒れ伏す。

 

「やったーっ!」

 

「ハハ、人間サマを舐めるなよ、バケモノ!」

 

ホークの中で歓声を上げるメンバー達。

 

『AGRaaa……』

 

片手と片足を同時に失い、地面で藻掻く双頭の怪物が起き上がってこれない事を見届けると、アギラは淡い光に包まれていく。

 

アンヌが空中へ手を伸ばせば、その中には緑色のカプセルがころりと握られていた。

 

「……よく頑張ったわね、アギラ。とっても偉いわ。ゆっくり休んでちょうだい」

 

アンヌが微笑むと、眠たげな返事が聞こえてくるような気さえしてくる。

 

あとはダンがウリンガを取り押さえ易いように援護をするだけだ。

鎧の棘を打ち落としたり、ウリンガの足元を狙って牽制したりと、出来る事はまだあるはず。

なにより怪力のミクラスがまだ残っている。ダンと二人がかりであれば、彼を拘束する事も出来よう。

 

そんな時だ。

 

『フハハハハハハ……!!』

「え? な、なに?」

「なんだこの笑い声は!?」

「この声……まさか!」

 

突如として、皆の脳内に邪悪なテレパシーが響き渡ったかと思うと、今なお暴れ続けるウリンガの肉体から、紫電を纏まった青黒いモヤのようなものがドロドロと滲み出し、地面でうまく立ち上がれずに藻掻くパンドンの元へと集まってゆく。

 

『認めん……認めんぞぉ……貴様ら地球人はここで全員残らず道連れだぁ……ここを死の星と変えるまで止まるものかぁ……!!』

 

「み、見ろ! パンドンの手足が!」

「再生してゆく……!?」

 

パンドンの全身が、流れ出た溶岩が脈動するように妖しく光り輝いたかと思うと、失った左腕と右足の断面がボコボコと沸き立ち、そこからみるみる肉体が生えてくるではないか!

 

『我がゴースの恨みを知れ!』

 

「あのくそ野郎……ッ!」

 

再び立ち上がったパンドンの嘴から、咆哮と共に吐き出された怨嗟の声は、間違いなく地下で聞いたゴース星人首領の声だった!

 

生きた肉体を失った彼はいまや、配下の精神力まで取り込んだ結果、激しい狂気と憎悪に飲み込まれ、怨嗟と破壊を振り撒くだけの思念波そのものとなっていたのだ!

 

パンドンは、周囲のあらゆるエネルギーを取り込み、細胞を活性化する事が出来る。

それは敵意や野望といった強い負の感情すらも例外ではない。

 

エネルギーの塊であるゴース星人達が乗り移った事により、パンドンはより一層の活力と凶悪さを取り戻した。

 

科学の力によって強引に付与された理性よりも、怪獣本来の生命力が持つ、迸るような野性が上回った事により、パンドンの体が悍ましき変貌を遂げていく。

 

縫い合わされた首の肉がミヂミヂと不気味な音を立てながら真っ二つに裂けていき、体内で糸のように張り巡らされていたコードや血管が断面から露出する。

そうして左右の首を辛うじて連結していた要素達が、ピンと張り詰めて最後の抵抗を行ったかと思うと、それでも止まらない怪獣の成長に耐えかねて一気に断裂しては、無惨にだらりと垂れ下がった。

 

次々と血が噴き出し、熱をもった肉片が辺りに飛び散るが、痛々しい傷すらも、やがて盛り上がった肉に取り込まれ、次第に消えていくではないか。

後に残されたのはつるりとした鱗と、ギザギザの棘に覆われた二又の長くしなやかな首。

 

パンドンはついに、遺伝子に刻まれた原初の姿を取り戻したのだ!

 

四肢は鋼鉄製ではなくなったものの、体内の各種人工臓器による基礎能力の向上とウルトニウム装甲の堅牢さは健在だ。

改造パンドンにゴース星人の執念が加わった今、単なるサイボーグ怪獣の枠組みすら超越した、禍禍しき存在として生まれ変わったのである!

 

現在の彼を呼ぶに相応しい名は一つ。

 

『見よ! これぞパンドンを超えたパンドン……ネオパンドンだ!!』

『ギャ『ギャア』アア!!』

 

 

「何がゴースの恨みだ。お前達が勝手に侵略へ来て返り討ちにあっただけじゃないか! 逆恨みも甚だしいぞ!」

『黙れ!! 全てはこの我らの物なのだ! 奴隷の分際で支配者に逆らうなど……身の程を知れ!』

「くっ!」

 

先ほどまでは、向きが固定化されていた首が自由自在になった事により、パンドンは二つの首を360度全方向へと向ける事が可能となった。

 

上空を向いた嘴から、次々と火炎弾が吐き出され、対空機関砲のようにウルトラホークを追い立てる!

 

『そしてその罪は貴様も同罪だ! この雑魚怪獣めっ! いみじくも怪獣の身でありながら、地球人なぞに味方しおって……! 死をもって償うがいい!』

『GRAaa……!』

「ああっ! ミクラス!」

 

ネオパンドンの剛腕が、ダメージで膝をついていたミクラスの二本角をガッシリと掴んだ!

怪獣が込めた力を強める度に、ミシリミシリと不吉な音を立てる角。

 

なんと言っても、先ほど金属製の盾を刺し貫くという無茶をしたばかり。

彼の短い二本角は、もはや強度の限界を迎えようとしていた。

 

「各機! ミクラスを助けるぞ!」

『おっと……こちらにかまけている場合なのか?』

「なんだと!?」

 

ゴース星人が警備隊を嘲笑う。

直後にホークの通信機が急を告げた為、その理由はすぐに判明する事となった。

 

『タケナカよりウルトラ警備隊! キリヤマ隊長、聞こえるか!』

「タケナカ参謀!? いったいどうなさいました!」

『円盤だっ! ゴース星人の円盤群が東京上空に現れたっ! 現在、各基地からウルトラガードを緊急発進させて迎え撃っている真っ最中なんだ!」

「なんですって!?」

「そうか! 火星からの増援を既に呼び寄せていたのかっ!」

『それだけではない! 東京湾に向けて、海底より進撃中の怪獣がいる! 鼻先の角をドリルのように回転させる恐るべき相手だ! 海軍を向かわせたが、艦艇に穴を開けられて歯が立たん! 長官が仰るにはグビラという怪獣に特徴が一致するらしい!』

「グビラですって!?」

 

それは、かつて怪獣頻出期に記録がある怪獣だった。

数十年前、海底プラント開発計画の雛形が立ち上がった際に、酸素を送る為のパイプをこの怪獣が破壊してしまった為、あわや大惨事となるところだったのだ。

 

その事故のせいで、海底開発は大きく後退を余儀なくされ、より水深の浅い部分から調査を行う羽目になったという経緯がある。

 

幸い巻き込まれた一般人が全員、当時の防衛チームの働きによって奇跡の生還を果たした為、このことは新聞でも大きく取り上げられ、事件の下手人としてこの怪獣も非常に有名であった。

 

そしてその恐ろしさも。

 

『そろそろ東京湾に上陸する! 空も海も劣勢だ。ウルトラ警備隊の救援を要請したい!』

「そ、それは……」

「タケナカ参謀! 我々も現在、富士山の近くでパンドンと交戦中なんです!」

『なんだって!? しかし、このままでは東京が蹂躙されるのは時間の問題だ! ハイドランジャーも出航させたが間に合わない!』

「くそっ……!」

 

悔しさでシートを拳で叩き付けるソガ。

今回は相手の方が一枚上手であったのだ。

防衛軍は、無辜の人々の安全を守る為の組織である。

日本の首都が踏み荒らされようという時に、それを決して無視する事は出来ない。

 

『その愚か者達を助けたければ、ここに残って戦い続けるがいい! だがその間に東京は……塵も残さぬ焼け野原だがな! ギャーハッハッハハハハ!! さあ選べ! どちらでも好きな方を助けるがいい! どちらにせよ死ぬまでの時間が多少伸びるだけだがなーっ!!』 

 

「……ぜ、全機……!」

「隊長!?」

「ダン達を見捨てろって言うんですか! 俺達の恩人をっ!?」

「……隊長!」

「……くっ!」

 

『残念! 時間切れだっ!』

 

ネオパンドンが、万力のような力でミクラスの角をへし折りにかかった。

ミクラスは血気盛んな恐れ知らずの戦士だが、その誇りは自慢の雄々しい角と共にある。

 

この角こそが、彼の勇気の象徴であり、後から後からこんこんと湧き上がる闘志の源なのだ!

 

それがポッキリ折れてしまうと言う事は、ミクラスの不屈の精神を支える自信と気力の大黒柱が、根元から跡形もなく粉砕されてしまうという事に他ならない!

 

角を折られたミクラスは、勇猛な戦士として、二度と再び立ち上がる事が出来ないのだっ!

 

『GRaa……aaaAA!?』

「ミクラスーっ!!」

『これで終わりだーっ!』

 

その時!

 

『ガォオオオン!!』

『な、なんだっ!?』

 

パンドンの足元に突如として地割れが広がり、その亀裂の下から、爪の生えた逞しい腕が飛び出したかと思うと、灼熱の怪獣の足首をむんずと掴んで、その巨体を力任せに引き摺り倒してしまったではないか!

 

突然にバランスを崩されたパンドンは、ミクラスの角から思わず手を離し、両手で虚空を掴み損ねた姿勢のまま、ぐらりと後ろ向きに倒れて、地面に開いた亀裂の中へ半身を埋める事となる。

 

それと入れ替わるようにして、砂埃を巻き上げながら、月明かりの下に、一匹の怪獣が姿を現した。

 

爬虫類じみた、ワニを思わせる顔立ちに、ずんぐりと強靱な足腰。

頭頂部から首筋にかけてを、硬質な甲羅が覆い隠したシルエットは、まるで頭巾か何かを被っているようにも、古代の戦士が角付き兜で武装しているようにも見える。

 

匂い立つような暴力と野性の権化の如き肉体の中に、どこかしら大自然の神秘、知性の気配を感じさせるのは、胸元に大きく彫り込まれた象形文字のなせる技か。

 

破壊と守護を司る、太古の時代より蘇った、荒ぶる大地の化身。

 

その怪獣の名は――

 

 

「ザバンギッ! 我らが守護神よっ! 行きなさい! 今こそあの邪悪な願いを打ち祓い、盟友の窮地を救うのですっ!」

 

『ガォオオオン!!』

 

月に向かって高らかに吼えたてる怪獣。

その背中に祝詞を捧げる巫女の姿が、呆然とするアンヌの視界に映り込んだ。

 

怪獣同士の衝突により発生した地響きで、その場にへたり込んでいたアンヌの肩を、誰かが後ろから叩く。

 

「遅くなりました。今の我らでは、ザバンギの封印を解くのにも、多大な労力が必要なのです。立てますか、アンヌ?」

「あなたは……ヤオさん……?」

「いいえ、ヤオはあちらにいる姉の名です。私はヒメ。こうしてお会いするのは初めてですね、地上の人よ」

「あ、ありがとうございます……でもどうしてアナタ達がここに……ノンマルトは争いをしない種族なのでは?」

 

ヒメに差し出された手をとり、アンヌが立ち上がりながら心からの疑問を投げた。

その声に、ザバンギへとパワーを送っていたヤオが振り返る。

 

「そうです、アンヌさん。しかし先ほど、あなた達の長が言っていたではありませんか」

 

「えっ?」

 

「地球は……我々人類、自らの手で守り抜かねばならない、と」

「であれば我々も、共に戦わねばならない。我らノンマルトもまた……この地球に生きる人類なのだから」

「地上人は、自らの罪を認め、またノンマルトの存在を認めました。あの時ヤマオカ長官が、散っていった我らの狩人達に向け、同じ戦人として最上級の敬意と感謝を示した事を、私は決して忘れません」

「だからノンマルトも、自らの罪を認め、地上人と手を携えて戦う時が来ました。我らノンマルトは……恩知らずでも無ければ、恥知らずでもない!」

 

二人の巫女が白い貫頭衣を翻し、アンヌの両側から、その柔らかで温かい手をとり、向かいあう。

 

「安心して下さいウルトラ警備隊。我らノンマルトが力を貸します。共にこの困難を乗り越えましょう。私達ならそれができる」

 

『おのれ地球人め……矮小なる弱者共が、強者に平伏すしか能のない虫ケラ共がっ!! 我らの星から一匹残らず駆逐してくれるわっ!』

 

「黙れっ! この大地は……地上人のものでも、ノンマルトの物でも……ましてや貴様ら侵略者の物でも断じてない!」

 

「ここは、この場所に生きる全ての生命の……わたし達、地球星人の星よっ!」

 

「「この海も空も大地も! ここは我々地球人類のものだ! 侵略者の居場所はない!!」」

 




「いきなり知らん怪獣出て来た……こわ……」
……と、ゴース星人と同じく困惑された方への解説。


ザバンギ

オリジナルビデオ『ウルトラセブン1999最終章6部作』……いわゆる『平成セブン』の前半にあたる章の実質的最終回、第6話「わたしは地球人」に登場した怪獣。
ノンマルトの守護神ともいうべき怪獣で、ノンマルト虐殺の事実を隠蔽する地球防衛軍に、人類にとって不都合な真実が隠された『オメガファイル』の開示を脅迫するためにノンマルト残党が操った。
ところが、ウルトラ警備隊が先んじてオメガファイルを公開しようとした為に、それでは復讐にならないと、宇宙に向けてオメガファイルを送信するためのレーダー基地を破壊しようとする。
セブンが歴史の真実を知り、決断するまでの時間を稼ぐ為に、ミクラスとウインダム二体と対決するが、圧倒的な強さで彼らを一蹴。
ウインダムを踏みつけて機能停止に追い込み、ミクラスの角をへし折って戦闘不能にした。

今作においてウインダムがよく口から血の代わりに白い泡を吐くのは、ザバンギに踏みつけられているシーンから。
そして異様にしぶとく頑丈に描かれているのも、一度機能停止に陥った後に、ザバンギが発信機を破壊する寸前に再起動し、身を呈して基地を攻撃から守ったシーンが印象強かった事に起因する。

ザバンギのパワーは、カプセル怪獣二体を相手どっても余裕綽々な程。なんとあのミクラスが尻尾を引っ張ってもビクともしない。
とはいえ、平成セブン時のザバンギは、滅ぼされたノンマルトの怨念や執念によって強化されている為、今回登場したザバンギはそれほど強くない。
せいぜいミクラスと同程度か、ちょっと強いかくらい。
だって操ってるヤオが心穏やかなので。
ご了承ください。

貴方は原作『ウルトラセブン』を観たことが

  • ある
  • ない
  • なかったが、本作をきっかけに視聴した。
  • 他昭和ウルトラシリーズは観ていた
  • 平成ウルトラシリーズは観ていた
  • 令和からだゼェェット!
  • そんなにシンが好きになったのか(完全新規
  • その他(感想欄かDMにでも)
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