転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
『立て! 340号! ……いや、ウルトラセブン!』
「セブンが……二人?」
「い、いったいどういう事だ……!」
「またニセモノアンドロイドが来たってことか!?」
「いや、リベット留めの痕がない……それに念話も使用しています。もしやダンと同じ星の出身者なのでは!?」
突如あらわれた、もう一人のセブンに騒然となる警備隊。
まさにダンと瓜二つの姿であり、向かい合って立つ様は、まるで鏡映しかと見紛うほどだ。
だが、聞こえてくるテレパシーは、ダンの声ともまた違う、聞いた事のない響きを伴っている。
ダンが他の星からやってきた異星人である以上、その母星には姿の近しい同族が住んでいるはずであり、別種族である人間の目からは、その個人差を判別する事が難しいという事もあろう。
しかし、続けてダンの漏らした呟きが、地球人達をさらなる驚愕の渦に叩き込んだ。
『……兄さん……どうしてここに……』
「に、兄さんんっ!?」
「なにっ」
「じゃ、じゃあ! あれがダンのお兄さんなのね!」
沸き立つ一部の面々。だがそれを、もう一人のセブンは厳しく否定する。
『もう兄と呼んではならんと、あの時言ったはずだ! もはや私とお前達家族には、なんの関わりもない!』
『それは、あの人とあなたが勝手に決めた事だ! 姉さんがいったいどれだけ……』
『それでもだ! お前が恒点観測局員である限り、私はお前の上司なのだぞ! 213号で呼べと何度言ったら分かる!? 公私の区別も付けられん青二才め……だから私は、お前の太陽系銀河派遣には反対だったのだ。その結果がこれだ! この醜態は、全てお前の甘さが招いた事だ!』
『……それは!』
「213号……? にー、いち、さん……ニーイーサン……って、やっぱりニイサンじゃねえか! ウルトラセブンニーサンだ!」
「先輩は黙ってて下さい!!」
指を折りながら独り合点するフルハシ達を余所に、前へ出て精一杯の大声を張り上げるアンヌ。
「セブンのお兄さーん! お願いよ、ダンを助けてあげてぇー!」
『駄目だ。地球人よ、残念ながらそれは出来ない……ガンダーに近付けば、私もエネルギーを吸収され、取り込まれてしまう。奴自身の力で脱出するしかない。故に!』
恒点観測員213号と名乗る巨人は、額から青白い光線を照射する。
そして、ガンダーの中で藻掻くセブンのエネルギーランプに光線が命中すると、先程まで忙しなく瞬いていた光源の点滅が止まる。
『私がしてやれるのはここまでだ、340号。後は自分でやれ』
厳しくもそう言い放ち、自らの弟に背を向けるセブン上司。
『……くくくく、黙って聞いておれば。たったそれだけの為に降りてきたのか? いくらエネルギーを補給したところで無駄だ! 一度ガンダーの冷気に取り込まれたら、最早助かる道は無い! 死ぬまでの時間が少しばかり伸びただけだ!』
『構わない。私は、そこの愚弟を助けに来たわけではないのだから』
『なにっ』
「えっ!?」
その言葉に、敵味方関わらず驚愕する中、セブン上司は静かに語る。
『地球人的に言うならば、セブン! お前は……バカだ……!』
「……な、なにをっ!」
「待って、フルハシ隊員!」
『私を追いかける為に、恒点観測員となる道を選択した事も! 適さぬ環境の星で、何の措置も無いまま戦い続けた事も……! そして、私の忠告を無視した挙げ句、最後の変身を行ってしまった事もっ! 全て愚かとしか言い様がないっ!!』
『うぐっ……』
兄の真っ当な指摘に、二の句が継げないダン。
『もしもお前があと少しでも傷付いていれば、私は一目散に母星へ予備の命を取りに帰らねばならないところだったのだぞ!? そのような体で戦って、例え死んでしまったとしても、それは自業自得というものだっ! これをバカと呼ばずしてなんとする!?』
「……そうさせたのは、俺達さ……」
「ソガ隊員……」
セブン上司の語る言葉に対し、ソガは小さく自嘲する。
精神の奥底で見た、本来の結末。
それを回避できるならと、外なる宇宙からきた奇妙な同志に体を任せ、時には影から力を貸しさえもした。
しかし結局のところ、セブンの力無くして勝つ事の出来ない戦いばかりだったと言える。
いやむしろ、自分達が下手に足掻いたせいで、ゴース星人の警戒を呼び、本来以上の戦力を用意させてしまったのではないか。
だからこそ今、眼前でダンが苦しみ、死の淵に瀕しているのではないか?
彼を泥沼の戦いに引きずり込んだ責任は、自分達にもあるはずだ。
セブン上司がダンに向けて放った叱責は、ソガ達からすればその実、彼ら自身の腑甲斐なさに対するものと同義ですらあった。
思わず拳を握りしめるソガ。
『……だが! 価値はあった!!』
「えっ……?」
『喜べセブン! お前の提出した、地球に関する調査報告書が……文明監視局で正式に受理されたっ!! 地球は、第一種監視対象惑星に制定される事となる!』
『なんですって!?』
その言葉に、思わずといった様子で驚きを露わにするセブン。
『これを受けて、宇宙警備隊本部も、この銀河に担当警備隊員を派遣するよう決定した! 地球はもはや、地図にも載らぬ辺境惑星ではない!! いずれ銀河連邦の仲間として、その末席へ連なるに相応しい星か否か、宇宙全土が見極める段階に入ったのだ!!』
「な、何を言っているんだ、彼は……?」
「分かりません……しかし、地球が宇宙において、何らかの特別な区分に分類されたのでしょう」
「ダンだ……! ダンが、宇宙に紹介してくれたんだ、俺達の星を……! だからダンの兄貴が来てくれたんだ! なっ!?」
「ええ! きっとそうよっ!」
『聞いていたなゴース星人! この星は既に、宇宙警備隊の管轄下にあるのだ! これ以上の戦闘は、れっきとした侵略行為と見做される! もはや、未開拓地の開発調査という詭弁は、今後一切通用しないぞ! 私は、これを通告する為に来たのだっ! 繰り返す! ゴース星人、貴隊は現在、銀河連邦の定める第一種監視対象惑星の領域を侵犯している! 即刻退去せよ!』
真っ赤な指を前方に向けて、力強く突きつけながら、セブン上司は、地球の暫定的な独立を高らかに宣言した。
それでも……
『くっくっ……ク、ククク……グハハハハハハハ……!! 銀河連邦? 宇宙警備隊? それがなんだと言うのか!! いちいち御託を並べなければ、まとも動く事も出来ん腰抜け共ではないか! たかだか能書き一つ増えた所でなんになると? それで? 警備隊員とやらは何処にいる? それとも貴様がそうなのか?』
『いや、私はそこにいる340号と同じく、単なる恒点観測員に過ぎん。地球担当として任命される予定の隊員は、数々の技と武器に精通し、あらゆる怪獣に対処が出来る有望な若人と聞く。磨きあげた技の冴えは、かの男の再来とまで噂されているらしい。力任せしか出来ぬ、私のような者が出る幕も無いだろう。正式な手続きが完了次第、着任する事になっている』
『それを聞いて安心したぞ! ならばそやつが来る前に、ここを更地にしてしまえば良いだけの事! せいぜい誰もおらぬ星を守り続けていろ……!』
『そ、んな事……は……させん……!』
ゴース星人の嘲笑に、身動きの取れない体に喝を入れ、ガンダーの拘束から逃れようと必死に藻掻くセブン。
しかし、怪獣の発する冷気は身を切るようで、セブンのなけなしの体力を着実に奪っていく。
『そうだ、全て貴様が自らの意志ではじめた事だ! 早くそこから這いだして来い! そして……最後まで己の力で守りきってみせろ! ……その為の時間稼ぎくらいは、してやる!』
それでもセブン上司は、後ろを一切振り向かず、熱く厳しい言葉のみを浴びせると、今なお怪獣を吐き出し続ける黄金の円環に向けて、両の握り拳を突き出した!
『愚かな! 貴様ら光の一族が何人来た所で、もはや我々の敵ではないわ! 弱点は分かっているぞ!』
「なにっ」
ゴース頭領が余裕綽々に啖呵を切ると同時、ウルトラ警備隊の傍に佇むノンマルトの巫女、その片割れであるヒメが唐突にその場へ蹲る。
「ヒメッ、どうしたのです!」
「……さ、寒い……」
「えっ!?」
アンヌ達が駆け寄ってみれば、彼女は自身の肩を掻き抱きながら小刻みに震えており、なんと口から漏れる吐息が白く濁っているではないか!
「大変! 凍えているわ!」
「そんなはずは……!」
「いいえ、これは……怪竜が震えているのです! 彼の苦痛が妹に逆流しています……!」
「カイリュウというと……東京上空の!?」
「こちらウルトラ警備隊! 東京上空の防衛軍機! なにかそちらに異変は無いか!」
即座にビデオシーバーで連絡を取るキリヤマ。
『こちら302飛行隊! 大海龍のおかげで、当方の航空優位……』
『いや、待って下さい……レーダーに感アリ! 何かが近付いてくる……!』
『なんだ、龍の動きが鈍ったぞ!?』
『これは……霜……?』
苦しむ龍を見つめるパイロット達が、キャノピーの異変に気付いた時には遅かった。
透明な窓に霜が広がり、視界がどんどん凍り付いていく……
『外気温、急激に低下……ひょ、氷点下を切りました!』
『巨大物体、なおも接近中……!』
『何か来る! この異状な寒波の原因が……東京に近付いているんだっ!』
『はっ! あれはっ……まさか!?』
パイロット達は、白む空の彼方に、大きな鳥が暗雲を引き連れるのを見た。
力強い羽ばたきで、乱気流と猛吹雪を巻き起こしながら近付く極地の王……
『……ぺ、ペギラだっ! ペギラが来た!』
「なに、ペギラだと!?」
モスクワ守備隊を凍り付けにし、進路上にある全ての街をことごとく氷河期に沈めながら、ついにペギラが日本上空へ到達したのだ!
その目的は一つだけ、それはウルトラセブンの息の根を確実に止める事のみ!
『どんどん温度が下がっていくぞ……!』
『ダメだっ! ラダーが凍りついて動かない!』
『乱気流で……機体の……制御がっ……!』
『龍が墜落しそうになってる!』
『当たり前だ! 爬虫類が真冬に飛べるもんかっ!』
「いかんっ! 東京戦線は海龍を柱に成り立っているようなものだ。このままでは総崩れになるぞっ!」
「それに、ガンダーとペギラが合流したら、例えダン達二人がかりでも歯が立ちませんよ! とんでもねえバケモノが生まれちまう!」
『ハハハハハハ……東京氷河期の次は貴様達だ! 吹雪に沈め! 光の一族よ!』
ゴース星人が各地に怪獣を出現させたのは、防衛軍基地への攻撃であると同時に、セブンをおびき寄せ、エネルギーを消耗させる為の囮であった。
故に、それらは全て対セブン用にもそれなりの効果を発揮するであろうと目される戦力を充てられていたが、ペギラはその中でも特に筆頭格のセブン殺し!
例え囮として空振りであっても、その翼で猛烈な寒波と共に襲来し、戦場自体を相手の不利な環境に丸ごと作り替えてしまうのだから。
後詰めとして、これほどに優秀な駒もそうはいまい。
『……なるほど、確かに我々M78星雲人は寒さに弱い。いくらエネルギーが残されていようと、私だけではいずれ力尽きてしまうだろうな』
「だめです……これ以上は……」
「いかんっ、ペギラが襲いかかってくるぞ! ヒメ代表! 海龍を退避させてください!」
「無理……です……」
ビデオシーバーの向こうでは、今まさに翼を大きく広げたペギラが、口の端から覗く鋭い牙をギラつかせながら、動きの鈍った怪竜に狙いを定めて急降下を仕掛けてきた!
『一人でのこのこ現れたのが運の尽きだ! まずはその忌々しい海蛇を血祭りに上げてやる! 死ねっ!』
『……誰が私一人と言った?』
ぺギラの牙が、竜の喉笛を食い千切ろうとする寸前!
暗雲を突き破り、何か光り輝く大きな金色の物体が飛来したかと思うと、高速で回転しながら凄まじいスピードで両者の間へ割って入り、ぺギラを後方へ勢いよく突き飛ばしたのだ!
『……なにっ!?』
空中で態勢を立て直し、咆哮をあげつつ敵を威嚇するぺギラ。
睨む怪獣を挑発するかの如く、大空をくるくるとフリスビーのように旋回するソレは、よく見てみれば、余りにも巨大なサイズの円盤であった。
「円盤……? いったい……」
「待て、あのシルエットは……!」
やがて金色の円盤がサッと解けると、その真の姿を露わにする!
『オ困リノヨウダネ!』
「ナ、ナースだと!?」
『ば、バカな!? こんな星になぜ宇宙龍がっ!』
通信機のスピーカーから、まるで石灰が黒板を叩くような厳しい響きが空気を震わせると、両陣営に驚愕が走る。
そんな驚きを他所に、形態変化を終えたナースは、細長い体をくねらせて宙を泳ぎ、凍える龍へ寄り添うように並び立つ。
『地球防衛署ノカウボーイ諸君! コチラハ……』
『保安隊長殿、翻訳無線がオフになっておりますぞ』
『オヤ、コレハ失礼。ゴ指摘ニ感謝シマス大使殿……地球防衛署の勇敢なる羽根付きポニー乗り諸君! 本官はキュラソ連邦警察保安局第303騎兵連隊所属特別捜査官! 怪獣災害の対処中とお見受けした! 人道的観点に則り、同盟惑星の諸君に協力する! 誤射に注意されたし!』
『同じくワイルド星間連合全権大使。当通信は本宙域の全周波数帯に向けて発信しております。公務航行中、貴星からのSOSを受け取り、訪星した次第。当艦ナース級7番艦オデッセイは、これより貴星の領域内にて災害救助活動に従事します。識別信号の登録を要請したい』
「ワイルド星の全権大使!? それに……キュラソ星の特別捜査官と言えば……まさか、エリキュール保安官!? あなたなのですかっ!?」
『む、本官をその名で呼ぶという事は! ウルトラ警邏隊のソガ警部か! 生きていると信じていたぞ、ブラザー!』
いきなり防衛軍の無線に割り込んで来た者達の名乗りに、ソガ隊員が反応する。
もしやと思い名を呼べば、非常に親しげな声が帰ってくるではないか。
『おや、保安隊長殿。ソガ外交官ともお知り合いなのですか?』
『そういう貴官もか! 大使殿!? よもや、先ほど話していた、助けたい地球人というのは……!』
『ええ、もちろん彼の事ですよ。我々の不始末と悩みの種を少々解決して頂きまして……なので当連合は、この星と彼に大きな借りがあるのです』
「そのお二人がどうして一緒にナースへ乗り込んでいるんです……?」
『キュラソーから急いで駆け付けようとしたのだが、途中でこちらの大使殿に出くわしてな! 部下達共々拾って頂いたのだよ! ポニーの最高速度では、間に合わなかったかもしれない……大使殿、重ねて感謝する! それにしても貴官らの母艦は速いな! 本官の詰め所にも一隻欲しいくらいだ』
『いえ、緊急事態でしたので。しかし当方としては、速度はともあれ、個人用の宇宙艇であれほどの航続距離を移動できる事の方が驚きです。小型艇の集団が、母艦もなしにサルガッソーを駆け抜けていくのは目を疑いましたぞ』
「なあおいソガ……ワイルド星の大使サマはいいとして……エリキュール保安官って……誰だぁ?」
「忘れたんですか? いつだったか逮捕した脱獄囚を護送しに来た人じゃないですか! ……まてよ、確かあの時は先輩もいたんじゃなかったっけ? 酷い差別発言をして、危うく外交問題になりかけてたでしょう!」
「そ、そうだっけ……? いや、そういうのは全部おめえさんに任せてたから、いちいち覚えてねえや……何年前の話だよ……」
弱った顔を見せるフルハシだが、実は当のソガとて、画面ごしに見た場面が印象的だったので、たまたま覚えていただけだ。
またもや、テレビの向こう側でしか見たことの無い相手と再開する事になろうとは。
……確か、あの時はアイツがもてなしたんだったか……?
「こうして助けに来て頂けるとは……」
『なんの! この星で食べたハイオクコンソメの味が、本庁に戻ってからも忘れられなくてね、また恋しくなってしまっただけの事さ! それに貴官とは、かの大怪盗を共に捕まえた仲ではないか!』
「えっ? 大怪盗……?」
『なんと! なるほど……ブラザーからすれば、あの程度の小悪党は、単なるコソ泥でしかないという事か! 流石だな、ソガ警部!』
「……なんだそれ……? 知らないぞ……怖い」
「どうして貴方が首を傾げてるのよ……」
そうして異星の友人達と微妙に嚙み合わない会話を繰り広げていれば、痺れを切らしたのかガンダーの口からゴース星人の苛立ちに満ちた声が発される。
『貴様ら! 我々の邪魔立てをするなど、どうなるか分かっているのだろうな!』
『何を言うか! 現在この星には、我が連邦の優秀な研究員や技術者が多数出向している! 本官らは、それら邦人の星外脱出を支援するために来たのだ!
『……きさまらぁっ! やれっペギラっ!』
『保安隊長、少々荒い操艦になりますぞ。部下の方々にご注意を!』
『なあに、我々はポニーの運転で慣れております! やって下さい、大使殿!』
『ナァース! ナアァァースッ!!』
ワイルド星人の力強い叫びを聞き、主人の思惑を理解した宇宙龍は、たなびく体を瞬時に手繰り寄せ、とぐろを巻くと吹雪の主へ向かって突進をかける!
しかし、ペギラとて二度も同じ手を食うわけにはいかない。
牙の生えた口を大きく開き、喉奥から凄まじい勢いで冷凍光線を吐きかけた!
寒さに弱いセブンや怪竜が食らえば、たちまち体が凍りついてしまうだろう超低温の光線も、金属の体をもつナースには効きが悪い。
だが、ペギラの真の狙いはそこではない。彼の放つ冷凍光線の最も恐ろしい点は、絶対零度により気体体積の急激な減少を引き起こし、気圧差によって擬似的な無重力状態を再現してしまう点にある!
いきなり重心方向が反転したせいで、円盤竜は天地がひっくり返り、姿勢制御の為に一瞬の隙が出来る!
そこへ間髪入れず襲いかかるペギラの角!
氷河すらも打ち砕く必殺の頭突きがナースに迫る!
黄金竜はこのままバラバラに粉砕されてしまうのか!?
『ナァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ス!!』
全権大使が力の限り叫ぶと同時、なんと巨大円盤がリボンの如く解けていき、敵の突進による衝撃を華麗に受け流してしまう!
かと思えば、自らを黄金の投げ縄に変えた竜はそのまま、無防備なペギラの体に巻き付いて、その動きを雁字搦めに戒めてしまった!
『今です!』
『見事な運転技術でありますな、大使殿! 我々も負けてはおれんぞ、野郎共! 今こそ
するとナースの節々から、甲高い駆動音をラッパ代わりに、一人乗りの小型宇宙艇スペースポニーがわらわらと大量に飛び出してくるではないか!
彼らはエリキュール保安官の駆る機体を先頭に、ミツバチのような一糸乱れぬ動きで隊列を組んだかと思うと、動きを封じられた怪獣の周囲に纏わり付いたまま、一斉に炎を噴き出してペギラの顔や翼を焼いていく。
『どうだ! これぞキュラソースピリッツだっ!』
『ううむ、まったく惚れ惚れするような練度ですな。いかがです保安隊長。我々のナース級を進呈する代わりに、貴星のスペースポニー隊と船団護衛契約を結びたいのですが』
『あいにく本官らは宮仕えですので、民間の警備会社に声をかけておきましょう! なあに、こうして轡を並べて戦ったからには、大使殿とはもはや兄弟も同然! ブラザーの頼みなら断れませんな! この事件が落着した暁には、地上でハイオクスープを飲み交わすとしますか!』
『……ああいや、最近は歳のせいか
『あれ程の美味を味わえないとは残念ですね……さてソガ警部! 我々はこちらの暴動を鎮圧後、直ぐにそちらへ応援に向かう! もう少しばかり耐えてくれ! ブラザーならば出来ると信じているぞ! オーバー!』
「……相棒、お前さんの知り合いは、なんだか騒がしい連中ばかりだな。類は友を呼ぶってか?」
強引に打ち切られた通信に、ソガは小さく呟くが、その表情は言葉と裏腹に、愉快そうな笑みを浮かべていた。
「しめた! キュラソ星の騎兵隊が到着すれば、ガンダーの氷を溶かせるかもしれません!」
「ダン! お前はそれ以上動いてはならん! 味方の到着まで体力を温存するんだ! 各員、攻撃開始! ダンの代わりにガンダーの侵食を少しでも遅らせるぞ!」
『ゴース星人! これが、貴様の軽んじていた能書きの力だ。今この星と敵対しているのは貴様達だけだが、地球に手を差し伸べる者は以前より遥かに多い!』
『黙れっ! ペギラ一匹封じただけで図にのりおって……! それまで大人しく待ってやると思うのか!? 貴様らなど寒さがなくとも充分だ! 見よ! この怪獣軍団を!』
ゴース星人の言うとおり、次元門から現れた怪獣達は圧倒的な数であり、しかもそのどれもが強力な戦力だった。
『いつまで倒れているのだクラッシュホーン! たかが角が一本折れただけであろうがっ!』
それに、首領の叱咤に身を起こすのは、先ほどセブン上司のワイドショットによって吹き飛ばされた巨大怪獣クラッシュホーン。
身の丈ほどもある角は、片方が無惨にへし折れていたが、まだその反対側の角が妖しく光っている。
威力は減ってしまうものの、例え一本でも超振動波を放つ事自体に支障は無いのだろう。
『ほう、私の光線を受けて尚も立ち上がるか。これは一筋縄ではいかないな』
「私たちも戦います! ザバンギ! もう一人のセブンと協力するのです!」
ヤオが祈りを捧げ、大地の化身を復活させる。
だが、さしもの守護神であっても、強大なネオパンドンを破った後の連戦であった。
非常に苦しげで、息が荒い。
『地球人、その怪獣はもう限界だぞ。休ませてやらねば、命が危うい。これ以上戦ってはいかん!
……さあ、戻れ!』
それを見たセブン上司が、何かをザバンギに向かって投げ付けると、守護獣の体が光の渦に包まれていき、どんどんと縮小化していく。
そして小さな光の粒となったザバンギは、ヤオの手元に戻っていき……突然の事に惚ける巫女の指には、いつの間にか黒いカプセルが握られていた。
「ハッ!? ザバンギがっ!?」
『安心しろ地球人。それは、治癒効果のある保護カプセルだ。数ヶ月前もすれば、元に戻るだろう』
「し、しかし……あの量の怪獣を貴方一人では!」
『その通りだ。だから私も仲間の力を借りる……よし、いけ! ゴード!』
セブン上司が指先から白い光を投げ付けたかと思えば、傍らに猛烈な閃光と爆炎が巻き起こり、中から一匹の怪獣が姿を現す!
『Goooooo!!』
「な、なんだっ! カプセル怪獣!?」
それは、なんとも不思議な姿をしていた。
すらりと伸びた首の先には、白い鬣と獣の顔を持ち、一見するとヒトのように直立したライオンにも見える。
だが、その背には蝶の如き美しい大きな羽が生えており、よく見れば鬣の間からは触覚が飛び出ているではないか。
それだけでなく腕の先は昆虫のように鉤爪となっていて、尾は鰐や大蛇の如く太い爬虫類のソレである。
おまけに、フサフサとした体毛が生えているのは首から上だけで、それ以外は鎧魚のような艶々とした固い鱗で覆われているのだ。
ヒトと獣、蟲や魚類、あらゆる生き物の要素を混ぜ合わせたような奇っ怪な姿。
しかし、生物のキメラとも言うべき不気味なシルエットを持つにも関わらず、その青い瞳には静かで慈愛に満ちた光が涙の如く湛えられ、怪獣の全身から零れる光がいつの間にか羽ばたく蝶となって周囲を舞っている。
見るもの全てに、どこか畏怖と神聖さを感じせる白い巨獣が、赤い戦士に寄り添うように煙の中から進み出た。
怪獣に見覚えがあるのか、驚きを隠しきれない様子で小さく呟くセブン。
『ハッ……! その姿はまさか、ゴード星の獣神……!?』
「おお! あれがセブンニーサンのミクラス代わりってぇわけか!」
『ふん、怪獣一匹増えたところでどうという事はない、やってしまえ!』
号令に合わせ、角から眩い電撃を放つエレキングとネロンガ。
セブン上司はそれを、瞬時に作り出した淡く輝く透明な壁で防ぐ。
ならばとスカイドンが地面にひび割れを作りながら歩み出て、巨大な口から猛烈な火炎を敵の足元へ向かって吐き出した。
壁を回り込み、どんどんと広がっていく火の手。
しかし。
『Goooooo!!』
ゴードと呼ばれた怪獣が、全身にある節の隙間に開いた穴から、真っ白な煙を噴き出して、周囲に立ち上る炎をあっという間に鎮火してしまうではないか。
さらに、口を開けて惚けているスカイドンの顔に目掛けて、青く輝く霧のような吐息を吹き掛けると、たちまちメガトン怪獣の顔が燃え上がり、上半身を包み込んだ。
苦しげにのたうち回るスカイドン。
「なんだ!? 今の攻撃は!」
「……まさか!? あれは液体酸素!? きっとあの怪獣は、空気中の大気組成を自在に操る事が出来るんだ!」
「空気を操るですって? そんな事が……」
「いえアンヌさん。あの怪獣からは、どこかザバンギと似た気配を感じます。彼もまた、その身に星の力を宿しているのかもしれません……!」
ヤオが言い終わると同時に、怪獣軍団の一匹であるケロニアの目が妖しく光った!
すると、スカイドンに纏わり付いていた炎が徐々に衰えていき、始めから火など無かったかのように、煙すら残さず立ち消えてしまう。
炎の消えた怪獣は地面を転げ回るのを止め、何が起こったのか分からない表情で首を傾げていたが、ケロニアが火を消したのは別にスカイドンを助ける為ではない。
南米に棲息するユリ科の一種、吸血ツルボランから進化した植物生命体であるケロニアにとって、火炎は不倶戴天の敵であるが故に、真っ先に克服すべき相手であったからだ。
つまり彼らは植物であるにも関わらず、ネオニューロンと共生する事により念動力を獲得し、最大の弱点である火ですら即座に消してしまえるように進化した、恐るべき新人類なのである!
『ケケケッー!』
念力で不快な要素を消し去ったケロニアは、今度はこちらの番だと言わんばかりに、全身に生えた小さな棘を逆立てる。
獲物の体に突き立てて、存分に血を吸い上げる為だ。
敵をカラカラのミイラにしてやるべく、不気味な雄叫びをあげながら白い星獣に飛びかかるケロニア!
『Goooooo!!』
『ケケッー!? ケ、ケケ……』
ところが、ゴードの吐き出した液体混じりの白いガスを浴びた途端、悶え苦しみながらぐずぐずに溶けていってしまうではないか。
液化炭酸ガスを過剰に噴射された為、いかなケロニアといえど、その毒性でアッと言う間に枯れてしまったのだ。
「おおっ! 結構やるぞ、あの怪獣!」
「これなら……!」
ゴードの実力に希望を見出し、頷き合う警備隊。
しかし、怪獣を一匹殺されたにも関わらず、ゴース星人は焦りすらせずに冷徹な指示を下す。
『……怪獣共! 赤い方は放っておけ! 一斉にかかって、白い奴から袋叩きにしてやるのだ!』
「なにっ、大セブンを無視するだと!?」
「奴め、自棄になったか」
『ふふふ……貴様の虚仮威しはお見通しだぞ、恒点観測員213号! 戦えるものなら戦ってみるがいい!』
「虚仮威し? どういう事だ……?」
自信満々なゴース星人の意図が分からず、ざわめく警備隊。
しかし、セブン上司は無言で電撃を防ぎ続けるばかりだ。
『貴様ら恒点観測員は一人一人の力が強大であるが故に、自分の身を守る以外での自発的な戦力の行使を禁じられていたハズ! まして現地文明への過度な接触や肩入れは御法度だ! 銀河連邦の正式な監視対象ともなればなおさらな! ……
「そうか、それでダンは我々地球防衛軍に……」
「そこまでして俺達人類を……!」
「ダン……」
告げられた衝撃の事実は、警備隊の仲間達を打ちのめすと同時に、セブン上司の介入を牽制するものだった。
クラッシュホーンが超振動波でゴートの動きを止める中、ネロンガやエレキングも、一旦は雷を放つのを止め、ゴードに攻撃するためのチャージに入っていく。
レッドキングが身の丈ほどもある巨岩を両手で持ち上げ、スカイドンは重量突進の為に助走をはじめるではないか。
如何に獣神であるゴードと言えど、巨大怪獣クラッシュホーンを抑えながら、怪獣四匹の同時攻撃を背後から食らえばひとたまりもない。
絶対絶命のピンチ!
『虚仮威しか。舐められたものだな』
『む……?』
バリアを張る必要がなくなり、完全に蚊帳の外へ置かれたセブン上司が独りごちる。
『確かに、少しは恒点観測局の事を調べてきたらしい。だが……聞きかじりの付け焼き刃で、我々を語るな!』
『なにをっ!』
『教えてやる! ……銀河連邦法第七条並びに、宇宙警備隊規約第49条っ!!』
213号は頭頂部から旧式の実体剣を素早く引き抜くと、手首にスナップをよく効かせ、それを敵に向かって投げ付ける!
局員の護身用装備としてまだ採用直後だった頃の初期型スラッガーの根元には、切れ味の鈍さを補う為、威力を増す狙いで鋭い返しがいくつも付いていた。
ギザギザと鋸の如く尖った切っ先が、深々と眉間に突き刺さり、後ろ足で立ち上がった姿勢のまま、痛みでその動きを縫い止められるネロンガ。
『全て銀河連邦は、主星所属惑星系外へ進出可能な文明レベルを持ち、所属文明の過半数の賛成をもって連邦加盟の意思を認める! ……また!』
走り込みながら額のランプから熱線を速射!
巨岩を投げ付けようと頭上へ振り上げたレッドキングの右手を素早く撃ち抜く。
するとレッドキングは手を滑らせ、大岩を取り落としてしまう。
真っ逆さまに落ちた岩は、案の定というべきか、真下で踏み出していた自分の爪先に直撃!
悶絶し飛び跳ねるレッドキング。
『過半数の賛成を得られない時、連邦はこれを監視対象惑星に制定することが出来る! その場合っ!!』
エレキングが迎撃の為に三日月型の光線を放ってくるも、セブン上司は突進中だったスカイドンの鼻先を踏みつけて大きくジャンプ!
『宇宙警備隊本部は、これに該当する惑星あるいは惑星系に担当警備隊員を任命し、連邦加盟審査対象文明の保護を行うことっ! そして……!』
攻撃を躱すと同時、空中で身をひねりながらエメリウム光線を放つと、寸分違わずエレキングの角に命中する!!
上司は硬直するエレキングの頭上を飛び越えて、そのまま立ち尽くすネロンガへ向けて急降下!
『恒点観測局員規則……第87項ーッ!!』
ネロンガの眉間に突き刺さったままのアイスラッガーを握りしめ、そのまま力任せに振り下ろす!
真っ二つに裂ける怪獣の体!
『宇宙警備隊本部が担当警備隊員を任命した惑星のうち、担当官が不在、あるいは担当官個人の裁量を越える事態である事が周囲に明らかな場合! 周辺宙域に展開中の局員は、独自の判断に従いっ! 宇宙警備隊あるいは現地組織への助力する事を推奨するっ!』
ネロンガを排したセブン上司は間髪を入れず、振り向きざまにアイスラッガーを投擲し、エレキングの四肢を切り落として達磨にしてしまうと、敵を見失い呆然とするレッドキングの左肩に威力を増した反磁力線を照射!
『並びに第87項……補項……その三!!』
セブン上司が力を籠めると、額のビームはその太さを倍に増し、より一層輝いた!
たちまちレッドキングは全身が大炎上!
『当該惑星に棲まう、多数種族の生命が脅かされる可能性があると判断される怪獣災害、あるいはなんらかの危機に際してのみ、恒点観測員は事態解決の為、その武力を行使する事を……』
残ったスカイドンの上顎を右手で持ち上げた上司は、その肘へぴったりと左手の指を添え……
『……許可するッッ!!』
そして発射される極太の太陽光線!!
腹の中にウルトラヴァイザーショットを直接叩き込まれたスカイドンは、風船のように爆発四散!!
瞬く間に三匹の怪獣が死体と化し、四匹目が跡形もなく消え去った爆心地には、赤い戦士が静かに佇んでいた。
「……すごい」
『これが……勇士指令部長の、実力……』
『……
あっという間にほとんどの怪獣をたたき伏せたセブン上司は、その強さを誇るでもなく、むしろ後ろめたさすら感じさせる様子でこちらを見た。
だがしかし!
『……ムッ!?』
妙な気配を感じ再び前を向くセブン上司。
その視線の先では、なんと信じられない事に先ほど倒した三体の怪獣がムクリと起き上がってくるではないか!
『……なぜだっ!? 確かに息の根は止まっていたハズ!』
「……ヒッ!?」
両角と四肢を失ったにも関わらず、尻尾の力だけで体を持ち上げ、コブラのように鎌首をもたげるエレキング
レッドキングは全身の皮膚が赤黒く焼け爛れ、頭部や左腕などは完全に炭化し、悍ましい髑髏の如き様相だった。とても生きているはずがない。
しかし、沸騰した血液でぶくぶくと不自然に膨張した右腕を引き摺りながら、アンバランスな体をゴリラのように揺すっては威嚇の真っ最中。
ネロンガに至っては、ザックリと首まで裂けた頭皮を襟巻きのように垂れ下げながら、剥き出しの頭蓋骨を何度も振り回し、声なき雄叫びをあげている。
まさに真っ赤に咲いた肉の華が独りでに歩き出したようですらあった。
どの怪獣も、とても生命を維持しているとは思えない凄惨な姿のものばかり。
ゾンビの如く蘇った怪獣軍団に、アンヌすらも声を失っている。
「何度倒しても蘇ってくるというのかっ!」
「バカなっ! いくら怪獣でも、死んだらそこでお終いのはずだっ! 奴らには墓場が無いとでも言うんじゃなかろうな!?」
しかし、この地獄の如き光景をこの世に作り出した犯人を、即座に見抜いた者がいたっ!
「なんだと相棒……? どこかに……? わっか? ……あそこかっ! みんな、見ろ! 次元門の向こう側をっ!」
ソガが指差したのはリング型装置の中で割れた空。
赤いモヤの向こう側に、不気味に蠢く影がある!
「あれは……新たな怪獣かっ!?」
「奴は怪獣酋長ジェロニモン! 死んだ怪獣を生き返らせてしまう恐るべき怪獣なのだそうですっ!」
鰐のような顔に見事な白い髭を蓄えているだけでなく、頭頂部には色とりどりの豪奢な羽根飾りが生えており、まさに怪獣達の長として相応しい威厳を放っているではないか。
「生物を蘇らせるだって? 本当にそんな事が可能なのかっ!?」
「それだけではありません! 奴は60匹もの怪獣を一度に使役する事が可能らしい! そんな奴がこちらに出て来て見ろ、今まで倒した怪獣どころか、ノンマルトと共闘している怪獣まで向こうに寝返りかねない!」
「いかんっ! なんとしてでもジェロニモンの侵攻を阻止するんだっ! 総員、次元門へ攻撃!」
ウルトラ警備隊が門の中へと攻撃を加えるのだが、割れた空の向こうにはビームが通らず、あちら側ではジェロニモンがこちらを見下したように嘲笑っている。
「くそっ、なんて狡猾な奴なんだ……!」
「何か飛んでくるぞ……羽だ!! やばい、隠れろ!」
それどころか、無数の風切り羽が警備隊達めがけて飛来する。
ジェロニモンが念力で操っているのだ。
たかが羽飾りと侮るなかれ、怪獣サイズのソレは、人間などたった一枚で何十人と串刺しにしてしまう恐ろしい攻撃なのだから。
ソガ達は岩場に身を隠しながら、飛んでくる羽をレーザーで撃ち落として応戦するも、量が量だけに防戦一方。
『この装置がある限り、貴様らに勝ちはない! 諦めろ!』
『そうはさせんっ!』
ならばとセブン上司がリング装置に組み付いて、その構造体をへし折りにかかるのだが……
『わ、私の腕力にびくともしないだと……ぐわっ!』
セブンの実兄である彼もまた、相当な腕自慢である。
しかし100万馬力のその威力でも、装置の柱は小揺るぎもしないのだ。
装置の硬さに驚いた隙を突かれ、背後から忍びよった再生レッドキングの強烈なパンチで殴り飛ばされてしまうセブン上司。
そのまま蘇ったエレキングに巻き付かれ、激しい放電攻撃に見舞われてしまう。
生前は自身が感電しないように出力は抑えてあったが、今やその肉体は死しており、ジェロニモンのネクロマンシーによって仮の意識を植え付けられているだけだ。
飛び散った火花が燃え上がり、セブン上司諸共自らの肉すらも灼かれていくが、その身を一切省みる事無くリミッター無しの電撃を浴びせ続けるゾンビエレキング。
『ばかめっ、その装置はペダニウム製だ! 簡単に破壊できると思うなっ!』
「なに、ペダニウム!?」
「まさかペダン星人まで協力しているのかっ!」
『この金属が、あの星にしか無いと思うところが、貴様らの浅はかさよな、地球人!』
「アマギ、ライトンR30は!?」
「残念ながら……もう……」
主人の危機にゴードが駆け付けようとするのだが、それを再生ネロンガが阻んで近づく事が出来ないでいる。
腐食ガスを吐きかけて突破を図るゴードだが、ネロンガは首に巻いた皮をマントのように翻し、毒液を防いでしまうではないか。
その勢いで体当たりを敢行し、白い獣神を吹き飛ばす再生ネロンガ。
転がる星獣をクラッシュホーンの放つ超振動波が追いかけ、崖下に追い詰めていく。
気体を自由に操るゴードは、生物に対して無類の強さを発揮するが、ネロンガは既に死んでしまっている為に、真空も毒ガスもまったく意味を成さないのだ。
怪獣ゾンビをもう一度殺すには、物理的な衝撃で肉体を完全に粉砕するしかないが、クラッシュホーンと二体同時に相手しようとするとそれも難しい。
手数を補う為に光の蝶を操り、敵に纏わり付かせて対抗するのだが、一匹ずつの威力は対した事がない。
ゴードが相手をする2匹もまた強力であり、苦戦は必至だろう。
「だめだ、やはりあの装置をなんとかしない限り、無限の怪獣と戦う事になる!」
「その為にもダンをなんとかして救出せねば! 大セブンと二人がかりならば、あるいは……!」
「ですが隊長!」
『ハハハ、無駄な足掻きよ!』
混沌とする戦場。
そして、そこに飛びきりの凶報が舞い込んだ!
全員のビデオシーバーが警報をかき鳴らす。
「キリヤマ隊長、キリヤマ隊長! 応答してください!」
「こちらキリヤマ! どうしたっ、ウエノ隊員!?」
「大変です! 格納庫のマックスジョーが……!」
「なに、マックスジョー……? 今はそれどころではない!」
マックスジョーは以前の戦いで操縦系統が故障してしまい、基地の格納庫で修理中だ。
乗組員は全員、東京湾の救援にハイドランジャーで向かってしまった為、動かせるものもいない。
この戦闘においては全く加味出来ない戦力であるので、隊長の言葉は正しいものだった。
しかし、ウエノは血気迫る様子で食い下がるウエノ。
「違うんです! マックスジョーが……暴走しています!」
「なに、暴走っ!?」
「そうです! 誰も出撃許可を出していないのに、基地の隔壁を強引に突き破り、シークレットハイウェイを匍匐で破壊しながら驀進中!! もうすぐそちらに出現します!」
「なんだとっ! ここに来る!?」
「もう皆さんの真下です! あっ! マックスジョーがジェット噴射! 地下通路から地表に露出します!」
「いかん! みんな伏せろッ!」
下から突き上げるような地響き……そして爆発!
「うわあ゙あ゙あ゙っ!!」
コンクリート壁を力任せに突き破り、砂礫を猛烈に巻き上げながら、月の沈んだ荒野に一番星の如く現れたのは、見上げるような金色の巨神兵!
「ほ、本当だ……本当にマックスジョーが動いてる!」
「そんなばかな! ありえないっ!」
「これもゴース星人の計略かっ! とことんまで俺達を叩きのめさないと気がすまないらしいなっ!」
「待て、クラタッ! マックスジョー応答せよっ! マックスジョー応答せよ! いったい誰が乗っているんだっ!」
ゾンビ怪獣軍団と暴走マックスジョーに挟み撃ちをされては、もはや人類に為す術はない。
皆の表情が凍り付く中、冷静に呼びかけるキリヤマの声に、体から大量の土砂を落としつつ、黄金機神がゆっくりと立ち上がる。
そして、砂塵の中に仁王の如くそそり立つ守護神は、聞き馴染みのある甲高い電子音で、部隊長の通信に応えるのだった。
『ワタシデス。キリヤマ隊長』
長く続いた本作も、残すところあと3話!
本当はこの後の展開も今回に入れ込むつもりだったのですが、間に合いそうになかったので分割しました!
さて、「なんか知らん怪獣出て来た……こわ」と、本物ソガ隊員の如く困惑した読者の方への説明
宇宙獣神ゴード
セブンの未制作シナリオ「宇宙人15+怪獣35」に登場する予定だった怪獣。
押し寄せる怪獣軍団の猛攻で力尽きたセブンの前に現れ、マジンガーZ最終回におけるグレートマジンガーの如き活躍をするはずだった。
当然、シナリオ自体が没になった為にゴードも日の目を見ることは無かったが、後に実相寺監督の一周忌に、セブン後半の怪獣デザインを手がけた池谷仙克氏の手によりデザイン画が描き下ろされ、立体物も作成された。
そんな経緯の怪獣故に、ほとんど設定が無きに等しいため、本作では後のシリーズに登場したある怪獣の亜種あるいは近縁種、または元の姿であると独自解釈して描写してある。
※当作におけるセブン上司の解釈について
これを説明する上で、まず放映当初に公開されていたセブンの家族構成について語らなければならない。
父:宇宙警備隊の勇士司令部前部長(引退)
母:セブンの幼少時死去
兄:宇宙警備隊・勇士司令部現部長
姉:母親代わりにセブンを育てた
非公式ではあるが、一部の児童書等ではこのような内容となっていたらしい。
しかし、1970年代にウルトラ兄弟に関する設定が後付けされた際に、兄の存在が抹消され、勇士司令部長は父であるとされた。
つまりセブンには兄弟がいたはずなのだが、現在では家族構成からその名が消えている。
このことから分かる事実として、彼には勘当された兄がいるという事になる。
そう考えると当然のように、その兄はどこへいったのか? なぜ勘当されてしまったのか? なぜ姿を現さないのか……? という疑問が生まれてしかるべきだ。
そして次に、セブン上司本人について。
彼は本編における出番があまりにも少なく、それ以降もまったく公式から音沙汰がないため、長らく謎に包まれた人物であり、円谷から忘れ去られたとか、果てはダンの見た340号としての自意識や幻覚で、セブン上司は存在しないのではないかという説すら囁かれているキャラクターである。
しかし、そんな彼にも唯一にして最大の特徴が本編内で既に示唆されており、これ以上ないくらいのヒントを公式がわざわざ残してくれているのだ。
そう、それは『セブンと姿が瓜二つである』ということ!
ウルトラ族は、同星人であれば基本的に容姿が同じに見えるM78スペースにおいても珍しく、地球人から見ても分かるくらい、見た目に個人差がハッキリと出る種族であり、たとえ親子であっても似るかどうかはその時次第という生態をしている。
というかぶっちゃけ、全く同じ姿のウルトラマンというのは存在せず、あの肩のポッチがなければマン兄さんと見分けがつかないとか言われるゾフィーですら、よくよく見れば模様が違う。
なのにセブン上司だけは姿がセブンとまったく同じであり(そりゃあセブンのスーツを特に改造したりもせずにそのまま流用して撮影したので当然)ながら、声はまったく別の声である。
340号としての声が、ダン=薩摩次郎の声と違う可能性はあるが、ウルトラアイを念力で時計まで飛ばす事が無意識にできるのか?
あれだけ疲労困憊でそんな器用な真似ができるなら、アイスラッガーも初戦から飛ばせるだろう。
これらの要素から総合的に判断して、ダンと上司は間違いなく別人だ。
しかし、他人の空似でここまでそっくり、しかも職場が同じなのは、偶然がすぎるのでは……
そんなウルトラ族の中でたった一例だけ、姿が同じ者たちがいる。
レオとアストラである。
アストラは胸のマークこそ、自分の名前であるので兄とは別だが、他の部分に関しては兄と同じであり、頭の形状も元はレオと同じであったが、マグマ星人の拷問で切り落されてしまったという説もある。
彼らはL77星人で厳密には違うものの、人種的には同じレッド族である以上は遺伝的に近しいのでは?
つまり双子、あるいは兄弟姉妹ならば、例外的に姿が近しくなる可能性があるという事!
なんと! セブン上司はセブンの血縁である可能性がある!
しかもセブンには勘当された兄がいる!
というかこいつ妙に口調は厳しいが、その実、単なる上司にしてはやたらとセブンの体を気遣っている!?
こんなんもう確定ですよ。
勇士司令部長を務めるエリート一家の長男が、父の後を継いだにも関わらず出奔して別部署にいったらそりゃ勘当されるでしょうよという流れでこうなりました。
本編でセブン上司が警告だけして姿を現さなかったのは、ゾフィーのように命を取りに帰っていたからで、遠くからではテレパシー体を送るのがやっとだったというわけです。
レオにおけるダン隊長が、セブン当時のダンからは想像できない程に厳しい男になっているのは、キリヤマ隊長とクラタ隊長の影響では?
……という解釈もありますが、キリヤマ隊長は普段もっと朗らかですし、スパルタな時はもっと冷酷で、あんな熱血な感じではありません。(張り手一発で「やれ」の一言だけ言い残されるアマギを見ながら)
なのであれは多分、父親や兄の性格がもともとあんな感じだったんだろうと解釈して、セブン上司の性格はこうなりました。
レオの父であり、兄であり、隊長であろうとしたダンにとって、参考になる三人がこれだったので、ああなった……という訳です。
お楽しみいただけましたでしょうか。
貴方は原作『ウルトラセブン』を観たことが
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ある
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ない
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なかったが、本作をきっかけに視聴した。
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他昭和ウルトラシリーズは観ていた
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平成ウルトラシリーズは観ていた
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令和からだゼェェット!
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そんなにシンが好きになったのか(完全新規
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その他(感想欄かDMにでも)