転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
戦場に悍ましい笑い声が響き渡ると同時、上空から青白い光線が突如として降り注ぎ、セブンとその上司が並び立つ地面を跡形もなく吹き飛ばした。
『デェアッ!?』
『ジュオーッ!?』
「うわっ!」
「伏せろー!」
「ああっ! ダーン! 大丈夫かっー!」
爆発の衝撃に、もんどり打って倒れ込むセブン兄弟。
衝撃波から身を守る為、咄嗟に岩場の陰へと飛び込んだ警備隊や巫女達は、恐る恐る顔を出しては彼らの事を心配するのだが、舞い上がった粉塵により向こう側の様子が分からない。
そんな地球人達を嘲笑うかのように、またしても声がする。
『ご心配には及びません。ただの挨拶代わりですよ』
「なんだとっ!?」
見上げれば、先ほどの攻撃と笑い声の主と思しき存在が、いつの間にか立ち篭めていた暗雲の中からゆっくりと現れてくるところではないか。
白む空の中、直立不動で地上を見下ろす姿勢のまま、余裕綽々といった様子でソレが降下してくるのを見た時、迷信深いソガ隊員の脳裏には、あるひとつの予言が浮かんでいた。
――七の月が沈む時、天より恐怖の大王が降りきたる。
マルスの空白を、首尾良く支配する為に――
「おいおい、彦星にしちゃ、やけに季節はずれじゃないか……恨むぜ、ノストラダムス先生」
その場の全員が、瞬きも忘れたように目を見開くなか、ソレは重力をまったく感じさせない静かさで、荒野の中心にふわりと着地する。
まさに異形。その体は肉を削ぎ落としたように痩せ細り、だらりと垂れ下がった枯れ枝の如き四肢の先には、まったく不釣り合いな程に巨大な二振りのハサミが、つるりと冷たい光沢を放っていた。
瞳のない、黄色く無機質な目玉が、忙しなくグリグリと辺りを睥睨しては、闇の中へ妖しく浮かび上がって、蛍のように踊り狂う。
そして、自らを惚けたように見上げる小さき者達が、不様に地べたを這いつくばっているのを見つけると、それがよほど可笑しかったのか、鋭い針で出来た口吻を存分に震わせて、先ほど聞いたあの耳障りな嘲笑を、再び大音量で響かせた。
『ブォッフォァ! ……これはこれはウルトラ警備隊の諸君……泥まみれではありませんか。まったく酷い有様だ……お可哀想に。そんなになるまで戦って、一体どうしようと言うのです? さっさと白旗を挙げて降伏してしまえば宜しかったものを』
「黙れ、バルタン星人! 何を白々しい!」
そう、カレこそはバルタン星人。
防衛軍のデータベースを閲覧した事がある者ならば、誰であろうとも知っている、特級の危険度を持つ恐るべき侵略宇宙人なのである。
その姿は、記録にあるものと比べれば、生身の質感よりもずっと金属光沢の占める割合が多く、装甲にでも身を包んでいるのか、随分とメタリックな印象を受ける。
しかし、まるで人間と昆虫を混ぜ合わせたかのような特徴的シルエットと、一度聞けば嫌でも耳にこびりつく残響音混じりの笑い声がセットであれば、例えキリヤマ隊長でなくとも、相手の正体が一目瞭然であった。
「――そうかっ! 今回の大規模侵略は、全て貴様が裏で糸を引いていやがったんだなっ!?」
『いかにも』
クラタの吐き捨てるような指摘を受け、鷹揚に頷くバルタン星人。
『それだけではありません。シャプレー傭兵が入手した地下基地の図面を
「なにっ!?」
「そんな前から暗躍してやがったとはな……!」
「今までの宇宙人達を隠れ蓑に、自分は陰で一人だけコソコソしてたってわけかっ!?」
「なぜそんなにも迂遠な策を……!」
――迂遠……? 慎重と言って頂きたい。
そう言いつつ、両のハサミを後ろ手に回しては、教卓の上から講義でも始めるような調子で、ゆったりと歩き出すバルタン星人。
『貴方がたは少々……いや、随分と上手くやりすぎましたな。
「貴様にとって……だと? ゴース星人を勝たせたかったのではないのか!?」
『ええ、概ねは。しかし、余力を残しすぎていては、後から掃除するのが面倒でしょう? 互いに互いを削り合い、血反吐に塗れながら最後に仲良く綺麗に共倒れしていただくのが、尤も効率的だと考えました。だからこそ、彼らの侵略計画にほんの僅かばかり
「……という事はまさかっ!? さっきの次元転移装置の設計者というのは……!」
『そう……それも私だ』
まるで、出来の良い生徒の答案用紙に丸をつけるかの如く、穏やかな声のまま異形の星人が笑う。
『念には念をと思いましてな。ここまでやれば流石に彼らが圧倒するのではないか……と踏んでいたのですが……いやはや、驚きました。辛勝どころか、誰一人欠ける事無く生き残るとは……やはりアナタ方はお強いようだ。……素直に賞賛を贈らせていただきましょう。こうまで思惑を外されるとはね!』
拍手でもしているつもりなのか、ガチガチとハサミを打ち鳴らして頷く宇宙人。
確かに本心から驚嘆してはいるらしいが、その所作には明らかな余裕が滲む。
現に怒り心頭の隊員達が、いつでも攻撃出来るように、各々の武器を構えて突きつけているにも関わらず、それを一顧だにしていない。
『まあ、彼らも最低限の仕事はしてくれたようですから、それで良しといたしましょう。ウルトラ警備隊は超兵器を使い果たし、ウルトラセブンのエネルギーは枯渇。……残念ながら、いくらアナタ方が精強であろうとも、攻撃力は武器に依存しなくてはならない以上、もはや脅威たり得ません。あとは……』
その時! 背後で立ち上る土煙の中で何かがキラリと煌めいたかと思うと、一直線に星人の後頭部目掛けて眩い輝きが突き進む!
『無粋な』
完全に不意をついて放たれたはずのエメリウム光線はしかし、バルタン星人に当たる直前、突如として展開された多角形の光波バリアに阻まれ、あえなく霧散してしまう。
『ダァーッ!』
しかしその程度で諦める彼らではない。
砂のカーテンを切り裂き、拳を振り上げた真っ赤な戦士が勢いよく飛び出した!
セブン上司だ!
『そうくると……』
迫り来るセブン上司へハサミを向けたバルタン星人……その背後から!
『デュアーッ!』
もう一つの赤い影!
鏡写しの兄弟が、一糸乱れぬコンビネーションで挟み撃ちを仕掛けたのである!
だが!
『……思っていました!』
『デュ!?』
『ジュワ!?』
腕をクロスさせたバルタン星人が、両方向へ向けて赤い光線を発射すると、まるで時が止まったように制止してしまうウルトラ兄弟。
バルタン星人お得意の、赤色凍結光線だ!
『アナタ方の考える事など、お見通しですよ……フォフォフォ……』
ハサミを高々と掲げて嗤うバルタン星人……
すると、どこからか白い煙がどんどんと濃さを増し、星人の姿を覆い隠してゆく……
『む? これは……』
みるみる内にハサミが腐食し、スラリと細長い足も忽ち溶け落ちて、ぐずぐずとその場に崩れていく侵略者。
『ゴォー!』
土煙に紛れて、ゴードが腐食ガスの霧を密かに吹き付けていたのだ!
「よっしゃあ! ざまあみやがれ!」
「いや、待て……様子がおかしい……!」
「え? 何だって……? おい、ゴード! そいつは囮らしいぞ! 気をつけろー!!」
ソガに警告されたゴードが、背後で音も無く現れた宇宙人に気付いた時には遅かった。
『……残像です』
『ゴッ!?』
「……ああっ!?」
『残念でしたねぇ!』
『ドゴォォ……』
至近距離から腹部を強かに蹴りつけられ、態勢を崩す宇宙神獣。
ゴードによって溶かされたのは、単なる抜け殻のダミーであり、本体は敵の死角に瞬間移動していたのだ!
「あっ!? 見て、ゴードのお腹が……!」
痛みに呻く怪獣の腹部には、ジュウジュウと焼け爛れた足型がくっきりと残っている。腐食液付きの猛毒キックで意趣返しのつもりなのか。
動きの鈍ったところへ白色破壊光弾の乱れ撃ち!
一撃でビルを粉砕する威力の光線が、大きく開いた両のハサミから次々と飛び出し、手負いの怪獣に無慈悲な追撃を加えていく。
『ゴォ……オ……』
あっという間に力尽きたゴードは、白い光となってセブン上司の元へ帰っていく。
カプセルの緊急救命機構が働いたのだ。
『まずはひとつ。いかにイレギュラーといえど、キミ達の戦いぶりはじっくりと観察させていただきました。クラッシュホーンが良い試金石となりましたね』
「あんなに強力な怪獣を、いとも容易く……!」
「けっ! ガッツの二番煎じじゃないか! いい気になるなよ、猿真似野郎!」
『おやおや、これは手厳しい。しかし、ガッツ星人の猿真似とは……貴方にだけは言われたくありませんよ、ソガ隊員? 傾向分析と徹底的な対策……今まで貴方が散々やってきた事ではありませんか。自分を棚上げするのはいただけませんな。威勢が良いのは相変わらずで安心いたしましたが……』
「えっ? どうして僕の名前をっ……!」
相手のペースに呑まれてしまわないよう、皆を鼓舞する意味も兼ねて啖呵をきったソガ隊員であったが、いきなり名指しされた事で面食らい、素っ頓狂な声を上げてしまう。
『もちろん存じておりますとも……時に、イチノミヤ君は元気にしておりますか? てっきり、アナタ方のお仲間になっているものだとばかり思っていたのですが……姿が見えませんねぇ。まあ、私としましては、あの男がこの場にいないのであれば、ますます都合が良いのですが』
「イチノミヤ……だと……!?」
なんの脈絡も無く、星人が告げてきた友の名を聞き、ソガの記憶野が激しく刺激された。
そしてようやく、彼は眼前の存在から感じる既視感のようなものの正体に思い至ったのである。
一見丁寧で紳士的な物腰の裏に隠された、粘つくような悪意と傲慢。
まるで全てを見透かしたかのような高みから、こちらを見下して愉悦に浸る、慇懃無礼を絵に描いたような口調。
オレは、コイツを知っている……!
「まさか……お前……ニワ教授っ!?」
「なにっ!」
「ニワ教授ですって!?」
驚愕に顔を歪ませたソガの呟きに、仲間達が信じられないと言った表情で振り返る。
『ブォッフォァ!! ……ニワ教授、ですか。いやはやなんとも久しい響きですねぇ……確かに、かつてはそのように名乗っていた事もありました。しかし……それは、もはや遠い追憶の彼方だ』
「ニワ教授と言うと……スパイ衛星の一件の!?」
「そんな馬鹿な! 奴は死んだんじゃなかったのか?」
「というよりも……お前! プロテ星人だっただろう! それがどうしてそんな姿になってやがる!」
『ええ、ええ……それこそ私が一番驚きましたとも。あの男の妨害で、使用中の電送機を誤作動させられてしまった私は……無数の昆虫と混じりあった不完全な遺伝子情報のまま、宇宙の彼方へ弾き飛ばされてしまい……その拍子に、何の因果か時間断層に巻き込まれましてね。目が覚めた時には、私の肉体は大きく変貌しており、周囲には大量の複製体。それがなんと、太古のチルソニア遊星だったのです』
「チルソニア遊星だと?」
「確かイチノミヤの電送機にも使われていた、チルソナイトの原産地と言われる惑星です……しかし、あの星はセミ人間が支配していた筈ですが……まさか!」
『そうとも。彼らの始祖こそが、この私……! 実に大変でしたよ。始めの数千年などは、自分がいったい何者かすら分からぬままに、劣化コピー共を指揮しては、ただただ躍起になって文明を興す羽目になったのですからねぇ……』
「……なるほど、バルタン星人というのはつまり……!」
『ご明察! セミ人間を基に、労働力として私が新たに改造して生み出した種族です。彼らを率いてチルソニア遊星を脱した私は、この地球と良く似た星を見つけ、そこで自らをも改造し、複製し、さらに研究を重ねました……来るべき、今日という日の為にねぇ! もはや私は、プロテスのスパイでも、大学教授のニワでもない! 肉体を機械に置き換えて強化した、言わばメカバルタン……そう、「メバ教授」とでもしておきましょうか!!』
ハサミを振り上げ、高らかにそう宣言するメバ教授。
その横で、今まで走りだしたポーズのまま固まっていたセブン上司の体が発光しはじめる。
『デェアー!!』
『ほう、自力で時間凍結を解除しましたか。流石は光の一族だ。やはり一筋縄では行かないと見える』
『デュッ!』
体をスパークさせて、時空の戒めを強引に打ち破ったセブン上司は、すぐさま弟の方にも二本指を突き出して、ウルトラ念力を放出!
跳び蹴りの態勢のまま、空中に制止していたセブンの体がぐるぐると回転し、それが最高潮となった瞬間、閃光と共に地面へ投げ出されて転がる赤い戦士。
かなり強引にではあるが、身動きの出来ない状態を脱する事が出来た光の巨人達。
しかしその代償は決して軽くはなく、消耗著しいセブンは言わずもがな、その上司である213号もまた、地面に膝をつき、大きく肩で息をしている。
『ハァ……ハァ……思い出したぞ……確か、バルタン星の滅んだ原因は、ある一人の狂った科学者の実験によるものであると、あの男の調書には記されていた。……この狂った科学者と言うのが……貴様の事なのだな、メバ教授!!』
『ええ、その通り。今まで本拠地に使っていた星は、確かに私がこの手で消滅させました。しかし……狂った、は余計ですな。私は至って正常ですとも。はじめから、研究が完成すれば、そうするつもりだったのですからね。その為に選んだ星と言っても過言ではない。でなければ、あのような次元装置を作りあげる事など出来ましょうや?』
『なに!』
『アナタ方もご覧になったでしょう? あの装置は、ワタクシから見ても中々の自信作でしてな! いやはや、まったくの無から空間の裂け目を造り出すには、なかなか苦労いたしましたよ。構造体に必要なペダニウムが集まらず、その探査、回収用の種族を新たにデザインし直す羽目になったり……とはいえ、たかが惑星ひとつ分のウルトニウムと引き換えで、別次元へのゲートを自由に拓けるわけですから、これでも充分にお釣りが来ると言えましょう! まあ、さしもの私といえど、燃費の問題は如何ともし難くてねぇ。あくまで及第点といったところですかな』
「なんだって! ……まさか、バルタン星を丸ごと燃料に使ったのかっ!?」
『いったい、なんということを……っ!?』
「貴方の身勝手に巻き込まれた人達が、可哀想だとは思わないの!?」
『可哀想……? そのように非難される謂れはありません。元より彼らは、私が目的の為に造り出した存在です。その所有権は常に私へと帰結するのであって、自らの創造物をどう扱おうがコチラの自由でしょうに』
「そんな勝手が許されるものか!」
『たった一人の思惑で、星の命運を好きに弄ぶなど……言語道断! 宇宙の掟に反する行いだっ!』
「いったい何故そうまでして地球に拘る? その口ぶりでは、同胞を殺された恨みという訳ではないのだろう!」
「やはり……復讐か! 俺たち人類やイチノミヤに対しての!」
『復讐だなんてとんでもない。その逆ですよ、ソガ隊員。 それどころか、貴方に一言感謝を述べたいと思って、こうして遥々やって来たのです』
「感謝だとぉ? お前がか!?」
『ええそうです。なにせ貴方方のおかげで、私はこの宇宙の真理を理解し、こうして一段上の存在として生まれ変わるきっかけを得たのですから! どれだけ感謝してもし足りないくらいですとも! ……
言葉通りに脚を折り、ハサミを胸に当て、深々と礼をするメバ教授。
その声音は、単に地球人達を存分に挑発して面白がっているようにも、狂気に擦り切れた理性の中、最後まで保ち続けた誠意の真なる発露のようにも聞こえた。
ただひとつだけ確かな事は、かつて全身余す所無く嘘に塗れていた
「それならばどうして! ゴース星人に加担するような真似を……」
『それが、我が宿願……何億何千という永きに渡る計画の、最終段階に必要な事だから……ですよ』
「……なに、計画?」
教授の漏らした呟きに、素早く反応したのはセブン上司だった。
『宿願という事は……やはりプロト星の解放か! 貴様達が母星として主張するあの星は、ナックル星の数ある試験場のひとつに過ぎない! 戦乱に乗じて人工生命がいくら独立を叫んでも、それが正式な手続きを経たものでなければ、意味は無いのだ! 銀河連邦は、暴力と謀りごとに塗れた反乱を、簡単に認めるわけにはいかない!』
『フォーッ! フォッフォ……! 何か勘違いをなさっているようですねぇ……? 先ほど申し上げました通り、私は新たな、そして唯一の存在として生まれ変わったのですよ。もはやプロテスの者達を同胞と呼ぶ気もなければ、彼らがどうなろうと知った事ではない。私に母星などありません。言うなれば、私自身が! 私にとっての故郷であり、同胞であり……全てだ! 私は、私以外のいかなる者も必要としません。完全に自立した、究極の生命なのです』
『そんな貴様が……地球を手に入れて、いったい何を企もうというのだ!』
『アナタが知る必要は……ない!!』
ハサミから青白い光が無数に飛び出し、蹲るセブン上司に殺到した。
だが、消耗したとは言え彼もまた有数のエリート戦士。
すぐさま全身のバネを使ってその場から飛び上がると、バク転を繰り返しながら華麗に攻撃を躱していく213号。
それどころか猛攻を凌ぎきった直後から、間髪入れずにエメリウム光線を放ち、攻撃終了の僅かな隙を狙う強かさを見せた。
しかし、そんなカウンターの一撃すらも、再び展開されたバリアによって防がれてしまう。
『もう忘れたのですか? ガッツ星人をけしかけたのがいったい誰なのかを! 彼らやサロメ星人が暴いたセブンの情報は、もちろん全てインプット済み! 彼の血縁者だと言うのであれば、先ほどの戦闘記録から計測した修正値を反映してしまえば良いだけのこと。もはや、どの光線でもこのバリアを突破する事は不可能です!』
片目に装着されたモノクルの如きデバイスを、ハサミの先で器用につつきながら、得意げに笑うメバ教授。
その口上の中に、僅かなヒントが含まれてると気付いたセブンは、ハッと顔をあげて自らの頭頂部に手を伸ばした。
『ガッツ星人……? そうか! 兄さん! アイスラッガーをっ!』
『デュ!』
正眼に構えたアイスラッガーを、念力で空中に固定したままこちらに叫ぶセブンの姿を見て、上司もまた片膝をついて同じく準備動作をとる。
『ダァーッ!!』
『ジュワッー!』
両手を後ろへ大きく振りかぶり、指先に集めたエネルギーを、今度は力いっぱいアイスラッガーに向けて振り下ろす二人!
甲高い音と共に、猛スピードで打ち出された実体剣が、暁に光の帯を引きながら、敵に向かって一直線に飛んでいく!
あのガッツ星人のバリアすらも粉砕した、物理と光波の合わせ技!
これぞウルトラWノック戦法だっ!
二枚のアイスラッガーが激突したバリアは、たちまちヒビが入り、パリーンとけたたましく割れ砕ける。
光波バリア敗れたりっ!
『……待っていましたよ』
しかし! そのまま内部の教授をなます切りにするかと思われたアイスラッガーは、たちまち急角度で軌道を変えると、微動だにしないメバ教授の脇をすり抜け、一度上空へ舞い上がったかと思えば……
持ち主の方へ切っ先を向けたまま猛スピードで急降下してくるではないか!
『ジュオッ!?』
『デアァッ!?』
咄嗟に身を躱す戦士達。
それでも二人の実体剣はブーメランのように弧を描いては、何度も何度も主人の首をかっ切ろうと襲いかかる。
「これはいったい、どうしたことかっ!?」
『フォフォ……言ったはずです。アナタ達のデータは全て把握していると! その武器を操る脳波パターンも、既に解析済み! ならば、それを増幅してコントロールを奪うなど造作もありません』
「アイスラッガーを奪われたのかっ!」
「ま、マズいぞっ!」
『ジュアッー!?』
迫る白刃を躱す事に精一杯なセブン。
だがついに、疲労の蓄積していた彼はたたらを踏み、その場で態勢を崩してしまった!
「きゃあっ! ダン!」
断頭の刃がぎらりと光る!
「させるかっ!」
そこへ、ソガの放ったマルス177の光線が、見事にアイスラッガーの芯を捉え、空中で激しく鍔迫り合った!
「いいぞソガッ! そのままっ!」
ヒロタのエレクトロガンが立て続けに光弾を打ちだして、縫い止められていたアイスラッガーをついに弾き飛ばす事に成功する!
脳波コントロールを外れ、地面に転がる実体剣を、素早く拾い上げては頭頂部へ納刀したセブン。
『ほう、なかなかやりますな。しかし、よもやキミの脳波が、地球人の攻撃威力にすら押し負ける程に弱まっていたとは思いませんでしたよ、セブン。なんとも哀れですねぇ……』
「よしっ! ビッグセブンの方も俺たちで助けるぞ!」
クラタ達が同じようにウルトラガンでセブン上司のアイスラッガーを止めようとするのだが、こちらはセブンのそれよりも遥かに鋭く機敏に動き、なかなか攻撃を当てる事が出来ないばかりか、例え当てたとしても平気で弾き返してしまう。
上司の念力はあまり減衰しておらず、メバ教授の増幅したコントロールを上回る事が出来ないのだ。
『私の事は構わん! 自分の面倒は自分で見る! 敵に集中しろ! なんとしても奴の野望を阻止するんだ!』
「阻止だっつってもよぅ!」
フルハシが眉を下げてダンの方を見やる。
兄弟二人がかりでも相手にならなかったのに、満身創痍の彼一人では、とても敵わない。
代わりに戦ってやりたいが、自分達の攻撃がバリアを破れるはずもなし。
まさに八方塞がりだ。
『フォフォフォ……いい加減諦めてはどうです? もうお分かりになったでしょう? アナタ方ではどう足掻いたって私には勝てません。大人しく降伏なさい。なぁに、そうすれば命までは取らないと約束いたしましょう。私の目的に、貴方方の生死などは入ってはいませんから。ただ、私がアナタ方を打ち倒したという事実さえあれば、それでよろしい』
『ハァ……ハァ……そうして地球を手に入れて……いったい何をするつもりだ?』
荒い息で問いかけるセブン。
それに対し教授は。
『さあ?』
「なんだと!?」
たった一言、肩を竦めるのみ。
これには皆一様に驚愕するしかない。
「そんな筈はない! ここまで念入りに下準備をして……地球が欲しいのではないのか?」
『ええ、特には。……いや、訂正いたしましょう。地球はもちろん欲しいですとも。しかし、一度所有さえしてしまえば、それで目的は達成なのです。後の事などどうでも宜しい』
「いったいどういう事なのだ? 奴は何がしたいんだ……!」
これまで、ウルトラ警備隊に挑戦してきた侵略者達は皆それぞれに目的があった。
もちろん、中には純粋に地球を破壊しようとしたり、セブンの処刑で名声を得ようとする輩もいただろう。
しかし彼は、そのどれとも違い、地球を支配する訳でもなければ、破壊したいわけでも、ましてやセブンや警備隊を殺す事に拘ってすらいないらしい。
メバ教授の言動が理解出来ず、訝しげに眉間の皺を深くするキリヤマ隊長。
『ただ……』
ポツリと、思案の末に教授が漏らす。
さも、これはいいことを思いついたとでも言わんばかりの、明るい調子で。
『いらないからと言って、放置しておくのも、それはそれで忍びない。せっかくですから、使える部分は計画の為に使ってしまいましょうか』
『使える部分……だと?』
『ええ。例えばそう……ウルトニウムだとか』
「なにっ!」
「まさか……地球も次元門の燃料にくべてしまおうと言うつもりなのか……!」
「そんなっ! あの装置はさっきユートが破壊したわっ! い、命と引き換えにしてまでっ!」
メバ教授の言わんとする事を即座に察したアマギが、顔面蒼白で絶叫する。
それを聞いたアンヌは、悪魔の如き発想を述べた宇宙人をキッと睨み据えて、その計画の破綻を指摘してやった。
だが……
『おやおや。それは違いますよ、お嬢さん。あんなモノは、理論が正しい事を確かめる為の試作品に過ぎません。一度、別の次元に接続出来る事が分かれば、私にとってはもはや用無しなのですよ。だからこそ、彼らにああも気前良くタダ同然でくれてやったのではありませんか。設計図は私の頭の中にある……いくら壊されようが、何度でも作り直す事が出来ますし……もう、その必要すら、ないのです』
「なんだって? 必要がないとは……どういう事だ?」
ソガ隊員は、腹の底からなんとも嫌な予感が湧き上がるのをどうにか抑えこみ、努めて冷静に聞きかえそうとした。
しかし、彼の額から滴り落ちる脂汗までは、とうてい隠し通せるものではなかった。
それを見たメバ教授が、高らかに笑う。
『なにせ……既に改良は終わっているのですよ! 私があのように半端な代物を作って満足するとでも? 掌に乗るほどまで小型化して、とうにこのボディへ組み込んであります! 言わば……私自身が異次元へのパスポートだっ! フォ……フォフォ……ブォーッフォッフォッフォッア……!』
「そんな……!」
膝をつき、その場へ崩れ落ちるソガとアマギ。
アマギはそれが意味するところを否が応でも理解してしまったが故に。
そしてソガは、自分達の足掻きが……いかに大それた計画を呼び込んでしまったかを痛感してしまったからだ。
アンヌは、ユートの死が全くの無駄死にであった事を突きつけられ、口を抑えてはらはらと悔し涙を流すしかなく。
自らの信じる後輩達が、ここまで打ちひしがれているのを初めて見るフルハシは、事態が如何に取り返しの付かない段階なのかを、じわじわと分かり始めていた。
あのソガから、不敵な笑みが消え失せてしまった事で、ヒロタは一度大きく目を見開いたが、不様な好敵手の姿を直視出来ず、悔しげに顔を逸らす。
ノンマルトの巫女達が、おろおろと力無くアンヌやソガに寄り添うものの、一向に立ち上がる気配が無いのを見て、キリヤマは部下達の闘志が完全に折れてしまった事を察するしかない。
どうにかして、彼らの心を奮い立たせなくてはならないのだが、何一つとしてかけるべき言葉が浮かんでこないのである。
彼の戦術眼を持ってしても、逆転に足る要素がどこにも見当たらないのだから。
そして、そんな周囲に対して舌打ちを漏らすクラタ。
もはや敵に対して有効な反撃が出来ない事は、彼としても重々承知の上で、このまま大人しく侵略者に屈服するくらいなら死んだ方がマシだ。
こうなったら玉砕だろうがなんだろうが、最後まで醜く足掻いて死んでやる。
そのためには彼らが邪魔でしょうが無い。
軟弱で辛気臭い奴らを叱咤しようと、口を開きかけた……その時。
『そんな……ことは……させないっ!!』
「……ダン……」
傷付いた体で、フラフラと立ち上がったセブンが、震える両手を握り拳の形にすると、狂ったように嗤い続ける敵に対してそれを突き出し……あのいつもの構えをとったのだ。
しかし、その両腕はもはや重力に逆らう事すら困難な程に力がなく、今にもだらりと垂れ下がる寸前のように見える。
「もういい……もういいんだ。ダン、立たなくていい!! これ以上は……!」
『させない、ですと? その有様で?』
心底愉快そうに、半笑いのまま聞き返すメバ教授。
そこに驚きは一欠片たりとも無い。
いかに降伏を促そうとも、彼ならばそうするだろうという確信があるからだ。
『これだけ痛めつけても、まだ立ち上がるその強靱さには脱帽いたしましょう……しかし、実に惜しい。それだけの力があれば、より大きな事を成せたはず……こんな弱小種族の為にその命を擲つなど……愚かにも程がある』
教授の野望を成就させる為に、セブンを殺す必要が無い事も事実だが、殺さない限り延々と立ち塞がり続けるだろうという予測も、また容易であった。
だから挑発し、最後の力を振り絞らせ……その上で完膚無きまでに叩き伏せる。
ここまでの全てが、教授の筋書き通りなのだ。
……それでも。
『地球には……僕たちウルトラ警備隊がいるっ!!』
「……ッ!?」
ダンの声を聞いた瞬間、驚きに目を見開くソガ隊員。
その右手が、本人の意志とは一切関係なく動き、まるで
「……そうか。そうだよな、相棒」
ソガ隊員は、己の心臓の上で、ずっと力を籠め続ける右手の甲に、そっと左の掌を重ねて静かに頷く。
彼が再び顔を上げた時、敵を見据えるその瞳に蘇っていたのは、きらりと輝く決意のひかりと覚悟の色!
「俺達がやらなきゃ……誰がやるってんだ!」
「あッ! ソガッ! 待て……!」
傍らに落ちていたマルスを左手で拾い上げ、ライフル弾のように走りだす!
「ソガ隊員……!」
「そうだっ! ダンがまだ諦めてねぇのに、俺たちが諦めちまってどうすんだ!」
「何か思いついたんだな! ソガ隊員! 信じるぞ!」
「……よしっ!」
ブルーグレーの弾丸が、一直線に敵へ向かって行くのを見て、仲間たちが立ち上がる!
部下達の顔に生気が宿った事を見てとったキリヤマ隊長は、ビデオシーバーに声を張り上げた!
『ダン! 聞こえるか、ダン! ……いいか、よく聞け! これより……
『デュワ……!? 了解っ!!』
キリヤマの声に、セブンが仲間の方を振り返る。
クラタやヒロタを含めたその中に、あの頼もしき親友の姿がない事を素早く見てとった
『フォッフォッ……聞きましたか? この期に及んで、地球人はまだキミに頼るつもりのようですよ、セブン。まあ、そうするより他に手は無いのですから仕方の無い事ではありますが……さすがに同情を禁じ得ませんね。まだ立ち向かう意志があるだけ立派なものと言えましょうなぁ』
『彼らを馬鹿にするのは……そこまでにして貰うぞ! メバ教授! この星は、僕の友達が命を懸けて守った星だっ! だからこそ、お前なんかにくれてやるわけにはいかない。ただそれだけの事!』
『ほう……負けると分かって、なお戦うと。フォフォ……それもよろしかろう』
『いいや……勝つのは僕らの方だ!』
セブンの放ったウェッジ光線を、もはやバリアを展開する必要すらないと言わんばかりに、白色光弾で撃ち落とす教授。
『キミたちが勝つ? 面白い冗談ですね』
『ならば教えてやろう……教授! 僕らの勝機がなんなのか! お前が知り得ない力の事を!』
『あくまでも、私が何か見落としていると言いたいわけですか……ふむ、興味深い。是非とも拝聴させていただきましょう?』
まっすぐと指を突きつけ、そう力強く豪語するセブンに対し、好奇心を刺激されたのか、余裕を見せつけるように腕を組んで、聞く姿勢をとるメバ教授。
『お前が決して認めず……僕らだけが持つ力! それは……愛だ!』
『は?』
先程までの楽しげな態度はどこへやら。
明らかに鼻白んだ声が、教授の細長い口吻から漏れた。
『……まったくもって拍子抜けも良いところです。言うに事欠いて……なんと陳腐な。愛などというものは所詮、己のエゴと理想を一方的に押しつけるだけの行為にすぎません。剥き出しの欲求を制御することも出来ず、かといって開き直る事すらも出来ない愚か者が苦し紛れに編み出す、言い訳じみた、おためごかしの言葉だ。あまりにも、ナンセンス極まりない!』
『ふ……』
呆れと嘲りの混ざった正論で、教授はセブンの強がりを真っ向から否定した。
そんなものは、戦いの場においては何の役にも立たないのだと。
思想だけでは戦力差を引っくり返す事など出来はしないのだと。
むしろ、思い違いをここまで丁寧に諭してやるのは、教授なりのある種の優しさであるとすら言えよう。
それに対するセブンは――
『ハーッハッハッハッハッハ!!』
まさに大笑。
清々しい春の日差しのように爽やかな声であった。
これまで散々っぱら嘲笑されてきた意趣返しとでも言わんばかりに、教授をすっかりほっぽり出して、心の赴くままに、笑い続けている。
今の彼にとっては、立っている事すら苦痛であろうに、背筋をしゃんと伸ばし、腰に手を当て、どこまでも聞こえるくらいに声を張り上げ、その傲慢を笑い飛ばしてやったのだ。
硬質な銀の面は、一切の疑問を差し挟む余地もない程、破顔していた。
そして、その対面にあるもうひとつの顔も、今ではさっぱり表情の分からない昆虫じみたモノへと変じてしまっていたが、誰がどう見ても、気分を害しているのは明らかであった。
『……なにがそんなに可笑しいのです? それとも、ついに狂ったか』
『ふはは……お前の愛に対する認識が、その程度でしか無い事が、僕たちに勝てないなによりの証拠なのだ、教授。お前程の科学者が、愛の持つ真の力に気付いてさえいれば、今頃はもっと血眼になってそれを研究していたに違いないんだからな!』
『真の力……ですと?』
『そうだ! 僕は決して、今のをロマンチックな感傷や、単なる根性論で口にしたのではない! ……そもそも、僕たちのデータを調べ上げたと言うならば、そのとき不思議に思わなかったのか? 僕たちの正体は光だ。それがなぜ、こうして大地の上で、貴様の前に立ちはだかる事が出来る?』
今のこの状況こそが、物理法則に反した奇跡であると嘯くセブン。
だが、そのようなその場しのぎのハッタリを、真に受けて狼狽えるような教授ではない。
『確かに光は質量を持たない。そんなキミ達が、肉体を操る事自体が既に理不尽だと言いたいわけですね……? ですがそれは非常に簡単な事です。常に周囲の相対座標から仮初めの距離と速度を算出し、まるで他の一般的な粒子と同じであるかのように振る舞っているに過ぎない。その理論は、この星の遅れた科学においてすら、ヒッグス場という名で知られています。その為の擬似的な零点こそが、キミの母星、M78星雲にあるプラズマスパークなのでしょう? だからこそ、キミ達は永久にあの場から離れたままではいられない……鎖に繋がれた哀れな象だ』
セブンの発した問いに、即座に答えを返して得意げにハサミを開閉させる教授。
だが、赤い戦士はそれ以上の自信を持って、その論説を覆す!
『ははは! 光の国が鎖だって? お前はこの宇宙で一度も地図を書いた事が無いから、そんな馬鹿げた話が言えるんだ! 常に膨張し、無限に拡大を続けるこの宇宙で、銀河を跨いだ相対座標になんか何の意味がある? 土台そんな事は不可能だ! だからこそ、僕たち恒点観測員がいるんじゃないか。そんな……深くて暗いこの海原で、いつまでも燦然と輝き続ける永遠の灯台! 例え物理的な距離が離れても、それを一瞬で飛び越えて、変わること無く常に信ずる事のできる唯一の道しるべ! ……それが……大切な誰かとの絆! 人の持つ意志力! すなわち……愛だっ!!』
『なにっ!?』
『ただの風来坊だった僕に、彼らが与えてくれたこの名前! この居場所こそが! 僕を僕たらしめる! 無限に広がる闇の中でも、彼らがいるからこそ、いつも自分を見失わずにいられるんだ! 僕に対する認識、言葉、信じる心! その全てが……より強烈に、鮮明に! 宇宙という白地図の上で、僕という存在の輪郭を明るく照らし上げる! 彼らこそが……僕の羅針盤!』
高らかに叫ぶセブンの体が、足先から陽炎のように揺らめいていく。
彼のエネルギーが尽き果て、その肉体をもはや維持出来なくなりつつあるのだ。
『お前は、この銀河に流れる愛の唄を聞いた事があるか!? その暖かさを知らぬ者が、この力の恩恵に預かる事は決して出来ない! それこそが……僕らの勝機! 彼らの仲間であるという誇りこそが、決して揺らぐ事の無い絶対の原点だ! 僕がウルトラセブンである限り! それをしるべに何処までだって飛んでゆく事が出来る! その強さは、彼が身をもって証明してくれた……愛は……種族や信念、言語の違い……いや、究極的には生命としての枠すらも! 超克する事が出来るのだと! 愛こそが、あらゆる困難を乗り越える無限のパワーだと!! 仲間も、故郷も、自分以外の全てを必要ないと切り捨てた貴様には……それが無い!! そんな奴に……僕たちウルトラ警備隊が、負けるものかっ!!!』
「……ダン!」
言葉の力強さと裏腹に、セブンの体は半透明に透けていく。
それに反比例するかのように、額のランプが煌々と光を放ち始めるではないか。
胸を張り、肘を直角に曲げ、ぐっと握りしめた両手を頭の横で掲げると、雄々しく勝利のポーズをとってみせるセブン。
散り散りになって、あらゆる方向から敵を包囲し、攻撃を仕掛けていた仲間達が、一斉にその輝きへと振り向いた。
「ダン!」
「死ぬなーっ! ダーン!」
「ダァァーン!!」
『……フォ、どれだけ虚勢を張ろうとも、エネルギーは限界のようですね。……負け惜しみを』
『さっき……僕たちの強さがあれば、大きな事が成せると言ったな……? それは逆だ。僕たちは愛に依って立つからこそ、どこまでも強くある事が出来るんだ! 誰かを大切に思う心こそが、僕らを星に引き留める強い力なんだ!! 僕たちは光であるが故に! 愛の限り戦い続ける! 僕らがこの世を去る時は、この宇宙から愛の灯火がひとつ残らず消え失せた時! 僕らが戦いをやめるのは、この宇宙が愛と平和で満たされた時! 誰かが僕を呼ぶ限り……何度でも、蘇ってみせる!!』
その瞬間!
セブンの背にした富士山の頂きから、眩いばかりの輝きが降り注いだ!
差し込んだ光の帯が、戦場に彼の姿を照らし上げる!
――夜明けだ!
『ばかなっ!?』
長い夜の帳を切り裂いて、熱く燃ゆる赤き太陽が、ついに山脈の上へと顔を出したのである!
朝日の中で、ぐぐっと胸を張り、その暖かな抱擁を力いっぱい受け止めるセブン。
後光を背負って立つ赤き戦士の肉体が、目も眩む程に強く輝いたかと思うと、炎のように揺らめくエネルギーの衣を纏いはじめるではないか。
『ダァーッ!!』
そうして全身を燃え上がらせたセブンは、頭上に掲げた両腕を角のように振りかざし、愕然と惚けたままのメバ教授に向かって、猛然と駆け出した!
『ええい! 自爆するつもりか!』
教授はウルトラセブンのエネルギー残量が、どう計算しても夜明けまで保つことはないと見積もっていた為に、その思惑が外れてしまった事で珍しく動揺した。
彼の消耗具合を見誤っていたのか?
そんな筈はない。
いったい何が計画を狂わせた?
まさかこれが――
『有り得ません!』
ハッと我に返り、瞬間移動と同時に大量の分身を生み出して、セブンの目を眩ませようとする教授。
本物と見分けの付かない残影が、突進する戦士の行く手を阻み、倒すべき敵の姿を壁のように覆い隠す。
「総員! 攻撃開始! 手当たり次第だっ!」
号令と共に、地上から幾筋もの光条が伸びて、次々と影で出来た偽物を掻き消していく。
警備隊の攻撃は、本物には傷一つつける事が叶わなかったが、脆弱な目眩ましを霧散させるには充分であった。
「モロボシ・ダンのお通りだーっ! 道を開けやがれー!」
フルハシがスパイダーでセブンの前方を薙ぎ払うと、火炎放射線によるカーテンの向こうに、火の粉を弾き返す星人の姿が見える!
『小癪な!』
ハサミから白色光弾や、赤色凍結光線を次々と撃ちかけて迎撃しようとするメバ教授だが、どの攻撃も、セブンが纏う太陽風とも言うべきプラズマエネルギーの膜に阻まれて、全く効果を及ぼさない。
明けの明星が空へ昇る事を、誰ひとりとして止める事が出来ないように、今のセブンは、暁に煌めく制止不能の真っ赤な流星!
『デュワーッ!』
『くっ!』
慌ててバリアを展開し、火の玉となった戦士の突撃を受け止める教授。
この攻撃の正体が、セブン自らの存在そのものをエネルギーに変換し、純粋なる太陽光線の威力をそのまま全身から放出した、ワイドショット装甲とも言うべきものであると、食らう寸前で看破したからだ。
肉体を限りなく光エネルギーに近付ければ、身体能力からして爆発的な底上げが期待できるが、その分持続時間も限られる。
なにより、このバリアはワイドショットそのものを防ぐように出来ているのだから、このままだと防御を破る事が出来ないはずだ。
現に、セブンの振り下ろした強烈なパンチを、ものの見事に防いで見せた。
たった一撃で、凄まじい衝撃波が発生し、迸る電流によって瞬時に生成されたオゾンが燻り、刺激臭が辺りに立ち篭める。
とても、つい先ほどまで死に瀕していた者が放つとは思えない威力の攻撃だ。
これにはさしもの教授ですら、内心で舌を巻くしかない。
それでも、光波バリアの絶対的な防御力の後ろから、セブンが躍起になってこちらを殴りつける様を見て、徐々に平静を取り戻し、再びあの残響音混じりの笑い声を響かせる余裕を見せた。
……セブンが頭頂部に手を伸ばし、白銀の刃を引き抜くまでは。
『デュワーッ!』
『なっ!?』
セブンの強化された膂力によって、勢いよく振り下ろされたアイスラッガーの鋭い切っ先が、ロックピックのようにバリア表面へと突き刺さり、そこへ無数のヒビを走らせた。
突き立ったブーメランを、両手でがっちりと握りしめたセブンが、万力のように力を籠める!
『デュ……オオオ!!』
『させません!』
これに焦ったメバ教授が、バリアの修復に全力を注ぐ。
だが、それは完全に悪手であった。
今まで、セブン上司の旧式アイスラッガーを操る事に割いていたリソースまで、セブンに対抗する事へ使わざるを得なくなった為に、そちらの制御が甘くなり、結果としてもう一人の戦士を縫い止める事が出来なくなったのである。
『セブンッ!』
『兄さん!!』
掌にエネルギーを集中し、動きの鈍った旧式アイスラッガーを空中で素早く掴みとったセブン上司。
そのまま力強く大地を蹴り、一気に弟の元へ駆け付けると、奪い返したばかりのソレを、セブンが突き刺したスラッガーの真横へ渾身の力で捻じ込んだ!
『いくぞっ! セブンよ!』
『はい兄さん!』
『『デュアアアアアアアアッ!!』』
許容限界を越えたバリアが、呆気なく割れ砕け、今まで堰き止めていた力が解放される。
全ての力を、バリア破壊に注いでいた兄弟は、いきなり壁が消失してしまったその応力の煽りをうけて、大きく態勢を崩し吹き飛ばされてしまう。
二人の手を離れ、宙に投げ出される二枚のアイスラッガー。
『貰ったッ!』
それを見逃すメバ教授ではない。
再び本来の持ち主からアイスラッガーの制御を奪おうと、ハサミのついた両腕を伸ばし……
『とあーっ!!』
唐突に軌道を変えた二つのアイスラッガーが、鋭く回転しながら教授に向かって襲いかかり、大振りなハサミを根元から切り飛ばした!
『なんですと!?』
両腕を失い、信じられないとばかりに顔を上げた視線の先には……
赤と青が斑に混じり合う肌をもつ、目付きの鋭い宇宙人の子供が、回転する二枚の刃を、指先から飛ばした念力でヌンチャクのように振り回している姿があった。
『馬鹿なっ! ウリンガッ!? なぜキサマが……まさかっ!』
『ままを……かえせっーー!!』
念力の鎖で連結されたアイスラッガーが、ボーラの如き動きで教授の足を縛り上げ、瞬間移動を封じる。
「今だっ! 侵略者を撃て!」
「「「「了解!!」」」」
両腕を失い、移動を封じられたメバ教授に向けて、キリヤマ、フルハシ、アンヌ、アマギ、ヒロタのウルトラ警備隊、そしてクラタも合わせた通算六発の攻撃が、狙い澄ましたように一点へと飛んで行き……
教授が片目に装着しているモノクルじみたデバイス装置を粉々に粉砕したっ!
『ぐあっ』
片眼鏡が割れ砕けた衝撃で、大きく後ろへ身を捩って、その場へ蹲る教授。
『デュワ!』
セブンがこれを好機と見て飛びかかる。
既に強化状態が解け、普段通りの姿に戻ってしまっていたが、ガラ空きの背中にもう一撃打ち込む事が出来れば……
しかし。
『ジュ!?』
隙だらけの背中に、トドメを刺すかと思われた拳は、再び展開された光波バリアによって阻まれてしまう。
教授は破られてしまったバリアを、再び構築し直すための演算に集中していただけだったのだ。
おまけに始末の悪い事に、アイスラッガーは二枚とも展開されたバリアの内側に転がっており、ウリンガの念力からも遮断されてしまっていた。
先ほどの反省を踏まえ、二度とバリアの破壊に使われないよう、教授がわざわざアイスラッガーを取り込むようにバリアの範囲を指定したとも言える。
『フォ……フォフォ……やってくれましたね……』
蹲っていた星人の両腕が、切断された根元からブロックが組み上がるように再生されていく……
そして再生したハサミで、破片でも突き刺さったのか赤い体液が滴る片目を押さえつつ、ゆっくりと立ち上がったメバ教授。
彼がハサミを退けると、その下からは傷一つない大きな目玉が露わになって、憎たらしい者達の姿を焼き付ける為に、またグリグリと蠢き出した。
『ええ……ええ。認めてあげましょう。アナタ方の言う、愛の力とやらを。確かにそれは純然たるエネルギーとして存在し、それを考慮していなかった私の計算を狂わせたかもしれません。やれやれ、どこまで行っても、まったく分からん生き物だ。実に興味深いですとも』
ひとつだけ溜め息をつき、再びハサミを振り上げて笑いはじめるメバ教授。
『……ですが、それが何だと言うのです? であるならば、それすらも修正値として代入し、計算をし直せば良いだけの事。アナタ方の絆が齎す出力は、私を傷つけるまでは出来ましたが、倒す事までは出来ませんでした! 奇襲によって勝つ最大の機会を逃したのです! いくら愛に力があろうとも……たかがこんな辺境惑星の一種族が、多元宇宙すら観測できるワタシのエントロピーを凌駕できるとでも思ったのですか!? セブン! アナタの理屈で言うならば、こちらとてより純粋で、強力な力を発揮するまで! 私こそが……究極の
「……いいや! 意味はあったね!」
足元から、声がする。
ふと教授が視線を下げれば、信じられない事に、そこでは一人の人間が立っていた。
「みんなの絆が、俺をここまで辿り着かせた!」
煤と血に塗れた顔に不敵な笑みを浮かべながら、そうして声を張り上げるのはソガ隊員だ。
彼は、仲間達が敵の注意を引きつける間、光線や爆発が飛び交う危険な戦場の中心を一直線にひた走り、ついにバリアが閉じきってしまう寸前で、その中へ転がり込んでいたのである。
『……ほほう! これはこれは! ソガ隊員ではありませんか! なんと、こんな所にまで押しかけて来るとは、命知らずにも程があるでしょうに。その蛮勇だけは、私も手放しで賞賛するしかありませんな。……なるほど、先ほどの攻撃は全て、貴方を私の元へ送り込む為の陽動だったという訳ですか。これはしてやられました。おお、こわいこわい』
「そうして余裕ぶっていられるのも今のうちだ! メバ教授!」
『それで? 何をしてくれるのですか? その手にある豆鉄砲で撃ってみますか? 見たところ……ほぅ、マルス133ですか。確かにそれならば私を殺せるかもしれませんねぇ……フォフォフォ』
ソガが持つ銃の正体を看破しておきながら尚、教授がこれ程までに余裕を見せているのも無理はない。
なにせ、彼が立っているのは文字通り敵の足元であり、身長優に40m近くある教授がその気になれば、一瞬で蟻のように踏み潰されてしまう場所だからだ。
だがソガ隊員は、実のところメバ教授が朗々と自身で語るその言葉ほどは油断などしておらず、むしろその黄色く光るガラス玉の如き瞳で、こちらの一挙手一投足を注意深く観察しているのだという事に気付き、相手からひしひしと伝わる敵意と警戒を肌で感じとっていた。
正直、大いに油断していてくれた方が良かったのだが……何故こうまで警戒されているのか。
俺が知らない間に、いったい何をやらかしたんだ相棒。
ソガ隊員は、額から鼻筋を伝って流れ落ちる冷や汗に気付かれないよう、努めて軽妙な調子で言葉を返した。
「残念、こいつはマルス177だ。つまり、お前の知ってるマルス133とやらよりも、ずっと強力って事さ! ……多分な」
『そうですか、ご忠告どうも。……その御礼と言ってはなんですが、ひとつ取引と行きませんか?』
「取引だと?」
『ええ。先ほども言いましたが、私は別にアナタ達に悪感情を抱いているわけではない。特にソガ隊員……貴方に対してはね。貴方のおかげで、私は真理を知った! すなわち、プロテスの人工生命どころか、この宇宙の全てが、誰かによって造り出された単なる偽物でしかないのだと! それがどんな生まれであろうと、全て平等に価値が無く、優劣などありはしないのだと』
ソガ隊員の背後、なんとかバリアを割って仲間の救援に駆け付けようと奮闘する戦士達を、再生したばかりのハサミで指し示し、まるで旧い友人に語りかけるかのような親しみすら込めて、説得を試みるメバ教授。
『……ほら、ご覧なさい。この壁向こうで必死に戦っている彼らを……地球人も、それどころかあのウルトラセブンでさえ! 自らが作為によってデザインされた被造物である事に気付いてすらいない。滑稽でしょう? これなら、先ほどの機械人形の方が、本物の生命体でないという、その自覚がある分だけいくらかマシですらあると言えましょう』
バリアに拳を打ち付けるセブンの顔を見て、教授はいっそ憐れみすら含んだ声で、そう本心を吐露した。
『そして……この事実を知っているのは、この宇宙に置いて私と貴方のたった二人だけ。まさか、この宇宙全てが、単なる壮大な群像劇の舞台装置だなどと! そのような事、例え彼らが神だと崇めるような存在ですらも……ご存知あるまい』
「ハッ、お釈迦様の掌から飛び出したつもりかい? 地球じゃあな、天知る地知る人が知る……って言うんだ。知らないのか?」
『我が知る……それだけで充分ですよ。だからこそ、貴方だけは私にとっても……同志たり得る唯一の存在と言えましょう。なので特別に、我が悲願を教えて差し上げますとね……私は、こんな造り物でしかない偽物の宇宙からは、さっさと脱出したいのです。……生命とは何か? ここに居る限り、その答えは永久に得られない。だから、別の次元へ旅立つ為の準備を整えました』
「別の……次元?」
『そうです。地球を私という侵略者が手中に治める事で、「ウルトラセブン」という物語に終止符を打つ! そうしなければ、我々は決してこの宇宙のくびきから抜け出す事叶いません……そうして初めて、我々は誰かの操り人形ではなく、真の自由を手に入れる事が出来る! いかがですか、ソガ隊員? 貴方が一言、「地球をあげます」と、そう仰ってくれるだけで良いのです。これは貴方にとって決して禁じられた言葉ではない。そうすれば、私は貴方をどこへなりとも……新たなる新天地でも、元いた次元であろうとも、自由に連れて行って差し上げましょう!』
それこそが、メバ教授が数億年もかけて準備した計画の最終段階なのであった。
究極的には、「ウルトラセブン」という番組の結末を滅茶苦茶にぶち壊す事さえ出来れば、セブンも地球人も、一人たりとも命を奪う必要が無い。
誰ひとり悲しむ事のない完璧な作戦だ。
そして、その為にソガの協力を取り付けられるのならば、事は非常に簡単である。
その後の旅にも、彼の知識は非常に役立つ。
だから勧誘した。
嘘偽らざる本心からの誘いであった。
そしてソガは……
「おもんな」
つまらなさそうに、たった一言だけ吐き捨てた。
『……なんと? 失礼、聞き間違えましたかな?』
「なんていうかさ……やっぱお前……おもんないわ」
『面白くない? 私の計画が?』
「そう」
顔を上げたソガは、眉根を寄せて、目を細め……なんともいえない呆れの表情を浮かべていた。
いわゆるドン引き……あるいは解釈違いにブチ切れた、静かな怒りの顔であった。
「途中まではさ……良かったよ? 登場人物のままは嫌やから、結末変えますね! ……うん、分かる。でもさ、その答えとして出力してきたのがさ……『ぼくの考えたさいきょーのしんりゃく』って! いや、全然抜け出せてへんやん! 元侵略者が侵略者のままそれ成功させようとかもうそれ与えられた役割から全然一歩たりとも抜け出せてへんやんか!? なあ!? 曲がりなりにも原作知識手に入れてする事がそれか!? いや普通に地球に協力して科学力バリバリ与えてあっという間に宇宙進出させましたー、でも充分に原作破壊やんか! なんならセブンの代わりに他の侵略者追い返してポジション奪いましたとかさ! あるやんか!? それが! 結局! 侵略!? はーほんま……つっかえ」
『……』
突然捲し立て始めたソガに絶句するメバ。
「要はさ、悪感情がありませんとかなんとかほざいててもさ、他の奴らを出し抜いて見返してやりたいとか、自分ひとりだけ得して気持ちよくなりたいっていう欲がさ、隠しきれてへんのよ!! 欲張るにしても自分が楽しくやるついでに、おまけで他の誰かも喜ばせて一石二鳥とか! なんか一緒にわちゃわちゃやって、あわよくばもっとええもんにしたろうとか! そういうエンターテイメント性? っていうの? ……が無い! お前の脚本には! オモロさが……足らん!」
『フォ……フォフォ……馬鹿馬鹿しい。何を言いだすかと思えば……』
ソガのなんだかよく分からない罵倒を、メバは大した感慨もなく切り捨てた。
正直なところ、エンターテイメントだとかそんなものは、まったくもって不必要な事だからである。
なんなら、ソガが意気揚々と乗り込んで来たにも関わらず、急に意味不明な事を言い出して、がっかりしたのはメバの方だ。
ここまで教授が慎重に、そして真摯にソガ隊員を遇しようとしたのは、もちろん彼が『原作知識』を持った貴重なサンプルだからと言う事もあるが……
その思考が読み切れない危険人物だから、というもうひとつの要因があった。
メバがセブン達の脳波を解析したという事は、当然のようにその思考すら読む事が出来るという事である。
それがあるからこそ、戦闘においても常に先手を取って優位に立つ事が出来た。
そしてそれが適用可能なのは何もセブンだけでなく……目の前の人間に対してすらもそうだ。
元より、メバの造り出した一般的なバルタン星人ですら、地球人の脳髄を支配して、自由に操るなどという芸当が容易く行えるのであるから、その創造主であるメバも言わずもがな。
あいにくと、深層心理や旧い記憶を探査したり、それこそ脳波を増幅してアイスラッガーの制御を奪うと言ったさらに上級な精神操作は、それらに必要なデータが収められたデバイスを破壊されてしまった為、現在行う事が出来なくなってしまったが……鮮明ではないとは言え、面と向かった相手が、これからやろうとしている表層的な考えを読み取る事くらいはできる。
ところが、先ほどからこの男の思考を読もうとしてみても……
〝相棒を信じて待つ〟
としか聞こえてこない。
相棒とはつまり、バリアの外にいるセブンの事なのだろうが……これだけペラペラと機関銃のように喋り倒しているにも関わらず、なにも考えていないとは。
完全にノープランの人間は、なにをやらかすか分かったものでは無く、それが事もあろうに特殊な知識を持った異邦人とくれば、何かメバの思いもよらない突飛な行動をとってくるかもしれなかった。
だから労力なくこちら側に引き込めたならば、それに越した事は無いと思ったのだが……
そろそろ踏み潰してしまおうか。
そう考えたところで……
「ええか! 目ん玉かっぽじってよう見とれ!」
ソガが、ビシリッと鋭く突きつけた右手の人さし指を、左胸のポケットへそっ……と差し込み、何かを取り出す仕草をした。
「ほんまにオモロイ展開ってのはなぁ……」
そして、つまみ上げた物体を、教授に見せつけるように空高く掲げる。
『おや? それは……待て! まさかっ……!』
日光を反射し、真紅にキラリと輝くソレは……幾筋もの溝が走る奇妙なレンズの嵌まった、菱形でつるの無い赤縁メガネ!
「こうするんだよ!!」
『やめろっ!』
「……デュワーッ!!」
掛け声ひとつ、ソガはそれを勢いよく自身の目元に押し当てた!
見知った形状、見知ったポーズ、見知った用途に、見知った台詞!
変貌を阻止せねばと、思わず体が前のめりになるメバ教授!
……その瞬間!
「左で撃てないなんて、誰が言ったよ!?」
いままでブラリと垂れ下がっていた左腕が素早く動き、銀のライフルの引き金をひいた!
マルス177から青い光線が飛び出し、完全に虚を突かれた教授の胸元、急所である心臓目掛けて一直線に伸びていき……
……着弾!
……したはずだった。
その薄い胸板がパカリと開き、露わになった鏡面によって明後日の方向へ弾き返されるまでは。
「……なっ!」
真紅に縁取られたレンズの奥で、ソガ隊員の瞳が驚愕のまま見開かれる。
……しばしの空白。
やがて、教授の口吻から漏れ出す押し殺したような忍び笑いが、堪えきれない程の大爆笑へと変わるのに、それほど時間はかからなかった。
『……フォ、フォフォフォ……ブォーッフォフォフォァ!! これはこれは! 私としたことが! 完全にしてやられました! 頭ではそんな事は有り得ないと理解していても、いざ貴方がソレを取り出した時、ついつい1%の可能性が過ってしまった! そんなモノ、いったい何処で拾ったのですか? ワタシにもよく見せてください』
「あっ……」
メバ教授が何も無い空間をハサミでクイと手繰り寄せれば、真っ赤なレンズデバイス……つまりウルトラアイが、ごく簡単な重力操作によってソガの指からふわりと浮かび上がり、そのまま教授の眼前へと飛んでいく。
目の前で制止したウルトラアイを、好奇心の赴くままに、あらゆる角度からじっくりと検分していくメバ。
『……ふむ、これはマゼラン星雲でよく用いられている加工技術ですね……しかし、どうして地球人の貴方がこんなものを、と思いこそすれ……これを装着したところで、肉体に何らかの作用を及ぼすわけでもない。やはり単なる贋作以上の価値はありませんか。くだらない』
やがて、それが単なる精巧なイミテーションでしかない事を確信してから、無感動にハサミの先端で偽のウルトラアイを粉々に握り潰す教授。
ただ、ある種の象徴とも言うべき、無限の力を模したアイテムが、自身の手で呆気なく砕け散る様には思うところがあったのか……
もう一度、本心からの歓喜を一頻り爆発させたメバは、この局面においてこのような玩具に一縷の望みを見出してみせたソガのその胆力に、惜しみのない喝采を送る。
『確かに、貴方とコレの組み合わせを見て取り乱すのは、全宇宙をおいても私ひとりしかおりませんでしょうとも……! 私から動揺を誘う為だけに計算された、完璧な奇襲です! 本当に素晴らしい! しかし、貴方ともあろう方が、スペルゲン反射鏡の事を忘れていたのは……いただけませんなぁ。それとも、隙をつけば咄嗟に使用出来ない可能性に賭けたのですか? 残念ながら、これは自動防御でしてね。私の意識とは関係なく展開するようになっているのです。……いや、まさか?』
最大のチャンスをふいにしてしまい、絶望したようにへたり込むソガの姿を見て、瞬時に思考を巡らせたメバ教授は……
『なるほど、もしや……その体を動かしているのは……
即座に、その事実へと辿り着いてみせた。
図星をさされ、驚愕に顔を跳ね上げるソガ隊員。
恐怖の表情が、メバ教授の述べた仮説が正しいものであると如実に物語っている。
『そうですか、もはや貴方には狙いを付ける為の力すら残されていないと! そういう事なのですね!? ……ああ、非常に残念です。確かによくよく考えてみれば、もしも貴方が撃つとして、胸ではなく他のどこか……額や腹といった箇所を狙ったでしょうからな』
メバ教授は、かつて自身がまだプロテ星人だったころ、捕らえたソガを記憶探査装置に座らせて、彼の記憶を盗み見た事がある。
もちろんあの時は、ウルトラ警備隊に嗅ぎつけられた関係で、迎えの時間を繰り上げた事もあり、全ての記憶を読めた訳ではなく、むしろ転生者である彼が持つ膨大な情報からすれば、「ウルトラセブン」に関するものの中から、さらに一部の断片的な情報しか得られていない為、せいぜい1割か2割程度といったところだ。
それでも、彼がこの世界を映像媒体として楽しんでいた過去がある……という事さえ分かっていれば、現在よりも前に出現したメバ教授の同属……否、手駒が見せたであろう能力も、当然のように承知しているはずだと容易く推測できた。
バルタン星人の弱点は、火星に存在するスペシウムという物質である。
通常の武器では傷つかず、例え核ミサイルの直撃を受けたとしても、死亡した自分を抜け殻のように脱ぎ捨てる事で、即座に蘇生できてしまう恐るべき存在。それが宇宙忍者バルタン星人。
そんな彼らであっても、この物質を用いた攻撃にだけは、脱皮再生すら出来ずに肉体が崩壊してしまうのだ。
これは、バルタンの始祖となったメバが、プロテ星人だった頃からの弱点であり、彼らが人工生命であるが故に、どれだけ肉体へ改造を重ねようとも、決して克服出来なかった唯一の泣き所。
虚数空間座標の量子的な揺らぎの中に、自らのスペアパーツを無数に保有しておく事で、状況に応じて自由自在に変質できるようにデザインされた彼らは、しかして、その揺らぎの因果律を僅かでも確定されてしまうと、途端に同軸座標上へ重なった同位体が干渉しあって、たちまちディラックの海に引きずり込まれてしまうのである。
彼らの狡猾な創造主は、生み出した奴隷達が逆らってきても容易に鎮圧出来るよう、わざとその欠陥を首輪として残したままにしておいたのだ。
このように、生まれながらにして他者から生殺与奪の権を握られ、明確に他よりも一段下位の存在として運命を弄ばれた事こそが、人工生命プロテ星人達……ひいてはメバ教授にとって、自尊心をいたく傷付け、劣等感を刺激する、何よりも受け容れがたい仕打ちであった事は、言うまでも無いだろう。
――いつかその寝首を掻いてやるぞ。
主星の戦乱に乗じて、管理を任されていた捕虜収容所兼、試験場である第七番惑星を乗っ取った人工生命達は、やがて自らを
そんな人工生命体をルーツに持つメバが、自身の遺伝子を基に造り出した奴隷達もまた、同じくスペシウムに対する脆弱性を宿命づけられている。
だからこそ、戦闘用に改造された個体の中には、急所である胸部に光線の反射板を移植された者もおり……如何にスペシウム由来の恐るべき威力の光線であろうと、それで彼らの心臓を狙い撃つのは、それを知っている者からすれば、致命的な悪手であると分かるはずなのであった。
『通りで貴方の思考が読めないハズだ……ようやく合点がいきました。では、そんな貴方にダメ押しをするようで大変心苦しいのですが……私のボディは、全身スペルゲンコーティング済みですよ。その忌々しい光線で撃たれる事に、私が対策を取っていないとお思いで? それでは優どころか……良も可もあげられませんな! 君の評価は紛うことなき不可! 私を殺す事など……絶対に! 不可能なのです!』
今までは、ソガにだけ聞かせるように囁いていた言葉を、もはや抑えることもせず、高らかに笑い声を響かせるメバ教授。
『残念ですよ。君ならば、私の旅についてくる資格があると思っていたのですがねぇ……単なるこの世界の存在に成り下がったキミには、もはや価値など無い。意図せず、アナタ方に完全勝利するという目的を達成させて頂いた事には、感謝いたしますがね』
教授がバチンッ……と片方の鋏を鳴らせばそのすぐ隣の空間……ちょうど彼の腰から首あたりまでの高さへ、まるで定規とナイフを使って切り出したように綺麗な四角い切れ目が走ったかと思うと、次の瞬間には空間そのものがぺろりと捲れてしまった。
そうして教授は、足元に蹲る哀れな敗者から途端に興味を失って、そのすらりとした長身をほんの少し屈めては、灰色な窓の向こうを注意深く覗きこんだ。
『まあいいでしょう……ちょうど、キミよりもさらに興味深い研究対象を見つけたところです。別にキミがいなくても、退屈の心配はしなくても済みそうだ。こんな世界とも、ようやくおさらばできる』
「……新しい研究対象……だと……? それはいったい、何だ!?」
『……コシ』
「こし……?」
『そう……』
待ったをかけるソガに、もはや一瞥すらもくれる事無く、教授はただ独り言じみた生返事のみを返し、窓の向こうへグッと身を乗り出すと……
『君だ』
こちらを覗きこむ、あなたとばっちり目が合った。
先ほどまではグリグリと忙しなく蠢いていた、瞳の無い、妖しく光る黄色い目玉が、今はぱったりと動きを止め、真正面からあなたを捉えて放さない。
おやおや、何をそんなに驚いているのです。
随分と愉快な顔をして。
ようやく、新鮮な生の感情を見せてくださいましたね。
ああ――ずっとその表情が見たかったのです。私は。
いやいや、今更ページを戻しても無駄ですよ。あなたの指紋と虹彩情報は先ほどすっかり頂きました。こんなに興味深いサンプルを、私が逃がすとお思いで?
フォフォ……そのように警戒せずともよろしい。
そもそも……これまで散々、我々がこうして足掻く様を、戯曲のように愉しんできたのでしょう?
ただ少しばかり、その観劇料を取り立てさせて頂こうというだけなのです。
……なぁに、大した事ではありません。
あなたがお持ちの貴重な見識を……ほんの僅かばかり拝見させて貰うだけで良いのですから。
そうすれば、私はあなたを、どこへなりとも連れて行って差し上げます。
それに……
どうやらそちらの世界には、彼らのような勇気と正義に満ち溢れた者もいなければ、あの忌々しい物質も全く存在しないようだ
なんと容易いことよ……
どうです? 存外、我々は仲良くやっていけると思うのですがねぇ
そうだ、今こそあなたに、この言葉を贈ろうではありませんか
……さて、これで我々はもうオトモダチだ
だから一つだけ、私の頼みを聞いていただけませんか?
一言、こう仰るだけでよいのですよ
「地球を、あげます」と……
『――ふむ。それもよかろう』
得られた答えに対し、メバは深く、そして一度だけ頷いた。
まったく……分からん生き物だ……
それから、あなたの方へ向かって、その大きなハサミを伸ばして――
「おい! どこ見てやがる!」
足元から響いた大声に振り返れば。
そこには……震える右腕を限界まで伸ばし、必死にウルトラガンの狙いを付けるソガがいた。
「お前の相手は……」
構えた小銃の先端には、何やら小さな花火の如きアタッチメントが装着されており……
「
ソガが叫ぶと同時にロケット弾が射出され、敵の顔面目掛けて飛んでいく。
だがしかし悲しいかな、引き金を絞る事すらも精一杯という有様から撃ち出されたその狙いは非常に甘く、そのままでも頬を掠るかギリギリの軌道であると、誰が見ても一目で分かる。
そんな破れかぶれの攻撃を一笑に伏せたメバにとっては、その足掻きすらも無駄であるとあえて見せつけるように、ヒョイと小首をかしげるだけの、ごくごく最小限の動きで躱すだけでよかった。
外れた弾は嘲笑う教授の頭上を飛び越えて……
「ありがとう……
一筋の光がペンシルロケットを貫き――爆発。
空中に眩いばかりの閃光と、青白く燐光を放つ、なにか細かい粒子のようなものを撒き散らした!
『ギャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ーーッ!?』
耳をつんざく断末魔の如き悲鳴が、バリアの内部で響き渡り、たたらを踏んだ教授が透明な力場へ後頭部を強かに打ち付ける。
『こ……こrハ……まサかッ!?』
「そうさ! お前の大嫌いな……火星の砂だっ! 教授!!」
それは、ソガがずっと胸ポケットの内側へしまっていた、正真正銘さいごの隠し球!
ウルトラホークへ搭載するスペシウム弾頭弾のテスト時に、理論通りの作用が得られるか確かめる為だけに作製された、ミニチュアサイズの試作品。
ウルトラガンのアタッチメント機能を流用して、アマギとイチノミヤが何度も何度もテストを重ねた際に残った、最後の一発である。
ソガはこれを、またしても得意の土下座外交で二人へ頼み込み、最後には「射手として実験に協力した正当な報酬」という無理やりな難癖までこじつけて、なんとか入手する事に成功していた。
とはいえ、その後も改良を繰り返した機載用の本物と比べれば、単純に砂を詰めただけに等しい試作弾の威力など、察するに余りあるものでしか無く、パンドンの顔面にぶつけるつもりで確保した当人とて、本当は隙が生じれば御の字とすら思っていたくらいだ。
だからこそウリンガの出現に戸惑い、使用を躊躇ってしまった後は、ソガが捕まってしまった事もあり、ポケットの奧に仕舞い込まれたまま、今の今まですっかり忘れ去られていたのだった。
彼がダンの言葉に奮い立ち、己を鼓舞する為に御守り代わりのウルトラアイを握りしめていなければ、その下にある切り札の存在を思い出す事も無かっただろう。
『あああッ……! 目が、目がああああ……』
いくらスペシウムを多量に含んだ火星の砂といっても、エネルギーを光線の形として抽出したのでなければ、メバにとっても決して毒というわけでもなく、致命傷たり得ない。
生命活動という観点から見れば、たかが砂を掛けられた程度、どうという事はないとも言える。
だが……それの発する輝き、周波数や匂い、あるいは感触にいたるまで、全てがメバからすれば我慢ならない程に……不快で仕方がないのだ。
あまつさえ、顔の間近で飛び越えていく弾頭を、炸裂の瞬間まで興味深げに視線で追っていたメバ教授は、それをよりによって感覚を強化した顔面へとモロに浴びてしまい……特に、瞼のない剥き出しの眼球に直接ふりかかったものだから、もう……たまらない。
いくらソガでも、教授がスペルゲンコーティングや、さらに読心術まで備えているなど、露も知らない事ではあったが……この悪辣で狡猾な、執念深い悪魔の如き侵略者は、相手の心が完全に折れるその瞬間まで決して容赦せず、気を抜いたりもしないだろう……という事だけは、よくよく熟知していたのである。
……なにせ、
だからお望み通りに、一旦は本物の絶望顔を見せておき、敵が勝利を確信した絶頂の瞬間へ、とっておきの切り札を叩き込んでやったのだ。
頭の出来はともかく、敵に対する性格の悪さで言うならば……ソガも教授とどっこいどっこいなのである。
ひねくれ者の似た者同士。同じ穴の狢。
ひとつだけ、そんな二人の違いを挙げるとするならば――心から信じる仲間がいる――という、ただその一点のみであった。
『有り得ない……じ、自分の放った弾丸を撃ち抜くなど……そのような芸当が……今の君にぃ……!』
右手にウルトラガン、左手でマルス177を構えたソガ隊員が、ニヤリと笑う。
「おんや? 相棒から教わらなかったのか? 地球じゃこういうのを……二丁拳銃っていうんだ。お前さんが出来る事くらい……俺にだって出来るさ!」
『そんな馬鹿な話があああっ!!』
スペシウムが充満した密閉空間に、生理的嫌悪感が我慢の限界を迎えたメバ教授は、新鮮な空気を求めてバリアを思わず解除してしまう。
「今だ! ダンッ! ……
『はいっ!』
即座にアイコンタクトを送り合うツーとカー。
その内容へ一欠片の疑問すら抱かずに、赤い戦士が腕を構えた。
それは肘と指先を合わせた、いつものL字ではない。
かつて厳格な父より、これだけは覚えておけと叩き込まれた基礎の基礎。
この技が、宇宙警備隊に入隊した者全員の、誰しも最初に習う基本技であると知ったのは、そんな期待に反発して恒点観測員になった後だ。
だから、最後に使ったのは数千年も前の事……それでも、彼の体は父の教えをしっかりと覚えていた!
……手元へ小さく十字を組んで、狙った敵は……必殺技の贈り物!!
『ジュワッ!』
スペシウムは確かに素晴らしい応用力を持つ元素だが、あくまでも触媒に過ぎず、それ単体の特性は物質を在るべき姿に固定する事。それだけだ。
故に、他のエネルギーと混ぜて使わなければ、その威力など微々たるもので、よほど使い込んでその特性を理解し、研鑽を積んだでもない限りは、牽制程度にしか役に立たない。
利点などせいぜい、技の出が速く、ごく少ない消耗で何度も使用できる点ぐらいなものだ。それすらも、照射タイプの光線の中では――という注釈が付く。
だが……親友が空気中に撒き散らした粒子へ、さらなる力を与えるにはそれで充分だった!
青き光の帯が、一直線に伸びていき、メバ教授の周囲で漂う大量の粒子に乱反射しては、その燐光を一層強く輝かせる!
『があああっ!? き、さ、ま、らぁあああーっ!!』
『兄さんっ!』
『ああ! やるぞ、セブン!』
立て膝をついて、光線を放ち続けるセブンの背後に、その兄である213号がすっくと立つ。
彼が指を合わせた額から、エメリウムの輝きが伸び、セブンの光線に巻き付いて、回転威力をプラスした!
セブン兄弟の合体技、エスメペリウムラインショット!
輝く螺旋が、悶える侵略者の胸を穿たんと迫る!
『うご……っ 認めん……認めんぞ……ワタシが……こんなッ……!!』
咄嗟にハサミから光線を発射して、セブン兄弟と鍔迫り合うメバ教授!
そこへっ!
『おまえだけは! ぜったいに!』
教授の足元から二枚のアイスラッガーが浮かび上がり、見事な切れ味でハサミを切り飛ばすと、それを操るウリンガの両手にすぽりと収まった!
『や、やめ……』
ウリンガは本能の赴くままに、それを自身の胸に埋め込まれた制御装置のソケットに差し込むと……
『ゆるさないぞーーっ!!』
それをコンバーターとして、自身に内包する虚数銀河のエネルギーを引き出してから、敵に向かって一挙に放出した!
『ヤメロォオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』
押し寄せる光の波が、メバ教授の体を断末魔ごと飲み込んでいき……
煌めく濁流が過ぎ去った時、そこにはただ灰色の彫像が、激しく身を捩る苦悶の姿勢で鎮座しているだけだった。
ピシリ――と、ひび割れの中から光が漏れる――
『危ないっ! デュワ!』
彫像の足元へ飛び込んだセブンが、そこから何かを拾いあげ、地面を転がり……
その刹那、メバ教授だったものは頭部から一気に爆発四散!!
辺りに淡い燐光が降り注ぐ。
爆風を背にして、大地へ屈み込んだまま、そっと掌の中へ語りかけるセブン。
『……やりましたね、ソガ隊員。あなたのおかげだ』
しかし、大きな肩ごしに輝く朝日を見上げるソガは、眩しげに目を細めながらも、降ってきた感謝の言葉に、ゆっくりとかぶりを振った。
「いいや、オレじゃ無い……あの時、誰かが奴の注意を引いてくれたんだ……誰かが……」
――そうでなければ、倒せなかった。
あの目敏い教授の事だ、切り札をポケットから取り出して、ウルトラガンへ装着する瞬間を見られていれば、きっと何かしらの手段で逃げおおせていたに違いない。
だが彼はそうしなかった。
あの瞬間、明らかに教授は、ここではないどこか……別の場所にいる誰かと話していた。
そしてその会話が途切れた瞬間……教授の体が動揺で小さく震えるのを、ソガは確かに見たのである。
窓の向こうから、なんという答えが返ってきたのか……それは分からない。
ただひとつ確かな事は……最後の最後で、彼は研究者としての迸る好奇心を捨て去る事が出来なかったのだろう。
それが、メバ教授にとって史上最大の敗因である。
まあ、なにはともあれ……
「オレたちの、勝ちだ」
ソガは傷だらけの顔に満面の笑みを浮かべながら、天に向かって親指を力強く突き立てた。
髑髏の火炎竜(ピクシブ名『D×3』)様と、Mr.You78様より挿絵を頂きました!!
【挿絵表示】
本当は「ひとりぼっちの異邦人」のエンドカードとして頂いていたのですが、こんなん貰ったら再登場させないと失礼ですよねぇ……!
ハーメルンに、明けの明星が輝くころ……ひとつの話がランキングへ昇っていく……それが最終回なんだよ!
robita42様からも素晴らしい挿絵を頂きました!!
【挿絵表示】
見た? 構図と色使いの美しさよ……
ここまで直感的に『セブンのスペシウム光線』を見た者に浴びせられるもんなんですね……
本作のトリを飾る一撃を描き起していただき、ありがとうございます!!
貴方は原作『ウルトラセブン』を観たことが
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ある
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ない
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なかったが、本作をきっかけに視聴した。
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他昭和ウルトラシリーズは観ていた
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平成ウルトラシリーズは観ていた
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令和からだゼェェット!
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そんなにシンが好きになったのか(完全新規
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その他(感想欄かDMにでも)