転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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想定より長くなっちまったので分割しました。

例によってマルチバース仕様の番外編です。

ではどうぞ。


転居したはいいが、お隣が夕日に光る時!

 

 

「……粗茶、ですが」

 

「ああいやいや、これはどうも。どうぞお構いなく~」

 

テーブルの上へ、少女の手により湯呑みが置かれる。

 

男は相好を崩して頭を下げるが、それに対してにこりとも表情を変えず、人形のように冷たい態度のまま踵を返す少女。

 

だがその後ろ姿が、帰り道でぎこちなくびっこを引くのを、男は痛ましげな顔で見送った。

 

『マヤ! マヤ! あの野獣に乱暴な事はされなかった!? ああなんて可哀想に……あんな男の傍に近寄らないといけないなんて……』

 

「姉さん、大丈夫、だから。それに、静かに、しないと」

 

『地球人にテレパシーが聞こえるもんですか! というかアイツもアイツよ! なんだってマヤにこんな事させるわけ!?』

 

「ロンさん、にも、考えが、あると、思う……」

 

台所へ帰ってきたマヤを、普段からは想像できない程に狼狽した様子のミーヤが迎え入れ、その全身をペタペタと触って確かめる。

 

それに対し、台所の入口からひょっこりと顔だけ出してリビングの様子を伺っていたキリエが、いつになく緊迫した表情とは裏腹に、普段通りの呑気な声を上げた。

 

「大げさだなぁ……ミーヤお姉ちゃんは」

 

『大げさ? あの男に関してなら大げさもなにもあったもんじゃないわ! ああ……茶汲みならアタシにやらせてくれれば、必殺の間合いまで近付けたってのに……』

 

「だからさせなかったんじゃないかな……」

 

キリエの上から頭を出して、怨敵の姿をもう一度よく確認したミーヤは、後ろ手に隠した果物ナイフを口惜しげにもう一度握りしめる。

 

だめだ……隙が無い。

脳内でもう一度、あのにっくきウルトラ警備隊員を襲撃する算段を立ててみるが、奴の首筋を掻き切る前に、腰の光線銃で迎撃されてしまう未来しか見えなかった。

 

せめて、指先の震えと引き攣れさえなければ、ナイフを数本同時に投擲しながら突撃するという芸当も出来たのだが……なんともつくづく腹立たしい。

 

ミーヤの両手は過去、ダークによって一度完全に吹き飛ばされ、その吹き飛ばした張本人による再生医療で蘇ったものである。

 

血の滲むようなリハビリによって、日常生活にはそれほど支障がなくなったものの、やはり爆弾解体やナイフ投げといった繊細さを求められる作業は完全に不可能となったし、握力も半分以下に落ち込んでしまった為に、狙撃や近接戦闘も以前のようにはいかなくなってしまった。

 

今の自分は、正面戦闘であの男に何一つ太刀打ち出来ないのだ……と考えれば今現在、テーブルを挟んで奴と相対しているダークへ抱いていたあらゆる負の感情が再燃してくるようですらある。

 

……と同時に、最近はそれらも自分ですら気付かぬうちにずいぶんと下火だったのだな……と気付いたが。

 

「あの人の本当に恐ろしいところはね……顔ではニコニコと、さも私は全然なにも気付いていませんよー……みたいな風を装っておいて、こっちが油断して後ろを向いた瞬間に、全力で首筋を殴り付けてくるところだよ」

 

『キリエ……あんたアイツになにされたのよ……』

 

「あんまり思い出したくないようなこと」

 

先ほどとは違い、凄まじく低い声がキリエの口から重々しい実感を伴って紡がれたので、その場の三人……マヤやイカルガですらギョッとして振り向いた。

 

「ちょ、ちょっと……みんなさっきから、いったい何をそんなに怖がっているんだな? どっからどう見てもただの地球人じゃなイカ!」

 

『ハァ? あんたバカァ? あの制服見てもまだ分かんないの? ウルトラ警備隊なのよ!』

 

「……ウルトラ警備隊って……なんなんだな?」

 

「「『えっ』」」

 

台所の入口へ仲良く縦に並んだ顔の内、一番下のイカルガがそんな事を言い出したものだから、残りの三人は愕然とするしかない。

 

『なにって……アンタ、ついこの間まで戦ってた相手の事も分からないわけ?』

 

「戦う……? 誰かと間違えてるんじゃなイカ? 吾輩、誰かと戦った覚えなんてないんだな」

 

「でも、ゴース、星人に、協力、して、いたん、です、よね?」

 

「イカにも! ただ、怪獣軍団の脳改造をしろだとか、異次元ゲートを指定座標に繋げとか言われただけで、奴らがそれで何をしようが吾輩は全くあずかり知らない事なんだな! どんな相手であろうと分け隔てなく力を貸すも、吾輩は決して手を汚さない! 故に貴公子! 吾輩はまっさら綺麗なままなんだな!」

 

『ふつーに下衆野郎ねコイツ』

 

「ゲソ野郎じゃなくて?」

 

「みんな酷くなイカ……?」

 

四人はそんな風に小声で騒ぎながら、ロンとダークが招かれざる客とちゃぶ台を挟んで対峙する様を、固唾を飲んで見守るのだった……

 

―――――――――

 

対するソガはと言えば、自らの後頭部に幾つもの視線が痛いほど集中しているのをひしひと感じながら、とてもそうとは思えないほどに寛いでいた。

 

「お、結構なお点前で……玉露?」

 

「いいや、目兎龍茶だ。気に入って頂けたようでなにより」

 

「おお! これがあの! ……ほぉ~」

 

「そんナ茶ひとつデ、何ヲそこマデ感動しているんダ……」

 

やけに嬉しそうなソガを見て、ダークはひたすらに困惑するしかなかった。

そもそもこの男は、何故いまになって……

 

「さて、一服したら帰ってくれるかな?」

 

「まあまあそう慌てなさんな。さっき来たばかりじゃねえか」

 

「では単刀直入に聞こう。いったい、我が家に何の用だ?」

 

「何の用って……そりゃあ新年のご挨拶に決まってんだろ」

 

「こんな敵地にたった一人で、かい?」

 

ロンの口元で、リレー発光が素早く動く。

 

「敵地……? いいや、違うね。俺にとっては友達の家、だ」

 

「確かにダークと君が個人的に交流があるのは聞いている。だが、ここには彼以外にも住んでいるんだ。もう少しこちらの心情にも配慮して欲しいね」

 

「なに言ってんだ? ダークはもちろんだが……友達ってのはお前の事もだぞ?」

 

「な、なにっ!? 私が!?」

 

あまりにも予想外の方向から不意打ちが飛んできたので、さしものロンもこれには面食らった。

 

「私は君のような地球人と友誼を結んだ覚えはない!」

 

「えっマジ!? 普通にショックなんだけど……こんど機会があればお茶でもしましょうって、言ってくれたじゃん……あれは嘘だったのか?」

 

「嘘もなにも、本当にそんな記憶は無いが。言い掛かりはよしてくれ。嘘を吐くのは地球人の十八番だろう」

 

時々ロンは自分で切った空手形に、何食わぬ顔でシラを切る事もあるが、これに関しては全く身に覚えがない。

態度だけでなく声までも、自然と硬くなってしまう。

 

「嘘じゃねえって……ホラ、ここにちゃんと書いてあんだろ」

 

そう言ってゴソゴソと懐を弄るソガ隊員。

やがて彼が取り出したのは……どうやら一枚の葉書であるらしかった。

 

それをソガは、あえてロンにではなくダークへ手渡す。

訝しんだ彼が葉書に目を落とせば……垂れ下がる柳の如き達筆で、何行も地球の文字が書いてあるではないか。

 

あまりに達筆すぎて、とても宇宙人が書いたとは思えないが、確かにこれはロンの筆跡だ。

何故そんな事が分かるかと言えば……書いてある内容が読めるからである。

 

もちろん、いくら翻訳機を介しているダークが地球での会話に支障がないとはいえ、あいにくと崩した文字まで認識できる程に高性能というわけではなく、ましてやロンが書いていたのは、かな文字と呼ばれる……いわゆる地球における古代語の類だった。

 

当たり前だが、さしものダークであろうとそのような背景を知っているわけがなく、古文を読むなど以ての外。

 

だからこそ、文面の上にぼんやりと燐光で翻訳文が浮かび上がって来なければ中身は分からないし、この隠し文字が地球人には見えないインクで書かれている事も分かる。

 

これは、ロンが隠れた宇宙人を炙り出す際によく使う手だった。いわゆる宇宙人同士でしか通じない暗号文のようなもの。

 

流石は植物宇宙人というべきか、彼は一部の薬学分野に関してだけならば、ダークすらも凌駕する程に見識が深い。

 

自身から採れる蜜や花粉と、独自の伝手から入手した諸々の材料を混ぜ合わせ、いくつかの特殊な化学薬品を合成しては、アパート住人に配っている。

かくいうダークが治療に使う鎮痛剤や生薬も、殆どが彼のお手製だった。

 

悔しいが……かつてペガッサ市の工場で大量に合成されていた既製品の万能薬よりも、個々の用途に対する効き目ならばこちらの方が圧倒的に高いと認めざるを得ない。

 

おそらくこのインクも、そのように怪しい手作り薬品の一つだろう。

葉書に受容器官を近付けてみれば、上品なオーデコロンの如き甘い香りが仄かに漂った。

 

「なになに……『わざわざのお手紙ありがとう。私も貴方の作品をいつも興味深く拝見させて頂いております。いつか巡り合わせがありましたら、チグリスの花を愛でながら、共にお茶を愉しみたいですね。敬具。……夕暮れ伯爵』」

 

「な、なにっ!」

 

慌ててダークからひったくった葉書を、隅から隅まで穴の開くほど確かめるロン。

 

「その夕暮れ伯爵って……あんただろ?」

 

「た、確かにこれは私がファンに宛てて書いた返信葉書……し、しかし貴様のような地球人が、なぜこれを……ハッ!? まさか! 我が愛読者にいったい何をした……っ!!」

 

「落ち着きなって……宛先みろよ、宛先」

 

「宛先……?」

 

ロンがクルリと葉書を裏返せば、そこには『親愛なる蘇我久白様へ』とある

 

「ムッ! これはソガノクジラさんへ出した物だ!」

 

「知り合いカ?」

 

「……ああクジラさん。この方は私が投書を始めたのとちょうど同じ頃から私小説を投稿するようになっただけでなく、拙作にも初期の頃から度々感想を下さる古参のファンだったのだ……! つまり単なる一読者というだけでなく、いわば私のライバルであり同期! 正直、彼の作風はあまりに俗っぽく私の好みからは完全に外れていたが、その斬新な考察の切り口だけは目を見張る物があったと言うのに……! おのれェ!! 彼にいったい何をしたぁっ!!」

 

「あっ、そうなの? いやーなんか照れるなあ……」

 

「「……は?」」

 

いつになくヒートアップしたロンに困惑していたダークは、眼前でソガがヘラヘラと髪を掻きながら赤面しているのを見て、さらなる混乱の渦中へ叩きこまれた。

 

「なぜ貴様が照れる」

 

「えっ? 気付かない? 俺だよ俺。俺がそのソガノクジラ」

 

「な、ななな……」

 

「いやーヤオさ……ノンマルトに聞いたら、なんか俺の祖先が蘇我入鹿(そがのいるか)らしいんだよね……だからちょっともじって蘇我久白(そがのくじら)。どう?」

 

「なんと、あんちょくなっっっーー!!」

 

自分とはあまりにも懸け離れたセンスに、ロンは絶叫を上げて撃沈した。

 

「なのでお呼びに預かり馳せ参じましたー! イエーイ!」

 

「だからと言ってホントに来る奴があるかい! こんなもの社交辞令に来まっているだろうがーっ! 本音と建て前と言うものを知らんのかね君はーッ!?」

 

それはその通りだな……とダークは思った。

因みに、『チグリスの花が咲く頃に』とは宇宙において約束を先延ばしにする際の常套句である。

チグリスフラワーはよほど成育に関する好条件を揃えても100年に一度しか咲かないと言われる花で、花言葉は『実らぬ愛』

 

「知らないもんねー! 本気にされて困るような事を口にする方が悪いもんねー! 言質とられたくないならそもそも言うなって話よ。男に二言はない!」

 

「今分かったぞ! 私は君の作風を受け付けないのではなく、君という人間自身と相容れないのだとっ!」

 

「エーッ! そんな寂しいこと言うなよー……俺は伯爵の作品好きだぜ? たかだが蕎麦屋行くだけであんなに旅情溢れる事ある? 天麩羅のメニューで旬ってのはありふれてるけど、まさか蕎麦湯飲んで息が白くなるから秋だなぁ……はなかなか出せねぇよ。やられたッと思ったね、俺は」

 

「う、うぐぐ……そ、そうか?」

 

「ああそうさ! なんというか、日々の生活から四季折々の色彩を感じ取るセンスっていうの? 感受性が抜群なんだな。下手すると日本人以上に季節を理解してるっていうか、いや地球の外を知ってるからこそっていうのかねぇ」

 

「ふふふ……そうかそうか。もっと言いたまえ。あと私は君の作品が普通に嫌いだ。作者の我が出過ぎて鼻につく」

 

「うわぁ……辛辣ぅ……」

 

露骨に絆されるロンと、それなりに気落ちするソガを見比べながら、話が脱線していると思ったダークが軌道を修正するべく声を上げる。

 

「で、それは分かったガ……キミはどうやって入ってキタ?」

 

「どうって……これだけど?」

 

悪びれもせずソガが見せびらかすのは銀色の鍵。

まず間違いなく星雲荘の鍵だろう。

 

「問題ハ、それをキミがどうやって入手したかダ。その鍵は住人にシカ渡されていない。キミが持っているという事は、持ち主から強奪したのと同義ダ。もしもソウダトすれば、私ハ君との付き合いヲ考え直す必要がアル」

 

先ほどからダークが案じているのは、今現在このアパートから外出しているドロシーとララの事である。

 

彼女らの持ち物をソガが持っているなら、その身に何かあったという事に他ならない。

彼女らがそんなヘマをするとは思えないが、もしかすれば出先で問題を起こして、ウルトラ警備隊に身柄を拘束されたのでは……という不安が拭えないのだ。

 

ところがソガはなんともあっけらかんとしたまま……

 

「ああ、先生に借りた」

 

「先生……?」

 

「ま、まさか……ヘンミ先生かっ!?」

 

「うんそう」

 

あちゃあ……と頭を抱えるロンに、ある程度の事情を察したダークが冷たい視線を向ける。

 

その先生とやらが誰かは分からないが、どうやら今回やらしたのはこの大家だったらしい。

 

「おい、ロン」

 

「あー……いつかキュルウ星人の話をしたのを覚えているか?」

 

「アア、宇宙船が壊れて立ち往生シテいる奴カ……お前がコナをかけようとしていた……だが結局、入居は断わられたんダロウ」

 

「いやあくまで、しばらく泊まり込みの仕事があると言われただけだ。だから回答は保留にしておくから終わったら是非……と合鍵を渡していたんだが……」

 

近況は知らないらしいロンからチラと視線を送られて、我が意を得たりと頷くソガ。

 

「先生なら、宇宙船が修理できたからって、いったん里帰りしたよ」

 

「あああ~~もう先生ーっ!」

 

大家はがっくりと崩れ落ちた。

 

「なんダ、つまり……我々ハ、その先生トやらに体良く売らレタわけカ」

 

「待て待てダーク。あんまりヘンミ先生を悪く言わんでくれ……俺が言ったんだよ、『先生みたいにお困りの宇宙人がいたら、是非とも助けてあげたいのでもしも心当たりあったら教えて下さい』って。責められるべきは先生の善意に付け込んだ俺ってわけ」

 

「ムウ、しかしナ……」

 

「くれぐれも取り扱いには気をつけて下さいと言ったのに……よりによって地球人に合鍵を渡すなんて……」

 

「あ! そんな事言うなら、お前も悪いんだぞメトロン星人! お前……先生に自分達の正体についてちゃんと言ってないだろ! おおかた、先生が善人なもんだから、元侵略者の集まるアパートはさぞ心証が悪いと思ったのかもしれんが……ちょっと脛に傷ある連中が多いって素直に言っといたら、先生だって俺に鍵渡したりしなかったろうよ」

 

「ぐぬぬ……」

 

「フム、それならロンが悪いナ……単なる遭難者ナラバ、自分と同じヨウニ助けて貰えるト思ったわけダ」

 

「ウォッホン! えー、ヘンミ先生には今後、お会いした時に厳重注意をするとして……それならそのように制服ではなく、私服で来るべきではないかね!? 武器まで提げて、平和な話し合いをしにきたようには見えないが!」

 

二人からの呆れた視線に居たたまれなくなったのか、咳払いで露骨に話を逸らしたロンは、再び会話の主導権を握り直すべく、ソガの無神経な行動を糾弾しようとする。

 

それに、「あ?」と顔をしかめるソガ。

 

「こちとらバリバリ職務中だが? 制服脱ぎたくても脱げないんだが?」

 

「……ん? 何を言ってる。今は正月だぞ」

 

「ウルトラ警備隊に盆も正月もあるもんかい! これもれっきとしたパトロールだよ! いいですねぇ皆さんはお正月でねぇ! 俺だってサエコさんと家でぬくぬくしてたいわ!」

 

「アッ、ハイ……ご苦労さまです……」

 

その怒気に、ロンはすっかり小さくなった。

 

「そうカ……大変ダナ、お前モ」

 

「まあ、悪い事ばかりじゃねえよ。これ着てるとな、道聞く為に軒先尋ねても、誰も嫌な顔しねえんだ! 私服だとこうは行かねえよ。正月に下らねえ用事で邪魔すんじゃねえ!……と、こうさ。おかげでここに来るのが早いのなんの!」

 

「待て……その格好でうちを尋ね歩いたのか?」

 

それは……かなりマズい。

警察が聞き込みに来たというだけでも、ご近所内ではあらぬ噂が立つのだ。

 

ましてや、ウルトラ警備隊が直接調べに来たような住宅というのは……どう考えても宇宙人のアジトでしかない。

 

あらぬ噂どころか、根も葉も茎もついでにこんなに大きな実まであるのだからもうお終いだ。事実()()である。

 

これまで怪しまれないように続けてきた地道な努力が全てパア……

 

「安心しろよ、『地球防衛に多大なご協力を頂いたので、後日ウルトラ勲章を授与する予定です』って言っといたぜ。もうみんな盛り上がってキャーキャーよ。凄え懇切丁寧に道案内してくれたわ。よかったな、年明け早々ご近所のヒーローだぞ」

 

「なんて事をしてくれたんだ……!」

 

晴れやかな笑顔でそんな事を宣う隊員に、ロンは先ほどとは180度真逆の理由で頭を抱えた。

 

もちろん、怪しい集団として井戸端警備隊にマークされるのは絶対に避けなければならないが、逆に目立ちすぎるのも良くないのである。

 

出る杭は打たれると言って、あまりにも突出して良いことがあると、それはそれで今度は妬みや僻みを買う。

例え数日は持て囃されたとて、いくらか過ぎれば「あの家は得をした」と逆恨みするのが地球人という生き物だとロンは考えていた。

 

これまである程度親しく、それでいて悪目立ちしすぎず……という微妙なラインを維持してきたのに、この男は……

本人としてはこれで気を使ったつもりなのだから始末が悪い。

 

「いやあ、よっぽど上手くやってんだなお前さんら……どこ言っても良い評判しか聞かねえぜ。普通、ウルトラ勲章なんて言ったら一般人なんて目ん玉ひん剥くのに『そうでしょう、そうでしょう』『それくらいはすると思ってました』だもんなぁ……」

 

ロンとダークはソガの言葉に顔を見合わせた。

これは少々……やりすぎていたかもしれない。

 

彼らは気付いていなかったが、要は想定する地球人像としてあまりにも『ルールを守る』事を遵守しすぎた結果、例え本物の地球人であってもそれを全て守る事がいかに難しいのか分かっていなかったのだ。

 

その上、地球人の性格を非常に『恩知らず』で『浅ましく』見積もった状態で、そんな『野蛮人』からふとした拍子に通報されないように好感度を稼ごうとしていたものだから、まあどれだけ地域に貢献していたかという話である。

 

本当は、ウルトラ警備隊に疑惑の目を向けられても「彼らが宇宙人の筈が無い」と煙に巻く、いわゆる防壁の役目を果たして貰うつもりだったのに……いざその警備隊が褒めにやってきたら、逆に諸手をあげて呼び込んでしまうとはなんとも皮肉な話であった。

 

先ほどのキュルウ星人の件もそうだが、外面が良すぎるのも困りものだろう。

 

「ああそうだ、ナラザキ・ケンって男の子。知り合いか?」

 

「ン? どこかデ聞いたナ……?」

 

「ケンちゃん……ほら、キリエと仲が良い子がそんな名前だったはずだが? それじゃないか?」

 

確かに、近所に住むケンちゃん……つまりナラザキ少年とキリエの仲が良いのは嘘ではない。

 

だが……どちらかと言えば、その少年とより深く交流があるのはロンの方であった。

 

なにせ、あの真っ赤な勘違い野郎の野蛮極まる武器(アイスラッガー)によって真っ二つに切り裂かれ、もはや死を待つばかりだったロンを縫合し、その命を救ったのは他ならぬ彼の父親なのだから。

 

ロンが一人で歩けるくらいに回復するまでは、彼らの家に匿われていたこともあり、ケンちゃんとはその時に……まあ、端的に言えば仲良くなったのである。

 

その交流はまだちょくちょく続いており、偶に軒先で将棋を指したりしていた。

 

なんでもない風を装っているが、ソガの口から彼の名が出た瞬間に、部屋へ漂う芳香がかなり濃いものになったので、ダークは直ぐに誰の知り合いか嫌でも気付いてしまう。

 

「……で? その少年がどうしたね? いっておくが、彼は我々とはなんの関わりもないただの地球人だ。下手な事をすれば困るのは君らの方だぞ」

 

「いやあ……ここに来る途中、危うくバケツ一杯に水を引っ掛けられそうになってね」

 

参った参った……などとソガは笑っているが、ロンの口元から一切の光が消え失せた。

 

たかがバケツの水と侮るなかれ、この寒空の下で全身がずぶ濡れになればどうなるか……いくら警備隊の制服が耐熱防寒に優れた準宇宙服といっても、エアカーテンを起動していないうちから大量の水を被れば、隙間から水が入り込んでたちまち風邪をひく。

 

そうでなくとも普通に公務執行妨害にあたるので、いくら子供の悪戯といえど厳重注意ではすまない。もちろん、ナラザキ少年の方も単なる悪戯のつもりではなく、ガッツリ公務を妨害する目的でやっているので確信犯だ。それが幼子心に異星の友人をなんとか守ろうという、覚悟の上での行為であるなど、もはや口にするまでもなく明白だった。

 

「そ……れは災難だったナァ。ハハハ、子供というのはやんちゃなものさ。元気な事はいい事じゃないか。そんな些細な悪戯に天下のウルトラ警備隊がいちいち目くじらを立てるなんて大人げないぞ。……まさか殴ったりしてないよな」

 

「まさか! してないしてない。俺をなんだと思ってるんだメトロン星人。……まあ、その後もあの手この手で進路を妨害されはしたが、このソガ様に一泡吹かせようなんざ100年早いや。俺が言いたいのはね……君たち愛されてんね、ってことよ!」

 

バン! ……と彼が机に叩き付けたのは……

 

「……なんだ? これは?」

 

「さっき言ったろ。ウルトラ勲章」

 

「ウッ……ウルトラ勲章……!?」

 

音を立てた正体は、なんとも分厚い封筒で……ロンが恐る恐る中味を調べてみれば、金一封と共に、小さな勲章が五人分転がり出た。

 

「……なんの真似だ」

 

「なんの真似? そりゃあ地球を救った英雄には、相応しい名誉と報酬が授与されてしかるべきだと思うが?」

 

「……そんナ物いらン。持っテ帰レ」

 

「「えっ」」

 

ついつい脳内で算盤を弾き出してしまったロンに代わり、ダークがさっさと返事をしてしまう。

 

「勘違いしてイルようだナ。我々ハ、自らの領域ヲ守ったに過ぎナイ。そんな物ガ欲しくテやったと思われるのハ、不愉快ダ」

 

「うーん、少しばかり早計だとは思うが……まあ私も概ね賛成だな。地球人からこんなものを下賜される謂れはないね」

 

「そう言うだろうとは思ったよ。だがな、勘違いしているのはお前さんらの方さ、ダーク」

 

「ナニ?」

 

ダークの突き返してきた勲章を指差しながら、悪戯っぽく笑うソガ。

 

「それ、何に対しての表彰だと思う?」

 

「我々がゴース星人の基地ヲ破壊シタからダロウ」

 

「違うね。いや別にまるきり違うってわけじゃねえんだが……それだとそう言って固辞されるのは分かりきってたからな。名目自体は別だよ」

 

「名目……ダト?」

 

「そうとも」

 

すると、ソガはやおら立ち上がり……彼らに向かってビシリと踵を合わせると、それはそれは見事な敬礼を披露した。

 

「地下で我々一同の命を救って頂いた事! 感謝の念に堪えません! あの場に居た全ての隊員に代わって、小官からお礼を申し上げさせて頂きたい! 改めて、誠にありがとうございました!」

 

「……そういう事か」

 

いきなりの事に目を白黒させるダークよりも、ここではロンの方が素早く立ち直った。

その声にはなんとも面倒そうな、それでいてどこか複雑そうな響きがある。

 

「……確かに、君らを助けたのは我々からすれば()()()()()だったよ」

 

「この家を守るというだけならば、ミサイル基地を破壊さえ出来ればそれで構わない。俺達があそこで処刑されようがされまいが、そっちからすれば関係ない事だったはずだ……でも、そうしなかった。俺が今こうしていられるのは……例え、ものの()()()や気紛れであったとしても、君らが助けてくれたからさ。だから迷惑だろうがなんだろうが、ちゃんと礼を言わせてくれ。……本当に、ありがとう、ダーク。そして、メトロン星人」

 

「ムムム……」

 

ゴース星人の地下基地を破壊する事が、彼らの利益の為だったという主張を受け容れるならば、逆にそれ以外の行為は単なる善意によるもの……つまり、明確な意志を持って人命を救助した……という事になる。

 

「頼むから受け取ってくれよ。でなけりゃ、せっかくヒロタをキレさせてまで勲章を発効させたのに無駄になっちまうじゃねえか。『アンヌをよく救ってくれたで賞』だと思ってさ。な?」

 

「なるほど、アンヌ隊員か。まあ……報奨金目当てで地球人に手を貸したなどと思われてはなんとも不名誉だが、女性を救って叙勲されるというのならば紳士の誉れだ。有難く頂いておこう」

 

「おっ、そうこなくっちゃな! 流石はメトロン星人!」

 

「……ここでは冥導・龍と名乗っている。出来れば名前で呼んで欲しいね、地球人」

 

「ああ分かったぜ! さて、伯爵は受け取ってくれたが?」

 

「分かっタ。受け取れバいいんだロウ……」

 

渋々とではあるがダークも勲章を摘まみ上げて、ムスッとしたまま横を向く。

ロンは、それが彼の照れ隠しであると知っていた。

 

「しかし、たかだか数人の隊員を助けたくらいで勲章とはな……分かっているのか? 我々は元侵略者だぞ?」

 

「それが実は大袈裟でもなんでもないんだなあ……」

 

ソガは、彼らと別れた後の事を大まかに教えてやった。

ゴース星人の背後には、バルタン星人のマッドサイエンティストが暗躍していた事。

もしも、かの教授が野放しになっていれば、この星は次元装置の燃料としてくべられてしまっていた事。

 

そして……これは手前味噌ながら、あの場の誰か一人でも欠けていれば、教授を倒す事は出来なかったであろうという事……

 

「なるほどね。あの時もしも君らを見捨てていたら、地下基地を壊しても、どのみちこの星はお終いだったというわけか」

 

「そう。つまりおたくらは内心がどうあれ、間接的に世界を救っちゃってるわけ。ダークもお仲間に自慢していいぞ」

 

「シカシ……なぜ五人分なんダ?」

 

「ダークと、ロンさんと、あのゴドラ星人と……ミサイル逆転させた人と、確かキリエってのがもう一人いるんじゃないか?」

 

「残念ながら、あと二人分足りないな」

 

「ありゃま。じゃあ追加分は今度持ってくるとして……あのゴドラ星人は? 今日いないの? 直接礼を……「やめてオケ」」

 

「いやでも「やめておきたまえ」」

 

「……そんなに?」

 

「地球人からの感謝など、屁とも感じない手合いだぞ、あれは」

 

「……じゃあ、代わりに二人から感謝しといて」

 

「それが無難だろうナ」

 

ひとまず勲章の授与はそういう形に落ち着いた。

 

「いやー受け取って貰えて良かったよ。命の恩人に礼も無しってのは、尻がむずむずして仕方なかったんだ。ようやく落ち着いたよ……気が抜けたら一服やりたくなってきちまった」

 

ソガがチラリとちゃぶ台の上へ視線をやると黒い灰皿が置いてある。

 

「一本、いいかい?」

 

「構わないが、それならオススメのがある。ひと箱進呈しようか?」

 

胸元から煙草とライターを取り出したソガが、念のために確認をとった。

すると、クククと悪い笑みを浮かべたロンが、棚から真っさらのカートンを差し出してくるではないか。

 

「流石にそれは笑えん冗談だな……よしてくれ、それで痛い目見てるんだ。いまさら伯爵を疑うわけじゃないが、こればかりは余計なことを考えずに吸いたいね」

 

「そうか、残念だ……で? このまま居座る気でいるのを見るに、まだ何かあるのかね?」

 

「うん。これは出来ればダークと相談してからにしたいんだが……」

 

「ほう? ここの主である私を差し置いて?」

 

家主たるロンから、ふいと視線を外して真横の影法師を見るソガに、彼の花弁がピクリと震えた。

 

「おっと! そういえば伯爵。話は変わるが、先生からこれ預かってたんだった……ほれ」

 

「なんだこの飾り気の欠片もない容器は……」

 

「開けてみ」

 

ソガの言葉を訝しみながらも、ロンが金属製の筒を開けた瞬間……彼のオーデコロンに負けないくらいに芳ばしい薫りが中から噴出し、リビングに充満した。

 

「なんダ? この匂いハ……」

 

「待てよ……この醸し出される重厚感。そして夜霧の燻る向こうにチラリと垣間見えた朝日の如きフルーティさ……ま、まさかコレはッッ!!」

 

「なんか伯爵、それ飲みたかったらしいじゃん」

 

「間違いない! 『キュルウの夜明け』かッッ!?」

 

「なんダそれハ」

 

「ヘンミ先生の地元で採れるコーヒーだってさ」

 

「なんダただのコーヒーカ……」

 

ダークの漏らした呟きに、頭部のヘタをクワッと見開き、割れ目から果汁を飛ばしながらまくしたてるロン。

 

「ただのとはなんだ知らないのかキミは!! これだからモノの価値が分からない星人は困る……いいかね? これはかの『コピ・ノバク』とも並び銀河の至宝とも称される幻のコーヒーなのだ! キュルウ星の特殊な土壌でしか成育できず、さらにその実を原生種族たる彼らの酵素で時間をかけて除去した時にしか発生し得ない独特の薫りとコク……それは全てのメトロン紳士にとって憧れの一杯なのだぞ!!」

 

「そうカそうカ良かったナ」

 

「なんか先生も旅行中に飲むつもりで一缶だけ持ってきてたらしいんだけど、不時着してからは死ぬ間際に飲もうと思って開けられなかったらしくてさ……」

 

「そ、そんな貴重な一缶を!? 私にっ!?」

 

「まあ、これからは自由に帰れるからってよ……なんだかんだアパートに誘って貰えたのは嬉しかったみたいだな。あ、お土産でも持って帰るから遠慮せず飲みきっていいらしいぜ」

 

「おお……先生……先生……ッ!!」

 

ヘタから滂沱の如く蜜を溢れさせては、空に向かい五体投地するロンに、二人は苦笑いするしかなかった。

 

「……で伯爵。一刻も早くそれを味わいたいんじゃないかな?」

 

「あ、どうぞごゆっくり~」

 

見事な変わり身の早さで華麗に一礼すると、コーヒー豆を後生大事に抱えながらイソイソと去っていく大家。

その背中へ笑顔で手を振っていたソガは、改めて真面目な顔でダークに向き直る。

 

「さて、今日の本題だが……」

 

「マテ、少し準備スル」

 

言うや否や、二人の座る空間を黒いもやが包み込んでいくではないか。

突然の事に思わず腰へやりかけた手を慌てて抑えながら、不安げに周囲の暗闇を見渡すソガ。

 

「こ、これは……」

 

「心配するナ。盗み聞き対策ダ。これからする話ハ、私としてモ彼らに聞かせたくナイ」

 

「そ、そうか……それはありがたい……じゃあさっそく相談なんだが……どうだダーク。これを機にちょっと地球の為に働いてみないか?」

 

「……断ル」

 

にべもない。

 

「俺とお前の仲じゃないか……それでも駄目か?」

 

「フム。そう来るト思ったヨ。じゃあ我々ノ仲ダ。こちらカラモ、それについてヒトツ聞いてイイカ?」

 

「ああ、なんなりと聞いてくれ!」

 

ドンと胸を叩いて頷くソガに、ダークはあまりにも素っ気なく質問した。

 

「お前ハ誰ダ?」

 

「えっ……誰って……ソガだけど?」

 

「見くびるナヨ。最初ハ分からなかっタガ、お前ハ私の知っているソガではナイ。彼を何処へヤッタ? 何が目的ダ? 言ってオクガ、今このダークゾーンが繋がっテいるノハ、星雲荘から遥か上空ノ成層圏ぎりぎりダ。私ヲ殺してモ、維持者ヲ失ったダークゾーンが解除され、お前ハ虚空へ強制排除されルようになってイル。例えお前ガ飛行可能ナ種族デモ、みんなの逃げる時間ハ、充分ニ稼げル」

 

「あの一瞬でそこまで!? まったくお前って奴は……ますます気に入ったぜ」

 

「貴様などに言われル筋合いハない。さあ、ソガに何をシタ!! 彼を帰セ!」

 

観念したように両手を挙げるソガ。

その顔はなんともいえない申し訳なさでいっぱいだった。

 

「悪い悪い。そんな覚悟までさせる気はなかったんだ。本当にお前さんらへ危害を加えるつもりはないよ……ああ、これがいかんのだなぁ……ほれ、これで俺は正真正銘、丸腰の単なる地球人さ。空から落ちたらそのまま死ぬぞ」

 

ソガはホルスターから外したウルトラガンをちゃぶ台の上に放り投げ、代わりに煙草を咥えると、眉を下げたまま煙を燻らせた。

 

「んまー……60点ってとこか」

 

「ナニ……?」

 

どこかで聞いたような評価に、ダークはさらに目を細める。

 

「因みに、どこでそう思ったか聞いても?」

 

「ここヲ訪ねてキテ、そんな事ヲ提案してイル時点で奴ではナイ。ソガならバ、我々の事は放ってオク。それがお互いにトッテちょうど良い距離感ダト分かっているからダ」

 

「ああ……確かに相棒ならそうだろうなぁ……慣れない事をするとこうなるか……なかなかアイツみたいに上手くはいかんね」

 

「あとハ、細かな仕草が時折違うナ。お前ハ、戦士としての立ち振る舞いガ、板につきすぎてイル。ダークゾーンを展開してモ、ソガは無警戒にやりすごしたダロウ」

 

「ハハハ! 違いない! ちょいとばかし危機感ってもんが薄過ぎるんだよなぁ……アイツは。じゃあ、今さっきまでは中々良いセンいってたんじゃないか?」

 

「いや、駄目ダ。お前……マヤが足ヲ引き摺るのを見て『憐れんだ』ダロウ。恐らくソガは絶対ニそんな目で彼女を見たりハしないゾ。ロンの奴ハ、不具の少女ナラバ同情心のひとつデモと狙ったようダガ……甘いナ。奴の基準ハ、見た目や境遇などトハ別の……私にハ理解できナイ所にアル。少なくトモ、彼が今の彼女らの姿ヲ見て、真っ先に言うノハ多分『ざまあみろ』ダ」

 

「お前さん……相棒の事をいったいなんだと思ってるんだ? 友達だろ?」

 

「侵略者絶対殺ス星人」

 

ダークはずっと、ソガの事を地球人にしては随分と奇特な奴だなと考えていたが……彼の価値観や行動原理は、同族である筈の地球人から見ても、ダークから見たソレと同じように感じるのではないか……と、それなりに長くなった地球生活の中で思い直していた。

 

ところが、目の前の男はどうやらそうではなさそうだ。

どちらかと言えば、より地球人らしい……いわゆる普通の感性に従っているように見える。

 

故にダークは、このソガと名乗る男を偽者と断定したのだが……

 

「観念するよ。確かに俺は、お前さんの知ってるソガじゃない。だが……完全に別人ってわけでも、ねえんだぜ?」

 

「どういう意味ダ?」

 

弁明代わりにソガはまず、ダークへこれまでの種明かしをしてやった。

 

つまり、この肉体とそれに付随するソガ隊員という身分は、元々は自分のものであるという前置きと、その肉体にひょんな事から別宇宙の精神体が乗り移り、今まで代わりにソガ隊員として振る舞っていたに過ぎないという事を。

 

そして……彼の無二の親友はつい先日、使命を終えると同時にこの肉体から抜け出して、自らの居るべき場所へと帰ってしまったのだ……と。

 

「だから相棒を返せと言われても、それだけは出来んわけだな。いきなりで信じられん話かもしれんが、これ以上に言いようが無い。悪いけども勘弁してくれ」

 

「ソウカ……どこか普通デハ無いと思っていたガ、奴が違ったのハ時代ではナク、宇宙そのものだったカ」

 

「おや、えらくすんなりと信じるじゃないか」

 

「その話デ、今までノ合点がいっただけダ。こんナ荒唐無稽な話ヲ、キミの頭脳で考えつく訳がナイ。それくらいハ、今の会話で分カル」

 

「チェッ、それはそれで俺の頭が固いみたいで複雑だなぁ……」

 

顔をしかめたソガは、煙草をぐりぐりと灰皿へ押し付けた。

 

「で、本題はこっからだ。確かに相棒は俺の中から出て行った……が! そのとき妙な事になっちまったらしくてな」

 

「妙なコト……?」

 

ニ本目に火を付けながら、うんと頷く。

 

「実は……相棒の奴、記憶やら感情やらを俺の頭ン中へぜんぶ落っことしていきやがった」

 

「……すまナイ。もう少し分かるヨウニ説明してクレ」

 

「んー……なんと言ったらいいのか……俺自身は『ああこういう事か』ってのがなんとなく分かるんだが、言葉にしようとすると難しいんだよなぁ……俺は確かに俺という人間に戻ったで間違いはないんだが……これまで過ごしたオレの部分もあるというか……」

 

「……つまり、人格ガ統合されタという事カ?」

 

「あー! ソレソレ! そんな感じ……でもねぇなぁ……俺は相棒じゃあないんだが、一度は俺の頭で考えていた事だから、後から思い出せるというか……オレが俺の一部になっちまった? いや、それを統合って言うのか? だがやっぱりさっきまでのは、あくまで相棒のフリであって、俺は俺なんだよなぁ……」

 

「ウーム。症例が特殊過ぎテ、今のキミに該当スル言語が存在しナイのかもしれんナ」

 

ソガの現状を解明する事に対し、さしものダークも匙を投げた。

本人がこの調子では問診もままならないし……なにより、彼はそれをとっく受け容れてしまっているようであるので。

 

「だから相棒が頭のはじっこで、お前さんらの事もなんとかしてやりたいと考えていた事も分かるし……なにより俺自身が、お前に恩を返したい」

 

「それは『彼が』ダロウ」

 

「いいや違う! お前に命を救われたのは俺もなんだ! それも二度!」

 

「確かにソノ肉体はキミの物ダガ……」

 

「実感としての話だ。お前さんは気付かなかったかもしれんが、地下で敵に囲まれていた時、俺は既に俺だったのさ。それが二度目。そして一度目は……あのマゼラン星人に撃たれて死にかけていた時だよ」

 

「確かニそんな事モあったナ……ダガ、なぜキミがそれを知ってイル?」

 

「俺の意識は、相棒が気を失っている時にこそ表に出て来るようになっている。だからあの時……ダンから託された俺へ、必死で治療を施すお前さんの姿を、間近で見ていたんだ……この目でしっかりとな」

 

「ム、ウムゥ……」

 

あの時は、躊躇うダンをいち早く出発させる為に威勢良く啖呵をきったはいいものの、ダーク自身も瀕死のソガを蘇生するまでかなり取り乱していた覚えがある。

それを見られていたというのは少し……

 

「何度だって言うぜ。お前は命の恩人だ。本当にありがとうダーク」

 

「ま、マア……そうか」

 

「だからこれはアイツの記憶としてじゃなく、俺自身の望みとして、お前に恩を返したい。ただ、俺は相棒じゃないんでな。その返し方は俺なりのやり方でやらせて貰う」

 

「……それガ、この提案ダト?」

 

「そうだ。お前に恩を返す一番の方法は、お前の仲間達であるペガッサ難民を一人でも多く援助するのが一番だと考えている。そして、その為にはやはり彼らを地球の人々に表立って受け容れさせなければならない。それにはお前の協力がどうしても必要なんだ!」

 

「……分かっタ。聞いてヤル。判断ハその後ダ」

 

横を向いたダークがボソリと呟くのを聞いて、ソガの表情がたちまち晴れる。

 

「いいか? まだまだ地球人の中では『宇宙人=侵略者』という思い込みが強い。そりゃあこれだけ生活を滅茶苦茶にされてきたんだ。仕方が無い。……だが逆に、その地球人の俺達ですら、大大大好きな宇宙人がいる!」

 

「……ウルトラセブンか」

 

ちゃぶ台を掌で叩き、「大正解!」と叫ぶソガ。

 

「人間誰だって、自分を助けてくれる相手にはなんとなく絆されちまうもんさ。俺達ウルトラ警備隊が市民から受け容れられているのも、元を正せばそう。つまり……お前達が地球人を助けた実績さえあれば! みんなの認識は変わるって事だ! これはダンが証明してくれた! なんたって、アイツも宇宙人には違いないんだからな!」

 

「フム……」

 

ダークは、そう上手くいくものか……と冷静に考える一方で、確かに「その通りだ」と納得してしまった部分もある。

 

それは、銀河においてM78星雲人がどう見られているかを知っているからだ。

ソガの論理を宇宙規模に拡大したものが、そのまま彼らの評判といってよい。

 

彼らに対して宇宙全体が好意的か否かはかなりバラツキがあるものの……「信用」という一点においてはまず間違いなく不動のものだろう。

侵略を生業とする種族からは蛇蝎の如く嫌われているが、それは彼らのような者達からすらも「信用」されている事の裏返しである。

 

ではなぜそれを誰も真似しないかと言えば、単純に『できない』という事と、自分に『利益がない』からだ。

 

「俺が頼みたいのはあくまで『協力』だ。お前さんらは、地球に宇宙人がこっそり入ってきたり、怪しい動きがあるってのを発見したら俺達へ教えてくれるだけでいい。戦うのは俺達がやる。そういうの得意だろ? 今までだってアパート住人になりそうな奴を捜してたわけだから、やる事はほとんど変わらない。お前達は小さい労力で協力者としての実績が積める。俺達は地球人じゃ気付けない情報が手に入る。相棒によれば、これぞ『うぃんうぃんの関係』と言うらしい」

 

ダークは考えた。

隠れ住むというのは、実のところかなりリソースを使う行為だ。

そして彼らが現状として逃げ隠れしなければならない相手というのは……ウルトラ警備隊である。

 

つまり、彼らの御墨付きさえ貰えれば、そちらへ回していたリソースを他の事に使えるという事に他ならない。

 

それは自分たちにとっては充分な『利益』と言える。

 

第一、これからもこの星へ住み続けなくてはならない以上、好む好まないに関わらず、今回のゴース星人やマゼラン星人の時のように、例え不干渉を貫いていも、否応なしに当事者として巻き込まれる可能性は出て来る。

 

気付かぬ内に星や大陸ごと粉砕されました……などという事態は彼らとしても回避したく、今後も自分たち以外の宇宙人へアンテナを張り、出来る限り動向を探る……というのは、ソガ達に協力せずともアパートが存続する為にはこれからも必要な仕事であった。

 

どうせやらなくてはならない仕事なら、そこへ付加価値を付けた方が遥かに得であると言える。

 

「これを始めるなら、間違いなく今がちょうど良い時期なんだよ。ほら、この前の事件でキュラソの保安官とワイルド星の大使が、デカい声で所属を叫びながら乱入してきただろ?」

 

「アア、我々も聞いタ」

 

「あの通信って、それこそ全世界の周波数帯で聞こえてきたらしくてさ。一般人にも「地球の危機に駆け付けてくれた宇宙人がいるらしい」ってのが大なり小なり知れ渡ってるみたいなんだ。……あとこれはオフレコで頼みたいんだが、銀河連邦からも正式に批准の打診が来てる。という事はつまり、こっからはかなりのドタバタが予想されるわけだが……その混乱にかこつけて、しれっと流れに便乗しちまおうって算段なんだよ!」

 

要はソガが言っているのは、宇宙人に対する法整備が未熟なうちに今までの経歴を有耶無耶にしつつ、流入する大量の連邦側構成員の中に紛れて、さも「人材交流としてやってきましたが何か?」という顔で新たな立ち位置を確立するという……公務員の口から出たとはとても思えないくらいには真っ黒な話であった。

 

地球人から見れば、何星人が本当に連邦へ所属しているのかなど判別のしようが無く……逆に連邦側市民からは「元から地球で暮らしていた奇特な人々」でしかないわけだが……ウルトラ警備隊員がそれで本当にいいのか? と、提案された側である筈のダークですらも心配になる。

 

ましてや彼が引き入れようとしているのは、いわゆる前科者達であって……まったく正気の提案ではない。

 

正気ではない……が、正気で地球が守れるならば苦労はない、というのが『相棒』が辿ってきたこれまでの記憶を追体験したソガの、偽らざる本心になってしまっていた。

 

「……というか、勝ち馬に乗るなら逆に今しか無いって……分かるだろ?」

 

「……」

 

押し黙るダーク。

ソガも、彼がその頭脳でたくさんの事を同時に考えながら、それでも悩みに悩んで迷っているのだろう……と分かっていたので、そのまた何も言わずただただ煙草を薫らせ続けた。

 

そして、そろそろ灰皿に溜まった吸い殻で一文字かけそうだな……と思い始めた時、ダークがようやくポツポツと語り始める。

 

「私ハ……ここの奴ラを、気に入ってイル……全員、本当にどうしようもナイようなロクデナシばかりダガ……それデモ、彼らを見捨てテ一人だけまっとうナ道ヲ歩もうトハ……思わナイ」

 

「そうか」

 

「そしテ……出来るコトならば……彼らにモ、きちんと更生シテ、いつかは大手を振っテ表ヲ歩ける機会ガきて欲しいト……そう思ってイル」

 

「なるほどな。じゃあ渡りに船だ」

 

「……問題ハ……彼ら自身ガ、そのような道ヲ望んでイナイという事ダ……私モこのヨウナ考えガ、いかに押し付けがまシク傲慢な事カと、分かってはイル。現に、彼らハその話ヲ露骨に嫌がるシナ」

 

「まあ……それでハイそうですかとなるようなら、元から他の星で侵略なんぞせんわな」

 

コクリと頷くダーク。

 

「ダガ……こうも思ウ。このままデハいつか必ズ、破滅する時が来るダロウと。こんな生活ガいつまでも続クトハ限らナイ。完璧なシステムだと思っテいたペガッサが、あっけナク滅亡したヨウニ……」

 

あの宇宙一の都市と言われたペガッサですら、小さな綻びから崩壊したのだ。ましてや宇宙人だけの偽装生活など……

 

「ソガ。お前は言ッタ。恩返しのやり方ハ、あくまデ自分に出来る形で行ウト。だから、私モそうする事にスル。例え彼らガそれを望まズとも……私ガ彼らノ未来に何か出来る事がアルと言うのナラバ……私ハ……」

 

 

―――――――――

 

 

『ちょっと! どうしてアイツらを二人っきりにしちゃったわけ!? いきなり消えちゃったじゃない!』

 

星雲荘のリビングでは、染みのように広がる暗闇を前にして、住人達が右往左往していた。

 

「大丈夫だ。問題ないよ。逆にミーヤ君は何がそんなに不安なんだね?」

 

『だって相手はウルトラ警備隊なのよ!? ダークが殺されでもしたらどうするの!』

 

「ほう! 普段はあれ程ダークを憎い憎いと言っているのに、彼の命の方を心配していたのか」

 

『……ッ!? ア、アイツが死んだら、誰がマヤの足を診るのよ……』

 

下を向いてどんどん尻すぼみになっいくミーヤ。

あのソガという男は、自分ですらも敵わない悪鬼羅刹の一人である。まして、ダークは戦う力を持たない非力な医者だ。

 

そんな両者を一所に押し込めておくなど、正気の沙汰では無いと言いたいのである。奴があの笑顔の仮面をかなぐり捨てて本性を表した場合、ダークは為す術もなく一瞬のうちに射殺されるだろう。

 

改めてそれを想像してしまい、ミーヤは妹の主治医を失うかもしれない可能性に恐怖した。

 

ところがロンは実にあっけらかんとした様子で、先ほどから煎った豆だか種だかを鼻歌交じりに磨り潰しているだけで、こちらの事など見向きもしないではないか。

 

流石にここまで薄情な奴だとは思わなかった。

 

「それについては心配無い。彼はダークへ対して個人的に好意を抱いている。例えはじめからここの住人を抹殺するつもりでも、ダーク一人だけは最後まで生き残る事を許されるだろう。もしもそうだった場合、真に案ずるべきは我々の方だよ?」

 

「でも、ふたり、が、消えて、ずいぶんに、なります」

 

「中で積もる話でもしてるんじゃなイカ?」

 

この中でほぼ唯一、ソガの恐ろしさを知らないイカルガが呑気な事を言うが、それにハッと気付いた様子を見せたのはキリエだった。

 

「もしかしてあの人……ダークにいちゃんを引き抜きに来たのかな」

 

『引き抜きですって?』

 

「うん。だってダークにいちゃんとお友達なんでしょ。この前の事で勲章まで持ってきたんだ。ダークにいちゃん優秀だから、地球人としては喉から手が出るほど欲しいよね」

 

キリエはかつて、先遣隊として情報工作を兼ねた地球人スカウトをやっていた経験がある為か、すぐさまその可能性に思い至った。

なんならその際にコナをかけていた青年へ、情報提供への感謝としてウルトラ警備隊が今回と同じ勲章を持って来た事まで知っている。

 

あの時フクシン青年が敵を見つけたのは、あくまでたまたまだったが、ダークが宇宙人を察知出来るのは偶然ではなく実力であり、彼を引き込んでおけば今後も人力レーダーとして成果を上げ続けてくれると地球人が気付いても、何らおかしくはない。

 

「ダークにいちゃんは、ペガッサ市のみんなが生活に困らないように、仕方なく僕らと一緒にいるだけだ。その方が情報も物資も手に入りやすいからね……。本心では、僕たちみたいな侵略者予備軍の事なんか嫌っているんじゃないかな……だから、あの人がもっといい条件を出したら、こんなアパートすぐにでも……」

 

『……おあつらえ向きに、手土産になりそうな奴もいるしね』

 

「わ、吾輩の事を言っているんだな!? 売られるなら吾輩一人より、ここのみんな纏めてになるんじゃなイカ!?」

 

「そう、ですね。私達、は、所詮……」

 

「ハハハ!」

 

その場の雰囲気に全く似つかわしくない笑い声が響いた。

ひとしきり笑うのをやめたロンは、ゴリゴリ五月蝿い手回し粉砕器のレバーから手を離し、その中味を慎重な手つきで抽出機へ移し替える。

 

「それこそ、まさかだ。彼にそんな選択は出来ないよ。君らもそれくらい、分かっているだろうに」

 

『じゃあなんで出て来ないのよ!』

 

「まあ、おいそれと返事が出せる話ではあるまい。彼は優柔不断だからなぁ……」

 

「おや? その、口ぶり。ロンさんは、知って、いるん、ですか? 中で、お二人が、何を、話して、いるか」

 

「ん、どうだろうね。確かにおおかたの察しはつくが……それは彼の口から直接聞くとしようじゃないか」

 

抽出機へと静かに水を注ぎ終わったロンが、その蓋をパタンと閉めてこちらを向く。

その視線は、きょとんと呆ける住民達ではなく彼らの背後、徐々に暗闇が晴れ往くリビングの様子を捉えていた。

 

「やあ、早かったな二人とも。生憎とドリップを始めたばかりでね。会談後の一杯には間に合わなかったか。まあいい。出来上がるまで時間はたっぷりあるんだ。何をそんなに話込んでいたのか、触りくらいは聞かせてくれるんだろう?」

 

「あ、アア……ちょうど良かっタ。ロン、それカラ皆にも。聞いて欲シイ事があるんダ……実はナ……」

 

ダークが遠慮がちに口を開きかけた……その時。

 

「ただいまー!」

 

玄関口から、建て付けの悪い引き戸を開く音と共に、女の明るい声が聞こえてくる。

 

「アラ? 鍵が開きっぱなしになっているじゃないの。キチンと戸締まりをしないのは、ウチのruleに反する事だわ! だあれ? 新年早々、決まり事を破る悪い子はー? 良い子にしてないと、こわーいウルトラ警備隊がやってきて頭からバリバリ食べちゃうんですからね……って……」

 

「あっ」

 

「……キャアアアアアアアアアアアッッ~↑↑!!」

 

両手に赤い袋を抱えながら、仕立ての良いコートを着た女が上機嫌で居間に入ってくるなり、まるでcockroachを見つけた時のような声で叫び声を上げる。

 

半狂乱になって、ひとしきり「おーまいごっど」だの「ファッ○ンシ⚪︎ト」だのを連発しまくった後、ようやく冷静さを取り戻したのか、震える声でリビングの中央で突っ立っている地球人の男を指差した。

 

「ど、どうしてこの男がウチに!? なぜみんな平然としていられるの!? だって……ウルトラ警備隊の、よりによって、あのソガよ!?」

 

「ヤレヤレ、姦しいノガ帰ってきたナ……ドロシー、ひとまず落ち着ケ。彼ハ我々を攻撃シナイ」

 

「ん? ドロシー……?」

 

女のハーフ染みた顔を眺めながら強烈な既視感に首を捻っていたソガが、ダークの言葉にハッとして鏡映しのように指をさす。

 

「お前! ドロシー・アンダーソンか! しかもペダン星人の方の!! ちょっと顔が変わってるから分かんなかったぞ! ……おい待てダーク。あの時言ってた、『故郷に帰してやりたい女』って……まさかコイツの事じゃないだろうな!?」

 

「What!? ダーク、貴方そんな事まで言ったの!? それもよりによってその男に!? ……ちょっと冗談やめてちょうだい……アタシ、帰る気なんかさらさら無いって言ったじゃないの……」

 

頭を抱えてしゃがみ込むドロシーに、ダークは少しばかり申し訳ない気持ちになりながら、ソガの誤解を解くべく頭を回す。

非常に不本意ながら、この男を宥めるコツも分かってきたところだ。

 

「言っておくガ、彼女ガいなけれバ本物のドロシーは帰ってこなかっタ上に、記憶消去ヲ不完全なままにシタのも彼女ダ」

 

「あ、ああ……それはマーヴィンに聞いた通りだけど……」

 

「あと、ドリルミサイルを暴発させたのモ彼女だし、なんナラお前のアノ……巨大ロボット再建計画に裏カラ手を貸したのモ彼女ダ。『足をむけて寝られない』ダゾ」

 

「えっ!? マジ!?」

 

「……それに関しては本当よ。そっちのドロシーが困ってたから、あの子にいろいろ教えてあげたわ。……ペンパルなの、アタシ達」

 

観念したように語り出すドロシーに、ソガは顎が外れるくらいにあんぐりと口を開けて固まっていた。

 

「……P.D名義でいくつか資料が届かなかった? アレ、全部アタシとダークからの提案書よ」

 

「……えっ? あれってプロジェクト・ダイテッカイの略じゃなかったのかッッ!?」

 

「ドロシー=ペダン、あるいハ『ペガッサのダーク』だ。だいいち、いくら他の宇宙人ガ協力したとはイエ、製作者であるペダン星人の協力もナシに、ペダニウムエンジンの修理なんテ出来る訳がナイ」

 

「し、知らんかった……!」

 

脱力したソガが椅子に座り込むのを見て、ダークは彼がもはやドロシーをこれ以上敵視出来なくなったのであろう事を確信する。

 

彼はなんというか……敵意や遺恨を、何かしらの恩が上回ったと感じた時、それらを全て清算してしまう悪癖があった。

 

「……そんじゃあ好都合だ。もう既に似たような事やってたんだからな」

 

「好都合……?」

 

要領を得ないまま小首を傾げたドロシーの美しい顔に、サッと影がさす。

 

「おいドロシー。この身を差し置いて何を寛いでいるのだ。せっかくの大漁だったのだぞ。この身が勝ち取ってきた獲物を何処に置けば良いか、早く教えろ」

 

それは、ドロシーの優に5倍量の福袋を担いだ巨躯の宇宙人だった。紅と白のなんとも正月に相応しい……

 

「あ、ゴドラ星人」

 

「むっ?」

 

「……まずい」

 

目が合うこと数秒。

 

「ヌォオオオッ!! ここで会ったが百億年!! 覚悟ーッ!」

 

「なんでー!?」

 

福袋をほっぽり出し、ソガに向かってハサミを振り上げるゴドラ星人。

 

「ソガ! こっちダ! みんな! ララを止めロッ!」

 

「ほぉら後藤くーん。落ち着こうねー」

 

ロンが沈静作用のあるフォロモンを振りかけてみるも……

 

「ああ、こりゃ駄目だ。バーゲンですっかり闘争心に火がついている」

 

「グオオオオッ!」

 

「ララ姐ちゃん! その人は姐ちゃんの狙ってるオスじゃないよ!」

 

『イカルガ! 行きなさい!!』

 

「わ、吾輩が!?」

 

『アンタがお姐様を止めなくて、いつ役に立つのよ!』

 

「イカルガさん、しか、頼れ、ないん、です!」

 

「マ、マヤ氏……うぉおおおっ!」

 

「ほう! イカルガか! その意気や良し! しかしこの身の心は既にあの方のもの! 今更そんなアタックでこの身が墜とせるものかぁああ!」

 

「いや、吾輩はノーサンキューなんだなってぐわあああああー!!」

 

「イカルガさーん!」

 

「わぁあ! 私の至福の一杯があーッ!」

 

ガシャーン! と何かが破壊される音を背に、裏口から脱出したダークとソガ。

 

「やれやれ……前途多難だなぁ」

 

「今日ハ話どころでは無さそうダ……説得はしてみるガ、返事は次の機会にしてクレ」

 

「期待して待ってるよ。もしもOKそうなら、その住所を用意してあるから、空間でも繋げてくれ」

 

「住所ダト? ここハ一体……?」

 

ソガに手渡されたメモを訝しむダーク。

 

「このセーフハウスも手狭になってきたんじゃないか? 今日みたいな事があった時にも、出入り口は沢山あった方がいいだろ」

 

「手配が早すぎるダロウ……」

 

確かにダークゾーンを介せば、異なる場所にある拠点を統合する事も可能だが……

色よい返事が返って来なかったら、どうするつもりだったのか。

 

「因みに、その二軒隣が俺とサエコさんの新居だから」

 

「な、なんダト!?」

 

「これからはご近所さんって事で! 宜しくなー!」

 

走り去って行く友の背に、ダークは溜息をついた。

 

「しかし、なんだっテこんな場所ニ……」

 

 

―――――――――

 

 

 

……時は流れて。

 

その日、坂田健はガレージで流星2号につけたスタビライザーの最終チェックを行っていた。

 

彼はこの坂田自動車修理工場のオーナーであると同時に、優秀な技術者だ。

 

実はこのスタビライザーは、地球防衛軍の特殊選抜チームであるMATから正式に依頼を受けて、部隊の専用車両マットビハイクルへ取り付ける為に研究していたものである。

 

マットビハイクルというのは、いわゆるポインターの簡易量産型だが、防衛軍は珍しくこの軍縮案に賛成した。なんでもかつて地球防衛に多大な貢献をした車両を模したのが、ゲン担ぎを大切にする軍人達にウケたとかないとか……

 

あくまで健は与太話の類だとは思っているが、コスモスポーツ自体は良い車両である。なにせ健自身、レーサー時代に何度も世話になった言わば戦友のようなものだ。

 

残念ながら健はレース中の事故で足を悪くして以来、レーサーとしての道を断念してしまったが、あの時の相棒がこうして姿を変えつつも、平和の為に今なお走り続けているというのは、健からしてみても感慨深い。

 

閑話休題。そんなマットビハイクルの改良依頼が、何故このような町工場へ持ち込まれたかと言えば……そのMATの一員である郷秀樹が、元はこの坂田自動車修理工場の工員兼専属レーサーであり、健の技術者としての実力を見込んで協力者に推薦したからなのだった。

 

健は、なんとも不思議な縁があったものだ……と独り言ちる。

郷は不思議な魅力のある青年で、健とは家族ぐるみの付き合いだった。

妹のアキや弟の次郎とも仲が良く、特に年の離れた次郎は、郷を本当の兄のように慕ってよく懐いている。

 

もちろん健自身も、郷の事を最早もう一人の弟のように感じていたし……彼が名実共に家族となる日もそう遠い事ではないだろう。

 

アキとの仲睦まじい様子を見るのも、健にとっては幸せな事だった。彼にならば、アキを安心して任せられる……

 

ただ、最近はどうしてもMATの活動で忙しいらしく、郷があまり構ってくれなくなったとアキがむくれ気味な事だけが心配である。

どうやらお隣の夫人も似たような経験があるからか、アキの事をよく慰めてくれる事だけが小さな救いだった。

 

ついこの間も、シーゴラスだとかベムスターだとか言う恐ろしい怪獣がまたしても現れて、危うく東京が滅茶滅茶になってしまうところであった。

この工場も含めてここら一帯が無事なのは、まさしくMATと防衛軍、そしてウルトラマンの活躍のおかげに他ならない。

 

アキもその事はちゃんと分かっているので、本心から怒っているわけではないのだが……こればかりは仕方ない。

 

そんな事を考えつつ、ふと時計を見ればそろそろ件のアキが帰ってくる頃合だ。

つい先日、ひょんな事から郷の腕時計が壊れてしまい、彼女はそれをクリスマスプレゼントとするべく、新しいものを買いに出て行ったのである。

 

「早~く♪ 来~い来いお正月~♪ ララララランラン♪ ふふふふーん♪」

 

そうら、塀の向こうから浮かれた鼻歌が聞こえてきた。

 

なんとも上機嫌なことで。そんなに正月休みのスキーが待ち遠しいか。

 

彼氏の分を買ってやるのもいいが、俺の時計だってそろそろ年季物なんだぞ……などと考えていた時だ。

 

「何するのよ! 離してよっ! 離してったら!!」

 

「……アキ?」

 

ブレーキ音と同時に、呑気なメロディーが中断され、代わりに妹の切羽詰まった声。

 

「お、お兄さーん! 助けてーッ!」

 

「アキ……ッ!!」

 

急発進するエンジンの響きと、アキの悲鳴が同じスピードで移動する。

健は、妹の悲鳴を聞いて咄嗟に走りだした。

家の目の前で誘拐だなどと! 許せるものかっ!

 

足が悲鳴を上げるのも気にせず、いったい何処にそんな力があったのかと思う程のスピードで、そのまま表通りに飛び出した。

 

「待て!」

 

健が両手を広げて車道に躍り出た時、あまりに急な出来事で、特に何も考える暇が無かったことは認めよう。

だが本来、車の前に人間が飛び出してくればドライバーは反射的にブレーキを踏むものだ。普通はそう考える。

 

いくら誘拐犯とて、流石に殺人罪まで上乗せされる事は避けたい筈。初めからそうと覚悟しているのでもなければ、車で生物を轢く事自体に強い忌避感があって、そうそう出来るものではない。

 

だから誘拐なぞするわけであって……体を張って車を止めるというのは、他に取れる手段無かった健からすれば、まったく勝算のない行いというわけではなかった。

 

だが……迫り来る緑のセダンと、その後部座席で恐怖に顔を引き攣らせるアキを視界に入れた時……健はもはや自分が助からない事を悟ってしまった。

 

元レーサーである彼には、目の前の車がブレーキを踏むでも無く、ハンドルを切るでもなく……さらにアクセルをもう一段階踏み込んだ事が分かったのである。

 

おまけに、焦って飛び出してきた為にステッキすらも持たなかった彼の足は完全に限界を迎えており……咄嗟に横へ避ける事も叶わない。

 

あの速度の車に跳ね飛ばされた人体がどうなるか……この後、自分が辿るであろう運命を、彼はよくよく知っていた。

 

「アアァッーッ!!」

 

「お兄さーんッ!」

 

アキは暴走車の後部座席から、恐怖に見開いた目でそれを見ていた。

健の喉から、断末魔の叫びが漏れ出して……

衝突の瞬間、黄色いツナギを着た兄を、真っ黒な闇が包みこんだ。

 

「お、お兄さんっ!?」

 

『なにっ!?』

 

車は先ほどまで健が立っていた場所を何の抵抗もなく通過する。

予想された衝撃が無い事に、アキだけでなく彼女を攫った犯人達ですら困惑を隠せない。

 

人間が忽然と消えてしまったのだから。

 

だが、暴走車を運転するドライバーはさらに驚く事になる。

どこからか銃声が聞こえたかと思えば、続けて響くタイヤのバースト音。

 

『ハンドルがっ……!』

 

暴れるハンドルを必死で握りながら、どうにかこのまま逃げ切れないかと悪戦苦闘する運転手。

しかしその試みは無駄に終わった。なぜなら、シュワシュワと水泡の弾けるような音と共に、白黒の電信柱が急に道路のど真ん中へ突き立ったからである。

 

『な、なんだっ!?』

 

「……そのような突進でこの身が倒せると……」

 

否、それは電信柱ではなかった。

電柱かと見紛う程に屈強な甲殻類が、保護色を解除して姿を表したに過ぎなかった。

 

「思うてかーッ!」

 

赤白黒のトリコロールカラーに身を包んだ異形が、巨大な爪を振り下ろす。

それだけで、セダンのボンネットはたちまちボール紙の如く粉砕され、反動で後方が1メートルは跳ね上がった。

 

当然、それで運動エネルギーが全て霧散するわけもなく、速度と重量そのままに生きた電柱へ衝突する事になるのだが、なんと信じられない事に車と正面衝突した宇宙人は、豪快な高笑いのまま直立不動を貫いたではないか。

 

さもありなん。彼女は星雲荘の保有する最大戦力であり肉弾戦において最強を誇る後藤ララ。

ララは自分がいったい何齢成体だったか細かい数字など忘れてしまったが、母星における本来の身長は20mに迫る中堅個体だった。

 

それを無理矢理、10分の1まで圧縮固定化措置を施して現在の身長に押し込めてあるのだから、その肉体の理論密度がたかだが乗用車程度に負ける筈がないのである。

 

獰猛な高笑いと共にヒビ割れたフロントガラスへハサミを突っ込むと、ハンドルを握っていた運転手の首筋をむんずと掴み、そのままズルリと引きずり出した勢いのまま、後方へと無造作に放り投げてしまう。

 

重機顔負けの力で、今度こそ本物の電信柱へ叩き付けられた運転手の男は、全身の骨という骨が粉砕されて即死した。

グニャグニャの軟体動物の如き骸の顔が、みるみるうちに変じていき……それは地球人とは似ても似つかぬ異星人のものへと変貌する。

 

坂田アキの誘拐を企てたのは、なんと暗殺宇宙人ナックル星人達だったのだ!

 

『クソっ! いったい何が起きやがった?』

 

存分にシェイクされてしまった車内で、アキは恐る恐る目を開けた。

車はいたるところがひしゃげて酷い有様だ。あんなスピードで何かへ突っ込んだのだから、いくら素人でもこれは凄まじい事故だと分かる。

 

だが、そんな事故に巻き込まれたというのに、不思議とアキは体のどこも痛む場所が無いという事に気付いた。

 

自分を攫った男達は、衝撃で頭をそこら中にぶつけたらしく、隣からは痛みに呻いたり罵詈雑言を吐き散らしているのが聞こえてくるというのに、奇妙な事もあるものだ……

 

それにしても、こんな事故で気絶もしないなんて、ずいぶんと頑丈な連中ね……

 

自分を棚に上げたアキがそんな事を考えて、ふと彼らの方を向けば……

 

「キャアアアッ! 宇宙人!」

 

『ええいっ! こうなったら人質作戦は中止だ! 女を殺しても、充分に心理的動揺は狙えくぺっ!?』

 

顔面に赤い結晶体が埋め込まれた恐ろしい宇宙人が、激昂してアキに襲いかかろうとする。

 

その瞬間! 後ろのドアが勢いよく開いたと思えば、真っ白な服をきた少女らしき影が車内に飛び込んできた。

 

と同時に優しく腕を引かれて社外へ連れ出されるアキ。

 

「こっちだよ、アキお姉ちゃん」

 

「……えっ!? キリエ君!? どうしてここに……」

 

アキを車から連れ出してくれたのは、お隣のアパートに住むキリエという少年だった。

弟の次郎とさほど年の変わらない男の子が、どうしてこんなに落ち着いているのかしら……

 

本人はまったく気付かなかったが、キリエが素早く彼女を救出したおかげで、背後でミーヤの撃った粒子デリンジャーが、ナックル星人の首から上を跡形もなく消し飛ばすというショッキングなシーンを見ないですんだし、おまけに返り血を浴びる事も避けられた。

 

「……アキ!」

 

「お兄さん!」

 

少年に手を引かれるままついて行けば、狐に摘ままれたような表情の兄と再開する。

 

「無事だったのね!」

 

「あ、ああ……お前も怪我が無さそうで良かった」

 

「お兄さんが変な黒いモヤモヤに包まれたと思ったら……何がどうしたの?」

 

「俺にもさっぱり分からん……」

 

「世の中には、知らぬがGodという言葉もあります」

 

しきりに首を傾げる健の隣には、コートの美女が佇んでいた。

 

「ドロシーさん! ……あの、そこで事故があって……わたし、誘拐されかけて……」

 

「そうね。幸い大した事は無いそうよ。ちょっと強引なスカウトマン達には良い教訓でしょう。大丈夫。ホラ、この光を見て……そこに座って……」

 

「はい……」

 

ドロシーがペンライトのような道具で坂田兄妹の顔を照らせば、二人はいつの間にか置いてあった椅子に何の疑いもなく腰掛けてから、やがて瞼を閉じてしまう。

 

「……ふぅ、ひとまずこれである程度は誤魔化せるわ。可哀想に……本当はこんな恐ろしい記憶、綺麗さっぱり消してあげられたらいいんだけど……今のアタシではこれが精一杯よ」

 

「いやいや、充分だろう。これも教訓さ……お、カネヤマさんからだよ。もしもし? ……ああ、そちらも首尾よく行ったかね。うむ、二人は無事だ。念のために次郎君はそのままウチで預かる。どうせ郷の奴が迎えに来るだろう。それまで任せたよ……無事に次郎少年も保護できたらしい。……これでいいかね?」

 

「ああ、完璧だ! 流石の手際だぜ、伯爵!」

 

鼻筋に荒く縫い跡が走る全身黒ずくめの胡散臭い男が、通信端末を畳んでから椅子の上でふんぞり返る。

 

それに目一杯の拍手で応える男……今日は非番のソガ。

 

「……まったく、これで郷の奴なんぞを喜ばせる事になるかと思うと、内心腹立たしくてならないが……アキ嬢や健殿には日頃良くして頂いているからなぁ……お隣さんの危機とあらば致し方ないか」

 

「俺も奴らの計画をブチ壊せて最高の気分だぜ!」

 

「ン? ソガ、お前にナックル星人ト接点なんテあったカ?」

 

「ああいや、あの顔には散々酷い目に遭わされたからなぁ……ちょっとした八つ当たりだよ」

 

「えらく気の長イ八つ当たりだナ……」

 

「気の長い? どういう意味?」

 

「なんでもナイ……」

 

なにせこの坂田自動車工場は、ソガの用意した新たな拠点の隣にある。

あの時はなぜこんな場所を……とは思ったが、今にして思えば……

 

坂田兄妹に情を湧かせる為だったのだろうな、とダークだけはソガの真意に気付いていた。

でなければ、こんなへそ曲がりの集団が、間接的にとはいえ光の国の住人に利するような真似をしただろうか。

 

「とにかく、これで一件落着と言って良いんじゃなイカ?」

 

急に出て来たと思ったら、いかにもひと仕事終えました……という顔で腕組みしながらウンウン頷くイカルガ。

しかし……

 

「「「(……あれ? 今回コイツ何もしてなくない?)」」」

 

その場の三人はそんな事を思ったが、あえて何も言わずにそっとしておいた。

彼らはちゃんとした大人なので。

 

……もしも誰かがそれを口にしていれば、イカルガが自分で弁明したかもしれないが、あいにくとその機会は発生しなかった。

 

本当は襲撃日時の予想や、使用ルートの割り出し、狙撃ポイント(マヤの待機場所)の選定……おまけに四次元エアバック(意味不明な発明品)によるアキの衝突保護など細かな諸々を熟していたのだが、残念ながらこの場でそれを知っているのはロンだけである。

 

そして彼は、他の三人が微妙な表情でイカルガのドヤ顔を見ている事に気付いていたが、あえてその誤解を解こうとはしなかった。

 

なぜなら、それらの細かい箇所を調整したのは、全てロンの仕事だと思われているのだから。

まさしく沈黙は金であった――

 

「さて、これだけの活動実績があれば、そろそろ設立を提案しても良い頃合かな」

 

「設立? ……何の?」

 

「そりゃあ、もちろん……」

 

ソガの口元が、ニヤリと三日月を形作る。

 

Aliens(宇宙人の),Ideate(非正規),Benefit(互助会)……略してAIBさ」

 

 





というわけでお正月特番兼、星雲荘メンバーの後日談でした。

恐らくウルトラシリーズにおいても類を見ない程、最大効率でのヘイトを弾き出した名悪役ナックル星人。

それをセブン宇宙人残党組合で寄って集ってボコボコにした結果、計画の一部分だけですが完膚無きまでに破綻させる事に成功しました。
絶対に次郎君を一人にはさせないという鋼の意志。


>八つ当たり
本作のラスボスを飾ったメバ教授はバルタン星人ですが、電送機事故に巻き込まれる前はプロテ星人でした。

そのプロテ星人の地球人態であるニワ教授と、ついでに言えば第4惑星のロボット長官の演者ネタ。

ナックル星人のリーダーも同じ顔で、さらに白衣まで着てるものだから、無事に八つ当たりの対象としてロックオンされましたとさ。


星雲荘メンバーは、ある程度ウルトラ警備隊と対応するようにキャラ設定していましたが、今回を機に裏警備隊として本格活動していく事になる……のか?

気になる?

  • 8番目
  • 保安官
  • 補佐官
  • 星雲荘
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