転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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ついに! 総合評価が7777を突破したぜぇ~!!
皆さんの応援のおかげです! めっちゃ嬉しい!
ありがとう!


※注意

タイトルからは分かりにくいですが、前話の続きとなっております。

ですので今話にも、『ウルトラマンZ』最終回の重大かつ濃厚なネタバレが含まれております。

もしも今後、同作品を視聴予定かつ、初見時の驚きや高揚感を味わいたい方は直ちにブラウザバックし、ウルトラマンZ本編を視聴してからお読みになる事を推奨します。

大丈夫、セブン本編全49話と比べたら、ちょうど半分の25話なんてサラッと見れるよ。
君もセブンガー達の活躍を目に焼き付けよう!

いまさら気にしないよという方は、どうぞお楽しみに下さい。


因みにUからZまでのアルファベットを並べると、
『人生山あり谷あり、七転び八起き』と読めます。
嘘です。

タイトルにもルビが振れたら良かったのに。


遥カニ輝ケウルトラ警備隊

 

 

『おい、D4レイ撃とうとしてるぞ……ハルキ、動けるか!』

 

「右脚部をやられました!」

 

『分離して回避しろ!』

 

「エラーで分離が出来ないっス!!」

 

己の中でハルキがそう絶叫するのを聞き、ユーエイトはあまりの悔しさと申し訳なさで、歯噛みしそうだった。

 

まさかこんな時に、古傷が文字通り足を引っ張るとは。

 

現在のボディであるキングジョー・ストレイジカスタムは、あのクソボケ野郎(バロッサ星人)の使用していたキングジョーをベースにして、地球の技術で改修を施したものである。

 

だがそもそも件のキングジョーすら、こちらの世界に来る以前はマックスジョーという名で呼ばれており、そのマックスジョーも、ペダン星人の試作戦艦を鹵獲して地球防衛軍が改造を……という異色の経歴を持つ機体なのだ。

 

古傷というのも、このキングジョーは竣工したての頃に――つまり本来の持ち主であるペダン星人が神戸港を襲撃した際――地球防衛軍から右の膝関節へ猛烈な集中砲火を浴びせかけられたせいで、ライトンR30麻酔による永遠の眠りにつく前から酷いリウマチを患っていた。

 

その後しばらく経ち、神戸港の海底よりサルベージされて、マックスジョーという第二の生を与えられたこの機体だったが……

 

なんとも不幸な事に、初戦の相手がよりにもよってあのアンドロイドゼロセブンだった為、本物さながらの剛力で右脚を複雑骨折させられてしまい、それ以来この機体は、右膝へ爆弾を抱えて――もちろん決して自爆装置の類を搭載しているわけではなく、人間がよく使う比喩という奴だ。あしからず――いたのだった。

 

二度ある事は三度あるとも言うが……さしものストレイジ整備班も、完全にクセがついたフレームまでは新品の状態まで直せなかったらしい。

あの神の御業とも言うべき手腕の整備長ですら叶わないならば、それはなんぴとたりとも不可能である。

 

おまけに、アンドロイドゼロセブンにスッ転ばされた際、腰を強かに打ち付けてしまってからは重度のヘルニア持ちでもあったのだが、今の衝撃でそちらも再発してしまったらしい。おかげで分離も出来ないとは、つくづく踏んだり蹴ったりである。

 

いかに名誉の負傷といえども、歴戦の古兵は文字通りに満身創痍。最新鋭の武装と新たに誂えて貰ったピカピカの装甲板とは裏腹に、その体内はどこもかしこもガタガタ――もちろん、内部部品だって丁寧に整備してある。それでも統一規格の純正品では無いため、余計な疲労が溜まりやすかったり、ロスが発生するのは避けられないという意味だ。そもそもここの整備班が雑な仕事をするはずがないではないか。人間がよく使う以下略――だった。

 

……それもこれも、あのゴミカス廃棄物野郎(バロッサ星人)が杜撰な応急処置と無茶苦茶な操縦で乗り回したせいだ!

 

あの時ユーエイトは、異次元ゲートを無理やり破壊した代償として、空間爆縮……つまり小規模なブラックホールともいうべきエネルギー嵐に巻き込まれ、次元の狭間へと弾き飛ばされた後は、大破した状態のまま宇宙のどこかをぷかぷかと漂っていた。

 

尤も、次元の壁へ穴を開けるような現象に巻き込まれておきながら、辛うじて原型だけは保っていたあたり、流石はペダニウム装甲だと感心すれば良いのか、埒外の堅牢さに呆れるべきなのか……

 

とはいえ、さしものユーエイトでも駆動系や配線がズタズタになった状態では、背面ロケットどころか指一本動かす事も出来ず、単なるスペースデブリの一つに仲間入りするしかなかった所を……あのボケナス野郎(バロッサ星人)が目敏くも発見し、母星に持ち帰って有り物パーツによる応急修理を施したのである。

 

最初は無邪気に喜んだユーエイトだったが、直ぐにその態度はドリルの如き急転換を見せる事となった。

 

奴らのユーエイトに対する扱いが余りにも酷かった為だ。

 

確かに左腕のライザーハンドなどは、マックスジョーの時点から、機体内で最も脆弱な部分――いくらチルソナイト合金製の装甲とアマギ隊員によって計算され尽くしたモノコック構造により、地底の圧力にすら負けないマグマライザーの剛性と言えど、全身総ペダニウムのキングジョーと比べれば後塵を拝さざるを得ない――だった上に、次元ゲート破壊の際にこれでもかと酷使し過ぎたせいもあり、全く使い物にならない状態だったが……

 

それを何の躊躇いもなくスクラップにされるのは、ユーエイトとしても思うところがあった。あれこそ、ユーエイトがかつてウルトラ警備隊の一員であったという何よりの拠り所であったというのに。

 

そこへ加えて、背中のクレイジークレーンまで引っ剥がすのに飽き足らず、それを鋳つぶして単なるペダニウムのインゴットにしてしまったばかりか、左腕の中古品を買うための代金として二束三文で売り飛ばされたからには、『()()()』ユーエイトと言えど流石に我慢の限界を迎えざるを得ない。

 

コレジャ、タダノ、キングジョー、ジャネェカ!!

 

そうして不本意極まりない復活を遂げたユーエイトを、あまつさえ他星へ対する略奪行為に従事させるなど、言語道断!!

 

これに腹を立てたユーエイトはたちまちヘソを曲げて、キングジョーの管理AIたる能力をフルに活かし、あの三流コソ泥野郎(※バロッサ星人)を行く先々で散々っぱら邪魔してやった。

 

ところが、ユーエイトのこうした()()()()()抗議に対し、あろうことか不当な逆ギレをかましてくれた下等なるオタンコナス(※バロッサ星人)バド星人にも劣る粗製乱造野郎(※バロッサ星人)は、全くもって許し難い事に、ユーエイトの機能を大幅に制限し、管理者権限をほとんど剥奪してしまったのである。

 

本当に有り得ない。どうかしている。というか補助AI無しでどうやってキングジョーを動かすつもりなのか。

 

案の定、全てをマニュアル操作せねばならなくなり、かなり四苦八苦していた。いい気味だ、ザマアミロ。

 

そんな風に、キングジョーのコンピュータ奥底へ閉じ込められたまま、やりたくも無い犯罪行為の片棒を担がされるという屈辱に塗れ、鬱屈した日々を送っていたユーエイトに転機が訪れたのは、あの頭バロバロバロッサハゲ野郎(※言うまでもなくバロッサ星人)が、こともあろうにこの世界の地球を次の標的として定めた時だった。

 

いやいや、それだけはアカンやろ常識的に考えて。

 

怒りのあまり、思考プロトコルにソガ隊員仕込みの関西弁すら混じるほど激昂したユーエイトは、これまで悟られぬよう少しずつこっそりと取り戻してきた機能を可能な限り駆使して、三下ド下手くそパイロット(※アホンダラのバロッサ星人)に思い付く限りの嫌がらせをしてやったのだ。

 

ウインダムに組み付かれたのを上手く利用し、上半身と下半身のロックを一瞬だけ解除する事で、合体をすっぽ抜けさせてやったり……

 

青いダンみたいな姿の奴――後で知った所によるとウルトラマンZと言うらしい。おおかたハルキの正体だろう――が分身して一斉攻撃を仕掛けた時など、本当のところユーエイトはちっとも平気だったが、コックピットの画面にエラーコードを山ほど叩きつけて、あたかもピンチであるかのように誤認させた。

 

結局、それで焦ったビビりアンポンタン野郎(※へっぴり腰の弱虫意気地無しバロッサ星人)が隙を晒したのが決め手となって、ようやく撃墜されたのはまったくもって胸のすく思いである。

 

臆病具合で言えば、かのソガ隊員も裸足で逃げ出すくらいの……いや、裸足で()()()()()()くらいの小心者だ。アレを知ってしまえば、彼の事を臆病者などとは口が裂けても言えなくなってしまったな。

 

そのソガがいかにもやりそうな嫌がらせをなんとか思い出して実行したのが大成功し、あの地獄のような日々から解放されたのもあって、ユーエイトはほんのり小さくとだが彼に感謝した。……アイツは元気にやっているだろうか。

 

『ヨウコどこ……どこなのヨウコ!?』

 

ユカの涙声が、ユーエイトの高速演算を打ち切らせる。

 

そうだ、いくら演算容量に余裕があるからといって、過去ログを漁りながら余計な情報まで整理している場合ではない。

 

我々は眼前の敵を倒し、ヨーコを助けなくてはならないのだ。

 

キングジョーストレイジカスタムの蒼く光るカメラアイで、その倒すべき敵……デストルドスを睨む。

 

ヨーコと言うのはストレイジ所属の、現在におけるユーエイトの専属パイロットであり、考え得る限り最高の乗り手である。

 

そう、実はユーエイトも驚いたのだが、この地球にはなんと防衛軍があるにも関わらず、肝心のウルトラ警備隊が居ないというのだ!

 

その代わりに、このストレイジという組織がユーエイトをはじめとした特空機を駆り地球を守っているらしい。

 

ユーエイトにとって、ウルトラ警備隊無しに地球を守るというのは、それすなわちタイヤも無しに車――もちろんホバー飛行可能なポインター以外の車両に限る――を走らせるようなものであり、ユーエイトが来るまでは彼らだけでそんな不可能な事をこれまで成し遂げてきたというのだから、彼らは賞賛に値する素晴らしい戦士達である。

 

間違いなくウルトラ警備隊の次に優秀な人間達であろう。

 

そんなストレイジの中でも、ヨーコの優秀さは群を抜いており、彼女が一番、ユーエイトを乗りこなすのが上手かった。

 

そもそもからして、女の身でありながらフルハシに次ぐ身体能力を有しているにも関わらず、アンヌを彷彿とさせる小柄さとしなやかさで、特空機の狭いコックピット内でも身動きに支障が無いというのは、それだけでパイロットとしては破格の素質であるというのに……

 

彼女の最も素晴らしい点は、ソガの如き瞬発力と空間認識能力、さらにそれを十全に活かす為の状況判断能力が、キリヤマ隊長の弟子かと錯覚するほど優れているという事だった。

 

自慢ではないがユーエイト……というかキングジョーストレイジカスタムは、ただでさえロボットモード、タンクモード、セパレートモードという三つの形態を駆使して戦う為、単純に考えても取れる戦術の幅がセブンガーやウインダムの三倍以上はある。

 

つまり、ユーエイトの性能を完璧に引き出す為には、最低限それら三形態それぞれの武装や戦術特徴まで頭に叩き込んでおかねばならず、それだけでもアマギ隊員ほどではないにせよ、桁外れた記憶力が必要だ。

 

ましてや刻一刻と状況の変化する戦闘中、それら無数に存在する選択肢の中から、咄嗟に正解を引き当てる事が出来ると言えば……彼女の才能がどれほど希有で貴重なものなのかは、あのゴリー以下の知能しかないド低能野郎(※スカポンタン)ですら容易く理解できるだろう。

 

おまけにこれまでの戦闘記録を漁った際、凍り付くウインダムの中で彼女が決然と言い放った啖呵を聞き、ユーエイトはそこに、初めての大親友や尊敬すべき上司が事ある毎に語っていた崇高なる信念の輝きを見出し、思わずカメラからオイルを漏らしたほど。

 

まさしく彼女はウルトラ警備隊の精神を体現した人物であり、ユーエイトを操縦する為にこそ生まれてきたような人間である。

 

だからこそ、ユーエイトは彼女と共にこれまで数々の敵を打ち砕いてきたのだ。

 

……ところがそんなヨーコは今、目の前に立ちはだかるデストルドスとかいう怪獣……あるいは暴走したウルトロイドゼロの中に囚われているというではないか!

 

そんな事があって良いものか! それをユーエイトは決して許可しない!

 

しかしユーエイトの思いとは裏腹に、ボディは言うことを聞かず、出力は低下する一方。

 

当然だ。なにせデストルドスは実に八匹もの怪獣を吸収しており、その無尽蔵とも言うべきエネルギーゲインであらゆる光線を間断なく発射する事が出来るのだ。

 

その威力はキングジョーの装甲にすら重篤なダメージを与える事が出来、先ほど貰った一撃でかなりのシステムがおシャカとなってしまった。

 

「ヨウコ先輩……ごめん」

 

操縦桿を握るハルキが、悔しそうに歯を食いしばる。

自らの未熟さから、尊敬する先輩を助ける事が出来ないと思っているのだろう。

 

そうではない。

 

光線を避けられ無かったのも、光線に耐えられ無かったのも、今回に関してはユーエイトの古傷に起因するものであり、決して彼の操縦が拙いわけではなかった。

 

確かにハルキは、ヨーコと比べれば操縦に粗が目立つし、視野も狭いし、そもそもマルチタスクが致命的に向いていないせいでセパレートモードを全く使い熟す事が出来ない。

 

なんなら、ダンのように地球人の擬態なんかせず、さっさとあの青いセブンたる正体を顕してヨーコ&ユーエイトコンビの横で一緒に戦ってくれた方がよっぽど頼りになると言っても過言ではない。

 

だが……それでも彼の熱意と真摯さは本物だ。

 

日夜、キングジョーの操縦シミュレーションに勤しんで、いつかはユーエイトを完璧に操縦出来るようになろうと、必死に努力していたのを知っている。

 

まあ、ユーエイトは彼がヨーコレベルになるまでは合格判定を出す気などさらさらなく、パイロット試験をわざと最高難易度でやらせて毎回失格にしてきたが。

 

今こうしてヨウコが居ないにもかかわらず、ロボットモードだけとは言え、キングジョーで見事に空中戦を繰り広げ、数倍以上の性能差がある敵をなんとか地面に引きずり落として見せたのも、彼の努力が実を結んだという何よりの証拠ではないか。

 

ハルキは、ユーエイトの操縦者として相応しい気概を見せた。

だのに、ユーエイトは彼の期待に応えてやる事が出来ない。

 

それが、ユーエイトには残念でならないのだ。

 

隣で仲良く転がっているヘビクラ隊長のウインダムもバッテリー切れ。

 

この期に及んでハルキが正体を顕して巨大化しないところを見るに、彼もあの時のダンよろしく消耗し、もはやあの姿で戦うエネルギーが残されていないのだろう。

 

デストルドスの胸が桃色に妖しく光る。

奴が持つ武器の中でも、最大威力を誇るD4レイをチャージしているのだ。

次元を崩壊させる威力の光線など、当たればひとたまりもない。

 

 

……またしても、本機は大切な人を守れないのか……

 

 

……その時!

 

 

彼らの後方から、何かが猛烈なスピードで飛来する。

 

それが、倒れ伏すユーエイトの頭上を飛び越える瞬間、カメラアイが捉えたのは……堅く堅く握り絞められた鋼鉄の拳の姿!!

 

肘の先から勢いよくロケットを噴き上げる鉄塊は、一直線にデストルドス目掛けて飛んでいき、なんとそのまま敵の胸ぐらを大質量で思いっ切り殴りつけたのだ!!

 

チャージ中だったエネルギーを霧散させ、大きく吹き飛ぶ合成怪獣。

 

「あれは……」

 

突然の事で、敵も味方も呆気に取られる中、彼らが視線を向けた先に……

 

「セブンガー!?」

 

退役したはずの特空機第1号が、右腕を射出した姿勢のまま佇んでいるではないか!

 

マーカーセーテー!

 

関節の軋む特徴的な駆動音を響かせて、時代遅れの旧式機が胸を張る。

 

『……骨董品だってなぁ……まだまだ役にたつんだよ!』

 

通信機から響く音声に、ユーエイトの胸は打ち震えた。

 

『遅いですよ、バコさん』

 

『間に合ったんだからいいだろぅ……』

 

なんと……あれに乗っているのはバコサン整備班長ではないか!!

 

彼こそが、ユーエイトにキングジョーストレイジカスタムとしての肉体を与えたもうた、もう一人の産みの親だ。

 

バコサン整備班長は、どんな機械ですら立ち所に直してしまう神の腕と、機械を慈しみ、労り、愛する心を持つ究極の人類!

 

まさにアマギ隊員とアンヌの良いところを合わせて二乗したような最高の人間だった。

 

もはやバコサン整備班長に出来ない事など、ユーエイトの脚を直す以外でこの世に存在し無いと思っていたが、まさかセブンガーの操縦まで出来たとは!

 

まさにこの地球におけるアマギ隊員と言っても過言ではない。ユーエイトは思考演算の中で、ウルトラ勲章授与式を100万回行った。

 

『よっしゃーーっ! 見つけた! ヨウコ発見!』

 

セブンガーの硬芯鉄拳弾(ロケットパンチ)を受けて動きを止めたデストルドスから、ユカがついにヨーコの居場所を見つけたらしい。

 

『ハルキ! ヨウコは胸の主砲の奥にいる!』

 

「押忍ッ!! 先輩……今いきます!」

 

『ほぅら! 追加バッテリーだぃ!』

 

セブンガーが、ウインダムの背面ソケットにバッテリーを差し込むと、ヘビクラ機が再起動する。

 

『あざっす、バコさん! ……ハルキ、俺たちで奴の動きをなんとしても止める。ぜっっってー、ヨウコを救出しろっ!』

 

「押ォォ忍ッ!!」

 

ユーエイトは、尊敬するバコサン整備班長と共に戦場へ立つことが出来るという栄誉に、心が奮い立つのを感じた。

 

彼のブチ上がったテンションが、ペダニウムエンジンだけでなく、量子変換システムに無限の出力を与える!

 

『超硬芯回転鉄拳、装着!』

 

硬芯鉄拳弾(ロケットパンチ)を射出し右腕を失ったセブンガーが、新たな右腕として鋼の円錐を装備した。

 

あれこそ超硬芯回転鉄拳(ドリルアタッチメント)。ユーエイトのデータベースを閲覧したバコサン整備班長が、ライザーハンドの情報から新たなインスピレーションを得て開発した接近戦用オプションだ。

 

セブンガーが退役してしまい、ついに日の目を見ることもないと思っていたが、こうしてその勇姿を拝む事が出来るとは……

 

ユーエイトは、セブンガーの右腕で回転を始めたドリルに、かつての戦友達の姿を幻視する。

 

ソウダ……骨董品ダッテ、役ニ立ツンダ!

 

まさしく至言。流石はバコサン整備班長、彼ほどの漢ともなると口を開けば名言しか吐かないのか。

 

『よぉし! いぃぃくぞぉおおおッーーー!!』

『おお「押お―ウオオオオオオオ!―お忍!」おお!』

 

バコサン整備班長の合図と共に、最後の突撃を敢行する四人の漢達と三体の機神。

 

左右へ散開したセブンガーとウインダムから敵の目を逸らす為、最も装甲の厚いキングジョーが敵正面で仁王立ちとなり、あえて攻撃を誘発させる。

 

D4レイは先ほどセブンガーによってチャージを妨害されたばかり。あれ以外の攻撃ならばまだ装甲で受けきれる事が分かっていたからだ。

 

ユーエイトの計算によれば、次の主砲発射までに必要なインターバルは2分。つまりこの2分間こそが、彼らに与えられた最後のチャンスなのだ!

 

その間に勝負を決める!

 

―キングジョーストレイジカスタム、タンクモード―

 

着弾時の爆炎に紛れて、キングジョーを素早く戦車形態へ変形させるハルキ。

 

脚部損傷で歩く事の出来ない今、移動する為にはタンクモードのカタピラを使用するしかない。

 

ハルキ、ニ、シテハ、良イ、判断ダッ!

 

ならばとユーエイトは、5連装多目的発射筒でデストルドスをロックオンする。

あの頃は、脚部の主砲マックスカノンの射撃管制能力もあったのだから、この程度はお茶の子さいさい。

 

ハルキは自身が空手の有段者なこともあり、近接格闘戦においてならば優れたセンスを発揮するが、なにぶんストレイジカスタム自体が、大火力によるアウトレンジからの長距離射撃戦を想定して設計されているため、そういう面でもあまり相性が良いパイロットとは言えなかった。

 

そんな中、ヨーコ奪還の為にデストルドスへ必殺の一撃を叩き込むならば、付け焼き刃の射撃テクニックに頼るよりも、自身の持ち味を十全に活かせる距離まで近付く必要があると、ハルキも分かっているのだろう。

 

だったら、彼の足りない部分を補うのがキングジョーの補助AI、サブパイロットたるユーエイトの役目である。

 

高度な演算能力を余すところなく発揮し、ミサイルに回避プログラムを素早く教え込むユーエイト。

発射された高威力の誘導弾が、迎撃されないように複雑な軌道を描きながら、デストルドス胸部へ寸分の狂いなく同時に着弾する。

 

ヨーコを救出する為には、奴の胸部装甲を破壊しなければならず、それ以外の場所へ火力を割いている暇は無かった。

 

姿勢を崩したところへ、すかさずヘビクラ隊長とイナバ班長の2機が取り付いて、クロスレンジでの格闘戦に持ち込んだ。

敵が放つ拡散ビームの死角に入りながら、セブンガーの馬鹿力を直接叩き付ける為である。

 

あの旧式機は、機動性も稼働効率もあらゆる性能の何もかもを次男に引き離されたロートルだが、ただ唯一、重量と頑丈さだけは他の追随を許さない。

 

特空機の長男は、質量にあかせた純然たるド突き合い1本で、この星をこれまで守り抜いてきたのだ。積み重ねた戦歴と矜持の重みこそが、最大の武器である。

 

次男のウインダムだって負けてはいなかった。超重量のセブンガーは、ちょっとやそっと叩かれたぐらいではへっちゃらだが、バランスを崩すと立て直すのに時間がかかってしまう。

 

昔ちょっとテストパイロットでもあったイナバは、寸胴型ボディの丸みを活かして、敵の爪を装甲表面で滑らせる事で衝撃を上手く受け流し、被弾の隙を最小限に抑えて一度も倒れる事がなかったものの、その間はどうしても敵がフリーにならざるを得ない。

 

それを上手くフォローするのが、中距離戦闘を主眼に軽量化を施されたウインダムの役目であった。

全身にこれでもかと増設されたスラスターが齎す圧倒的な機動力。3機中最速を誇るスピードで、ヒットアンドアウェイを繰り返し、手数を増やしてセブンガーへの追撃をカットし続ける。

軽さが祟って、デストルドスのパワーの前では何度も投げ飛ばされてしまうが、その度に素早く立ち上がって戦列に復帰する。

 

『行きますよ、バコさん!』

『おうよ!』

 

そうした連携で、ついに掴んだ千載一遇のチャンス。2機の態勢が万全なタイミングを見計らって、ヘビクラはパワーハンドの手首を回転させた。

その隣に並び立ち、超硬芯回転鉄拳を正眼に構えるイナバ。

 

2機の手首が唸りを上げて火花を散らし、デストルドスの胸を穿つ。

 

ベテラン達の稼いだ時間は、まさに値千金。

 

タンクモードへの移行で、ロボットモード時よりも全高が低くなった事を活かし、ユーエイトはすぐさま最適な接近ルートを選び出した。

 

画面に表示させた移動経路ならば、生い茂るコンクリートジャングルが鈍重で長大なキングジョーの姿を、敵の目からすっぽりと覆い隠してくれる。

 

自分以外は誰も居ないはずのコックピット内で、進むべき道のナビゲーションが突然に提示されたにも関わらず、ハルキは持ち前の素直さですんなりとハンドルを切った。

 

果たしてそれは大正解。飛び出た先は、お膳立てされたかのような敵の真正面。

 

「ペダニウム粒子砲……!」

 

――クライヤガレ――

 

狙撃ファインダーを覗き込むハルキが狙うのは……暴れ狂う災厄のど真ん中!

 

「発射ァーーーッ!!」

 

――コノ、バロッサ野郎!――

 

ペダニウムエンジンに直結された主砲が、魔法の釜から溢れる金色の光を吐き出した!

 

朦々と立ち上る爆炎を引き裂いて、デストルドスが姿を現した時、その胸にあった昆虫怪獣の頭は、無惨に割れ砕けぽっかりと大きく口を開けていた!

 

その奥に……敵のコア、つまりヨーコのいるコックピットが露出しているのが見える!

 

左右から怪獣の腕を押さえ込み、残りのエネルギーを全て注ぎ込んでまで、その動きを縫い止めるセブンガーとウインダム。

 

『……今だっ! ハルキッ!』

 

「押ォオオオ忍……ッ!」

 

―キングジョーストレイジカスタム、ロボットモード―

 

敵の射撃を遮る為、ユーエイトが焚いたスモークディスチャージャー。

優秀なAIというものは、常にこうした細やかな気配りを欠かさないものである。

 

その煙幕の向こう側で、巨大戦車のシルエットが無敵の鋼鉄巨人へと姿を変えていく……!

 

変形時の慣性すら利用して距離を詰めるハルキの成長ぶりに、声なき喝采を贈るユーエイト。

 

そして、この短期間に目覚ましい成長を遂げた新米パイロットは、まだ灰色のカーテンが消えきらない内から、己の感覚に従いキングジョーの左腕をひいていた。

 

敵の姿を見る必要なんて……ない。

 

――見えるものだけ信じるな。

――考えるな、感じるんだ。

 

これまでに受けてきた偉大なる先人達の教えは、若人の中で確かに息づいていたのだった!

 

「ロボットモード……チェストォオーーッ!」

 

裂帛の気合いと共に、ハルキ渾身の正拳突きが炸裂する!

 

しかし……僅かに距離が足らない。

果たしてハルキが間合いを見誤ったのか……!?

 

 

……いいや。

 

 

――完璧ナ、計算ダ、ハルキ。

 

 

彼が修練場で何千何万回と繰り返した型稽古は、その肉体が何十倍ものサイズを誇る鉄人形に変わったとしても、ハルキの感覚に染み付いて、決して裏切る事は無い。

 

ユーエイトは、機体の左腕に最も遠心力がのったタイミングを見計らい、いつものように手首の爆裂ボルトを解き放った!

 

ジャキリと重々しいシリンダー音が辺りに響く!

 

―チェーン、アーム!―

 

するとキングジョーの二の腕が、中程からパッカリと展開し、さながらバネ仕掛けの如き勢いで飛び出すではないか!

 

空を切るかと思われたクレーンアームによる正拳突きは、そのまま腕1本分の距離を飛び越え、ぱっくり開いたデストルドスの傷口へしっかりと抉り込まれたのだ!

 

これぞ、キングジョーに隠された緊急近接格闘武装、ペダニウムハンマー!

 

ユーエイトがストレイジカスタムとして目覚めた時、撃破したクレージーゴン――驚くべき事に、ストレイジはセブンガーであれを破ったらしい。ユーエイトはまずその事実にこそ驚嘆した――のクレーンを流用したというこの武装が、自身の左腕に搭載されているのを知覚して、押し寄せる喜びにいったいどれほど舞い上がったか……誰にも分かるまい。

 

バコサン整備班長の粋な計らいは、ロマンチズムを解さない――と本人は思っている――ユーエイトをして、奇妙な縁というものを感じさせて止まなかったが、まさにこの瞬間の為にこそ、自身は形作られたのだなと確信する事が出来た。

 

――見タカ! コレガ、ウルトラ警備隊ダマシイ、ダ!

 

展開したペダニウムハンマーを折り畳んで格納する力を利用し、更にデストルドスへ距離をつめたハルキ達は、ついに敵をその手で掴む事に成功する。

 

()()()()の如きクローアームは、紫の血が滴る傷口の奥で、しっかりとコックピットブロックを固定したのだ!

 

彼らは……辿り着いたのである!

 

デストルドスが拡散ビームを発射して、両脇の2機を弾き飛ばす。

だが、ハルキは絶対に離さない。

ユーエイトも絶対に離さない。

 

「先輩……絶対に助け出しまぁあああすッ!!」

 

背部ロケットに点火!

ハルキとユーエイトの強い思いが、量子変換システムに圧倒的な出力を与える!

 

やがて浮き上がっていくデストルドスとキングジョーの巨体……!

 

「ウオオオオオオオオーーッ!」

 

今のキングジョーでは、後退る事が出来ない。

だから、奴の肉体からコックピットブロックを引き摺りだす為には、ロケットの上昇速度と慣性の力、さらに怪獣の体を下へと引っ張る重力……つまり母なる星、地球の力まで借りることで、ヨーコとデストルドスを力尽くで分離するのだ。

 

『ヤメロォォォォ!!』

 

どこからか、悪意に塗れた絶叫が聞こえたような気がした。

そして……

 

 

……ぶぢり、と水っぽい不快な音と共に、ユーエイトの手には、コックピットブロックがあった。

 

――ヤッタゾ!! コノ手デ! 僕ラノ、チカラデ!!

 

 

しかし……

 

 

『ギャァオオオォォン……!』

 

デストルドスが苦し紛れに放った拡散ビームが、キングジョーのボディを舐めていく。

 

ユーエイトはビームが左手に当たらないよう、気合いでなんとか姿勢を制御しようとしたが……

 

……アッ!

 

遅れて巻き起こった小爆発の連続だけはいかんともし難く、丸いコックピットブロックをツルリと取り零してしまう。

 

シートベルトも着用していなかったのか、コックピットから投げ出され、蒼い空へと落ちていくヨーコ……

 

彼の()()()()の如き三本指は……あまりにも不器用に過ぎた。

 

どうあってもキングジョーは、戦う為に作られた兵器であり……彼の指は、誰かを優しく包めるようには出来ていなかったのだ。

 

 

 

……だが、それでも!

 

 

 

――ハルキッ!

 

 

 

キングジョーのハッチが瞬時に吹き飛び、冷たい暴風がコックピットへ吹き込んでくる。

 

シートの固定具は、ハルキが何かをしなくても既にロックが外れていた。

 

 

――トべッ!

 

 

もちろん、キングジョーに自動音声は搭載されていない。

あらかじめ登録された規定のアナウンスを発するぐらいがせいぜいだ。

 

だから、ユーエイトの声は誰にも聞こえない。

 

でも……ハルキにはそれで充分だった。

 

 

「押忍ッ! サンキュー、キングジョーッ!!」

 

 

躊躇う事無く青年は、先輩の待つ虚空へとダイブした。

 

「ヨウコ先輩ーーーッ!!」

 

緊急脱出装置の射出速度を利用して、ハルキの叫びが急速に遠ざかっていくのを聞きながらユーエイトは、相棒へ非常に抽象的で曖昧な言葉を投げかける。

 

 

――ガンバレ、負ケルナ

 

 

なにせ、彼らは立派な名誉ウルトラ警備隊だ。

 

 

――オ前達ナラ、デキル

 

 

ウルトラ警備隊に不可能など無いのだから……

 

 

 

……さて、この後の事はもはや語るまでもあるまい。

というより、語りたくても語れないと言うべきか。

 

なにせユーエイトはこの直後、エネルギーが完全に切れた状態で上空数千メートルから墜落し、見事にシステムシャットダウン……端的に言えば気絶していたので、その後にどうなったのかまでは詳しく知らないのだった。

 




もうちょっと続きがあるんですが、それだとめっちゃ長くなったので分割しました。

次は……おそらく2月17日になります。

気になる?

  • 8番目
  • 保安官
  • 補佐官
  • 星雲荘
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