転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
本当は他の話と同じように八関連の日にしようと思っていましたが……
なんと! 今日からNHKBSでセブンがリマスター放送ですってよ奧さん!
これは見なくっちゃね!
という番宣の為に繰り上げて投稿。
※注意
タイトルからは分かりにくいですが、前話の続きとなっております。
ですので今話には、『ウルトラマンZ』の重大かつ濃厚なネタバレが含まれております。
もしも今後、同作品を視聴予定かつ、初見時の驚きや高揚感を味わいたい方は直ちにブラウザバックし、ウルトラマンZ本編を視聴してからお読みになる事を推奨します。
いまさら気にしないよという方は、どうぞお楽しみに下さい。
それから暫く経って……
「ハルキ! 準備はいい!?」
『押忍! 俺もキングジョーも、準備万端ッス!』
ユーエイトは再びハルキを乗せて、ストレイジの実験場に立っていた。
どうしてこうなっているかと言うと、あれからいろいろあって……また
問題は、この時に別の宇宙からハルキが借りパクしてきた『がっつすぱーくれんす』なる道具が、ある日に事務所の机で激しく発光し始めた事から始まった。
『これは……救難信号でございますよハルキッ!?』
「分かるんスかゼットさん!?」
『ここに籠められた光の戦士としてのチカラがビンビンに共鳴しやがっております……多分』
「た、多分って……どっちなんスか!? しっかりしてくださいよぅ、もー……頼みますよゼットさん!」
『う、なんか最近のハルキ厳しいですな……と、とにかく! あっちの宇宙でなにかきっとウルトラやばい事態が起こったんだ!』
「ケンゴさんやアキトさんの地球が!?」
とかなんとか。
ところが、今のハルキは別次元に飛ぶ事が出来ないという。
なんでも、『べりあろく』とかいう道具が気紛れにフラフラ家出中らしく、異次元ゲートを開けないらしい。
全く、道具の癖に己の感情を優先して使い手の要望を蔑ろにするなんて、とんだ武器があったもんだと呆れる事しきりだが……
「俺……なんとかアキトさん達の助けになりたいんッス! あっちでめちゃくちゃお世話になった分、それを返さないと! お願いします!!」
「ま、まあ……そのガッツセレクト? って組織にはウチの不始末で迷惑かけたわけだし、ストレイジとしても救援は吝かじゃないけど……」
失踪したヘビクラに代わり、新たにストレイジの暫定隊長として就任したヨウコに、ハルキは全力で頭を下げた。
そりゃもう90度の見事な直角だった。
しかし手段が無ければどうしようもない……と思っていたところへ、なんと白羽の矢が立ったのが……
―――――――――
「D4ゲート、出力安定しています」
フレームが上下に分かれた特徴的な眼鏡を光らせながら、淡々と状況を述べる女性。
彼女の名はユウキ・マイ技術士官。
ユカが超獣バラバの遺骸を解析して開発した異次元技術を、武器として転用するD4レイ計画を強硬に主導していた人物である。
技術畑上がりでありながら、射撃センスに優れるだけでなくそれなりの指揮能力も有しているという、軍人として非常に優れた人材で、一時期などは造反疑惑のあったストレイジに代わり特殊空挺機甲群の隊長まで務めた事もあった。
だが残念な事に、彼女が推進していたD4レイ計画は実のところ、悪質な宇宙人が裏で糸を引いており、完成したD4レイも結局はデストルドスの主砲として存分に使われてしまった。
つまり彼女は……まんまと敵に利用されてしまったのである。
まあそれ以外にも、ストレイジメンバーとはいろいろあったのだが……
「あの……ユウキ君? これは本当に、本ッ当に安全面へ配慮されているんだよね?」
「もちろんですクリヤマ長官! 長官のモットーである安心安全・人命第一に則り、完璧に、完全に、十全に安全であることが100%証明されております!」
「そ、そう……あのね、前回のウルトロイドゼロ暴走のせいで、いまウチって凄く微妙な立場というかね? これ以上、失敗は絶対に出来ないんだからね!? あ、アイタタタ……また胃が……」
「思えば、あの時の長官は言動のどれもが、そのモットーからかけ離れておりました……まさかそれが宇宙人に寄生されていたからだったとは……! 尊敬するクリヤマ長官の異変に気付けなかった事! このユウキ・マイ一生の不覚でありますッ! これを名誉挽回の機会と思い、粉骨砕身いたしました所存ッ!」
胃薬を飲む長官へ、先ほどとは打って変わった態度で見事な敬礼を披露するユウキ技術士官を横目に、ヨウコは隣でモニターへ注視したままのユカにひっそりと耳打ちした。
「ねぇユカ……本当に大丈夫なの?」
「うーん、私も一応目を通してみたけど、安定状態で使う分には問題なさそうだったよ。もともと私が想定してた運用方法も、兵器としてじゃなくてこういう平行世界と接触する為に使うはずだったし」
「いや、そうじゃなくて……」
口籠もるヨウコに、ようやくデバイスから顔を上げたユカは、彼女の視線の先にいる人物を見て、遅ればせながらヨウコの懸念を察した。
「ああ……大丈夫でしょ。長官に心酔してるのは本当みたいだし。ああやって期待されて張り切ってるうちは、前みたいにいきなり私達を拘束したりしないんじゃない? ……ま、その長官がまたセレブロに寄生されたりしない限りは、だけどね」
「ごめん、それちょっと笑えない……」
『ヨウコ先輩? なんか言いました?』
「んーん、なんでもなーい! アンタはキングジョーに異常がないか集中してなさい!」
『押忍!』
「……いざとなったら、ハルキにはゼット様もついてるから大丈夫……だよね?」
自分を納得させるように、小さくそう一人ごちたヨウコは、内心の不安を押し隠して隊長としての顔をつくる。
「よし! 異次元ゲート作動実験……開始!」
「Dフォースゲート……オープン!」
ユウキがスイッチを入れると、キングジョーストレイジカスタムの佇む空間に、青白い割れ目が広がった。
「成功……! 成功です! やりましたよ長官!」
「は、はふぅ……良かったぁ……いやホントに」
はしゃぐユウキとは対称的に、『
「ハルキ、そのゲートの中に進んで!」
『押忍! えっと……キングジョーストレイジカスタム、出撃! いってきまーす!』
「また前みたいにキングジョーぶっ壊さないようにね!」
『えっ?』
「ヨウコの言うとおりだぞ、ハルキ。いくら俺達でもなぁ……あそこまでバラバラな機体を直せなんて言われた日にゃあ、たまったモンじゃねぇよ! もうトシなんだからそう何日も徹夜できねぇんだこっちは」
「そうだよー! おかげであの時はもうお肌ボロボロ、髪の毛ガサガサで戻すの大変だったんだからー!」
『お、押忍……』
ホントダゼ、コリゴリダ。
「バラバラ……再建費……予算会議……うっ、アイタタタ……」
『チクショー! 俺のせいじゃねえってのに……あのバーコード野郎……! 次見かけたらぜってー許さねえかんな! 即チェストしてやる!』
「聞こえてるぞー」
「あの、早くしていただけますか? ナツカワ隊員、ナカシマ隊員」
『「はい、すいません」』
「ぷぷ……夫婦漫才」
「ユカ、聞こえてるから」
眼鏡のフレームを指で押し上げながら、ユウキ技術士官の声は冷ややかだ。
ストレイジの和気あいあいとした……悪く言えば馴れ合った雰囲気など、絶対に迎合しないぞという強い意志を感じる。
そんな彼女に対して、やはりヨウコは若干の苦手意識を抱かざるを得ないのだった。
それはそうだろう。なにせ、ユウキの率いる空挺機甲群に無理矢理編入させられた時は、最新鋭機の専属パイロットとして随分と無茶な命令にも従事させられたものだ。
しかし……
ふと思い返せば、あの時はもっとこう……高圧的というか……取り付く島もないというか……
今のはあくまで、取り留めもない言葉の応酬を楽しんで、集中を欠いていた自分達に注意を促したに過ぎない。
「ナツカワ隊員、キングジョーのコンディションに問題はありませんね?」
『押忍! 今のところ問題ナシっス!』
「最終チェック完了。万全を期したとはいえ、初の試みですので不測の事態も有り得ます。くれぐれも気を抜かぬよう」
『お、押忍……』
通信機から聞こえるハルキの声は、明らかに訝しげだった。コックピットの中で首を捻っているのが手に取るように分かる。
それはヨウコも同じ気持ちと言えよう。今のユウキ隊員は、どうも自分達の中にある苛烈なイメージとは……
「ねぇ……なんか様子がヘンじゃない? ……まさか、またセレブロみたいな奴が取り付いてたり……」
「え……ヨウコ、あの人の今の階級知らないの? ヨウコの方がずっと上だよ?」
「え、嘘!? なんで? 前は隊長だったじゃん」
「いくらセレブロに誘導された結果とはいえ、ウルトロイドゼロを暴走させちゃったのは事実だしね。デストルドスが飛び回ったせいで、各国の基地も壊滅状態。なのに、解散したハズの私たちストレイジはこうして復活。お咎めもナシ。有り得ないでしょ?」
「え……じゃ、じゃあ……」
「そ、本当はクリヤマ長官の立場が一番ヤバかったらしいんだけど、『長官を失脚させるくらいならば!』って、あの人が全部の責任おっかぶったんだって。だからまた単なるイチ技術士官から再出発ってわけ。大変だあ~」
「……そうだったんだ……」
振り返ったヨウコは、かつての上官だった者の横顔をもう一度見た。
「キングジョー、テイクオフしてください」
『今度こそ、いってきまああーッす!!』
Dフォースゲートのリアルタイム数値を映し出すモニターを、じっと見つめる彼女の顔は真剣そのもの。そこに、自分達への悪意だとか、邪な気持ちは一切無い。
ただ一人の生真面目な技術屋がそこにいるだけである。
「なんだ、結構……」
……いいとこあんじゃん。
「どう? ヨウコ」
「どうって……なにが?」
「だってヨウコそういうの……好きでしょ」
「……」
ヨウコが思うのは、今現在のストレイジが陥っている深刻な人材不足について。
かつてのストレイジ実働部隊は……隊長、ヨウコ、ユカ、ハルキの四人体制だった。
それは各地の怪獣出現が活発になり、おまけに地球へゼット様がやってくるまで、ストレイジは問題ばかり起こす不良部署という扱いでしかなく、毎年予算や人員を削りに削られまくった結果、あんな少数精鋭にならざるを得なかったというのが実情である。
ただでさえあの時ですら人手が足りなかったというのに、正体が宇宙人であるとバレてしまったヘビクラ隊長もまた姿を消し、代わりにヨウコが暫定的にその椅子へ納まったとはいえ……それはあくまで名目上に過ぎない。
さらに、今日はたまたまハルキがいるものの、彼も常に地球へ滞在しているとは限らない。
あの日、ゼット様と完全に一体化してしまったハルキ。それを境に、彼が守るべき範囲は随分と広がってしまった。
この地球だけでなく、宇宙全体……いや、今こうして駆け付けようとしている平行世界までもが、彼の守りたいものになったのだ。
1年の殆どを宇宙で過ごし、たまに地球へ帰っきたかと思えば、またすぐ宇宙へ……なんて。
「腕相撲、勝ったくせに……」
ヨウコは、口を尖らせ小さくそう呟いた。
だから、そんなハルキを隊員として頭数に入れるのはあまりにも不適格。
そんなわけで、現在のストレイジはなんと常駐隊員がヨウコとユカの二人だけ!
慣れない隊長業だって、殆どの事務作業をユカにやってもらっているような有様で、なんとか二人で分担しているという方が正しい。
そんな状態であるというのに、先ほどクリヤマ長官がぼそりと漏らした通り、現在のストレイジの立場は風前の灯火。
増員申請も何度となく上げているのだが、いつまで経っても承認が降りる気配すらなく、そもそも募集をかけたところで薄給すぎて誰もやりたがらないだろうとは思う。
私たち、これでも地球を守る正義の味方なんだけどな……
この前ユカに愚痴ったら……「ま、私ら正義の味方である前に公務員だから」って言われた。公務員って悲しい。
というか公務員の長所って安定じゃないのか? その安定も自分達で守らないとならないなんてどういうバグ?
臨時隊長に就任してしばらく、ヨウコはつくづく痛感した。やっぱり自分はパイロットに専念している方が性に合っていると。
……隊長、次からはもっと頑張って迷惑かけないようにしますから、お願いですので帰ってきてください!
とまあそういう苦しい状況のストレイジで、事務仕事はじめ隊長職の諸々を押し付けても心があんまり痛ま処理するのが自分より遥かに得意そうで、かつ今現在権力基盤がガタガタなクリヤマ長官の召集令にも二つ返事で従ってくれるような実直な軍人……そんな存在、捜しても見つからないなんて思っていたが……なんとまあ。
先入観とは恐ろしいもので、助けになりそうな人材がこんな身近に転がっていた事に今の今まで気付かなかった。以前とは逆に、いつの間にか相手を色眼鏡で見ていたのはヨウコの方だったのである。
それを少しばかり反省しながら、この人もあの時はこうだったのかな……と思い至った。少しばかりの親近感を胸に、これなら案外うまくやれそうかな……なんて。
そんな事を考えていたら……
『あ、あれぇっ!? 俺、帰って来ちゃった!? なんでぇ!?』
「ハルキッ! どした!?」
『ヨウコ先輩! なんかオレ……帰ってきちゃいました! 実験は失敗ッス!』
「ナツカワ隊員、報告は正確に! 帰ってきたとはどういう事? 私たちの視界からは、キングジョーの姿が完全に消失しているわ」
いきなり実験失敗などと言われて、声に多少の不機嫌さを滲ませながらも、いたって冷静に状況報告するよう催促するユウキ隊員。
『す、すんません! ゲート抜けたら……な、なんか目の前にセブンガーいるんスけど……俺、ストレイジに帰って来ちゃったみたいっス!』
「え、セブンガーが? どういう事……?」
困惑のままユカを振り返れば、彼女は端末を操作しながらしっかりと首を振る。
「ううん、そんなことない。キングジョーの信号はしっかりゲートの向こうから発信されてる。地球上のどこにも類似の反応なし。ハルキがいるのは、確かに私たちのとは違う地球だよ」
「ハルキ! 実験は成功してる! アンタはちゃんと別の時空に飛んでるって!」
『ええっ!? じゃあ、このセブンガーは……アキトさんが作ったってこと!?』
「ナツカワ隊員、情報が少なすぎます。他に周囲の様子で分かる事はありませんか」
あいにく別次元との通信状態は悪い。音声だけは多少ザラつきながらも聞こえているが、カメラからの画像は完全に砂嵐だった。
『ほかにって……さっきまでいた野外実験場と似てます!』
「ヨウコ、実験場にセブンガーがいるってんなら、それを作った奴が、今の俺たちみたいに臨時指揮所なり仮設テントなりに居るはずだ」
「た、確かに! ハルキ、足元! テントとか無い!?」
『へ、足元ぉ……!?』
それからしばらく、キョロキョロと周囲を見渡しているのかブツブツ言う声が聞こえから……
『あ! あったっス! 後ろにテントが……人もいっぱい出て来ました! あれ、でも……』
「どうしたの?」
『服がガッツセレクトのじゃないっス! もっとこう……ケンゴさんが着てたのは、なんか未来的なシュッとしたカッケー服だったのに……みんな俺らみたいに地味っス!』
「地味って……」
「私たちの制服、ただの作業着だもんね」
『あ! シュッとした人もいる……けど、やっぱガッツセレクトじゃないみたいだ……未来的っスけど、こっちはピッチリスーツみたいな……SFの宇宙服みたいなカンジっス。いいなぁ……』
「いいなとか言わない!」
「えっと……つまりなんだね? 実験は成功したのかね? 失敗したのかね?」
「成功です!」
「あ、そう。それならよかったぁ……」
「成功は成功だけど……」
別次元との接触という意味では成功したが、どうやらハルキの行きたかった地球ではなさそうだ。
目的としては、ある意味で失敗みたいなもの。
「そっかぁ……平行宇宙の多さ舐めてた……参ったなぁ……」
「多さって……どういう事?」
「そもそもパラレルワールドって無数に存在するって考えられてるんだけどね、今回ハルキが言ってた地球が私らの世界の隣なんだと思ってたの。すんなり移動出来てたから一番近そうだし。でも……違ったみたい。あー……移動先まで見つけなきゃなんないのかー……」
「なんか……大変そうだね」
「本当はさ、ハルキの持ってるガッツスパークレンスが向こう由来の物質だから、それでパスが繋がると思ってたんだけどなー……あ゙ー……面倒くさい゙ー」
平行世界だかなんだかはよく分からないが、ユカが頭を抱えるくらいだから、よっぽど大変なのだろう。
「……ねえ、ユウキさん。私たち、あそことは違う世界に行きたいんですけど……このゲートって行き先指定機能とかありません?」
一応、ダメもとで隣の技術屋に話を振ってみるヨウコ。
ユカでも解決出来ないなら誰にも出来ないだろうとは思うが……ユウキ隊員もそれなりにこの分野に明るいはずだからだ。
なにせD4の基礎理論はユカが考えたものでも、それを理解して兵器という形にしてみせたのは彼女であり、少なくとも、ちんぷんかんぷんなヨウコよりは話が通じるだろう。
三人揃えば文殊の知恵と言うし……
「ないですね」
「そこをなんとか! どうにかなりません?」
「さあ。私はあくまでD4技術を応用して異次元ゲートを維持せよとしか命令されていませんので。ただ……行き先が選定できているなら、その世界と近似値にある物体や概念を用意する程度しかないかと」
「あー……それは一応ハルキが持ってたハズ? なんですけど失敗しちゃって。もともと向こうの世界にあった道具なのに……」
「……それはおかしいですね」
ユウキの細く整った眉が吊り上がる。
「本来、別宇宙にあった存在ならば、もとあった場所へ戻ろうとする力が働くはずです。違う場所にあるのはイレギュラーなわけですから。ですが、実際にその世界間引力が正常に働かないとなると、ソレをさらに上回る物質や概念が阻害したとしか……」
「ああー! そっかぁ!! 分かったぁ!!」
「うわびっくりした」
いきなりの大声に振り返ると、ユカが椅子から立ち上がり、何事かを計算していた。
「そうかそれだそれ! 特空機だ!」
「特空機……?」
「うん! ガッツスパークレンスってせいぜい手持ちサイズしかないでしょ? だからあれに含まれる因果係数もそれに見合った……ほら、こんだけしかない! これじゃハルキの中の光因子とか、それこそキングジョー自体も他の世界からしたら特異点として認識されちゃって、そっちの反応が大きすぎるってわけ。……で、今回はたまたま『特空機』って概念の方に引き寄せられちゃったみたいだね」
「つまり……向こうのセブンガーを、キングジョーが同じく特空機仲間だと思った……てこと?」
「んー、まあそんなカンジ。そうか、あっちの係数が最大になるように調整しなきゃなんないのかー……まあ。大変だけどなんとかなりそう。ありがとうマイさん! 私じゃ特空機自体が身近すぎて全然気付かなかったよ! 結構やるじゃん!」
「そ、そのように言われる程の事では……」
ユカが満面の笑みで突き出したサムズアップに、ユウキは虚を突かれたように目を見開くと、どう返答するべきか困惑したのかフイと顔を逸らす。
「……あ、ちょっとアリかも」
「ハルキ! とりあえず調整方針は決まったから戻ってきて! 目的地に着くまで再トライだ!」
『へ? 戻るの? お、押忍……! アレ?』
「うん? どうしたの? 戻り方分かんない? そのまま来たゲートくぐれば良いだけだよ?」
『いや、そうじゃなくて…………駄目だ、どうしよう! キングジョーがいきなり言うこと聞いてくれなくなっちゃったっス!』
「えっ! こんな時に故障!?」
「そんなはずは……機体の数値は正常なままです!」
「こちらも異常なし!」
機体状況をリアルタイムに監視していた整備班達が口々に問題無しを告げる。
『うわっ!? へっ!? なんか……今度は警告みたいな音まで出始めたっス! まるで叫んでるみたいな……』
「まさか……今度はD4じゃなくて、キングジョーが暴走……!?」
「えっ?
気を失ってドサリと倒れるクリヤマ長官。
「長官!? しっかりしてください長官! 衛生兵! 衛生兵ーッ!!」
ユウキが血相を変えてクリヤマへ駆け寄る中、ストレイジメンバーも大わらわとなっていた。
「ハルキ! 脱出は!?」
『駄目っス! 操縦桿もレバーも全部動かない……おい! お前どうしちまったんだよキングジョー!? またあのバーコード野郎がいるのか!?』
「貸せ、ヨウコ」
「バコさん!」
通信機のマイクをヨウコから渡されたイナバが、ひとまず落ちつくようにハルキを宥める。
「ハルキ、キングジョーは暴れてるんじゃなくて、まだ操作を受け付けない段階。そうだな?」
『そ、そうっス』
「その他の異常は警告音のみ……ハルキ、キングジョーはなんて言ってる?」
『……え? 何って……バコさんじゃないんで、そんなの分かんないっスよ……』
「キングジョーに合わせて真似してみろ」
『び……びーび、びーび、びび、びー、びーびびびー……』
なんとも間抜けなハルキの声がしばらく続くが……
何度か同じフレーズを聞いたところで、ユウキとユカが顔を見合わせた。
「これは……軍のモールス通信では?」
「やっぱり? そう思って解析かけたら、ちゃんと言葉になったよ! すごい! うちのキングジョー喋ってる!」
「え、本当!?」
「うん。翻訳すると、同じ言葉の繰り返し。あれはね……」
タ ダ イ マ
ぽとりと、イナバの手からマイクが落ちた。
「バコさん……?」
「そうか…………そうかぁ……!」
―――――――――
――同時刻。
防衛軍の野外臨時指揮所では、緊迫した空気の中で隊員達がモニターを睨んでいた。
これまで長年の間、度重なる破壊工作や妨害行為、あるいは時勢の変化による中止や延期を繰り返し、ようやくここまで漕ぎつけた、上層部肝いりであるセブンガー計画の最終起動実験。
その最中にもう一体の巨大ロボット……過去のデータベースと照合し、キングジョーの新型と思われる巨大機動兵器が、突然としてこの実験場に乱入してきたのだ。
この仮設テントから僅か数十メートルしかない距離に、それは今、じっとこちらを睥睨するよう佇んでいる。
「シマ、非戦闘員の退避を急がせろ。ルミ隊員、基地に連絡してトーゴー達にホークの緊急発信を要請するんだ」
「了解! ライトンR30で爆装するよう伝えます」
ヘッドセットをつけたルミ隊員が、基地で待機しているリサ達に状況を伝え始める。
「ミズノ、どうだ。何か分かったか」
「隊長、あの機体……さっきからこの一帯に対して強烈な電波を発しています。それも驚くべき事に……軍の秘匿回線を使って」
「なに! モールス信号だけではないのか!」
「……こちらです」
そこに映し出された言葉は……
『ワタシハ地球人』
「なにぃ……私は地球人だと! ペダン星人め、いきなりキングジョーで乗り付けて領有権を主張するなんて、こっちを舐めくさってやがる! 隊長! これは奴らからの宣誓布告ですよ!」
表示されたメッセージに、シマ隊員が掌に拳骨を打ち付けながら怒りを露わにする。
「俺たちがようやくセブンガーの完成に漕ぎ着けたってんで、焦って邪魔しに来たんだ!」
「確かに、キングジョーの装甲が以前のようにペダニウム製のままであるならライトンR30で破る事が出来ると判明していますが、その為には奴の動きを止めねばなりません。セブンガーが完成してしまうと、キングジョー相手にも充分にその足止め要員たり得るわけですから、ペダン星人が脅威と判断してもおかしくでしょう」
冷静にそう分析し、頷くミズノ。
「ほらやっぱり! 今からでも遅くありません。セブンガーのテストがてら、敵が油断しているうちに抑え込んでやりましょう!」
「いくらなんでも早計よ!」
「でもなサトミ隊員、このまま先制攻撃されたら俺たちは全滅だぞ!」
「待て、シマ。まだそうとは決まっていない……だが念の為に反撃準備は整えておけ。全隊員に煙幕弾を装備させて、敵を反包囲するんだ。ホークの到着まで時間を稼ぐ……サトミ隊員!」
「はっ」
「君は今すぐ参謀を安全な後方へお連れしろ。もうすぐここは戦場になる。もしかするとあれは囮で、狙いはセブンガー計画の主導者である参謀かもしれん。カザモリと二人で基地まで必ず護衛するんだ。ポインターを使え」
「了解っ!」
確かに隊長の懸念はもっともだ。
重要な任務に真剣な表情で頷くサトミ隊員。
見事な敬礼を残し、彼女が仮設テントを後にしようとした時……
「いや、それには及ばないよ。シラガネ隊長」
「……参謀!」
当の護衛対象である参謀が、直属の部下であるカジ参謀補佐と連絡要員としてつけていたカザモリを伴って、警備隊の詰め所に現れた。
これには隊長も驚いて、僅かな困惑を滲ませながら彼の秘書に確認する。
「……カジ参謀補佐! なぜ退避なさらなかったのです!」
「いや、私もそう進言したのだが……」
そう言いつつ横から上司の顔へチラチラとアイコンタクトを送るカジ参謀補佐。その口が無言で「この人がさ!」と動き、忸怩たる思いを告げる。
「カザモリ! お前が付いていながら、こんな危険な場所へお二人を連れてくるとは、何を考えているんだ!」
「まあまあ隊長。私が強権を発動したら彼らが逆らえるわけなかろう。それが軍と云うものだ。あんまりそうやって年下を頭ごなしに叱ってばかりだと、娘に嫌われても知らんぞ?」
「参謀のように甘い顔をするだけが、教育ではありませんので」
「くくく、それでこそシラガネ隊長だ」
いつものように煙に巻く為か、いきなりプライベートを引き合いに出されて、むっとする隊長。
この参謀は自身も妻帯者だと言うのに、事ある毎にこちらの家族仲を揶揄って来るので、その点についてはシラガネも心底辟易していたのだった。
上司にそういった方面でも理解があるのは有難いが、それなら部下の手前、もう少し配慮してほしい。
「第一……安全という意味では、君たちウルトラ警備隊のそばを離れてしまったら、この地球のいったいどこにそんな場所が存在するというのかね?」
「い、いやあ……ハハハ」
見え見えのおだてに、単純なシマなどは照れて頭を掻いていたが……他の隊員もそこまで言われては流石に満更でもないのか、内心の迷惑さと相殺しあって複雑そうな表情を浮かべていた。
ただ一人、シラガネ隊長だけが苦虫をかみつぶしたような顔で渋々とパイプ椅子を勧める。
確かにもしも敵の狙いが参謀だった場合、下手に単独行動するよりは部隊全員が盾となれる位置の方が護衛する側には都合が良く、既にこの距離まで近付かれてしまった以上、キングジョーの砲撃の前では指揮所で全滅するのもポインターを狙い撃ちされるのもさして変わりは無い……とでも考えているのだろう。
豪胆というか、無謀というか……この参謀はフルハシ参謀と並び、とんでもない現場主義者の猪武者で有名だった。
なにかとフットワークが軽く、気安く作戦室に顔を出しては先ほどのようなジョークで場を和ませたりと、下っ端からすれば親しみ易さの権現のような人物であり、一種のカルト的人気を誇っていたが、それに振り回される事となる隊長をはじめ、一定以上の現場責任者達や上層部からは完全に頭痛の種として扱われている。
先ほども、言葉ではああ言ったものの、シラガネの内心はカジ参謀補佐への同情心でいっぱいだった。
「敵の狙いが分からない以上、参謀には即刻退避して頂きたいというのが、ウルトラ警備隊隊長である私としての率直な意見です」
「敵? ハハハ、相変わらず真面目だねシラガネ隊長……あれは敵ではないよ」
「なぜそのような事が断言できます」
「だって、彼はこちらの言語や回線を使って地球人だと言ってきているらしいじゃないか。じゃあ我々は受け容れてやるだけさ。そうだろ? ちなみに識別信号はどうなっているんだ?」
「識別信号……ですか?」
「そう、敵味方の識別だよ。あの機体の所属はなんとなってる?」
宇宙人のロボットに識別信号も何も……と皆思ったが、ルミ隊員だけが、素っ頓狂な声を上げる。
「……え!? 嘘! 識別信号は味方……キングジョーの所属……地球防衛軍です!」
「そんな馬鹿な! 念の為にデータベースとも照合しましたが、あのような兵器はこれまでのどの防衛チームにも記録がありません!」
「
「……お言葉ですが参謀、ペダン星人の技術力は防衛軍を遥かに上回っていると考えられます。我々の言語やデータベースをハッキングして、こちらが攻撃を躊躇うように偽装するなどは……それとも、これは手の込んだ演習で、あのような巨大兵器の建造計画を自分が寡聞にして知らないだけでしょうか? セブンガー再建の裏でそのような大プロジェクトが秘密裏に? ……有り得ない」
「ふむ……そうなるか。しかし、このまま睨み合っていても埒が開かんだろう。どうかな隊長、こちらから呼びかけてみては?」
「……かしこまりました」
幸いにも敵は不動直立を貫き、非戦闘員が退避するだけの猶予は稼げた。
本当は一番退避させたい人間が残っているが……あちらにひとまず戦闘の意思が無いのではという判断にはシラガネも賛成だ。
こちらの言語を解するならば、呼びかけてみる価値はあるだろう。
「巨大機動兵器のパイロットに次ぐ! こちらはUGM所属、ウルトラ警備隊隊長シラガネだ! 貴官の所属と来訪目的を告げられたし!」
スピーカーで呼びかけることしばらく。
ピ~……ガ~と不快なハウリングの後に、まさしくおっかなびっくりを絵に描いたような口調で気の抜けるような返答が帰ってきた。
『こ、こちら……地球防衛軍ストレイジ所属の……ナツカワ・ハルキっス! コイツはキングジョーストレイジカスタム! 勝手にお邪魔して本っっっ当に申し訳ありません!! オレもすぐ帰りたいんスけど……機体が動かなくなっちゃって……! あの、いきなりで信じて貰えないかもしれないけど、オレ達って別の地球から来て! そんで後ろにある……このビカビカの穴? が次元ゲートって言いますか……』
「……ほらな?」
一人だけクツクツと愉快そうに笑っている参謀はひとまず置いておき、シラガネが次の質問をしようとした時だ。
「……っ! 隊長! 回線を用いたメッセージに変化があります!」
「なに!」
『嘘ツケ。オ前ハ、ウルトラ警備隊ノ、隊長デハ無イ』
「……あんにゃろう! 口ではあんな事言っといて、隊長を侮辱しやがっただと! もう許しておけませんよ!」
「いや待て。これは……」
「隊長……もしかして、あのキングジョーはパイロットとは別にコンピュータが動かしているんじゃありません?」
「……そうか! 機体の制御AIが反乱! でもそんなSF小説じゃあるまいし!」
「……ナツカワ君。君の機体は、私の事をウルトラ警備隊の隊長では無いと断言してきたんだが、何か心辺りはあるか」
『……え!? どういう事っスか?』
「さっきから、こちらの回線にメッセージを送ってきているのは、そのキングジョーのようなんだがね」
『嘘ォ!! キングジョー……お、お前しゃべるのォッ!?』
「ぶぅわっはっはっは……!! もうダメだ、お腹痛い!」
「……ちょっと、参謀。みんな必死にやっているんですよ」
「だってなお前……こんなん無理だろダ……カザモリくぅん! なんでお前平気なの?」
後ろで何事かをヒソヒソと話す参謀達を余所に、キングジョーはついにパイロットすらそっちのけで、実に恐るべき要求を地球防衛軍に叩き付けてきたのだ!
『オ前ジャ、話ニナラン、キリヤマ隊長ヲ出セ』
「キリヤマ隊長……? 誰だそりゃ?」
「シラガネ隊長と間違えてるのかな……漢字が読めないとか!」
「白金をどう読んでもキリヤマにはならないでしょ」
「あれ……? そういえばどこかで聞いた事あるような……」
全く覚えの無い名前に首を捻りながら困惑する部下達とは違い、シラガネ隊長は溜息をついて、ようやく事態の全容を朧気ながら把握、あるいは推測した。
「はあ……お前達が知らなくても無理は無い。何代も前の防衛チームを率いていたお方だ。ただひとつ、今の我々と共通点があるとするならば……名称が同じこと」
「あ、まさか……!」
「そう。あのロボットが言っているのは、我々ウルトラ警備隊モデュレイトではなく……30年前の
そして、背後の男を振り返った。
「……でしょう?
「……ふふふ。流石はシラガネ隊長。いや失礼、私もこんな事になるとは……本当だよ? ……さて、貸して頂いても、いいかな?」
「上司を呼んで来いと言われましたもので」
「後で強く言っとくよ」
やれやれと下がる隊長の肩を労うように叩きながら、意気揚々とマイクを受け取った男は、もはや嬉しさを隠そうともせず、口の端にあのいつもの不敵な笑みを湛えてこう言った。
「こちら!
『え、ええっ……そんな……怖……』
「あ、ごめん君じゃ無いよハルキ君」
「あ、音が……途切れた」
先ほどから、ここにいるぞと言わんばかりにうるさいほど鳴り響いていた警告音のモールスがピタリと止み、実験場が静まり返った。
固唾を飲んでロボットの動向を見守る隊員達……
『ワタシハ』
ごうぅん……と、キングジョーの胸奥で七色の感情が渦を巻く。
それまで直立不動だったロボットが、急に動き出したのだ!
「うわっ! か、構えろ!」
『待って待って! 攻撃しないでー! 止まれーキングジョー!』
だが、暴走するかに思われたロボットは、持ち上げた右手の砲身で辺りを乱射するのではなく……踵を揃え、背筋を伸ばし、キラリと輝く細長い腕を頭の横へピタリとつける。
そして……
『ワタシハ、ユーエイト。ウルトラ警備隊ノ、栄エアル、8番目ノ、隊員デス』
「……おかえり、戦友」
それは、誰がどう見ても……見事で美しい敬礼だった。
というわけで、一番要望の多かったユーエイト編でした。
この後、合流したストレイジとウルトラ警備隊がフォースゲートオープン! からのスフィア占領下の火星へどやどや雪崩れ込んで、レジスタンスやってたガッツセレクトと一緒に大立ち回りの大暴れする事になります。
むろん、めちゃくちゃ勝った。
アキトの胃は死んだ。
まあ、マルチバースだからね!
気になる?
-
8番目
-
保安官
-
補佐官
-
星雲荘