転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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火曜日に更新すると言ったな?

あれは……嘘だ。

今日は、とある理由で一日早い本日28日の投稿!

※注意

今話には、『ウルトラマンメビウス』本編及びストーリーに関する重大なネタバレが多数含まれております。

もしも今後、同作品を視聴予定かつ、初見時の驚きやワクワク感を大切にされたい方は直ちにブラウザバックし、ウルトラマンメビウス本編を視聴してからお読みになる事を推奨します。

いまさら気にしないぜという方は、どうぞお楽しみ下さい。


明日の捜し物

 

『指令、ウルトラマンメビウス……抹殺』

 

「メビウス抹殺……だと!?」

 

レドーム上の頭部を、刺客の被る三度笠のように揺らしながら、機械的な動きでメビウスに一歩、また一歩と迫る新手の円盤生物。

 

メビウスはケルビムを抑えるのに必死で、二体目の怪獣に対応する余裕が無い。

 

「クソっ! 基地にも怪獣、こっちにも怪獣……いったいどうすりゃいいんだ!?」

 

焦るジョージに、テッペイが悔しげに答える。

 

『そうか! ノーバの役目はこれだったんだ……! 戦力の分断と攪乱、雨であちらに有利な戦場を構築しつつ、標的であるメビウスに消耗を強いてから満を持して本命を投入……! 敵は最初から、本気でメビウスを倒す事だけを考えていたんですよ!』

 

「ここで俺達が基地を守りに戻っても、敵の思う壺だって事かよ!」

 

『ギャオオオン!』

 

ノーバが振り回すムチは、もうフェニックスネストの間近にまで迫っていた!

 

「でも、このままじゃ基地が……!」

 

 

 

『狼狽えるなっ!』

 

その時! 地上から一条の光が伸び、赤いてるてる坊主の不気味な顔に火花を散らす。

 

「さ……参謀長!?」

 

『ここはガイズの膝元フェニックスネスト!! 不死鳥の巣が……そう簡単に墜ちるものかッ!』

 

『その通りだ!』

 

続けて、ノーバの背後に無数のレーザーが着弾する。

思わずたたらを踏んで動きを止める赤い暗殺者。

 

『今のは……ガンブースターのガトリングデトネイター!?』

 

「って事は……乗ってるのはまさかっ!」

 

『ここは我々が食い止める! GUYSの使命は人々を守ることだ! お前達は、メビウスと共に街を救えっ!』

 

「サコミズ隊長!!」

 

3機目のガイズマシンであるガンブースターが、その圧倒的な速力で怪獣の眼前を横切り、敵の注意を逸らす。

 

その間に、基地から飛び出してきた女性隊員が、急いでカプセルを自身のメモリーディスプレイに装着した。

 

「隊長!」

 

『メテオール解禁! 頼むぞコノミ!』

 

「お願いミクラス……!」

 

―― realise!――

 

承認を得た彼女が引き金をひけば、途端に光の渦が巻き起こり、その中から捻れた立派な角を持つ巨大な猛牛が姿を表す!

 

『Graaa!』

 

『ミクラスと私達もいます! ジョージさんとマリナさんは、メビウスを助けてあげて下さいっ!』

 

「分かったわ、コノミちゃん!」

 

「くらえ! バリアブルパルサー!」

 

ガンローダーの攻撃がケルビムの首筋に直撃し、痛みで大きく後退させる。

 

その隙に、メビウスは背後から迫るもう一体の怪獣に、思い切り後ろ蹴りを食らわせた!

 

不意の反撃に吹き飛ぶ漆黒の怪獣。

 

しかし次の瞬間、倒れた状態からあたかも映像を逆回しでもしたかと思う動きで即座に起き上がり、ダメージなどまるで無かったかのような態度で再び攻撃を始める円盤生物。

 

メタリックな外見も相まって、まさに機械仕掛けの処刑人といったところか。

 

「えっと……これじゃない。これも違う……ええいチクショー! なんだったかな……」

 

「はぁ……はぁ……! 全くもう、一人で飛び出していくなんて、貴方はまた無茶ばっかりして……ソガさん?  その頭につけてる変なのは……?」

 

息を切らせてトリヤマ補佐官が追い付いた時、ソガ参謀長は妙なリング状の機械を頭に嵌め、まるでページでもめくるかのように、虚空を指で何度もなぞっているところであった。

 

「これか? これはな、ブレインストリーミング装置と言ってな。私の頭の中を覗く事が出来るんだ。知り合いに作って貰ったんだよ」

 

「えっ? そんな事してなんになるんです?」

 

「そりゃおめえ、自分でも忘れてしまったような情報をだな……ああ! あった!! 諸君! ソイツはロベルガーだ! 遠近両用の隙が無い強敵だぞ! 目からだけでなく、両手からでもビームが放てる! 光弾の乱れ撃ちに注意しろ!」

 

『注意しろったって!』

 

『ケルビムだって全身凶器みたいな怪獣なのに!』

 

ソガの警告は本当の事らしく、起き上がったロベルガーはメビウスの回し蹴りを、同じく回し蹴りで相殺し、続けて放たれた連続パンチも容易くいなしてしまう程の技量を見せつけていた。

 

パワー、スピード、そしてテクニックにおいてもほぼメビウスと互角か……いや、それ以上。

 

『ウルトラマンメビウス、抹殺』

 

もしかすると、しきりに連呼する通りに打倒メビウスを目的として送り込まれたのならば、その標的として彼の全データをインプットされているのかもしれない。

 

対ウルトラマン用の戦術を組み込まれ、タイマンでも圧倒できるようにカスタマイズされた殺戮マシーン。

 

しかも……

 

『ガオオオッ!』

『アウッ!? ダァ……!』

 

ロベルガーと拮抗し、無防備を晒すメビウスの背中を、ケルビムの一本角が打ち据える。

ガンローダーの攻撃だけでは、この悪鬼を押し留めるには足りなかったのだ。

まさに多勢に無勢。

 

巨人の胸で、カラータイマーが赤く点滅を始める。

 

「駄目だ……! ただでさえメビウスは必殺技を使ってエネルギーが少ないってのに……!」

 

「私達もメテオールが使えないなんて! このままじゃ……!」

 

『ふふふ……どうやら予定を早めといて正解だったようだな!』

 

「なに? どういう意味だセニョール?」

 

『つまりこういう事さ! テッペイ君! 私のカバンを!』

 

『か、カバンですか……!?』

 

ディレクションルームにひとり残されたテッペイが、床に落ちていたアタッシュケースを開くと、中には古めかしい操縦桿が二本と、幾つかのボタンやツマミの付いた謎パーツが一式。

 

『それをガイズタフブックにセットするんだ!』

 

『は……はい!』

 

――Welcome back to GunSeven ――

 

『えっと……? コレかな?』

 

言う通りにしたテッペイが、【Open gate?】の表示をクリックすれば……

 

―― Fourth Gate open ――

 

「え、何だ? 今のアナウンス?」

 

「どこかで何か動いてる……大きなエレベーター……? 後ろから!?」

 

―― All right?――

 

突如、周囲に響き渡る警告音にガンローダーの二人が困惑する中、眼下に広がる公園の奥で、記念館の正面扉が大きく開放される。

 

―― Let's go! ――

 

それと同時、白煙を巻き上げて何か巨大な影が勢いよく飛び出したかと思うと、メビウスを嬲っていたケルビムの下顎を思いっ切りかち上げた!

 

『ガオオオッ!?』

 

「な、なんだありゃ!?」

 

鋭いアッパーカットを繰り出したポーズのまま、日光を照り返しその場に鎮座する巨像の姿……

 

ずんぐりと丸みをおびたフォルム。

寸胴に付いた短い手足。

大きな目玉とトサカのついたヘッドパーツ。

 

「……あ!? アイツ! 神戸港でメビウスのパチモンをボコボコにしてた奴じゃないか!?」

 

かつて、神戸の街でメビウスが暴れ回るという信じられない事件があったが、その際に緊急出動した巨大ロボットによく似ている。

 

その豪腕で、ニセモノに化けたザラブ星人が音を上げて正体を晒すまで、散々っぱら殴り飛ばすという胸のすく活躍を、ジョージは思い出したのだ。

 

『なんだって!? という事はマックスジョー六世? GUYSオーシャンの切り札である歩行戦艦が、なぜこんな山奥に!?』

 

『いえ、違います! あれはガメロットという異星ロボの残骸を基にして建造されましたが、これは恐らく……!』

 

トリヤマ補佐官の疑問を、テッペイが正面から否定するも、その声はなかば呆然としたものだった。

信じられない気持ちは、彼もまた同じだったからだ。

 

『あーっ!?』

 

コノミの驚きに満ちた声が通信機に響き渡る。

 

「知ってるの!? コノミちゃん!」

 

『知ってるもなにも、平和記念館に展示されてたロボットですよーっ! 名前は確か……』

 

『レジストコード、セブンガー! ドキュメントMACと、ドキュメントH.UGMに記録があります! でも、マックスジョー六世の竣工完了と同時に退役したはずじゃ……!』

 

『……いいや。ちゃんと動くように改修を頼んでおいたのさ。こういう時の為に……な!』

 

マーカーセーテー!

 

関節の軋む音を辺りに響かせて、蒸気を噴射しながらガッツポーズを取る巨大ロボット。

 

『セブンガー改め……ガンセブン!! これぞ君たちの新たなチカラ(Force)だ!』

 

そのままロベルガーとがっぷり四つに組み合うガンセブン!

 

ネオマキシマエンジンのもたらすパワーは、処刑用サイボーグにもまったく引けを取らない!

 

「なんだか知らねえが、顔に似合わず頼りになりそうだぜ!」

 

「これなら……!」

 

『きゃあああああっ!』

 

「……コノミッ!?」

 

――――――――――――

 

地面に横たわるコノミのヘルメットに、仲間達の声が響く。

掌に伝わる硬いコンクリートの感触。

 

ミクラスを狙った火球の流れ弾が、コノミのいる近くにも着弾し、吹き飛ばされてしまったのだ。

 

『大丈夫!?』

 

『なにがあったっ!? コノミッ……クソッこいつら!』

 

『次! 後ろよっ!!』

 

「だ、大丈夫……だから……痛ッ」

 

あちらも精一杯らしい。

こんな事で迷惑をかけてはいられないと、強がってはみるものの、全身に痛みが走る。

 

『Graaa……』

 

「ミクラス……」

 

ふと顔を上げれば、ミクラスもコノミと同じように倒れ伏し、情けない声をあげていた。

先ほどの攻撃を、真正面からくらってしまったのだから無理もない。

 

『ギャオオオオン!』

 

ムチを振りかざしたノーバが、ミクラスにトドメを刺そうと、こちらへ迫ってくる。

 

その赤いレインコートへ、再びレーザーの雨が降り注ぎ、侵攻を阻害した。

 

『コノミ! 無理をするな! 退避しろ!』

 

「隊……長……」

 

ガンブースターが旋回する合間に、今度は地上からプラズマ弾が間断なくノーバの顔面を打ち据える。

おそらく参謀長達の援護射撃? だろう。

 

そんな時だ。

 

「……ガンバレッ!」

 

「……えっ」

 

微かに聞こえて来た声援に振り返れば、基地近くの連絡通路から、一人の男が身を乗り出して声を張り上げていた。

 

「アマガイ! 頑張れ! 負けるな! アマガイ!!」

 

「スザキ君……」

 

その姿が、引っ越して行く自分を、そうして見送るあの時の少年と重なった。

 

「よし……でゅわ! びゅーん! たかたか……ぱ!」

 

倒れた拍子に落とした眼鏡を拾い上げ、教わったおまじないを唱えれば、恐怖心が晴れていく。

 

「あ、いた! お二人とも! あそこに!」

「コノミ隊員! 無事か!」

「コノミ君! ああ……」

 

「参謀長……」

 

「怪我は?」

 

「大丈夫です! 私……まだ戦えます!」

 

「よぅ言うたっ! それでこそGUYSの隊員だっ!」

 

するとソガ参謀長は、右手の銃で再びノーバへ射撃を加え始める。

 

彼が握っているのは、先ほど使っていたウルトラガンとは違い、ラッパか懐中電灯に引き金を着けたような、なんとも不格好なもの。

 

その広く開いた銃口から、凄まじい勢いで光弾を噴射していくではないか。

 

『そんな! 威力はほぼバスターブレットと同じ……それをレッドチェンバー時の連射速度で撃ち出すなんて! 僕らのトライガーショットより高性能だとしたら、なんらかのメテオールを使ってるとしか……参謀長、それって!?』

 

「こ、これは……友達に借りた! 私物だっ!」

 

「ええっー!?」

『いや、メテオールの個人所有って……そんなのアリなんですか?』

「あの、ソガさん……無断使用はちょっと……」

 

「え? ダメか!? しょうがねぇなぁ……メテオール解禁! メテオール解禁! うおおおっ……解禁解禁解禁禁禁……!」

 

『む、無茶苦茶だなこのひとーっ!? 自分で自分を認可するとか無法すぎる……』

 

「ま、まあ……参謀局が参謀局の装備を承認する分には問題あるまい……うむ! 解決!! よかったよかった!」

 

「コノミさん、今のうちに」

 

「はい! ……ミクラスーっ! 頑張ってーっ!!」

 

『……Gra!!』

 

コノミの声援を受けたミクラスは、力を振り絞って立ち上がると、眉根をキリッと寄せて気合いを入れた!

 

そのままノーバへ向けて再び突進!

 

『ギャオオン!』

 

そこへ真紅のムチが迫る!

 

「ミクラス、受け止めてーっ!!」

 

『Graaa!』

 

自慢の怪力を活かして敵の攻撃を難無く受け止めたミクラスは、大木のように太い両腕で、ムチを脇の下へガッシリ挟むと、掌からそこへ高圧電流を流し込んだ!

 

マケットミクラスはデータ怪獣であるため、そこにネロンガをはじめとした数々の電気怪獣の能力を付与されており、言わばエレキミクラスなのである。

 

電流でノーバが怯むのを見てとると、今度は綱引きの要領でムチを力一杯引っ張った!

 

ふんばりを失ったノーバの軽い体が、ミクラスを中心にぐるんぐるんと振り回される。ジャイアントスイング炸裂!

 

そして、砲丸投げの選手がそうするように、遠心力が最大まで達した瞬間、野太い咆哮と共に上空へ向かって敵を放り投げた!

 

『Graaaaaaー!!』

 

「やったっ!」

 

『まだだ!』

 

サコミズ隊長のガンブースターが、赤い円盤の後を追う。

 

すると、ノーバは広がった膜状の体を回転させ、まるでフリスビーのように大きく弧を描くと、こちらへ戻ってこようとするではないか。

 

そうはさせじとレーザーを乱射し、ノーバの軌道を阻害するサコミズ。

 

『くっ……駄目だ。このままじゃ抑えきれない……! こちらもメテオールを使うぞ! Permission to shift……maneuver!!』

 

黄金の粒子が翼から漏れ出すと同時、機体を高速で回転させ、発生した力場によりノーバの目から撃ち出されるレーザーを弾き返すガンブースター。

 

そのまま、上空で戦闘機と円盤生物による激しいドッグファイトが始まった。

 

「隊長……! あっ!」

 

―― Zero ――

 

それと入れ替わるように、コノミが握りしめていたメモリーディスプレイではカウントダウンが終了してしまう。

光の粒子となって消えるミクラス。

 

「ミクラスだけじゃ足りなかったか……!」

 

「あと一押しなのに……」

 

「ええぃ、何か無いのか! いくらサコミズ隊長でも、ガンブースター1機だけでは長く保たんぞ!」

 

「何か……」

 

地上で弱り顔の面々を見渡すソガ……

 

「いや、ある!!」

 

「え!?」

 

「トリピー! 御守りを出せ!」

 

「お、御守り……?」

 

「肌身離さず持っとけって、渡してあっただろうが!」

 

「そ、そうでしたっけ……?」

 

「ああ!!」

 

困惑する補佐官の横で、ポンと手を打つマル秘書官。

 

「それならば此方に」

 

「マルさんナイス!!」

 

「……マケットカプセル?」

 

「あ、あ~! ありましたありました!」

 

「ありましたって、お前……」

 

「あのですね参謀長。補佐官もね、ずっと忘れていたわけじゃないんです。でも、この間のマケット怪獣試験の報告書に、どーしても内容が足りなくて、仕方なくこれで水増ししたんですよ~」

 

「いらんことまで言わんでいい!」

 

「あ、ゼットン壊しちゃったから……」

 

「私にとっては、あれがいざという時だったんです! 本当なんです! 信じてくださいぃ……」

 

「わたくしはだいたいいつも補佐官のお側におりますから、これで肌身離さずというのはクリアになるかと……」

 

「ああ大丈夫だ! おかげで助かりそうだぞ! ほら、これを使え! コノミ隊員!」

 

「分かりましたっ! あっでも……」

 

チャージ済みのカプセルを投げ渡されたコノミが、自身のメモリーディスプレイにそれをセットし、トリガーに指をかけ……

 

発動寸前で、思い出したように振り返る。

 

「どうした?」

 

「そっか、承認ですね。サコミズ隊長は……」

 

四人が空を見上げると、彼らの上でそれはもう凄まじい空中戦が繰り広げられていた。

 

縦横無尽に空を飛び回るノーバが、四方八方からレーザーを撃ちかけ、それをファントムアビテイションを駆使した理不尽な機動で捌きつつ、時にスパイラルウォールで反射させた攻撃すらも転用し、矢継ぎ早な反撃を繰り出すサコミズ隊長。

 

完全にメテオールを制御しきっており、およそ人間とは思えない神業の連発である。

しかし……

 

「あわわ……駄目だ。ただでさえガンブースターは扱いが難しいのに、マニューバモードなんて……いくらサコミズ君が凄腕パイロットでも、他の事に集中力を割けるわけがない……! これではカプセルを使えないぞ! どこかにもう一人、上位権限を持つ人間がいないものか……」

 

()()()で慌てるトリヤマ補佐官。

口元にあてた自分の指を、そのまま食べてしまいそうな勢いである。

 

だが、ふと我に返った彼が周囲を見渡せば、他の三人がやけに冷静な顔でこちらをじっと見ているではないか。

 

「な、なんだね? みんなして……」

 

「あの……気付いてらっしゃらないのかもしれませんが……」

 

「ああ! ソガさんにやって貰おうと言うのだろう? ダメダメ! 彼の所属は参謀局! こっちの装備にまで口を出させるなんて、越権行為だ! ただでさえ普段から無茶苦茶やってるんだから絶対駄目! あくまで承認を下すのは、我々GUYS JAPANの人間でなくては……」

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

「……元はと言えば、お前さんの仕事だったろうが」

 

「……ハッ!?」

 

サコミズ隊長に権限を委任しているだけで、本来の承認者は彼であった。

冷ややかな視線が突き刺さる。

 

「そうだったそうだった。いやあ、久しぶりだなぁ……ン゙ン゙! メテオール! 解! 禁!」

 

「はい!」

 

正式な手順を踏んで、コノミは手元のトリガーを押し込んだ!

 

 

―― Realise!――

 

 

緑の光が渦を巻き、その中からは立派な襟巻きを持つ怪獣が姿を現す……!

 

日光を反射してキラリと主張する鋭い一本角。

 

『AGRa……。』

 

「わぁ……はじめて見るマケット怪獣です……!」

 

『アギラだぁ! ドキュメントUGに記録があるカプセル怪獣……つまり、ミクラスやウインダムの仲間ですよ!』

 

「ああ! 見た目以上に頼りになるぜ!」

 

自慢げに胸を張るソガ参謀長だが、その言葉にマルとコノミは首を傾げた。

 

「うん? でもなんか……」

 

「ねむそう……」

 

『AGRu……。』

 

「ふふふ、眠そうなのは目付きだけで……いや、本当に眠そうだなコイツ!?」

 

四人が見守る中、一歩も動かずにその場へしゃがみ込んだかと思えば、なんと頬杖をついてウトウトと船を漕ぎ出すではないか!

 

「なんだぁ? ミクラスだけじゃなくて、お前まで変なキャラ付けされてんのかぁ!?」

 

「あの、お言葉ですがソガさん……私がシミュレーションした時も、何故か動きが鈍かったり、積極性に欠けてばかりだったもので、アギラは残念ながらマケット怪獣としては不採用という結果でして……」

 

「なに、動きが鈍いだと!? そんなはずはない!! アギラの長所は俊敏性なんだぞ!! コイツが役に立たないなんて、何かの間違いだ……」

 

信じられないといった面持ちで、もう一度振り返るソガ。

しかし何度見ても、アギラは半目でイビキをかいており、そのだらしなく開いた口からは、ヨダレと共に白い吐息が……

 

「ん? なんか様子がおかしいぞ……?」

 

「本当だ。カウントも60から全然進みません。ほら!」

 

「……いや、判定どないなっとんねん、それ」

 

コノミが突き出したメモリーディスプレイ上ではNowLoadingの文字が回っている。

 

「おいトリピー。お前さん、カプセルになんかした?」

 

「いえ特にはなにも……むしろ、もっと活躍できるように強化を施してやったくらいで……」

 

「……強化? 強化っつったか? 今?」

 

「ええ! いくら足が速いと言っても、市街地ではビルが多くて狭すぎる! 自由に走り回るスペースが無いんじゃあ、まったく活かせんでしょう? ですからね、ガイズタフブックの新機能でサポートしてやる事にしたんです。良い考えでしょ?」

 

「ほ、ほう……で?」

 

「エレキミクラス、ファイヤーウインダムとくれば……残りはアイスアギラしかありますまい!」

 

 

「  」

 

 

それを聞いた途端、ソガの瞳がぐるんと裏返って、真っ白な面を見せた。

 

「思えば、冷凍怪獣はどれもこれも強敵ばかりでした……まず我々の基地を凍り漬けにしたダンガーでしょ? スノードンにマーゴゴン、あとドラギラス……ソガさん?」

 

「ば、ば……」

 

「ば……?」

 

 

 

 

 

 

 

「バカヤローッ!!」

 

 

 

「ヒィイ!?」

 

「お前なぁ!? そったら余計なことばする奴があるかいね!! アギラは変温動物ぞ!? 氷属性なんぞ付与してみぃ! 自分の冷気で冬眠始めるに決まっとろうがーッ!!! 強化ならもっと他に上手いやり方があろうもん……それをよりによっ……アイッ……アイスて……なんばしょっとね?!?! ちったあ頭使わんかい!! こん……がんたれがぁーッ!!!」

 

「うわぁーごめんなさいぃー!?」

 

「さ、参謀長! 落ち着いて下さい!」

 

「止めてくれるなマルさん! コイツはいっぺんがられんといかん! まこちずんだれちょって……ほがねもんじゃ! てにゃわんあたれーことしよってからに!」

 

「ひぃい……また他の惑星言語で怒りだした……だからその、宇宙語は私にはさっぱりなんですよぅ……こ、怖ぃ……」

 

「あ! いけない! そろそろガンブースターのメテオールが切れますよ!」

 

怒れるソガ参謀長に、マルが懐中時計を見せつけると、舌打ちを残してようやく冷静さを取り戻す。

 

「仕方ない……とにかくコイツに戦ってもらうしか……おおーい! 起きろー!」

 

『AGRA!?』

 

ウルトラガンで鼻提灯を撃ち抜けば、その衝撃でビクリと体を痙攣させるアギラ。

 

「ソガ参謀長……私にやらせてもらえませんか?」

 

「おお! 何か策があるんだな!? どーぞどーぞ」

 

「ありがとうございます。……アギラー! まだ眠いよねー? じゃあ私に続いてやってみよっかー! いくよー? んー……ぱ!」

 

『A? AG……RA!』

 

「じょーずじょーず! じゃあ次は……こう!」

 

『RAGA!』

 

「すごいすごーい! じゃあねぇ……うーえ、みーぎ、ひだり、みーぎ……したしたうーえ……ぐーん!」

 

コノミが上下左右に体を伸ばすと、それに合わせてアギラも同じポーズを取ろうとする。

つまり……

 

「怪獣が……踊っとる」

 

「なるほどな……体操か」

 

「保育園だと、お昼寝の後にみんなでお目覚め体操を踊ってたんです! 次は……腕を大きく回しましょー!」

 

『AGRAGRAGRAGGRRAG!』

 

マル秘書官がどこからか取り出したラジカセの音楽に合わせて、ストレッチを行う一人と一匹。

 

「はい、最後にジャンプ! やったー!」

 

『AG!』

 

「あ! カウントが進みはじめました! ソガ参謀長! アギラ行けます!」

 

「よし!」

 

「マニューバモードの解除まであと5秒!」

 

「……わああ……来るぞ!」

 

ついにサコミズ隊長のディフェンス機動も時間切れとなり、速度の落ちたガンブースターの横をすり抜けていくノーバ。

 

『しまった! みんな、そっちにいったぞ!』

 

「アギラ! 受け止め……」

 

「待て! ミクラスほどの怪力は期待するな!」

 

「えっ!? じゃ、じゃあ……避けて! ジャンプ!」

 

『AGRAAAAA!!』

 

間一髪、真っ赤なフリスビーの突進を跳躍で避けるアギラ。

円盤が地表に激突した衝撃で、土埃が朦々と舞う……

 

と、砂の煙幕を引き裂き、太く伸縮性のある触手が飛び出してアギラの喉元へと迫った!

 

「危ない!」

 

『AGRA』

 

ところが、軽やかなステップで横へずれたかと思えば、華麗な回避を見せるアギラ。

そのまま、次々と振り回されるムチをジャンプで飛び越したり、時には姿勢を低くしてくぐり抜けたりと、余裕綽々といった様子。

 

これではまるで……

 

「すごいすごーい! なわとび作戦です!」

 

『AG♪AG♪』

 

「いいぞ、その調子だ……! そのまま少し時間を稼いでくれ。……テッペイ君、そっちはどうだね!?」

 

『ダメですー!』

 

「なに!」

 

―――――――――

 

「くそ! コイツら……やけくそかよ!」

 

『シュア……ダッ……!』

 

アイスアギラの投入によって勝機の見えた基地側と違い、こちらはまさに阿鼻叫喚の様相を呈していた。

 

はじめ、2体1の有利な状況でメビウスを嬲り殺しにしようと目論んでいたロベルガー達は、そこへ急遽、ガンセブンという強力な助っ人が参戦してしまい、大いに困った事だろう。

 

しかしこの鋼鉄の怪力無双が、飛び道具の類を一切使ってこない事を見てとると、直ぐさま射撃戦に切り替えて、射程と手数で封殺する方針を選択したのだった。

 

ロベルガーの真骨頂は、純粋な各種スペックの高さもさることながら、それら基礎能力に裏打ちされた、遠中近と全ての距離に対応可能な汎用性にこそある。

 

殺害対象がなんであれ、その時々に合わせた多才な戦術によって相手を圧倒する……まさに変幻自在の生きた処刑具なのだ。

単純な力押し一辺倒の木偶の坊では決して倒せない。

 

今現在、ロベルガーはバイザーじみた発光部だけでなく、両手からも投げ付けるようにして光弾を次々に発射していた。

しかも、その頭上では反重力によって直立状態のまま空中に浮遊したケルビムが、大回転しながら爆炎を四方八方吐き出しまくっている始末。

まさに破壊と暴力のサイクロン。

 

『ゼアー……!』

 

二体怪獣の狙いは大雑把だが、それ故に軌道も読み辛いために避けにくく、矢継ぎ早に繰り出される攻撃の一つ一つが侮れない大火力を備えている為に、至近弾ですらメビウス達を仰け反らせ動きを封じてしまう。

 

さらに、例えその濃密な弾幕の面制圧を突破したとしても、その先では、モーニングスターじみて振り回されるケルビムの刺刺しい尾っぽに迎撃されるという、恐るべき二段構えが待っているのだ。

 

『攻撃が激しすぎて接近できない……!』

 

「このままじゃ……」

 

『……こうなったらこっちも切り札を使うしかない!』

 

「切り札ですって!?」

 

『メテオールを使う!』

 

「なんだとセニョール!? 搭載されてるってのか!? あのロボットにも!」

 

『し、しかしぶっつけ本番なんて正気ですか!?』

 

『えぇい! こういう時は、ソガさんの言うとおりにしておけばなんとかなるんだ! はやくせんか! メテオール承認!!』

 

『7番キーを3回押せ!』

 

『ああ……もうどうにでもなれー!』

 

テッペイがラッキーナンバーを素早く三連打(セブンセブンセブン)

 

すると……

 

――Permission――

 

「……ん? 目付き以外はなにも変わらないぞ?」

 

今まで垂れ目がちだった、大きな……目? を覆っていたファインダーの角度が切り替わり、どことなくキリリと気合いの入った印象を受ける。

 

しかし、それだけだ。

 

「ちょっと……もしかして故障じゃないでしょうね!?」

 

『あああ……やっぱりテストもしないでいきなり使うからこうなるんだ……』

 

「昔のポンコツを、そのまま動かそうってのが間違いなんだよ!」

 

黄金の粒子を発する事も無く、ただ蒸気を噴き上げるだけのガンセブンに、落胆を隠せないメンバー達。

 

……そんな時。

 

『オイ、誰ガ、ぽんこつダ。すくらっぷニ、サレタイ、ラシイナ』

 

「……え? 今の……誰?」

 

『ワタシハ、ユーエイト。ウルトラ警備隊ノ、栄エアル、8番目ノ隊員デス』

 

『へ、へヤアッ!?』

 

隣のロボットから、急に大音量で合成音が流れはじめたので、驚いて二度見するメビウス。

 

『ガンセブンが喋った……!?』

 

『どうだ! メテオールを解禁する事で、なんと機体AIが喋るぞ! 凄いだろ!』

 

「……それだけ?」

 

『ソレダケ、トハ、ナンダ。失礼ナ、若造メ。カメラヲ、カッポジッテ、良ク、ミテロ!』

 

『え、え……なんか勝手に動き出したんですけど……』

 

テッペイがレバーに触ってすらいないのに、ガンセブンは両手を真っ直ぐ上に掲げたかと思うと……

 

『デュワー』

 

頭の横で揃えた腕を前へ振り下ろした途端、頭頂部に設置されていた()()がふわりと浮かび上がり、凄まじいスピードで飛んでいくではないか!

 

『ガオォッ!?』

 

複雑な軌道を描きながら、回転尻尾の防御をくぐり抜けた()()()()()()()()は、そのままケルビムの立派な角を根元からへし折った!

 

悲鳴をあげつつ、もんどりうって墜落する凶悪怪獣。

 

「今のは!?」

 

『サロメのアンドロイドから唯一回収できたパーツさ! 名付けてガンスラッガー! 切れ味は無くなってしまったが、無線操縦でいくらでもぶつけられるぞ!』

 

『マダマダ、序ノ口、じひびきらんノ、クチ』

 

続けてピースサインを目元に当てると……

 

『マキシマ・メーザー!』

 

両目から怪光線を連発して、ロベルガーの乱射と激しく撃ち合うガンセブン。

 

狙いの精密さで上回った攻撃が、敵の足元を捉えて、その態勢を崩す!

 

『ライトンR30ノック!』

 

その隙に、腰のラッチから取り外した丸い弾を、これまたどこからか取り出した紅白模様のヌンチャクでかっ飛ばし、ロベルガーへホームラン!

 

激しい爆発で大きく吹き飛ぶ円盤生物。

 

『あと、AI機能解放の()()()で、各種メテオール兵装も使えるようになるぞ』

 

「いや、そっちが本命でしょ!?」

 

『ドンナ、モンダイ』

 

「すげえ、あっという間にひっくり返しちまった……」

 

『骨董品ダッテナ、マダマダ、役ニ、立ツンダ!』

 

そこへ、記念公園からもう1機の戦闘機が飛び上がってくる。

 

「おいおい、せっかく急いでやったのに、俺の助けは要らねえみたいだな」

 

「リュウ!」

 

「アンタ、体は大丈夫なの!?」

 

「へっ、俺がこんくらいでへばるかよ」

 

「まだマニューバモードは使えるな!? こっちはあのゴルディートがなんとかしてくれそうだ! お前は基地の方へ急げ!」

 

「ああ、後は任せたぜ!」

 

金色のカナード翼を展開し、猛スピードで飛んでいくリュウのガンウィンガー。

 

それを見送るガンローダーへ、地上のガンセブンから猛抗議が届く。

 

『ダレガ、フトッチョダ! aplastado、シテヤルゾ!』

 

「マジかよ……怖ぇなあのロボット……」

 

「なんて?」

 

「ぺちゃんこにするって脅された……」

 

「それはアンタが悪い」

 

 

―――――――――

 

 

「よし! リュウが戻ってくるらしい! そろそろ決着を付けるぞ!」

 

「はい!」

 

ソガの言葉に頷くコノミ達。

しかし……

 

『ギャオオオン!!』

 

ノーバが赤いガスを噴射しながら回り出す!

 

「まずい! また例の雨を降らせようとしてますよ!」

 

『援軍を察知して、有利な環境を構築しようとしてる……!?』

 

『くっ……雨でブースターの出力が落ちてきた……』

 

「奴め、こっちにはガンローダーが無いと気付いたな……みんな、退避しろ! こんなとこで発狂するわけには……」

 

「待ってください! 雨の様子が変です……!」

 

かつて、赤い雨の中で同士討ちする市民達を目撃していたソガは、急いで物陰に隠れるように促すが、コノミの指さす先を見て、怪訝な表情を浮かべた。

 

「なんだ? ノーバの周りでしか降ってないぞ?」

 

「……逆風で押し返されている……?」

 

「風……? ハッ!?」

 

マル秘書官の呟きに、何か気付いたらしいソガが、傍らで首を傾げるトリヤマ補佐官の肩を掴んでガクガクと揺らす。

 

「おいトリピー! さっき、アイスアギラには何の怪獣データを使ったって!?」

 

「わああ……ほとんどの冷凍怪獣ですよ……」

 

「ガンダー、スノーゴンにマーゴドン。確かにどれも強力な冷凍怪獣だ。でもな、なんかお前さん……間違えて違うもん混ぜてなかったか? 最後にもう一つ!」

 

「……ドラギラス?」

 

振り返れば、アギラの角が激しく明滅しているではないか。

 

「そうか!! ギラドラスの天候操作能力!? ……でかしたぞトリピー!! お前は史上最高のおっちょこちょいだぜ!」

 

「な、なんでですかー!?」

 

「コノミくん! アギラに雨を凍らせるように伝えるんだ!」

 

「分かりました! アギラー! お天気を雪にしてー!」

 

『AGRA!』

 

アギラが頷けば、赤い雨はたちまち氷の礫へ変じ、(ひょう)(あられ)となってノーバを襲う!

 

低温の液体で濡れた箇所から徐々に凍り付き、動きを鈍らせていく赤い暗殺者。

 

「いいぞ、その調子だ! コノミくん、君のトライガーショットをマルさんへ!」

 

「「はい!」」

 

「トリピー! お前にはこのウルトラガンだ。懐かしいだろう?」

 

「こ、こんなものを渡されても……私に何をしろって言うんです?」

 

補佐官へウルトラガンを手渡し、自身はメテオールらしきプラズマ拳銃を構えたソガ参謀長がウインクする。

 

「決まってるだろ? 三人同時攻撃だよ。これぞ本当の()()()()()()()()()って奴さ」

 

「そんな! 射撃訓練なんてもうずっと長い間……だいたい、私の腕はソガさんもよく知ってるでしょう!?」

 

「何言ってんだ。昔はバズーカで敵を見事に仕留めてみせたんだろうが!?」

 

「それは貴方の嘘で……!」

 

「だったら本当にすればいいだろ! しょうがねぇなぁ……ほら、俺の銃口にそれを重ねるんだ。マルさんもこっちへ!」

 

「はい!」

 

「そんな無茶なぁ……」

 

三つの銃が重なり合う。

 

狙いは……ぽっかりあいたノーバの口!

 

「撃て!」

 

同時に放たれた三条の光線が、狙い違わず怪獣の口へホールイン!

 

口から火花を散らして悶える円盤生物。

 

「あ、当たった……」

 

『お、なんだよ。こっちはこっちでやれてんじゃねえか』

 

「待ちくたびれたぞ、リュウ! みんな今だ!」

 

『了解! スペシウム弾頭弾……ファイヤー!』

 

『ガトリングデトネイター!』

 

ミサイルとレーザーの雨が降り注ぐ。

 

『AGRAAAAA!!』

 

最後に、角を輝かせたアギラが天へ向かって吼えれば、上空から稲妻が轟き、ノーバの氷像は粉々に砕けちった!

 

「やったー!」

「か、雷も使えるなんて……」

『ミクラスの電撃で、ノーバの体内に電荷が溜まってたんでしょうね』

「すごい、またメビウス抜きで勝っちゃった……」

 

―――――――――

 

『こっちは片付いたぞ! ユーエイト! そっちもそろそろケリをつけてやれ!』

 

『リョウカイ、リョウカイ。奥ノ手ヲ、使用シマス』

 

「奥の手だって……!? まだあるのか!?」

 

『周波数ヲ変更……もーど・はーめるん!』

 

ガンセブンの背中から、巨大なスピーカーが展開した。

すると、今までメビウスと殴り合っていたケルビムが、急に動きを止め、背筋をピーンと伸ばすではないか。

 

『ア、ソーレ』

 

そして、ガンセブンが指を指揮者のように振るえば……

 

『ガオー!』

 

くるりと回れ右して、ロベルガーに向かっていくケルビム。

そのまま二体の格闘戦が始まった!

 

「な、なんだ!? 奴ら、急に同士討ちを始めやがったぞ……」

 

「まさか……ケルビムをガンセブンが操ってるの!?」

 

『怪獣を操るだって……? どっかで聞いたような……』

 

『え、それってまさか……ハーメルン・プロジェクトでは?』

 

『いかにも!』

 

隊員達は、かつての事件を思い出す。

特殊な音波によって、怪獣を誘導できないかという計画、ハーメルンプロジェクト。

 

しかし、その電波によってケルビムの卵が孵化してしまい、挙げ句の果てには、敵によって利用されてしまう結果となり実験は失敗。

 

凍結されたものと聞いていたが……

 

「あれって隊長が発生装置を壊して使えなくしたんじゃ……」

 

『あれは元々、ユーエイトのデータから作ったもんさ。そっちの機械を壊しても、オリジナルはある!』

 

『まざーけるびむノ、使用スル、周波数ハ、ワタシノ、電子頭脳ニ、バッチリ、インプット、済ミデス。コノ程度、オ茶ノ子サイサイ』

 

「な、なんだって!? マザーケルビム!?」

 

『それって、ケルビムに女王バチのような個体がいるという事ですか!? そんな情報、どこにも……』

 

『だから言ったろ、武装なんかオマケだってな! それに……』

 

「それに?」

 

通信機の向こうで、参謀長は声を弾ませた。

 

『なんたって、()()()()()()()()()()()() ここで使わないで、他にどこで使うってんだ!』

 

「はあ……?」

 

なんだかよく分からないが、怪獣が一カ所に集まっている今がチャンス!

 

『何ヲ、ボサット、突ッ立ッテンダ。今ノウチニ、トドメヲ刺セ、ミラィ―――』

 

『……ふぅ、危ない。時間切れで助かった……アイツを好きに喋らせてると、何を言うか分からんからな……』

 

『今、メビウスに向かって何か言いかけてませんでした? ミラなんとかって……』

 

『ミ、ミラクルマンって呼びかけたんじゃないか?』

 

『はあ、メビウスはウルトラマンですが……?』

 

ドタバタと地団駄を踏んで悔しがるガンセブンはいったん脇へ置いておき、頷いたメビウスはアドバイスに従って構えを取る。

 

すると、左腕のメビウスブレスと重なるようにもう一つの青いデバイス……ナイトブレスが出現した。

 

メビウスのボディに、金文字で輝く巨大なV字がゆっくりと刻まれていく……

 

この姿こそ、ウルトラマンヒカリとの絆がもたらした、友情の証メビウスブレイブだ!

 

『え、これを言え……? う、ウルトライトンアール30フォーク!! なんだこの技名……』

 

テッペイが画面上の文字を読み上げると、ガンセブンは腰のライトンボールをVの字で握りしめ、それを大きく振りかぶって……投げた!

 

ハーメルンモードが切れて我に返ったケルビムと、押し倒されたままのロベルガーへ、必殺魔球が炸裂!

 

「よし! バリアブルパルサー!」

「ダブルランチャー!」

 

ガンローダーの追撃で敵が身を起こせないその隙に、ナイトメビウスブレスから、輝く光刃を引き出した光の巨人が、ブレードで空中を切り裂けば、そこへ∞の軌跡が現出する。

 

これぞ黄金の斬撃を撃ち出す大技、メビュームナイトブレードアタック!

 

輝く光輪が、二体の怪獣を8の字に切り結ぶ。

 

爆散!!

 

「「……やったー!」」

 

喜びに沸き、肩を叩き合う仲間たち。

 

二体の巨人が、夕日の下で手を握り合う。

 

上空を旋回するガンローダーへ彼らが見せたのは、夕焼けに輝く勝利のVサインだった。

 






というわけで、ウルトラマンメビウス第28話「コノミの宝物」もとい、トリピー編でした。
いかがでしたか?

まあトリピー編っていうか、トリピーもいる後日談みたいな感じになっちゃいましたが……

投稿日も、メビウスの∞と、ユーエイトの8で、今日は俺とお前でダブルエイトだ! ……ってわけ。


さて、今話の元ネタとして、なぜ28話をチョイスしたのかというと……

GUYSのメンバーは、それぞれ対応しているウルトラマンがいるのですが、その中ではコノミ隊員こそ、我らがウルトラセブン担当だからであり、この28話がタイトル通りに彼女の主役回だからです!

なので、今回も彼女にかなりスポットライト強めに当たっていますが、これも原作再現なんですね~
別に作者の好みが眼鏡っ子だからと言う理由ではありません、決して。


あと、メイン怪獣がノーバというのも大きな要因としてありました。
こちらはウルトラマンレオの怪獣ですが、こいつを出すことで、さらりとソガによる重要な改変を紹介できるというね。気になる方は円盤生物で調べてみてね。

そこに、メビウスオリジナル怪獣であるケルビムとロベルガーをふたつまみ……
1話に怪獣3体はやりすぎって?

これまでの積み重ねでGUYSがさらに強化されてるからね、エンペラ陛下や四天王の中で脅威度上がっててもしょうがないね。

いきなりディノゾールの群れ襲来も、ボガールが「この星に一体だけ呼んでも辿りつけないわよねぇ……せや!」とまとめて呼び寄せたって裏があります。

んで、この後はインペライザーがジェットストリームアタックを仕掛けてきたりするわけですね。
普通にやばいですね。

まあなんとかなるやろ。


さて、次の投稿は……7月くらいかなぁ……
気が向いたら更新するかもしれません。

では皆さまごきげんよう。



【挿絵表示】


【挿絵表示】


みんな!! 見てみて!!
またD×3さんが挿絵をくださったんですよっ!!!

どのシーンか分かる?
分かりますよね~!!

武装して地上に出てきたパンドンと
パゴスがハッタリだけでネオパンドンを振り向かせる名場面ですよ!

遠近感バッチリかよ……

完結後もこうして未だに挿絵をくださるとは……作者は良い共犯者を持ったもんです。
最終章の当該シーンを差し替えました。

気になる?

  • 8番目
  • 保安官
  • 補佐官
  • 星雲荘
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