転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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さあ、腹パン回です。

果たして、ソガは痛すぎる腹パンを改変できるのか?
それともタイトル回収することになるのか?

あと、せっかくなので作者だってはっちゃけたいです。
重い筆でダークゾーンを書ききった、作者へのご褒美ということでひとつ、目を瞑ってやって下さい。


アンドロイド破壊指令(Ⅰ)

ある、風の強い夜のこと。

 

「しかしソガ、右腕は大丈夫なのか?」

「アンヌがうまくやってくれましたよ、まだちょいとした拍子に痛みますけどね。……それにしても驚いたもんです、普通なら再起不能の大けがですよ」

「ふん、大げさな。大の男が、それもウルトラ警備隊員ともあろう奴が、ヒビが入ったくらいでビービー泣きやがって」

「あんたが馬鹿力でぶん殴ったからでしょうが! だいたい、その時先輩だっておねんねしてたでしょうに。誰に聞いたんですか、まったく」

「いいじゃねえか、こうしてパトロールにも出られるようになったんだからさ。文句はメトロン星人に……ハッ!?」

 

ライトに人影が照らし出され、フルハシが咄嗟にブレーキを踏む。

金髪の女性がポインターの前に躍り出てきたのだ。

その女性は悪びれもせず、カツカツとハイヒールを響かせながら、ポインターの運転席に座るフルハシに語り掛ける。

 

「ウルトラ警備隊の方ですね。」

「そうですが……?」

「あのーモロボシ隊員では。」

「おれ……?」

 

ゆっくりこちらを振り向いたフルハシは、その顔に似合わないウインクを一つ。

人違いをいい事に、そのままダンのフリを押し通そうというのだ。

美人をからかってやろうというのが運の尽き……

止めてやってもいいが……別にフルハシ隊員だし、いいか。

何されても死にそうにないしな、この人。

さっきの仕返しだ。そうしないと話が進まないんだからしょうがない。

この女を撃ち抜く口実のために死んでくれ。

 

「……そ、モロボシ・ダン」

「お会いしたかったんです。」

「えッ? あ、は……これは……」

 

フルハシが澄ました顔でそう答えると、金髪の美女は、その無機質なガラス細工のような顔でにっこりと微笑み、片手を差し出し、握手を求めてくる。

まさかの展開に虚を突かれたフルハシは、慌てて手袋を外してそれに応じようとするが……

 

「おいフ……ダン、あんまり手汗の滲んだ手で、ご婦人の手を汚すもんじゃないぜ」

「な、なんだと!?」

「なんだとはなんだ、なんだとは? ソガ先輩に向かって? ハンドル握りっぱなしで、べたべただろ?」

「こいつ……覚えてろよ」

 

武士の情けだ、素手は回避してやろうじゃないか。

感謝してくれ?

ほっそりとした白磁のような指を、そのまま左手で握りこんだ途端。

 

「ウワアアアアアアグギギギギギ!!!」

「こいつ……痛ッ!!」

 

電流を流され悶絶するフルハシにこれ幸いと、ウルトラガンで撃ち抜こうとするが、鋭い右手の痛みに思わず銃を取り落としてしまう。

くそ!

完治してないのがこんなところで仇になるなんて!?

拾い上げて発砲するがもう遅い。

女は最小限の動きで首を傾けると、レーザーを躱し、走り去っていく。

 

「待て! くそ……フルハシ隊員!」

「うぐぁあ……が……ち……くしょう」

 

ほんと頑丈だなこの人、絶対アンタの一族、電撃耐性かなんか持ってるだろ?

ネロンガの電撃受けても……って、アレはアラシか。

あんたら怪力といい電撃耐性といい、前世はキングコングか何か?

 

フルハシは何かを主張するように握りしめた右手を突き出してくるが……

そんなことより治療だ治療!

ポインターをかっとばす。

 

ここでアンドロイドゼロワンを破壊できなかったのは痛恨の極みだ。

今となっては、フルハシが女からむしり取ったブローチだけが手がかりか……

 

アンヌの治療で一命を取り留めたフルハシは、高圧電流による火傷を負った右手に包帯を巻いて、隊長に怒られていた。

これでも原作より、特殊手袋一枚分隔てて軽くなってるんだから感謝して、ホラ。

 

「もはやショック死ってとこだったんだぞ」

「面目ありません……女だと思って、つい油断してしまって……」

「ウルトラ警備隊員としては、少しうかつだったな。相手は始めから殺意を持っていたんだからな」

「僕の身代わりにやられたようなもんだな……すみません」

 

そういってフルハシに頭を下げるダン。

 

「いやあ、今度会ったら絶対、タダじゃおかねえから……」

「それにしても一体何者なんだろう? ……その大胆な手口といい、タダの女じゃなさそうだ……それに問題は、なぜ、モロボシダンを狙ったかだ」

 

気まずそうに目線を下げるダン。

そりゃそうだな。

セブンを人間態のうちに殺そうとしたんですとか言えないもんな、仕方ない。

 

「恐らく、新入りのダンが、我々の中でもっとも与しやすいと見たんでしょう」

「ふむ、隊歴の差か……私を除けば、お前が一番年長なんだぞフルハシ!」

「は、はあ……」

「フルハシ隊員が死ななかったところから見て、捕縛目的だったのではないでしょうか? ダンを捕まえて、拷問にかけるつもりだったのでは」

「じゃあ、半病人のソガ隊員が反撃してくるとは思わなかった敵は、捕縛を一度諦めて逃げたというわけですね」

「そうだ、現に我々の戦力は減ってしまったからな。あながち失敗という訳でもない。だが、敵もまさか、捕獲対象に装備をはぎ取られるとは思わなかったろうよ」

「隊歴最年長の面目躍如ですね!」

「お、おう……」

「もしも俺なら、死んでたかもしれませんね」

 

あんまりフルハシばかり虐めてやるのも可哀そうだ、チョットは功績を主張してやろう。

というか、ダンの身代わりとか、一等勲章ものだ。

俺にはとてもできないぞ働きをやってみせて、偉いぞフルハシ隊員。

セブンを殺すつもりの電撃を浴びて生きてるってのは、この人の正体が宇宙人か、さもなくばゼロワンがポンコツだったかだ。

誇っていいぞ。

 

「隊長。その問題のブローチの文字解読ができました」

「そうか。それで?」

「ア・ン・ド・ロ・イ・ド・ゼロ・指令……」

「アンドロイドゼロ指令? ……一体なんだろう?」

「隊長、僕にその女を追わせてください」

「いやぁ、俺も行くよ」

「おい、その体じゃ無理だ」

 

名誉挽回に慌てるフルハシの肩を、安心させるようにポンと叩く。

 

「俺が行くよ。あの顔は忘れん……」

「よし、2人で追っかけろ。ついでに、アンドロイドゼロ指令が、どんな指令なのか探るんだ」




《読者さまにお知らせします。午前零時の時報とともに、アンドロイド破壊指令が発令されます。あとしばらくお待ちください》

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