転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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前回、面白半分で差し込んだ諸々の匂わせを、作者の思った以上に皆さんが「気になる!」と喜んで下さったので、急遽思い付いたオマケ。

突貫工事だったので粗があるかもしれないけど許して……

あと、今日の更新で新たなソガの活躍とか期待してた人はごめんなさい。
興味無い人はほんまに興味ない設定集みたいなもんなんで、また次回の更新まで読み飛ばしても特に支障ないやつです。それまでお待ちください。

まあ、今日は子供の日だからね!
ちょっと大きい五月人形みたいなもんでしょ

あと、クッソ長いです。



8・戦う偶像たち ~マックスジョーの変遷~

 

8・戦う偶像たち ~マックスジョーの変遷~

 

 当館ではこれまで、地球が今日における平和を掴むに至った経緯を、当時の関係者インタビューや、それを基に細部まで再現されたレプリカなどを通して、皆様にご説明してきました。

 

 中には、先人達が歩んできた苦難の歴史、空気感を、現代に生きる私達でも肌で直に感じられるようにと、初代館長・東やその賛同者が方々の伝手を頼りに蒐集した貴重な実物の数々も御覧になって頂きましたが、ここ地下一階及び二階までの空間殆どを使って展示してあるものは、その中でも最大級のものと言えます。

 

 長年、『セブンガー』の愛称で当館の目玉として皆様に愛されてきたこの大型歩行戦艦ですが、その建造が『マックスジョーシリーズ』のうちの一体として計画されていた事は愛称の知名度に比して、あまり市井に馴染みがありません。

 

 当館最後の展示スペースとなるここ地下一階では、歴代防衛組織の下で地球防衛の任に就いていた『セブンガー』のご先祖様と、現在活躍中の後輩について学んでいきましょう――。

 

 

・マックス号(マックス級原子力船1番艦)

 

 昨今では、大型歩行戦艦の通称として知られる『マックスジョー』の系譜であるが、その源流を辿ると通常の船舶である本級に行き着くとされる。

 

 当初、外洋特殊調査船として設計された本級は第一次怪獣頻出期における地球防衛軍の設立に伴い、海軍に接収され海域哨戒任務用の最新鋭戦艦として就航した。

 

 当時としては破格の原子力搭載艦であり、その潤沢な動力から数ヶ月に渡る航海任務に耐え、主砲としてまだ試作段階にあった電磁投射砲も搭載しており、まさに地球防衛海軍の象徴とも言うべき艦であった。

 

 しかし、処女航海となる調査任務中にゴドラ星人による集団拉致――重力を操作し、一隻を丸ごと成層圏へと浮遊させるという、当時の常識を覆す方法によるもの――を経験し、辛くもウルトラセブンの介入によって乗組員含め無事帰還したが、当時最新鋭であったマックス号の威力は、この事件に際し、全くといって良いほど発揮されなかった。

 

 これは、海軍の面目を丸潰れにする出来事であり、事件直後の上層部は非常に陰鬱とした雰囲気がいつも漂い、まさに針の筵であったと、当時参謀であったタケナカ現最高議長は手記の中で述懐している。

 

 この海軍へ対する冷たい風向きが明確に変わったのは、俗にペダン事変と呼ばれる暗黒宙域への観測ロケット事件――詳しくは南館一階展示、4・人類の過ちと教訓~参照――に端を発した逆侵攻の際である。

 

 神戸港に向けて、太平洋から瀬戸内海へ侵入するペダン星人の侵略ロボットに対し、防衛海軍は付近の艦艇を可能な限り結集し、洋上にて遅滞戦闘を行う事でこの恐るべき新兵器の侵攻速度を鈍らせ、沿岸部住民の避難に擁する時間を稼ぐ事に成功した。

 

 この戦闘において殊更に活躍したのが、本州西部海域を任されていた同級二番艦ゼノン号と、ワシントン支部から出向していた同級三番艦イーストウッドであるとされている。

 

 残念ながら、それらを含めた防衛艦隊は結果として総戦力の8割を失う大損害を被ったが、その出血に対し一般市民の死傷者をゼロに抑えるという驚愕の成果を齎し、それまでの海軍に対する批判的な――陸が主戦力の対怪獣戦において大して役に立たない金食い虫という――風潮を一気に覆した。

 

 さらに伊豆沖に出現した三式アイアンズロックと交戦した一番艦マックスが、最終的には衝角突撃で文字通り差し違えてまで敵を撃破し、その核自爆から周辺住民のみならず、地球人類の大恩あるウルトラセブンまでをも救い出した事により、水際で敵の上陸を食い止め市街地被害を軽減する役割の訴求、要するに海軍の必要性に対する評価は決定的なものとなる。

 

 しかし当の海軍は、戦力の損失があまりにも大きく、補填が急務であると同時に、船舶のみでの防衛行動にある種の限界を見出していた。

 

 この時の苦い経験が後の『人型戦艦構想』つまり「戦艦の大質量でもって、怪獣と相撲をとること」~タケナカ議長の手記より抜粋~へと繋がっていく。

 

 

・マックスジョー(マックス号Ⅱ世)

 

 人型戦艦の歴史を語る上で、本級の話題を避けて通る事は決して出来ない。

 

 なぜなら現在まで脈々と受け継がれるマックスジョーの名は、正確には本級の存在を表すために始まったものであり、つまり本級こそが初代マックスジョーと言っても過言ではないからだ。

 

 しかし本項、あるいは後のマックスジョーシリーズにおける扱いは、あくまでこれこそが『二代目』であるとしているのはなぜか。

 

 それは、本級の所属が当時の防衛海軍であった事に端を発する。

 

 背景としては先の通り、当時の海軍は壊滅一歩手前ともいえる痛手を被っており、その戦力補充として予算や装備が優先的に回されていたという事情があった。

 

 陸軍は各駐屯地、空軍はある意味でウルトラ警備隊が管轄としてその最たるものを担っており、陸には量産型マグマライザーや無人戦車群、空は各種ウルトラホークと象徴的な超兵器が次々とロールアウトする中、海では大量の人員も然る事ながら、その主柱となるべきマックス級がどちらも失われていた事で、各部署は海軍に対し非常に同情的であったと、参謀退任後のマナベ氏は語っている。

 

 そんな中、防衛軍の再防御計画の一環として立ち上がったのが通称『MJ計画』……つまり、神戸港沖に沈んだキングジョーをサルベージし、その外殻を防衛兵器に転用出来ないかというものだ。

 

 当初は技術的な問題から、大破したキングジョーに主機を内蔵であれ外付けであれ、とにかくなんとか移動可能な状態まで復元し、その上に砲や魚雷といった武装を所謂ポン付けする事で、あくまで擬似的にペダニウム製の装甲を持つ戦艦、あるいは潜水艦のように転用出来ないか、というまさに『張り子の虎』の域を出ないお粗末なものであった。

 

 逆に言えば、当時の海軍がそれほどまでに追い詰められていた証拠でもあるが、この粗大ゴミじみた計画案を押し付けられた海軍としても困りものだったという。

 

 なぜならこのキングジョーは、神戸の海で多くの戦友を屠って、現在の苦境を作り出した文字通りの怨敵であり、例え計画通りに進んだとしても、それに嬉々として乗りたがる船員など皆無であったからだ。

 

 しかしキングジョーが直立しない以上、このペダニウムの塊を移動式防御壁とするには、海水の浮力を利用せざるを得ない事は明白であり、この兵器が『艦艇』として登録されるのはなかば決定事項でもあった。

 

 そんな状況の中、このいわく付きの計画に手を挙げたのが、先述のマックス号乗員であったアラキ艦長以下元クルー達である。後にアラキ艦長はインタビューに対し当時の心境をこう述べている。

 

 「それは勿論、私としても嫌悪感しかありませんでしたよ。そもそも敵の兵器をそのまま乗り回すという事は、我々のマックス号が艦の生命と引き換えにして倒した亡霊大和……そうその、アイアンロックスでしたか? あの不届き者と同じ事をしようと言うのですから……しかしねぇ、これまた難儀な事に、立案者が我々とマックス号の恩人という。困っておるのに見捨てられんでしょう。あいにくと、海はずっとガラ空きでしたから、直ぐにでも何か浮かべねばならない。例えハリボテだろうが。もうほとんど自棄でしたな。どうせ誰もやりたくない役目であれば我々が……とね。なにせ、あの時の我々は技量も士気もあったのに、肝心の女房()が一向にもらえんと、拗ねておりまして。みんな干上がってたんでしょうなぁ」

 

 そんな計画に大きな転機が訪れたのは、ルパーツ星団、キュラソ連邦政府、ワイルド星間連合から協同研究の打診があった為であるとされている。――詳しくは北館一階、5・地球を取り巻く宇宙の人々~異星文明との歩み~参照――これら星団外文明との技術交流によって、地球の科学は限定的な分野においてだが飛躍的に発展し、キングジョーの直立歩行が視野に入ってくる。

 

 それでも尚、必要な乗組員が非常に多い――皮肉な事に、歩行の選択肢が操艦のさらなる複雑さを招き、既に『戦車』の一般的な搭乗人数で制御可能な範囲を大きく凌駕していた――事や、そも建造可能なドックが無い、等の諸問題から、この鹵獲キングジョーの管轄は海軍のまま留め置かれ、便宜上『マックス号二世』の名が与えられた。

 

 それとほぼ同時期に、秘匿名称である『MJ号』とは『MaxJoe』を指す、という説が関係者の間で真しやかに囁かれ、この意見は開発者達からも概ね支持されるようになる。

 

 あくまで水上艦艇であった初代マックス号とは明確に区別しながらも、当時の海軍において象徴的な武勲艦の名を、防衛軍の総力をかけたプロジェクトの新兵器に冠する事は、乗組員として慣熟訓練に励む元マックス号クルーや、キングジョーに未だ忌避感を持つ多くの海軍関係者を確かに慰撫するものであった。

 

 特にアラキ艦長はかつての座乗艦を偲ぶこの通称をいたく気に入り、緊急出動となった初戦において、本級の所属をそのように述べた事から周囲にも定着。以後、その名が正式に用いられるようになる。

 

 この際、海軍内の艦種表に『マックスジョー級歩行戦艦』の名称が追加された事が、今日のGUYS OCEANに至るまで、彼らマックスジョーの運用が基本的に艦船のそれに準ずるという通例を生み出した。

 

【追記とお詫び:GUYS OCEANアラキ総司令及び、イサナ現隊長より、呼称を『彼女ら』に統一するよう連名で要請がありましたが、当館のマスコットキャラクター『セブンガーくん』()()たっての希望により、展示内では男性格として扱わせて頂きます。大変申し訳ありません。】

 

【追記:本件に関しましてGUYS参謀局長より「参謀局としては海軍の提案に反対である」との声明を頂きました。ご了承ください】

 

 なお、初代マックスジョーあるいはマックスジョーⅡのスペックや武装、戦歴に関しては本館一階正面の1・栄光の戦士達~歴代チームとウルトラマン~内の【ウルトラ警備隊】コーナーに専用ブースが設置されていますのでそちらも併せて御覧ください。

 

 

 ◀アマギ氏の開発メモより

  マックスジョーの完成予想スケッチ(初期)

  ~イチノミヤ博士寄贈~

ここでは右腕がクレイジークレーンとして描かれており、脚部のマックスカノンも見当たらない。構想初期段階ではマグマライザーの転用案がまだ無く、格闘装備が左右逆であった事が分かる。

写真上の実機では、クレーンが左背面に装備されているのが確認でき、これは左腕がライザーハンドとなる関係上、掴む機能を失った左手の代わりとして、対象物を両手で保持できるようにとの配慮。

建造途中でマグマライザーの装備案が新たに提出されたようで、設計を急遽変更する旨が、発案者に対する愚痴や罵倒と共に記されている。

 

 

【挿絵表示】

 

 ▲同・中期改良案図面

ライザーハンドを接続した状態。まだ脚部主砲は無い。

この数ページ後に、クレイジークレーンの重量に右脚部が耐えられるか警戒する本人の書き込みがあり、結果として、写真のような最終型へ行きついたと推測される。

 

【セブンガーくんコラム:マックスジョーの親戚!?】

 マックスジョーシリーズではないけれど、同じ時期に作られた防衛兵器として、地球防衛軍パリ本部に配備されていた『シャールドディノゾール』がいるよ!

 撃破した恐竜戦車を改造して、人類が乗れるようにしたんだ。その頃の日本にはまだマックスジョーがいたから、こちらは本部に送られて研究されたみたい。

 ちなみにフランス語で「シャール」は戦車、「ディノゾール」は恐竜って意味なんだ。実はそのままだね!

 ゴース星人が世界中に怪獣を繰り出した時に、彼も出撃して勇敢に戦ったんだ!

 砲撃や体当たりでネロンガを追い払ってから、テレスドンに至近距離からダイナブラストをお見舞いして、相討ちに持ち込む事でパリの人々を守ったんだ。

 怪獣を2体もやっつけちゃうなんて、かっこいいね!

 

【挿絵表示】

 

 ▲パリ郊外の野外試験場にて、試走時の写真

 

 

 

 

・マックスジョーⅢ世(現・宙域護衛艦ティガマックス)

 

 史上最大の侵略から文字通り地球を救った事で、一躍市民の英雄となったマックスジョーであるが、当該艦は戦闘で消失――当時の資料では「異層力場の反作用による圧縮」と記されており、つまり修復すべき残骸すら見当たらない文字通りの消滅――しており、またしても海軍は主力を欠く事となる。

 

 それを受けて、防衛軍が再び同級の建造計画を立ち上げる事になったのは、自然な流れと言えた。

 

 しかし、写真の通りこのマックスジョーⅢ世は、現代の我々が思い描くマックスジョーの姿から大きく掛け離れている、あるいは単なる水上艦であったマックス号の時代に逆戻りしたように感じるだろう。

 

 それは我々が、後のⅣ世以降のコンセプトを知っているからであり、当時としてはマックスジョーⅡ世こそが艦船として異端な存在であったのだ。

 

 第一次怪獣頻出期が一旦の終息を迎え、マックスジョー建造の黎明期である当時、次なる主戦場は宇宙であると考えられていた。

 

 これはゴース大侵略の終結と同時に地球へ齎された『銀河連邦』の概念と、開示されたばかりのヤマオカ文書の内容に対する驚愕――通称『ノンマルトショック』――が人類の目をある種、強引なまでに宇宙社会へと向けさせざるを得なかった、という背景もある。

 

 皮肉にも、ゴース星人が人類を奴隷として地球から移送させる為に、火星の地下で用意していた広大な植民都市群を、交戦した火星開拓団がほぼ無傷の状態で接収していたことにより、火星への入植が非常に容易くなった事も、人類の外宇宙進出へ拍車をかけた。

 

 そうなった時、既存の宇宙ステーションとそこへ係留される少数の宇宙艇からなるパトロール隊だけでは、地球、月、火星を結ぶ長大な輸送航路と、そこを往く無数の宇宙船を全て警護するには、戦力が到底足りないであろう事も、軍には容易く想定出来たのだ。

 

 そこで、これまで多くとも乗組員が十人前後でしかなかった小型宇宙船ではなく、人類初となる宇宙艦――つまり数十から数百人規模のクルーによって運用される、移動要塞とも言うべき純戦闘艦――として建造を計画されたのが、このマックスジョーⅢ世であった。

 

 幸いにも、ザンパ艦隊をはじめとした大型宇宙船の残骸はこれまでに多数回収されており、それらから得た異星技術と防衛軍のVナンバーステーション等で培われたノウハウを組み合わせれば、建造は比較的容易であると当時から言われており、単に必要なコストに釣り合う需要が無かった為に計画されてこなかっただけである。

 

 そしてこの艦にマックスジョーの名が冠された経緯についても、基を正せば『MJ計画』の真髄は『巨大ロボット建造』というよりは、『打ち棄てられた異星技術の有効活用』という側面にこそ重きを置いていたため、つまり現代で言うメテオールの塊とも言うべき本級に与えられる名称として、これ以上相応しいものは無かった。

 

 ただ本級が、それこそ現在の我々がよく知るような宇宙船――つまり上下左右がほぼ対称なロケット様の外観――ではなく、明らかに艦橋や砲塔を艦上部へ集中させた水上艦そのものな外見をしているのは、まさに本級が宇宙戦艦開発史の祖であるからに他ならない。

 

 当然ながら、各星系の技術体系をつまみ食いしたような当時の技術発展は歪の一言につき、必要とされる搭載機器のうちどれが相応しいか等は手探りであった。

 

 そんな中、艦体をひたすら巨大かつ頑丈にする事で限界まで容積を広くとり、詰め込めるだけ詰め込んでしまえば良い……という、宇宙が身近となった現代人の感覚からすれば、まさに目を覆いたくなる意見が採択されてしまう。

 

 そしてその条件に合致する艦の外装として目をつけられたのが、伊豆沖で大破着底し、魚礁及び観光資源と化していた三式アイアンズロックの残骸だったのである。

 

 今でこそ疑問符の付く選択であるが、これは多分にノスタルジックかつ、当時の人々が持っていたであろうロマンチシズムに富んだ思惑を反映させた結果だと考えれば、ある程度納得がいく。

 

 つまり分かりやすく言えば「一度倒してから引きあげたキングジョーを素体に使って成功したのだから、同じような状況を再現すれば上手くいくはずだ」という、二匹目のドジョウを狙ったものであったとするのが、歴史研究家達の間では通説となっている。

 

 これを裏付ける資料として、「んなもん宇宙戦艦なんて、ヤマト以外に有り得んでしょう。そしたらあとはもう絶対に負けませんわ」~検討会議の議事録より抜粋~という、開発責任者のうちの誰かが述べたであろう強気な発言が残されており、当時の人々がこの新たなマックスジョーにどのような感慨を抱いていたか、その雰囲気の一端を窺い知る事が出来るだろう。

 

 ただ、このあまりにも大雑把な方針が功を奏したのか、着工直前でナックル星人の宇宙艦を一隻、ほぼ無傷の状態で鹵獲した――残念ながら、この艦の出所はMAT基地壊滅時の混乱で資料が散逸し、現在になっても判明していない――にも関わらず、そちらを改修するのではなく、複数パーツに解体したそれらを、本級へまるまる合体させるという非常識な改造すらも涼しい顔で受け容れたという。

 

 その後、我々からすればなんとも信じがたい事に、マックスジョーⅢ世は特に支障も無く大気圏外へ飛び立ち、現代に至るまでその任務をまっとうし続けている事は間違いない。

 

 しかし、その生い立ちであまりにも波風が立たなさ過ぎた為か、その後も就航から長らく本格的な戦闘を経験しなかったために、臆病艦とも揶揄されていた時代もあった。

 

 これは第二次怪獣頻出期の間も、後発の宇宙戦艦が何隻も撃沈される中、幸運にも――あるいは不運にも――本級の航路上で敵船団や宇宙怪獣が交錯することがなく、偵察機と思われる小型艇を威嚇し追い返す事が二、三度あったのみで、平和独立宣言が成されるまで結局一度も主砲を発砲した事が無かったという逸話を持つが故である。

 

 独立宣言後は、そのあまりにも宇宙空間において非効率的な砲配置や、上述の交戦経験の無さ――これは単に旧式艦であるため速力が低く、哨戒能力に劣っているのではと見做されていた――から、一時は不要論も飛び出す程だったが、実際に宙間航行を生業とする者の殆どが「俺たちにはあのフネが必要だ」「頼むからマックスジョーを奪わないでくれ」と地上の反対派を説得し、解体を免れた。

 

「なんというかねぇ……安心するんですよ。あのフネが宇宙の海にぷかぷか浮いてるのを見るとね……ああ、今日は何事もなく港に着けそうだ……って具合に。こうね、ダークマターがぴたぁ、と定まる感覚と言いますか? まあ、こればっかりは肌で感じないと分かりませんわなぁ……少なくとも、アレがおる海で円盤に襲われたなんて話、聞いた事ありません。……そうでしょうが?」~集会後、インタビューに答える輸送船船長~

 

 その後、火星圏の延長に伴い、残存艦と共にさらなる改修を受け、現在はGUYS SPACY所属の宇宙戦艦ティガマックスとなっている。

 

【以下追記】

 そしてついに年前、俗に言う『ホーマン軌道会戦』にて、その研ぎ澄まされていた威力を遺憾なく発揮した。

 

 輸送艦ガーベラを中心とした第11次輸送船団を、火星圏に到達する直前で突如、所属不明の宇宙空母数隻と円盤群が強襲。

 

 旗艦「ティガマックス」以下「サンダーグリッド」「ダイナゼノン」「アグルガイア」「グリッドオブナイツ」の五隻からなる護衛艦隊は、GUYS SPACY所属アオキ提督の指揮の下、これを迎え撃ち、激しい戦闘の末に撃退。

 

 艦隊は壊滅しつつも、輸送船団側には殆ど損害を出さずに守り抜き、自身もかつての大和級、あるいは三式アイアンズロック譲りの驚くべき耐久性を見せつける。

 

 戦闘後は僚艦を曳航しながら、傷付いた船団をほぼ単艦で地球圏まで送り届け、初代宇宙戦艦の面目躍如となった。

 

 人類側の主な被害状況としては、護衛艦「サンダーグリッド」が、敵旗艦に衝角雷撃を敢行し大破着底、「アグルガイア」「グリッドオブナイツ」が共に中破判定、「ダイナゼノン」に至っては戦闘中行方不明という激戦の最中、旗艦「ティガマックス」は終始その巨体で、速力に劣る輸送艦群の盾となり続け、時には敵の粒子雷撃すら弾き返すのを見たと、ガーベラ乗組員他大勢が証言している。

 

 これは、水上艦時代のマックス号を知るベテランクルー達の操艦もさることながら、後発の宇宙戦艦が進行方向に対して垂直な発射口を多く備えていたのに対し、「ティガマックス」のみは前後の甲板上に従来通りの砲塔を有する独自の構造が功を奏したのではないかとする説が有力。

 

 この設計により艦側面へ最大火力を投射しつつ、こちらは宇宙空間故に重量制限を無視して何層にも分厚く重ねられた片舷装甲の上へ、艦底部に敷き詰めたシールド生成装置や重力偏光板から発される種々の力場を適宜重ねる事が出来たのではと推測される。

 

 船団が地球圏に帰還した際、ガーベラから齎された一連の通信、通称『Saeko's Good-back』はあまりにも有名。

 

 本級の活躍を受けて、同コンセプトの後継艦「アースオデッセイ」「マウンテンガリバー」が就役予定。

 

【セブンガーくんコラム】

 このときに航行不能となってしまった「サンダーグリッド」や他2隻の乗組員だったり、戦闘後に回収された負傷兵は、数が多すぎて、流石の「ティガマックス」やガーベラにも乗り切れずに困っていたんだ。

 そんな時に助けてくれたのが、途中で援軍として駆け付けてくれたワイルド星間連合のオデッセイ号と、彼らが護衛していた病院船だったのさ。

 この病院船のおかげで、勇敢なクルーの多くが、再び地球に帰ってこられたんだよ。また両星の友好が深まったんだ! その時に撮った表彰式典の写真が、北館一階に飾ってあるから見てみてね。

 彼らがたまたまミステラー星系から帰る途中じゃなかったらと思うと……ゾゾゾー!? みんなも困っている人がいたら助けてあげようね! 情けは人のためならず、だよ!

 

 

・マックスジョーⅣ世 (帰ってきたマックスジョー)

 

 上述の通り、人類は宇宙への進出を始めたが、それは地球圏の安定を意味するものではなかった。

 

 銀河連邦との間で成された不可侵条約は一定の効果を発揮していたものの、連邦側の特派員であったと目されるウルトラマンジャックと、ナックル・ゼラン連合との間で起こった戦闘を皮切りに、再び地球へ対する侵略行為が激化したのだ。

 

 この背景には、同時期に怪獣兵器の開発分野でなんらかの発展が見られた事が、少なからず宇宙情勢に影響を与えたのではないか、と多くの怪獣学者諸氏が述べている。

 

 そう、超獣の出現である。

 

 この従来型の怪獣兵器とは一線を画す、強力な敵の前に、まだMAT壊滅の衝撃から立ち直れていなかった地球防衛軍は、惨敗を喫した。

 

 対超獣対策班TACを設立して人類は超獣被害に対抗しようとしたが、明らかに向上した敵の戦闘力に対し、初期は有効な手をなにひとつとして打つことが出来ていなかった。

 

 そのような状況を打破するために、再び人々が官民一体となり、かつての英雄マックスジョーを求めたのは、当然の帰結であったと言えるだろう。

 

 宇宙では依然、前述のマックスジョーⅢ世が任務にあたっていたが、超獣は空間跳躍を用いて現地に直接投下される為、宇宙空間での迎撃はほぼ意味を成さない。

 

 むしろ、この警戒網をくぐり抜ける為に、敵は超獣を開発したのではないか、という説も真しやかに囁かれ、このような宇宙偏重配置が招いた、地上での圧倒的な戦力不足は、事実上、超獣の撃破を特派員ウルトラマンエースに頼り切りと揶揄される有様であったという。

 

 そこで再び人類側の起死回生を狙った一手として、軍が目をつけたのが、回収されていた『ビルガモ』の残骸だった。

 

 かつてのキングジョーと同じペダニウム製の装甲を、機体の大部分に使用されていたこのロボット怪獣は、それ故に破損箇所が少なく内部構造も元から簡素であり、機動性が著しく低い点に目を瞑れば、その分非常に低重心で安定していた為、かつてのマックスジョー建造時に残された技術やノウハウを用いれば、容易に改修が可能だったのだ。

 

 こうして、再び巨大ロボットとしてのマックスジョーⅣ世がお披露目されると、人々は口々に「マックスジョーが帰ってきた」と、歓喜をもってこれを迎えたという。

 

 こうして新たな生を受けたマックスジョーⅣ世は、初出撃となるカイテイガガン戦にて、TACの囮タンカー作戦により誘き出された超獣を、海岸で堤防の一部に偽装された状態で待ち伏せし、これを迎撃。

 

 激しい格闘戦の末に、全力射撃の圧倒的な火力で敵を撃破という華々しい戦果を挙げた。

 

 初戦において鮮烈なデビューを果たしたマックスジョーⅣ世は、続くドリームギラス戦においても、標的が潜伏していると思われる湖に、タックファルコン他数機による空輸で投下されると、歩行戦艦の名に恥じぬ水中戦への高い適正を見せつけ、最終的には援軍として参戦したウルトラマンエースと共闘し、見事これを撃退している。

 

 このように、対超獣兵器の主力として人々から多大な期待を寄せられ、実際に今なお数々の書籍でその勇姿を讃えられる本級ではあるが、熱烈な人気に比して、その後の活躍はあまり芳しいものでは無かった事が、後年の研究で判明している。

 

 これは防御面、火力面共に超獣との戦闘においては申し分なかったものの、やはりネックとなったのはその機動性の低さであろうというのが、現在における専門家達の共通認識となっている通り、全ての超獣が持つ真なる脅威性は、空間跳躍による神出鬼没な出現にあるからだ。

 

 超獣の行動特性が判明し相手を釣り出せる、あるいはあらかじめ出現場所が分かっているという場面であれば問題ないが、本級は修復時に元あった合体分離機能を失っており、基本的には歩行による低速巡航か空輸しか選択肢がなく、これがもとで出現と消失を繰り返す超獣に振り回される事多数、現地への到着がウルトラマンエースによるトドメに間に合わない事すらあったという。

 

 その鈍足さは、超獣マッハレスに見向きもされない――文字通り、正面にいても攻撃対象である高速移動物体として知覚されない――レベルであったといい、これを逆手に取って、奇襲による強力な一撃を叩き込んだものの、超獣が一度逃げに徹すると全く追いつけなかったとする記述が、数多くの隊員によって残されている。

 

 そして遂に、通算六度目の出撃となるファイヤーモンス戦にて、炎剣による斬撃で関節部分を的確に両断され――当館協力者山中調査員は、当時の現場にいたそうで「まるでバターでも切ってるのかと思った」との言葉通り、相当な熱量であったと推測される――その場で擱坐。

 

 なんとか射撃を継続しようと試みるも、射角の調整が出来ず断念し、せめて一太刀と緊急ブースターで敵の射線上へ強引に割り込み、ウルトラマンエースの盾となる形で、機体中央のV9ミサイル発射口をエース諸共串刺しにされ爆発炎上。

 乗員の半数以上が殉職という壮絶な最期を遂げた。

 

 この時の乗組員には、マックスジョー二世の操縦にも携わっていたベテランクルーの一部がいたとされ、当時防衛海軍の提督に就任していたアラキ司令は、その哀しみに職を辞す事も考えたと述懐している。

 

 後に、辛くも一命を取り留めていたウルトラマンエース――書籍によっては、マックスジョーⅣ世のボディ分、刺し傷が浅かったと考察するものもあるが、映像を確認する限り、脇腹から背中へ抜けた炎剣の先端が僅かに貫通しているのが分かる為、どれほどの効果があったかは定かでは無い――は再戦時、超獣を操っていたファイヤー星人に対し、奪った炎剣で四肢切断の後、心臓部を串刺しにするという処刑方法をとった。

 

 これは明らかに、マックスジョーⅣ世に対してファイヤーモンスの行った攻撃そのままであり、この行動にはエースなりにマックスジョーⅣ世の乗組員達を悼み、その弔いの意図があったのではないかとされている。

 

 そも、通常であれば完膚無きまでに敵の体を損壊、あるいは粉砕するエースとしては珍しく、その死体を野晒しのまま放置しており、その常軌を逸した苛烈さから、内心の怒りが窺えると言え、人々はウルトラマンエースのこれまでの奇行も、深い弔意と超獣に対する怒りの発露だったのだと解釈し、これまで謎に包まれていたウルトラマン達の情緒に対する一般理解へと繋がった。

 

 ただ、本件におけるマックスジョーⅣ世の撃破が、人々に多大な衝撃を齎し、この教訓が後のマックスジョーⅤ世、つまり当館で展示している『セブンガー』の設計に大きく影響する事となったのは言うまでもないだろう。

 

【セブンガーくんコラム】

 この時、ファイヤーモンスを倒したTACの新兵器がシルバーシャークだよ。

 今はシルバーシャークGに改良されて、GUYSの監視衛星や、基地の迎撃砲台に使用されているんだ! 頼もしいね!

 

 

 

・マックスジョーⅤ世 (セブンガー)

 

【教訓と計画】

 マックスジョーⅣ世の敗北は、人類にある二つの教訓を残した。

 

 まず、常に最前線で怪獣と対峙し、時として直接的に格闘戦すら行う歩行戦艦においては、撃破時の人員喪失リスクが非常に高いこと。

 

 被弾時に生存がほぼ絶望的という点は、戦車や戦闘機といった従来型の兵器も同じくするが、本来はそのような状況に陥らないよう、距離をとっての射撃戦に終始するそれらと違い、歩行戦艦に期待される役割というのはむしろ、最優先破壊目標として怪獣の目を引き付ける言わば被害担当艦としての側面を持つ。

 

 故に、可能な限り省人化を図る事で、これまで人員を配置していた搭乗スペース=バイタルパートを極限まで縮小化、あるいはさらなる最善案として無線操縦による完全な無人化が企図された。

 

 次に、これまで『敵性文明の侵略兵器を鹵獲し、その残骸を転用する』というコンセプトのもとに建造されてきたマックスジョー達は、その強力さと引き換えに、ある致命的な欠点を抱えていた。

 

 それは、鹵獲品をそのまま利用した重要区画を一度破壊されると、当然ながら人類の科学力では修復不可能という点である。

 

 怪獣と正面戦闘を行う歩行戦艦は、常に破損と隣り合わせであり、損傷箇所を応急修理する事は出来ても、絶対にその部分の性能が低下する――中でも特に顕著だったのは、戦闘力にも直結する機体剛性――事は避けられない。

 

 現に、マックスジョーⅡ世及びマックスジョーⅣ世の交戦記録を紐解けば、関節や開口部といった人類側の技術を用いた補修箇所を攻撃された事が、主な撃破要因として挙げられる。

 

 この事から、次なるマックスジョーは『無人機体』かつ『弱点となる発射管を無くし、防御力を高める為、火器を搭載せず、武器は徒手格闘のみ』とし、『鹵獲残骸を用いずに、機体をイチから建造』された物とすべし、という決定が成された。

 

 ただ、本計画そのものはマックスジョーⅡ世の喪失時には既に構想の雛形があったとされ、技術的問題から棚上げされ続けたものを再構築したものであったという。

 

 当館所蔵のアマギ氏による直筆手帳にも、セブンガーの原型と思しき機体のラフスケッチが残されており、イチノミヤ博士との共同開発段階で、既に現在のような姿となる予定であった事が確認できる。

 

【完成への道のり】

 しかし、本級の建造が決まったもの、いざ着工を開始すると、様々な問題に直面する事となり、計画は早速暗礁に乗り上げる。

 

 特に困難であったのはフレームの鍛造であり、これまでのマックスジョーは、あくまで異星技術の下駄を履いた状態と言え、この頃の人類自身の身の丈……つまり冶金術などの基本的な技術は未成熟なままであったのだ。

 

 脚部の剛性が自重に耐えられないという、あまりにも本末転倒な有様で、さらには、その上で怪獣の攻撃を受け止め、時には機体そのものを鈍器としても使用できなくてはならない……この無理難題に開発陣は頭を抱えた。

 

 この時ようやく、人類は真の意味で、ウルトラマン達がこれまで成してきた『自らの拳で怪獣と殴り合う』事の意味と、その偉大さを理解したと言えるだろう。

 

 このように、本級は長らく実現不可能とされ、計画は遅々として進展を見せず、防衛隊の主力は再び戦闘機と戦車の時代が続いた。

 

 しかし1980年初頭、UGMによりバム星人の集団拉致被害者が解放されると、事態は急変する。

 

 星人の催眠下で、侵略兵器であるメカギラスの建造に従事していたこれらの人々は、来歴を問わず即席の工員とする為、ロボット怪獣建造に関する知識を強制的に睡眠学習させられていたのだ。

 

 そしてそれら知識の一部が、解放後も彼らの記憶に残留していた事は言うに及ばず、拉致被害者の中に、現職の技術者が数名含まれていたのは、埒外の僥倖であった。

 

 元被害者のうち、UGMに協力を申し出た者は前述の技術職のみならず、全体の過半数を超えていたとされ、これら決して少なくない善意の人々の存在が、まさしく文字通りの支えとなって、本級の巨体を、地球の大地へ直立させる事に成功したと言っても過言ではないだろう。

 

【市民の反発】

 しかし、本級の受難はこれで終わらなかったのだ。

 

 技術的な諸問題をクリアし、遂に公表されたセブンガーであったが、次に問題となったのが、機体制御の方式であった。

 

 当初から、機体AIと無線操縦によるハイブリッドとして企画されていた本級だったが、AI制御による完全無人化機体という部分に批判が殺到。

 

 遂には、市民団体による建造反対のデモ行進まで行われる事態となってしまった。

 

 これは当時、友好を装って地球人を欺いたファンタス星人をはじめ、海洋上で大きな被害を出したバラックシップなどの正体が、どちらも暴走した人工知能であると知った人々の受けた衝撃も記憶に新しく、また、ガゼラや妄想ウルトラセブンといった、無機物である人形にマイナスエネルギーが宿ってしまう事件が度々発生しており、それらに対する警戒心が高まっていた事が背景にある。

 

 上記のデモも、これら事件の被害者遺族などが中心となっており、UGMも彼らの心情に配慮し、平和独立宣言が成されるまで、終ぞセブンガーを出撃させる事は無かった。

 

 こうして、第二次怪獣頻出期の終息後は、UGMの軍縮に伴い、セブンガー計画はほぼ完成目前で凍結。

 

 後継機として建造途中であったマックスジョーⅥ世と共に、UGMの倉庫で解体を待つばかりであったが……。

 

【阪神淡路大震災への初出動】

 データ採取の名目で解体を免れていたセブンガーであったが、それも限界となり解体期限の迫る中、UGMに久方ぶりの出動要請が入った。

 

 平成7年、阪神淡路大震災の発生である。

 

 これに本級は、当時未完成であったマックスジョーⅥ世と共に緊急出動。背面のロケットブースターによる高速飛行で各駐屯地を経由し、ロケット燃料を補給しつつ現場へ急行。

 

 抱えて持ち込んだ発電車より有線充電を行いながら、非戦闘機動による救助活動を行った。

 

 震災発生直後は、家屋の倒壊や地面陥没、高架崩落などで主要な幹線道路が全て塞がっており、その影響で発生した大渋滞によって、全国各地から集まった各種救助車両が全く被災地入りを果たせず立ち往生していたのだ。

 

 そこへ飛来したセブンガーが、直ぐさま二本の腕で障害物を排除し、時に車両を抱えて上げ下ろしさせるなどした結果、渋滞が緩和され発生初期に多くの車両、人員が被災地へ展開する事が出来たという。

 

 またライフラインの途絶により、消防車が満足に放水できず、発生した大火災への対処が難しい中、大阪湾から海水を直接汲み上げて散水するという、本級とマックスジョーⅥ世によるダンプやバケツ――ウルトラマンタロウが使用したものと同規格品。奇しくも、当時建設中であった本記念館の展示品目的として作製されていたレプリカ――リレーは、現在も長田区を中心に神戸市民の間で語り草となっている。

 

 その後も、瓦礫撤去や仮設住宅の設置、補給物資の運搬など復興支援に長期間従事し、防衛兵器であるマックスジョーの新たな在り方……つまり災害救助ロボットとしての存在意義を示し、人々の間へ好意的なイメージを浸透させた。

 

 開発当初はこのような活躍を念頭には置いていなかったであろうが、頭部に2基備えた大光量対獣サーチライトを機体の目に見立てたデザインと、ファインダーが演出するその愛らしい表情は、マックスジョーⅣ世のフォルムが人気であった事を受け、市民感情に寄り添い、人々に受け容れられやすい外観を目指したものであり、まさに狙い通りの効果を発揮したと言えよう。

 

 この愛嬌こそが、徒手格闘のみが武器であった本級における、まさに唯一の『飛び道具』だったわけである。

 

 その後、老朽化を理由として、GUYS設立と同時に惜しまれながら退役。

 

 後継機であるマックスジョーⅥ世に活躍の場を譲り、現在、当記念館で多くの来場者を出迎えている。

 

◀ こちらの窓から、装甲や部品の一部が焼け落ちているのが御覧になれます。真っ黒に焦げてしまったボディが、当時の大火災の凄まじさを物語っています。

 

【追記とお詫び:先日、GUYSから新たに開示された交戦記録を精査したところ、本級は退役直前、UGM特殊別動隊モデュレイトの指揮下で、秘密裏に火星解放戦線及び対ガルト作戦へ参加していた事が判明しました。こちらはネオパンドンの火焔による損傷と思われます。長らく事実と異なる解説を行ってしまった事を陳謝いたします。申し訳ございませんでした】

 

【完成時期の謎】

 ここまで記したセブンガー建造に至る一連の経緯は、UGMにより開示された正式な文書を基にしているが、一部には、この記述と食い違う目撃証言、およびそれらを下地にした都市伝説が多数存在する。

 

 それはバム星人による拉致事件から溯り、1974年から1975年にかけての時期には、既にセブンガーが完成しており、MAC指揮下で実戦に投入されていたというものである。

 

 完成直後の一般公開時、以前にもセブンガーの姿を見たという者が後を絶たず、聞き取り調査を行ったところ、アシュラン戦、ババルウ戦、ブラックドーム戦で怪獣と戦っていたと言う目撃者が一定数存在する事が分かった。

 

 「あのねウルトラマンレオのお仲間がいるでしょう? あの同じお顔の。あらこの人が来るなんて珍しいわねと思っていたら、急にあのロボットがあらわれましてね、やったらめったら叩くんですよ。その、お顔を。また怖いロボットかしらんと震えていたらね、レオが来て……ううん、レオだけじゃありませんの。他にもたっくさん。まあ、みんなでお仲間を助けに来たのねと思ったら、それが違いましてよ。みんなで囲んでじっと腕組みしてただ見てるだけなんですもの……あの優しいレオがですわよ? それが相当に堪えたんでしょうね。急に(殴られていたウルトラマンの)姿が変わりまして」~実際の目撃証言原文ママ~

 

 彼女によると、この後起き上がったババルウは別の(あるいは元の)姿に戻っており、既にロボットは忽然と姿を消していたと言う。

 

 同様の証言は他にもあり、このことから、ウルトラマンの姿を騙る敵に憤慨したMACが、まだ試験段階であったセブンガーないしその試作機を緊急投入したのではないかとする説がある。

 

 というのも、当時のMACは非常にウルトラマンに対する協調路線が強く、いわゆる親M78的姿勢を隠そうともしていなかった為だ。

 

 しかし、これらの証言にはいくつか不可解な点も存在する

 

 ・誰も出撃時の飛行ないし歩行するセブンガーの姿を見ていない事。

 ・全証言で煙のように一瞬で消えたという共通項。破壊されたのならばパーツが残るはずだが、それすら無い。

 ・そもそも証言内におけるセブンガーの機動性が高すぎる事。

 

 上記の点から、「セブンガーはもともと異星のロボットであり、これまでのマックスジョーと同じく、破壊された残骸を基に再建造されたのだ」とする説も根強く支持されている。

 

 なによりもこれであるならば「マックスジョーⅤ世の名前が、なぜセブンガーなのか?」という疑問に対しUGMの「セブンが安心して帰れるように」であるとする回答にも納得が行く。

 

 背景として、MAC設立当初に再来訪したウルトラセブンが、シルバーギラス他数匹によって膝関節を破壊されており、その後、平成期に入るまで姿を見せていない為、この負傷が原因で母星に一時帰還していたのではないかとする説が有力。

 

 これを由来とするならば、むしろセブンガーはMAC時代の兵器であるという説にも一定の信憑性があった。

 

 ただし、ブラックドームの溶解液によってセブンガーが一度破壊されたとするならば、その残骸が残っていることもまた辻褄が合わず、また数十年も前に書き記されたアマギ氏の手帳に『セブンガー』の名が度々登場する事実とも矛盾してしまう。

 

 また、MACが頑なにその存在を秘匿した事にも疑問が残る。

 

 なぜならば、MACは円盤生物シルバーブルーメ襲来時に基地ステーションを完全に喪失しており、人員は無事だったものの装備を欠き、その後の円盤生物群にも全く有効な対処が出来ておらず、街に多くの被害を出したと批判に晒されたからだ。

 

 襲来時に、隊員達がプライベートな催しの最中であったという情報が漏れると、人々は口々に「パーティーに現を抜かして怪獣を見逃した無能集団」「市民を見殺しにして自分達だけ生き残った」等と心無い誹謗中傷が殺到し、残された隊員達にとっては非常に辛い時期であった。

 

 事実として基地壊滅時に多くの資料、物品が失われただけでなく、市民の人的被害もまた大きく、心身共に疲弊した人々は地方へ疎開するなどして、都市の空白化が加速。まさに地球防衛史においては最悪の暗黒時代と言えるだろう。

 

 このような状況は、前隊長の降格と共に、宇宙よりマックスジョーⅢ世の2代目艦長を務めていた人物を招聘し、その後釜へ据えてからもしばらく続き、旧防衛軍関係者であったとされる新隊長の下、防衛軍との協同体制を整えるまで非常に苦しい戦いが続いた。

 

 もしもセブンガーが例え試作段階であったにせよ、戦闘可能状態にあったならば、上記のような批判は軽減されていた事は想像に難くなく、逆説的にセブンガーはMACの装備では無かったという見解が、現在では主流である。

 

 また、残念ながら前述の通り基地壊滅時に記述あるいは口伝に限らず情報が散逸しており、それ以前の活動内容は詳細が判然としないばかりか、人々も混乱の極地にあったとされ、セブンガーに纏わる都市伝説の数々は、別の存在を誤認した事によるもの――奇しくもガメロットの出現時期と被る――か、あるいはこの時期によく見られた流言飛語の一つではないかと思われる。

 

 なお、当館への寄贈時に機体の解析を行ったところ、装甲及び内部機構に未知の物質、技術が使用された痕跡は無かった事を、ここに明記しておく。

 

 

 

 

・マックスジョーⅥ世 (ガンキャメロット)

 

 マックスジョーⅤ世あるいはセブンガーが、純地球産マックスジョーとして計画される傍ら、長らく実現しなかった事を受け、同時並行で開発されていた機体。

 

 先のMAC壊滅から、通常兵器群での防衛を余儀なくされていた軍は、UGM設立と共に一刻も早い戦力の拡充を図った。

 

 故にこちらはこれまでのマックスジョーシリーズの建造コンセプトを踏襲し、破壊されたガメロットをサルベージしての建造を企図された。

 

 しかし、破壊箇所が想定以上に甚大であり、再建に時間を擁していたところ、先述のバム星人被害者達によるセブンガー計画の見直しが行われ、そちらに開発リソースを回した結果、さらに完成が遅れる事となった。

 

 その上、セブンガーで得られたノウハウを投入し、いざ着工を始めた途端、無人式制御へ対する風当たりが強まって――本級の原型となったガメロットも、製作者に反逆し、サーリン星人を皆殺しにしたロボットであるという事が後押しとなって――しまい、結局、平和独立宣言までに完成は間に合わなかった。

 

 その後、セブンガーと共にパーツ取りの名目で倉庫の肥やしに甘んじていたが、阪神淡路大震災の発生に伴い、こちらも緊急出動。

 

 レオによって破壊された頭部と左腕を欠いたままという未完成の状態で現着した。

 

 隻腕という事で、一部の作業ではセブンガーの精密性に劣る場面もあったが、やはり純粋な機体剛性やそこからくる馬力ではセブンガーを大きく上回り、腕一本でも兄弟機の両腕分の出力を発揮する事が出来た。

 

 特に瓦礫撤去では目覚ましい活躍を見せ、大火災の現場では、セブンガーが海水を汲む間に、延焼範囲の木造家屋を素早く破壊、除去しては、炎がそれ以上燃え広がる事を防いだ。

 

 また、隻腕ながら甲斐甲斐しく働く姿に、被災した人々は傷付いた自分達を重ね、そのような状態でも駆け付けてくれた本級の活躍に励まされ、自分でも出来る事が無いかと、近隣の救助活動に直ぐさま参加したという声が多く寄せられた。

 

 実際に、本級が活動を行った地域では他の地域と比べ地元民の救助参加率が高く、本級の移動経路を中心として2日目以降の死亡者数が僅かに低いとするデータがある。

 

 本級は、セブンガーのように両手指を使った繊細な復興支援が出来ない分、より広範な瓦礫撤去を目的として頻繁に移動を繰り返し東奔西走、被災地の至る所で目撃されている。

 

 これは、セブンガーが長時間の活動に発電車の有線接続を必要としたのに対し、本級は元来の動力であるサーリン機関の補修が成されており、サブエンジンとしての量子変換システムとの併用型であった為に、随伴車両を必要とせず単独での連続稼働が可能だった事がひとつ。

 

 さらに、ガメロット時から搭載されていたジャンプ機能により、悪路や山間部を容易く踏破する事が出来たためである。

 

 また三日目以降は現地入りした整備隊員により、遺棄されたショベルカーを義手代わりとして装備し、さらなる撤去活動に従事する。

 

 前述のジャンプとロケットの併用で淡路島へも渡り、決して本州から忘れられたわけではないと示した。

 

 復興支援を開始してから数ヵ月後、いまだに頭部が無く、首元へ雨を凌ぐ為の幌がけをしただけの姿を哀れんだ地元民の手により、廃材を利用した頭部カバーが感謝の印として贈られる。

 

 神戸市に縁のある、某有名漫画家作品に登場するロボットキャラクターを模したヘッドパーツを装備した姿は、復興を目指す人々や、避難生活に鬱屈した日々の子供たちを多いに勇気づけたという。

 

 これらの活躍が認められ、GUYS OCEAN設立に伴い、無事に近代化改修を受ける。ヘッドパーツも、近しい意匠の正式な物へと交換された。

 

 現在は復興のシンボルとして、GUYS OCEANの本拠地でもある神戸港に配備されている。

 

【追記】

 先日、神戸市で発生した戦闘において、本級の出撃があったとGUYSより報告を受けました。概略を本項に追加させて頂きます。

 

 午前の第一襲撃と見られるテンペラー星人に対しては、奇襲性が高く、またウルトラマンメビウスの対応が迅速に行われた事もあり、出撃は間に合いませんでした。

 

 しかし、午後に再出現したメビウスが、街の破壊活動を開始すると、その迎撃の為に緊急出動。

 

 この時、メビウスに対する出撃の判断を下したアラキ司令は「ウルトラマンが我々を攻撃するわけがない。直ぐに偽物だと分かった。あの時(マックスジョーⅡ世の出撃時と思われる)もそうだった」と述べておられます。

 

 前述のジャンプ能力を駆使した、大質量のドロップキックで先制し、事態を把握出来ず困惑する敵を、その腕力で圧倒。

 

 打ち倒した敵に馬乗りとなり、その顔面を執拗に殴打。ザラブ星人が変身を解除し、正体を顕すと、胸部連装メーザーとスペシウムトライデントの一斉射によりこれを撃破しました。

 

 上記の行動について、戦闘指揮をとったイサナ隊長は、当館に来場し、本項に掲載されていたババルウ星人に関するインタビュー内容を読んだ事を覚えており、それを取り入れたと、後日メールを頂きました。以下添付されていたコメントを掲載いたします。

 

 「万が一、洗脳で操られてるとマズいと思ったので、致命傷とならないようにカラータイマーを避けて攻撃しました。正気へ戻すにしろ、化けの面を剥がすにしろ、おかしなウルトラマンがいたら、とりあえず顔を殴るのが有効な戦術です。よければこれも同じ場所に展示しといてくれよ。いつか役に立つかもしんないだろ?」

【追記:参謀局より「ただしウルトラセブンは除く」との訂正を頂きました。ご了承ください】

 

 残念ながら、その直後に現れたガッツ星人、ナックル星人に対し、本物のウルトラマンメビウスと共闘を開始した時点で、当該地域が不可視の電磁フィールドに覆われてしまった為、これ以降の戦闘経緯は判明しておりません。

 

 破壊されてしまった本級が、電磁フィールド内でどのような活躍を行ったかを知る術はありませんが、損傷具合から相当な激戦であった事が予想されます。

 

 なお、回収されたマックスジョーⅥ世は今後、当館への収容が予定されており、セブンガーの代わりに皆様をお出迎えします。彼の勇姿を確認する為にも、是非ご来場ください。

 

―――――――――

 

「……ふぅん。本当に丁寧な展示だなぁ……怪獣メインじゃないからって、僕としたことが見落としてたや」

 

展示パネルから顔を上げたテッペイは、その充実した内容に思わず感嘆を漏らした。

 

「あ! こんな所にいた!」

「もう! テッペイさん! ガンセブンの移送始まっちゃいますよ~!」

「ごめんごめん。待ち時間が長くて……つい」

 

駆け寄ってきたミライとコノミに、バツが悪そうに頭を下げる。

 

「あれ? リュウさんは?」

「なんか像を磨くって、タオル巻いていっちゃいました」

「……まあいいか。僕も人のこと言えないし」

 

隣のガラス窓から見下ろせば、展示スペース兼整備ドックの中を、作業員達が忙しなく動き回っている。

 

巨大な空間に、足を伸ばしてチョコンと座り込んでいるのが、先日活躍したセブンガー改めガンセブン。

 

今日は正式にGUYSの装備として再登録された彼を、基地近くの格納庫へ移動させる日なのだ。

 

「頼もしいですね。あのユートさんと、一緒に戦える日がくるなんて……」

「やっぱりミライ君、ウルトラ警備隊にだけ詳し過ぎない?」

「あれかな? クラスの男の子にも、坂本龍馬だけ詳しい子とかいたから……案外そのタイプ?」

「ソガ参謀長もかなり破天荒な人だったからなぁ……」

「結局、あのあと直ぐにどっか行っちゃったから……お礼も言えてないし……」

「多分、勲章はついでで、コレを僕らに届けに来るのが目的だったんだろうね。それにしてもプレゼントの規模が大きすぎるけど」

「忙しいって言ってたもんね……ミライ君は良かったの? ファンだったんでしょ? あんまり話せなくて寂しかったんじゃ……」

「いえ、僕は大満足です! 励ましのお言葉も貰いましたし……それに」

 

《悔いの残らないようにしろ》

 

ミライは目を瞑り、彼に貰った言葉をもう一度、心の中で噛み締めてから、ポケットに手を伸ばした。

 

彼が取り出したのは……赤い炎を象った、手作りらしき御守りが二つ。

 

それを握りしめて、ミライは。

 

「コノミさん! テッペイさん! あの……お二人に受け取って貰いたいものが……」

 

若人達の戦いは続く。

 

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