転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる！

アンドロイド破壊指令(Ⅱ)

昨日、俺とフルハシが襲われた地点の近くへポインターでやって来た。

団地の広場を縦横無尽に駆け回り、武器のおもちゃで遊ぶ子供たち。

彼らが得意気に振り回す銃は、まるで本物だ。とてもおもちゃとは思えない。

ふと子供たちを見ると、みんな同じワッペンを付けている。

おもちゃにも同じマーク。

そしてそれは、あのブローチにあったマークと同じデザインなのであった。

「どこで買ったの、これ？」

「おもちゃじいさんだよ！」

「おもちゃじいさん？　そのワッペンも？」

「そうだよ、おもちゃを買うとオマケに付けてくれるんだ」

「あそこにいるよ、ほら！」

子供の指した方向、リヤカーでおもちゃを売る老人の姿があった。

「さ、今度はこのジェット機が空を飛ぶよぉ……さあさあ、ワシのおもちゃは買って損がないねぇ……」

彼は子供たちの目の前で、おもちゃのデモンストレーションをしている。

今度はおもちゃの戦闘機が、なんとジェットを吹いて飛行するではないか！

我々が老人に近づこうとすると、おもちゃは急に失速し、俺達の足元へ落下した。

ダンが拾い上げた戦闘機にも、さっきのワッペンと同じマーク。

「いやいや、どうも、ありがとう……」

「待て！」

「……何かな？」

自称おもちゃじいさんが、ダンから半ばひったくるようにして戦闘機を受け取ろうとするが、それを制止する。

我々の間に走る緊張感。

「……すごいおもちゃじゃないか！　めちゃめちゃよくできてるな！　アンタが作ったのかい？　じいさん！」

「あ、ああ……そうかも知れないね、返しとくれ」

「いや待ってくれ！　これを俺にも売ってくれ！」

「「ええっ！？」」

声を揃えて驚くダンとおもちゃじいさん。

「ソガ隊員？」

「いや、ダン。おまえこれが欲しくないのか？　だって、短時間とはいえ、飛ぶんだぞ！？」

「い、いや……」

「それにこの銃！　見ろ！　俺はな鉄砲マニアなんだ！　俺の部屋のモデルガンなんか目じゃないぜ！　なあおい、じいさん。いくらだ？」

「ご、ごひゃくえん……かな……？」

「そんなに安くていいのか！？　……ああそうか、あんまり高いとみんな買えないもんな。あんたいい人だなあ！　じいさん！」

笑顔で肩を組むと、じいさんは嫌そうにしている。

「大人には売れないよ……」

「え？　そういうなよぉ……銃も買うから！　おい！戦車の模型もあるじゃないか！　これも500円でいいのか！？」

「おじさん、大人なのにずるいよー！」

「ああもう、おじさんが買ってあげるから、文句言わないの！　じいさん、これでみんなの分も売ってくれ！」

「「「わーい！！」」」

「ああうん、そうだね……」

「ここからここまでぜんぶちょうだい！」

全財産と引き換えに、リヤカーの商品、ここからここまで全部お買い上げ！

いやーやってみたいよね、これがほんとの大人買い。

警備隊の高給取りを舐めちゃいかんよ。

「サァ、今日はおしまいに、しようかな……」

「おいじいさん！　待ってくれ！」

「なんだい？　もうないよ！」

「……ワッペン、くれないのか……？」

「ワッペ……あれは……子供専用だよ」

「いや、こういうのはプレミアが付くんだよ！　買ったんだからくれよぉ！　甥っ子と遊ぶ時着けたいんだよぉ！」

「アンタが……つけるの？」

「そうだけど？」

「……じゃあ、枕の横に置くくらい大事にしてくれたら、あげてもいいよォ」

「本当！　やったぜ！」

「そんなに気に入ったなら、さっきの戦闘機、机の上に飾って宣伝しておくれ」

「うん！　するする！　絶対みんな気に入る……隊長に怒られるかなあ？　ダン、どう思う？」

「……はあ」

逃げるように、立ち去るおもちゃじいさん。

空になったリヤカーで、カランコロンと大急ぎで立ち去っていく。

軽そうだなあ……

「……行ったか」

「ソガ隊員、跡をつけましょう」

「いや、いい。すぐ帰ろう」

「そんな……任務を忘れたんです？」

「おいおい、本当に俺がおもちゃで遊びたくて仕方ないんだと思ってるのか？」

「まさか……！？」

「急ごう、アマギにこのおもちゃで、遊んでもらわなきゃならん」

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《読者さまにお知らせします。午前零時の時報とともに、アンドロイド破壊指令が発令されます。あとしばらくお待ちください》