転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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さあ、本編開始していくぞ!


大義なき転生者(Ⅰ)

原作知識を活かしてどう足掻いても、侵略者達の猛攻は止まらないし、セブンの力無くしてこの地球を守り切れるとは思えない。

 

だが、より良い結果になるよう誘導することくらいは出来るかもしれない!

 

 

度重なる戦闘のダメージが蓄積して、最終回ではボロボロの満身創痍で戦う事になるセブン。

結局そのせいで、最後は別れの挨拶も無しで帰っていくことになる。

 

確かにキングジョーやガンダー、ガッツ星人等、パッと思いつくだけでも苦しい戦いが度々あったし、そしてそのどれもが、セブンやウルトラ警備隊が死力を尽くさねばならない相手ばかりだった。

 

だが、そういった戦いでの負担を、原作よりたったほんの僅かでも軽減することができたなら……

セブンの体力を温存させた状態で最終回に突入すれば、パンドンなんぞ一瞬で叩き伏せて、大団円を迎えられるかもしれない。

 

セブン最後の敵として、ゼットンなんかと同じく強敵ポジションに据えられるパンドンだが、その強さには疑問符がつく。

確かにゴース星人の侵略計画が史上最大規模なのは疑いようがないし、彼らの使用するメカはどれもすべからく高性能だ。だが、こと番犬として連れてきたパンドンの強さはというと……セブンが本調子だったら、あんなに苦戦しなかったのでは? というのはファンの間でもよく取沙汰される。

 

もし普段のセブンであれば初戦の時点で、アイスラッガーで切り刻んだ後はエメリウム光線なりで追撃していたような場面だ。トドメを刺すエネルギーが無かったからこそ、改造パンドンとの第二ラウンドが残ってしまうんじゃなかろうか。

 

ということは、ワイドショット一発分、いやせめて不発した分も含めてエメリウム光線二回分のエネルギーさえ捻出できれば、最終回の後半15分が浮くわけで。

最悪、セブンが帰らなければならない運命を変える事が出来なかったとしても、あんなフラフラで生死も分からない帰宅のさせ方だけは回避したい!

 

自分の推しが、あんなトンカツだが、紅ショウガ天だか分らんような奴にドタマかち割られて、苦悶の声を上げながらのたうち回るところなんて見とうない!!

 

推しの健康と勝利のためなら、早起きの一つや二つ何するものぞ!

 

「……俺がやってみせる」

「どうした、えらく気合がはいってるじゃないか」

「ああ、ちょっとした決意表明さ」

 

……さもありなん。

なぜなら、最近頻発している謎の失踪事件について、ウルトラ警備隊が調査に乗り出そうとした矢先、基地のすぐ近くでパトロール中の防衛隊員が襲われたとのこと。

そんでもってつい先ほど、隊長からポインターで現場に急行するよう命令が下ったわけだ。

 

 

……つまり。

 

 

「……ん? なんだ?」

 

現場の山道に差し掛かったポインターの前へ、黄色いジャンバーを羽織った青年が待ち構えていたかのように立ちふさがる。

 

 

――――来た。

 

 

胸の奥で自分の心臓が、ドクンと一際大きく跳ねたのが分かる。

それはなにも、フルハシ隊員が急ブレーキを踏んだから……なんてことはないはずだ。

こうなることが、俺には分かっていたのだから。

自分は今、どんな顔をしているんだろう……

 

「コラッ! 退いた退いた! ヒッチハイクの相手をしている暇なんかないんだ……早く退かんかッ! こいつぅ!」

「ミチヲアケロ!」

 

緊張しすぎて、すんげえ棒台詞になっちまった。

 

俺達の警告を無視して、微動だにしない青年。

仕方なく、ポインターのボンネットに搭載されている暴徒鎮圧用の催涙ガスをお見舞いする。

ガスが晴れると青年の姿はなく、尻尾巻いて逃げたと思った俺達(少なくともフルハシ隊員は本気でそう思って笑っていた。どういう神経してるんだ)はポインターを発進させようとする。

 

しかし、タイヤは地面を空回りするばかりで一向に進まない。

不審に思い下車すれば、いつの間に登ったのか、先ほどの青年がポインターのてっぺんに胡坐をかいて、笑っているではないか!

 

このヒーロー、さっきの意趣返しのつもりか? ウルトラ念力の無駄使いも甚だしいな、オイ。

 

「おいキミ、我々の邪魔をすると、承知しないぞ!」

「邪魔だなんてとんでもない。その逆ですよ、ソガ隊員」

「え!? どうして僕の名前を!?」

 

あっヤベッ、めちゃくちゃ嬉しそうな声出ちゃった。もっと不信感強めでいかないとな……

でも許して欲しい。

子供のころ、親父の持ってたレーザーディスクで繰り返し繰り返し、目に焼き付くくらい何度も見た俺のヒーローが目の前に立っているのだ。

しかも(オレの本当の名前ではないとはいえ)自分の名前を呼んでもらえるなんて!

これで声に喜色を混ぜるなという方が無理であろう。

 

俺が無様なニヤケ面を晒している間も、怪しげな青年は、この先に進むのをやめるよう訴えてくるのだが、俺以外は誰も信じない。

後からやってきた警官も、青年の警告をまるで相手にせず、パトカーを進めてしまう。

 

まあ、オレはこのパトカーが攻撃をくらって消失することも知っているし、肩書も名誉あるウルトラ警備隊員であるので、俺が制止すれば止まるだろうが……

消えるといっても別に死ぬわけじゃなくて、円盤の中に捕まってるだけであり、最後には無事に救出される事も知っている。

そんで、このパトカーが目の前で消失しないと、俺達が怪しい青年を信用する理由も代わりに消失してしまうので……

 

すまんが地球の平和と今後の展開の為に死んでくれ!! 

 

 

「危ない! 行っちゃイカン!」

ピー ピー シュワワァ……  

「……あれほど言ったのに……」

 

 

……ああ合掌(死んでない)

 

お巡りさんの尊い犠牲は無駄にしない。

俺がきっと、この見ての通りの怪しい風来坊を、五体満足でハッピーエンドに持っていくからな!

 

 

 

 


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