転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
だって……ねえ?
いやあ、スペル星人は強敵でしたね。
時系列は12話と13話の間を想定。
冒頭で主人公がとあるキャラクターにヘイトを向けてたり、セブンをディスったりしていますが、あくまでギャグ回のネタとしてです。
作者自身は現在そのキャラクターをとても得難い存在だと噛み締めておりますので、ご了承ください。
俺がポインターでパトロールから帰ってくると、駐車場の前で、私服で突っ立ってるアンヌを見かけた。
どうやら誰かを待っているらしい。
誰かって? ……そりゃあきっと、誰かさ。
「おうアンヌ、おめかしして、今からデートかい?」
「もう、冷やかすのはやめて、そんなんじゃないわ。今からデパートに服を買いに行くの。ダンには荷物を持ってもらうだけよ」
「一言もダンとは言ってないんだが……?」
「……んもう! ソガ隊員のいじわる!」
叩くな叩くな、ごめんて。
しかし、こうやって冷やかす事で、二人の仲が、隊員公認であると知らしめるのは大事な事だ。
外堀を埋める、もとい外堀が自分から埋まっていく状態。
オレの一番の目的はセブンの健康だが、この二人をくっつけるのも、密かなサブミッションなのだから。
セブンはただでさえ、正体を隠さなくてはならないというストレスを日頃から溜めまくっているのだから、それを少しでも彼女との交流で癒してもらわねば……
え? 親密になるほど正体バレのリスクが倍増してストレスだって?
うるさいよ! だいたいな、推しとかそんな概念すら知らんかった幼少期からずっと推してきたヒーローとヒロインのカップリングを、40年越しに、公式から、真っ向否定されたオレの気持ちが分かってたまるか!
推しヒーローが銀河レベルの浮気性だったかもしれない可能性を示唆されたオレの!
正ヒロインだと思っていた推しを、負けヒロインにされたオレの気持ちが! 分かるかッ……!?
ゼロ! てめえのことだよ! この不貞の子め! 母親はいったい誰なんだよ!
ウルトラの息子とウルトラのヤンデレの物語を制作するんだったら、ついでにウルトラの義理の従姉のプロフィールも早く公開して! 公式!
いやね、なにもずっとアンヌに操を立てて、独り身で一生を過ごせって言う訳じゃない。
セブンには幸せになって欲しいから、家庭を持つのは大変結構!
だが、時期が問題なんだよ……!
えっーと、ゼロが5900歳で、セブンが1万7千歳だから……だいたい一万歳の時の子か。
ゼロが高Ⅰ換算らしいから一万は……25歳くらい?
恒点観測員がエリート文官ならば、ウルトラの大学院は出てるだろうから……あ、社会人なりたてくらいの時のお子さんかあ~お盛んですね~……じゃねえ!
最悪の場合、新婚ホヤホヤの妊婦を故郷に残して、異国でアバンチュール繰り広げてるんじゃないよ! 森鴎外かテメエは!
……ハァハァ、いや失礼、取り乱したな。
だが、ダンはまったく悪びれていないし、おそらく未婚だ。地球から帰還して、アンヌの面影を持つブルー族とでも結婚したんだろ。
そうだ、そうに違いない。
つまり人類が生存権を宇宙に移すくらい進出するのは、こっから6000年くらいかかるって事だ。遠いなぁ……
まあ、怪獣を見るオキ君の反応的に、今でいう恐竜みたいな扱いだし、下手すりゃもっとかもな、ハハ。
この宇宙では、ウルトラマンゼロが地球人とのハーフになるかもしれんが、すまん、許せ。
それでもお前ならなんとかしてくれる……はずだ。信じているぞ(同僚の)息子よ。
「それで隊員用車両か、どこまで行くんだ?」
「いつだったかの事件で、売り場が壊滅しちゃったデパートがあったでしょ? あそこが新装オープンしたからバーゲン中なのよ」
え、あそこ!? 相当ボロボロだったけど、そういやもうそんなに経つのかぁ……
実は転生して驚いたんだが、本編で映像化されてないようなオレの知らない事件もちょくちょく起きるから、一話一話の間隔もバラバラで、腹の痛みがもう随分前のことのように感じる。
まさか赤ん坊のお守をしながら戦わされる羽目になるとは……あの宇宙人め、布袋さんみたいな耳たぶしやがって。
「そういや、ドレス着たマネキンが山ほどいたか……やっぱりアンヌも乙女だなぁ」
「……あら、違うわよ? ダンの服よ?」
「えッ!? ダンの?」
「そりゃあ、私の服もちょっとは見るけれど……知らない? 彼の服、ほとんど私が見繕ってあげたんだから」
「そうなの!?」
「初めて会った時の服装覚えてる? ダンったら、私服があれ一着しか持ってなかったんですって! 休暇にあの服で出かけようとするから、そんなのおよしなさいって止めたら……ウフフ、彼、隊服を着てきたのよ! 信じられる?」
きゃらきゃらと笑うアンヌに、心の中でグッジョブと親指を立てながら、あのクソダサい黄色のジャンパー姿を思い出していた。……道理であれ以降、別人かってくらい私服のセンスがいいわけだ。
別人だったか。
「それにしても……服なあ」
「……服が、どうしたの?」
「いやなに……宇宙人は服着るのかなと思ってさ」
「ああ、そういうこと」
「うん、少なくとも腕時計の事は理解していた訳だし、装飾という文化がある奴もいるんだとは思うが……服着てる奴が居なかったような気がしてな」
「そうねぇ……あれは全部宇宙服なんじゃない? メトロン星人なんて、カラフルなアストロノーツみたいに見えるわ。他もみんなそうなのよ」
「だが、宇宙服にケロイドができるか?」
「それもそうねぇ……」
人間と見た目が変わらない奴は別として、後々、シャプレー星人とか、ゴース星人とか、明らかに服着てる奴がいるにも関わらず、今のところ出てくる奴はどうも違うような……裸なのか?
「……そもそも、服を着る必要が無いんじゃないかしら」
「というと?」
「私たちの服だって、今でこそファッションだけれど、もとは防具であって、毛や鱗の延長線なの。サルの時は全身を毛で覆っていたけれど、それを失ったから、古代人は代わりに服を着て、外傷や温度変化から身を守ったと考えられているわ。でも、彼ら宇宙人の皮膚はそんな必要が無いくらいに強靭で、温度調節の必要もない。そもそも服飾の文化が発達しようがないんじゃないかしら?」
「うーん、実にドクターらしい見解だな……そうか、服を着る必要がない……」
そういえば、人間そっくりの身体構造のワイルド星人だって毛むくじゃらだったな。
毛皮を失った脆弱な種族だからこその文化……か。
「……じゃあさ、セブンもアレ、やっぱり裸なんだろうか?」
「ぷっ! ……ちょっと! ソガ隊員、セクハラよ、それ?」
ぷりぷり怒るアンヌだが、吹き出したってことは、お前もそう思ってたんだろ。
まあいいわ、許してあげると寛大な心を見せてくれたアンヌは今度も真剣な顔で考えてくれた。
「……やっぱり、セブンこそ宇宙服だと思うわ」
「なぜです? ドクター?」
「だって、それにしては体の凹凸が少なすぎるもの。それに胸や肩の銀の部分、どう見たってプロテクターよ。顔もヘルメットや仮面の類でしょう、きっと。……なんたって、頭に武器がついてるんですからね」
「なるほど、思った以上にドクター的な意見だった……」
そういやヘソもツメもアレもないしな……そう言われてみれば、納得できる気もする。
「そういうソガ隊員は、どう思うの?」
「俺は裸だと思うね! いつだったか、セブンが寒がりだ、なんて話をしてたが、それって、太陽に近い熱い星出身だからなんじゃないかと思うわけさ、ほら、地球だって、赤道直下の人々は、肌が黒い」
「ウフフ、セブンが赤いのは日焼けってわけね」
「そんで、頭と上半身は防具で覆うが、それ以外は丸出し、なんて地球にもいるだろ? ほら、テレビでよく見るナントカ族って奴さ。なんたって、頭にブーメラン付けてるんだ、どっかの狩猟部族に、居てもおかしくないだろ? 耳にわっかつけたりしてさ」
「まあ、そうねえ……アハハ!」
「……二人とも、そんなに楽しそうに、いったい何の話をしてるんです? 僕も混ぜてくださいよ」
……あ、ご本人登場だ。
「もうね、聞いてよダン、ソガ隊員ったら、セブンは裸だ、未開の部族出身だ! なんて言うのよ!」
「……えッ?」
「だってそうだろう、体にあんなボディペイントして、頭の上にブーメランだかナイフだか、アブナイ凶器をのっけてるんだぞ? 宇宙の辺境、ナントカ族かも知れん」
「……頭に武器を装備しているのは、野蛮なんですか……?」
「いや、野蛮っていうか……包丁を頭に括り付けてるようなもんぞ?」
「……」
「ねえダン、あなたはどう思う?」
「え、いやそれは……セ、セブンにもプライバシーがあるはずだから……」
「もう、どうして貴方が照れちゃうの? ダンったら、照れ屋さんなんだから!」
「い、行こう、バーゲンがはじまってしまうよ!」
「ウフフ、そうね」
「がんばれよーアンヌ」
「アンヌが頑張る? 何をです……?」
首を傾げるダンを尻目に、俺とアンヌは顔を見合わせ……
「狙いのモノを、ゲットできるように、さ」
「はあ……」
「さ、行きましょ」
天然なダンの腕を、ぐいっと引きよせルンルン気分で歩いていくアンヌが、こっそり振り返って俺にウインクする。
よし、計画は順調なようで安心安心……
だが、それからしばらくの間、セブンがアイスラッガーの使用を躊躇っているように見えたのは、オレの気のせいだと思いたいところだ。
……ごめんて。
デート回でした。
ゼロの発表当時に関しては、今話の感想半分、おかげでセブンがもっかい見れるぞと応援半分の複雑な心境でしたね。
今じゃすっかり立派になって……
親の七光りどころか100億
平成版で推しを宇宙犯罪者にされ……
劇場版で浮気者にされ……
公式! 新作作るたびに解釈違い引き起こすのはやめてくれ!
作者のライフはとっくにゼロよ!
おかげで、どんな地雷にも動じなくなりました。ありがとう。
令和セブンも待っとるでよ。