転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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むこうから来た男(Ⅲ)

シークレットハイウェイをかっ飛ばし、ポインターで駆けつけた俺達は、頭上で繰り広げられる死闘に圧倒されつつ、アイロス円盤に忍び寄っていた。

アイロス円盤は上部を分離させ、小型攻撃艇とすることで、より高い機動力を駆使して、ウルトラホーク二機とやりあっている。

正直、あの二人のコンビに追い回されてもやられないってのは相当だな。

やっぱりアイロス星人は円盤も強い。

空中では、三機のジェット機が、まるで生きているかのように縦横無尽に空を駆け、常識外の軌道を描いていた。あれでは鳥だ。とてもジェットがやって良い機動じゃない。銀の翼が空を切り裂き、風がうなる。

 

おっと、見とれてる場合じゃなかった。フルハシとアマギを救出せねば!

だが、近づく俺達に向かって、円盤の主砲から攻撃が飛ぶ。

見つかっちまったか……

岩陰から様子を窺うと、反対側から伸びたマジックハンドが何かの容器のような物をこっそり置くのを見てとった。

あ、ははん……

なるほど、やっぱりそうか。

上で飛び回ってる攻撃艇は、隊長達の目を引きつけるための囮。

本命はアレだ。

確か、あの中に巨大なアイロス星人が入っている。

……というかアイロス星人かどうかは甚だ疑問だが。

ぶっちゃけ、セブンのカプセル怪獣みたいなもんなんじゃないかと俺は睨んでいる。

あの円盤の中にはアイロス星人がいて、後で出て来るでっかいのはアイロス星獣なんじゃなかろうか。

きっとそうに違いない。

……さて問題はだ。

円盤の置いたカプセルについて、俺が決めあぐねていると、上空の攻撃艇が再び円盤と合体しに帰ってきた。

カプセルを無事に置けたから、囮の必要が無くなったのだろうな。

ジェットを噴かして逃げようとする円盤に二人の隊長から攻撃が飛ぶ。

これでしばらくは離陸できないはず。

 

「ダン、スモーク弾だ!」

「了解!」

 

ふたりでウルトラガンにアタッチメントを付け、スモーク弾を円盤への直線上に発射する。

朦々と立ち込める煙に、視界が遮られた。

 

「よしいくぞ!」

 

そう言って俺はダンを突入させ……俺はその後に続いて岩場を飛び出した。

そこへなんと円盤がロケットをめくら撃ちしてくるではないか!

爆ぜる岩場、ダンは上手く走り抜けたようだが、その後を付いていっていれば確実に被弾していたところだ。

カンのいい星人め。

しかし、甘かったな!

 

「ウ、ウワアー! やられたー!」

「ソガ隊員ー!」

「ダン! お前は先に行って、二人を助けろ! 円盤を中から破壊するんだ-! 俺はここから援護する!」

「了解!」

 

煙の中からダンの元気な声が聞こえる。

煙で見えないなら、わざわざ俺が突っ込む必要はナシ!

俺は円盤への直線コースではなく、回り込むように移動していたのだ!

悪いが二人の救出はボイコットさせてもらうぜ。

……あ、なんか煙の中から微かにデュワッて聞こえた気がする。デュワッて。

 

円盤突入はセブンに任せ、オレはオレのやるべき事をやる。

それは……てめえをじっくりウェルダンに焼き殺す事だよアイロス星人!!

 

「ハッハッハ! 手も足も出まい! なんせカプセルの中だからな!」

 

岩場にひっそりと置かれた、ランタンのようなカプセルに、ウルトラガンで光線を浴びせかける。

セブンを倒すなら、ダンの状態を狙うのが一番いい。

だったらこちらも怪獣が動き出す前に少しでもダメージを稼ぐのだ!

……え? ヒーローが変身する前に攻撃するのは御法度? 残念! ヒーローはこっちだ、怪獣め!

オレが気にするのはただ一つ、この攻撃に意味が有るか、無いかだ。

この後、アイロス円盤がこのカプセルにレーザーのようなものを浴びせると、カプセルが爆発して巨大なアイロス星人が飛び出してきたような記憶がある。

そのレーザーが、カプセルを起動させる専用のエネルギーなのか、はたまた単なる攻撃なのかが、オレには判断がつかないというのが問題で……

カプセルを破壊すると出てきてしまうなら、うかつに爆破もできんし、ウルトラガンの光線で逆にエネルギーを与えてしまっていたら、本末転倒。

……だが、上を飛んでる隊長達や俺達の目から逸らすように置いたという事は、あんまり迂闊に攻撃されたくないんじゃないかと踏んだわけだ。

一か八か、どうせ出てきても展開は本編と変わらないんだ、自由にやらせて貰うぞ!

やらない後悔より、やって後悔する派なんだよ、オレは!

 

「うおおおお食らええええ!」

 

カプセルは身じろぎもせず、悲鳴も上げないもんだから、効果の程がさっぱり分からないが、さっきから俺の隠れている岩場に、攻撃がめちゃくちゃ飛んでくる。

という事は……効いてる効いてる。

反撃できない悪者を一方的に嬲るのは楽しいなぁ……!

オレが心を鬼にして、アイロス星人をデストロイしているのには訳がある。

コイツ、セブンがワイドショット使わざるを得ない程の強豪怪獣なのだ。

ワイドショットはセブンの最大威力の必殺技。

その消耗エネルギーは、エメリウム光線の比ではないはず。

次はキングジョーが控えてるってのに、こんな序盤に撃たせてたまるか!

俺の銃で死ねぃ!

そうこうしていると、円盤がジェットを噴かして離脱し始めた。という事は……

 

「あ、ヤベ」

 

円盤から目の前のカプセルに発射されるレーザー。

爆音と共にアイロス星人が姿を現し、地響きをたてて俺に迫ってきた。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙~↑!!!」

 

全速力で走って逃げるが、サイズ差はいかんともし難い。

踏みつぶされる!

その時、横合いから、二本のレーザーが飛んできて、僅かにアイロス星人を後退させた。

 

「ソガ! 大丈夫か!」

「た、助かった……ありがとう二人とも」

 

フルハシとアマギの援護射撃で危機を脱する事ができた

俺は、二人と合流してウルトラガンを乱射するが、アイロス星人はまるで気にした様子もない。

なんて硬い皮膚だ。

それでも俺達は攻撃をやめない!

なぜなら!

 

「ダァ-ッ!」

 

アイロス星人の背後から、紅い朱い、赤い巨人の力強い腕が、羽ばたく翼をガッシリと掴んで、その動きをとめる。

今だ、みんな撃ちまくれ!

 

俺達の攻撃なんぞまるで意に介さず、アイロス星人はセブンを投げ飛ばすと、そちらにターゲットを移し、咆哮をあげた。

2体の巨人に揺さぶられ、地が叫ぶ。

 

セブンに突撃したアイロス星人は、鋭い牙を真っ赤な腹に突き立てながら、彼を締め付ける翼から高圧電流を流して、セブンを苦しめる。

俺達は、その無防備な背中に、ウルトラガンの光線を3人がかりで雨あられと浴びせるが、ちっとも気を逸らすことが出来ない。

プロレスラー同士の白熱する試合に、安物のエアガンで茶々を入れている気分だ。

いや、それでも構わない、体力ゲージがたった1ドットでも削れるならば、それはセブンの戦いを1秒でも早く終わらせることに繋がる。ましてやこれはゲームじゃない、どんな小さな傷だって、血を流し、皮膚が引き攣るという事は、すなわち、セブンが攻撃する為の隙を作れる可能性があるという事だ!

1%の希望をつかみ取る為に、俺達はエネルギーの許す限り攻撃を加え続けた。

対してアイロス星人は、口から可燃性の粘液を弾丸のように飛ばし、射線を巧みに誘導する事で、セブンを岩陰に封じ込める。

山肌が爆発し、歓喜の雄叫びを上げるアイロス星人。

セブンはその一瞬の隙をつき、身を乗り出して額から強力な磁力線の束を撃ち放つ。

……しかし。

 

「あの野郎、セブンのビームを白刃取りしやがった!?」

「なんて出鱈目なパワーだ!?」

 

地上でセブン達が苦戦する中、空ではまったく逆の構図で空中戦が繰り広げられていた。巧みに二機の機動をコントロールし、まるで追い込み漁のような挟み撃ちを仕掛ける悪党コンビ。

狂ったようにバレルロールを繰り返す、型破りなホーク1号の追撃から身を隠そうと、雲の中へ逃げ込む円盤。

その進路上、白い煙幕の切れ間から、ひょっこりと顔を出したホーク3号が、教本通りの見事なヘッドオン!

 

「おい、そっちへ行ったぞ、モグラ。ぼんやりして逃がすんじゃないぞ」

「まったく、なにをサボっているんだ、サウス。尻拭いは御免被る」

「なにぃ? だったらどっちの攻撃が痛いか、そのドンガメに聞いてやろう!」

「ふむ、同時攻撃か。ならば、俺が撃ち落としてしまっても、恨み言を吐くなよ!」

上へ下へと撃ち据えられるアイロス円盤は盛大に黒煙を噴き上げていた。

本来ならば、この時点でもまだ互角の戦いを繰り広げている筈なのだが、ソガの余計な一言によって、セブンが脱出の際にエメリウム熱線でコントロールルームをぐるりと薙ぎ払って来たために、現在、内部が大火災に見舞われているのだ。

ただでさえ、銀河に悪名を轟かせるこの名コンビに、腹痛を抱えた状態で太刀打ちできよう筈もなかった。

 

そんな事は露知らず、地上のセブンは立膝をつき、今度は後頭部に両手を添えていた。対して、翼を突き出し、徐々にその場で回転してゆくアイロス星人。両者が思い思いの準備動作を整え、激突に備える。そしてついに、セブンが野蛮な包丁(アイスラッガー)を解き放った!

だが、高速回転するアイロス星人の翼に当たったアイスラッガーは、硬質な音を立てて弾き返されてしまった!

今まで、当たりさえすれば、あらゆる敵にダメージを与えてきた、セブンの必殺武器が真正面から敗れた瞬間であった。

 

……これだ、これでこそアイロス星人だ。

奴は、強い。

今までオレは、弱点をついたり、緻密な計画を頓挫させたりして、今まで何とかやってきたが、このアイロス星人に、そんな小手先は通用しない。

ただ純粋に、強い。恐ろしく単純で、なんと質が悪い事だろう。明確な弱点が無い分、なんならあのキングジョーよりも厄介だ。

そんな強大な相手に、俺達人間のような矮小な存在が出来ることは……ただひとつ。

 

力の限り、ぶち当たる事だけだ!!

 

「二人とも、コレを使うぞ!」

「これは……SMJ弾じゃないか!?」

「3つも!? そうか、コイツなら……!」

 

これはかつての原子弾を改良したSMJ弾。地球防衛軍の歩兵が個人で携行できる最大威力のミサイルだ。SMJとはSavage.Mighty.Jokerの略で、威力はなんと、基地の原子炉の100万分の1。作成にかかるコストと、あまりの火力に、本来なら使用に隊長クラスの権限許可を必要とする、文字通りの切り札だ。

それを3つ、特科兵器庫にあった分をかき集めてきた。今使ったら、今度配備されるのが一体いつになるかは分からないが……俺はこのあと、より強力なライトンR30が開発されるのを知っている。

だったら使いどころは今、ここしかない!

 

「奴の回転が止まったら、叩き込もう」

「目を狙った方がいいでしょう」

 

カセット式のミサイルをウルトラガンにセットしてから、ヘルメットのバイザーを降ろし、その瞬間を待ち構える俺達。

やがてアイロス星人がゆっくりとその動きを止め、勝ち誇るように翼を開いた。今だ!

 

「撃て!」

 

強烈な閃光と爆熱が、アイロス星人の左目で炸裂し、奴に絶叫を上げさせる。

悶え苦しみ、その左側を大きく抉られた顔面を、ようやくこちらへ向けた敵は、残った片方の瞳で、地上の俺達を今度こそ睨み据えた。

さっきはこいつを星人じゃなくて怪獣だ、なんて言ったが、前言を撤回しよう。

激しい憎悪に黄色く燃える眼差しから、敵意と殺意をハッキリと感じ取ったオレは、理解したのだ。

やはりお前も、怒りと憎しみと……知性と感情を持った存在なのだな、と。

今までの狡猾な戦術を投げ捨てて、ただ怒りの赴くままに口から爆発液を乱射するアイロス星人。

苛烈な猛攻に、身を隠した岩陰から顔を出すことも敵わないが、それでいい。

今の奴は怒りに我を忘れ、冷静さを失っている。

攻撃にさらされ続ける俺達を守るため、セブンが右腕からラインビームを発射し、半実体化した鎖が、アイロス星人の右翼を絡めとって引っ張り上げる。

セブンの剛力と、アイロス星人の怪力が拮抗し、その動きが止まる。そこへ……

 

「俺の部下に何をするッ!」

「部下の仇だッ!」

 

空にはばたく二枚の翼。

怒りに燃えていたのは、アイロス星人だけではなかった。

右方と左方から撃ち降ろされたビームは、蒼い碧い空にV字を描き、その接合部分は寸分たがわず同タイミングで着弾し、アイロス星人の残った右目を焼いた。

視界を失い、悲痛な声を上げるアイロス。

それを見ていたアマギが叫ぶ。

 

「上だ……セブン! 奴は上からの攻撃に弱いぞぉー!」

「……ジュワ!」

 

セブンは意を決したように頷くと、右足を後ろに引いてタメを作り、全身のバネを活かして、力いっぱい跳び上がった! レッド族の恵まれた筋力によって稼ぎ出されたその高さは、なんと垂直距離にしておよそ地上700メートル!

しかし、これだけでは、あのダイヤモンドのように固い、敵の頭蓋を叩き割るにはまだ足りない。

セブンの脳裏に思い起こされるのは、先程のアイロス星人の姿。

掛け声ひとつ上げたかと思うと、そのまま空中で身をよじり、念力によって自身の体を錐のように回転させた。セブンの技巧を凝らした技が、その赤い体をかざぐるまのように変えたのだ。

力と技の風車が回る!

 

「デェェエエエエエエイ!」

 

錐揉み状態で落下し、右足で一撃!

踏み込んだ反動で跳び上がり、左足でさらにもう一撃!

セブンの両足から伝わった衝撃は、アイロス星人の強固な頭蓋を浸透し、その内部で守られていた爆液嚢をズタズタに粉砕した!

ばきりと劈開した脳天から火花を散らし、断末魔の叫びをあげながらゆっくり後ろに倒れると、そのまま内部から爆散するアイロス星人。

 

……俺達は、勝ったのだ……あの強敵に……

 

「クラタ……いい腕だ。ハッハッハ……まだまだ、捨てたもんじゃないな」

「やぁ……おまえこそ……」

 

白い白い雲の上から地上を見下ろし、轟々と燃え盛る円盤とアイロス星人の死体の傍で、こちらを見上げる深紅の巨人を眺めたクラタは、ぽつりとつぶやいた。

 

「……部下たちに、見せてやりたかった」

 

セブンが、足元ではしゃぐ俺達3人に対して、2本の指を立てる。

それはまさしく、勝利のVサインであった。




という訳で、13話「V3から来た男」でした。

タイトルはもちろん、宇宙のむこうから来た男クラタと、ダン、そして壁の向こうからやってきたソガ。ついでに、のこのこやられにやって来たアイロス星人、という意味です。

このあと、SMJ弾を無断で持ち出したソガは隊長にこってり絞られることになります。

「えっと、あの時点で指令室の最上位階級は自分になる訳でして……隊長も後は任せる、と指揮権を委譲してくださいましたよね?」
「ああ、だから貴様に降格も除隊もないじゃないか、だが……異常が無い、とはその節穴を叩き直す必要があると思ってな? 逆立ちで基地一周!」
「ア゙ア゙ァ゙ア゙~↓」

隊長の鬼! 悪魔! キリヤマ!
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