転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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ウルトラ警備隊に死ね《前編》(Ⅲ)

真剣な顔で作戦室に帰ってきた隊長が、参謀から下された指令を、俺達に伝える。

 

「フルハシ、ソガ、モロボシの3名は直ちに六甲に出動し、防衛センターの警護に当たれ!」

「六甲……? っていうと、さっきの」

「うむ、私もずいぶんとヤキが回ったらしい。今回ばかりは君達の陳情が正しかったという事だ」

「いったい、どういうことです?」

「先程連絡のあった、空港で射殺されたカナダからの旅行者。彼を含めて、神戸で殺害された外国人は全て、身分を偽装した防衛軍科学班の研究チーフだったそうだ」

「なんですって!?」

「3か月前、地球の打ち上げた観測ロケットを兵器と勘違いしたぺダン星は、その報復として、宣戦布告を行ってきたらしい。そして、その対策の為に今週、六甲山の防衛センターで防衛会議を開くことになっていた……」

「しかし、もう3人やられてしまった……と」

 

さっきまでこの作戦室では、神戸の外国人殺人事件について、我々は動かなくてもいいのかという話をしていた。

結局、殺人事件は刑事の領分であって、我々の仕事は地球を守ることだ! と隊長に突っぱねられてしまったが……

犯人が宇宙人なら、我々の出番となる。

 

「うむ、そして我々にはセンターの防衛だけでなく、要人警護の任もある」

「要人……? 一体誰を?」

「この人と一緒に、防衛センターへ向かうんだ」

 

隊長が見せた写真には、青い目をした金髪美女が、伏し目がちに写っている。

机の鵺の写真を見て、驚嘆の声を上げる隊員達。

 

「こいつぁ、どえらい美人だ!」

「……なんてこった! この人はアンダーソン博士じゃないですか!?」

「なんだ、知ってるのかアマギ」

「知ってるも何も、ドロシー・アンダーソン博士といえば、ワシントン基地の頭脳とまで呼ばれる天才ですよ! 件の観測ロケットも、彼女が主導となってプロジェクトを成功させたんですから」

「確かに聞いた事があるわね。私なんかより、もっと沢山の飛び級を重ねて、あっという間にチーフになったんですって。すごいわぁ……」

「へぇ……こんなべっぴんがねぇ……?」

「先輩、鼻の下伸びてますよ」

「う、うるせえな!」

「ああ羨ましいなぁ……おいダン、俺と変わってくれよ」

「え、そんな……僕の決めることでは……」

「もう、アマギ隊員まで……フケツ!」

「ち、違う。僕は純粋に学術的興味が……」

「お前たち、いい加減にしないか! アイドルの追っかけじゃないんだぞ!」

「「「ハイ……」」」

 

隊長が雷を落としつつ、もう一枚の写真を差し出した。

そこにはサングラスをかけた怪しげなスーツの男が写っている。

 

「隊長、この男は……?」

「博士は現在、この男に命を狙われている可能性がある。参謀が仰るには、おそらくぺダン星人ではないか、との事だ」

「……おいおい、人間そっくりだぞ!」

 

そりゃそうだ。人間なんだもん。

まあ、ただの人間かと言われればそうとも言えないかも知れないが……

なんせ、アマギの上背に、フルハシの胸板を兼ね備えたような巨漢だ。

いいなあ、外人は。どいつもこいつもスタイルが良くってさ!

こんな奴に取っ組み合いを挑むのは、是非ともご免被りたい。

……あ、そうだ。

 

「となると……隊長、今回の作戦について、お願いしたい事が……」

「ほう、ようやく何かする前に、私の顔を窺ってくれる気になったか? 相当懲りたと見えるな、ハッハッハ!」

「あーえっと……ハハ……そのー……ハイ」

 

ああ、隊長の視線が痛い!

何度も謝りますんで、逆立ち基地一周は勘弁してください!!

ううっ、思い出すだけで……胃酸が……

 

「分かってくれればいい。それで、何だ?」

「ハイ、実は……」

 

こうして、フルハシ、ソガ、モロボシの3隊員は、シークレットハイウェイ、ルート9を六甲山へと向かった!

基地からの直通トンネルを抜けたら、そこはもう六甲山。長時間のドライブに疲れたであろうドロシーの慰安も兼ねて、神戸の港街を見下ろす。

ああ、懐かしい光景だ……

 

「あの街のどこかに、ペダン星人が潜んでいるのか……」

「アンダーソンさん。安心していてください。我々が必ず締め上げてやります」

「今度の事件は、ワシントン基地の責任です」

「なーに、地球はひとつですよ! ワシントン基地も極東基地もありませんよ」

 

その時、ダンの第六感が、危険を察知した!

 

「あっ! 危ない!」

 

銃声と共に、ポインターのボンネットに火花が散る。

ダンが彼女を咄嗟に引き寄せていなければ、確実にドロシーに命中していた。

……チッ、ダンめ余計な事を。

ああいや、ここで偽ドロシーが死んだら、本物が帰って来なくて詰むんだ。

グッジョブだぞ、ダン!

襲撃の失敗を悟り、車で走り去っていくサングラスのぺダン星人……もといマーヴィン捜査官。

ダンが追いかけようとするが、間に合わない。

ん? というか、なんで下の道路から? 射線通らないだろ……え、もしかして今の狙撃、あそこの岩に跳弾させたの!?

……化け物かよ、アイツ。

 

「アンダーソンさん。あなたを撃とうとしたんだ!」

「ダン!防衛センターに急ごう!」

 

こうして襲撃を受けつつ、厳重警備の(何回検問通らせる気だよ!)六甲山防衛センターに着いた我々。

うわあ……ほんとに国際会議場が六甲山に建ってら……

ん? てことはこの世界の宝ヶ池には、何が建ってるんだ? ……気になるから、今度の休暇では、こっちの世界でも聖地巡礼といくか。

俺の疑問を余所に、我々一向は防衛センターの研究所長であるツチダ博士に挨拶することになった。

 

「やあ……さっき、キリヤマ隊長から連絡がありましたよ」

「「よろしく」」

「こちらこそ……ウルトラ警備隊が来てくれたら、怖いものなしだ」

 

俺達を笑顔で迎えつつ、殺害されてしまった三人の尊い仲間たちを悼むツチダ博士。

そのかたき討ちと言わんばかりに、防衛会議の開催を固く誓う。

 

「……博士、ワシントン基地のドロシー・アンダーソンさんです」

「おぉ、ドロシーさん。お待ちしていました」

「ドクターツチダ!」

「いやあ、無事でよかった。貴女は今回の会議の中心人物ですからね」

「ドクター、会議は大丈夫ですか? ……ペダン星人は、我々の動きを知っています」

「明朝、南極の科学基地から2名の仲間が到着します。そうすれば、会議は予定通り、開かれますよ」

「南極から……?」

「なぁに今度は大丈b「ああー!! そうだ博士! さっき隊長から連絡があったと仰いましたね!」

 

危ない、それ以上は言わせないぞ博士!

機密をペラペラ喋るんじゃないよ、まったく!

目の前のドロシーが偽物で、スパイだったらとか思わんのか!

……思わんわな、そりゃあ。

 

「ん、ああ、君がソガ隊員か。ご注文のモノも、しっかり届いているよ。第四倉庫に収めてある」

「ありがとうございます、博士。ドロシーさん、来てください! 貴方に見せたいものがあるんだ!」

「え? ちょ、ちょっとお待ちになって……!」

 

ドロシーの腕を引っ張り、ツチダ博士の研究室から引きはがす。

これ以上の情報収集を許してたまるか!

俺の勢いに飲まれ、釈然としない様子で、ガムを噛みながら着いてくるドロシー。

おいおい、お行儀が悪いね。キミは。

 

「アンダーソンさん、それ……ブラックガム、お好きなんですか?」

「え? ええ……」

「いやあ、実は僕はなかなかのロングスリーパーでね、日中眠くて眠くて……」

「は、はあ……?」

「おいしそうですねー! それ!」

「……あの……要りますか?」

「え! ホントに!? いやーなんだか悪いなぁ! いただきます!」

 

モグモグ! モグモグモグも! くっちゃくっちゃプゥー……ぱちん! クっチャックっチャ……

 

「あの……ソガさん?」

「え!? (クチャア……) なんへす!? (ミッチミッチ) ほいひいれすね! ホへ!」

「あの、少しお行儀が……いえ……なんでも。……ハァ」

 

いやはや、美人は嫌そうな顔してても絵になるねー!

残念だったな、ぺダン星人。

俺の目が黒いうちは、ガムの暗号通信なんてさせないぞ……?

俺だって本当は嫌いなブラックガムを、我慢して噛みまくってるんだから、おあいこだな!

 

そうこうしてるうちに第四倉庫へ到着。

……おお! 俺の注文通りの秘密兵器がそこにはあった!

 

「こ、コレは……!?」

 

ふっふっふ、お前用のリーサルウェポンで、さっさと前半の出番をすっ飛ばしてやるぞ!

覚悟しろ、キングジョーめ!


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