転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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ウルトラ警備隊に死ね《前編》(Ⅳ)

倉庫では、今まさに搬入作業が行われている真っ最中であった。

 

かの英雄は、どっしりとした重厚感のあるボディを、レーダー波を吸収する真っ黒なステルス塗料で染め上げ、出撃の時に備えている。

彼の足は、車輪と履帯で構成されており、速度と走破性を両立したハーフトラック仕様。

そして何よりも目を引くのが、車両の先端部分に鎮座する白銀の巨大な螺旋。

何物をも眼前に立ち塞がる事を良しとせず、ただ一筋に、あらゆるものを穿ち抜くために屹立した異形の剣が、その切っ先で日光をきらりと反射させていた。

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

時は、数時間前の作戦室に遡る。

 

「……なに、マグマライザーを?」

 

俺のお願いを聞いた隊長は、訝し気だ。

要人警護に、つい先日ロールアウトしたばかりの地底戦車を引っ張り出そうというのだから、さもありなん。

しかし俺は、この日の為に用意した、万全の理論武装を展開する。

 

「はい、敵の狙いが防衛会議を妨害する事ならば、一人ずつ参加者を殺して回るより、集まったところを、その会場ごと物理的に叩き潰せばよいのです。私がぺダン星人なら、防衛センターに怪獣を差し向けますね」

「……なるほど、センターを襲う怪獣への抑えとして、最新鋭の地底戦車を使ってやろうという訳だな?」

「そうです、空からの敵はホークでなんとかなるとして、会場が六甲山から動けない以上、地底からの攻撃にはまったくの無防備です。その点、マグマライザーなら、グランドソナーによる警戒が可能かと。……それにアマギ、確かあの戦車は地下数千メートルの圧力にだって耐えるんだろ?」

 

俺が水を向けると、アマギは自信たっぷりに頷く。

自分の設計した兵器が早速の出番を貰えそうってんで、少しだけ嬉しそうだ。

 

「ええ、もう一度車体の構造を見直して、耐熱性も、耐ショック機能も、当初の予定から、二割増しに余裕を待たせてあります」

「だったら、警備隊の所有する兵器の中で、現状最も防御力に秀でているってことだ。例え火を吐く大怪獣が現れても、ホークが到着するまでの殿くらいは、十分に務まると思います。……なんなら、いざという時には、博士たちを収容して、地中に逃げ込んでやりますよ!」

「……ふむ、なかなか悪くない提案だ。それに、新兵器をいきなり実戦で地底に潜らせるよりも、地上で走行テストがてら、慣らし運転してやるくらいが良いかもしれんな……よかろう! お前たちが向こうへ着くころには、届けておいてやる」

「……ありがとうございます!!」

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

俺は、漆黒に輝くマグマライザーの車体をしげしげと眺めつつ、何度も頷くのをやめられない。

ああ、実に頼りがいのあるフォルム。すばらしい……まるで地球防衛の精神が形になったような!

これを完成させる為に、わざわざアンヌに嫌われてまで、ピット星人を悪即斬しては破壊工作を防いだり、ユシマ博士を馬車馬の如く働かせたりして、アマギの貴重な時間リソースを、コイツのプロジェクトに集中させてきたのだ。

たまに、奴のパトロールを交代してやったりと、眠い体を無理やり動かしてきたのも、すべてはこの地底戦車をキングジョー戦で使う為!

こうして土壇場に間に合ったのならば、頑張って来た甲斐があろうというもの。

本編ではいつ完成してたのかさっぱり言及されて無かったけど、ダンが死んだときに、激おこ警備隊が三原山にコイツでカチコミかけなかったところを見るに、少なくとも、あの時点ではまだ完成してなかったんじゃないかな。

本編での初登場が2話分先だから、オレの地道な頑張りが無かったら、最悪間に合って無かった可能性がある。よくやったぞ、オレ!

 

「あのー……ソガ隊員? これはいったい? アタシに見せたいのはコレですか?」

「そう! そうです! これぞ地球防衛軍の誇る新型戦車、マグマライザーです! いかがですか、アンダーソン博士!」

 

俺が万感の思いを込めて、努力の日々を噛み締めていると、置いてけぼりにされたと感じたのか、偽ドロシーが声をかけてくる。

うん、忘れてたわけじゃないよ。

俺も、君にプレゼンしたくて、たまらないからさ。

 

「いかがと言われましても……武装は何を搭載しているんですか?」

「レーザーが撃てます!」

「まあ、すごい! 他には?」

「レーザーが撃てます!」

「……ええ、そうなんですね。ちゃんと聞こえていましたよ? 他の武装は?」

「レーザーが撃てます!」

「……」

 

満面の笑みで言い放つ俺に反比例するように、どんどん顔が怖くなっていくスパイドロシー。

 

「……あの、ソガ隊員……アタシをバカにしていますね……?」

「とんでもない! むしろ、博士は見て分からないんですか……?」

「はあ? 何がかしら?」

「このマグマライザーには、レーザー以外必要ないんです! だってほら! 見て! コレが! あるでしょう!」

「その掘削機が何か?」

「ドリルですよ! ド! リ! ル! はあ~やっぱり女性には分かんないかな~? このロマン! ドリルさえあれば、たくさんの武装なんて要らないんです! この凝縮された漢らしさ! ドリルは浪漫の塊なんです! 全世界の男の子の夢なんですよ! おわかり!?」

「……」

 

おお、怖い怖い。

とっくに零下240度の視線だ。

美人の蔑んだ眼はゾクゾクするなぁ……!

いやいや、オレにそんなシュミは無いんだってば。

 

「……敵がきたらどうするおつもりですの?」

「そりゃあもう! きまってますよ! どんな敵だろうと、このドリルでブチ抜いてやるんです! 螺旋に不可能はありません!」

「フ……効くとよろしいですね」

 

あ……今、鼻で笑ったね?

もう完全にバカを見る目だ。

だが、それでいい。

それでこそ、このマグマライザーを見せた価値がある。

見た目で判断して、バカを見るのはお前の方だぺダン星人。

今は存分にオレとマグマライザーを侮れ! そしてせいぜい間違った情報を持って帰るがいい。

そんでもって、間違いが判明した時にはもう遅いのだ! 怒った上司に処刑されろ! もちろんドロシーを返却した後でな!

 

完全に興味を失った顔で、ガムを取り出し静かに嚙み始める女スパイを尻目に、

オレは再び、頼もしき英雄を見上げる。

お前の輝かしい戦績の数々に、ついにキングジョー撃退を追加する時がきたのだ!

やってやろうぜ、マグマライザー!




という訳で今回は短めですが答え合わせ。
そうです、つまり、そういう事です。

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