転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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大義なき転生者(Ⅱ)

とはいえ、第一話で俺がする事は特に無いんですけどもね。

 

だって、敵の正体も目的も、対抗策まで目の前の男が教えてくれる上に、そのまま倒して人質まで救出してくれると至れり尽くせり。

 

今回、俺が頑張るポイントは、とある場面で気絶しない事くらいだ。

しかも、ほぼ完全にオレ自身の趣味の為に、である。

 

この間にも青年は、異星人が侵略準備の為に数年前から秘かに人類の標本を集めていた事、我々ウルトラ警備隊に嗅ぎ付けられる前に先んじて行動を開始した事なんかをペラペラと親切に教えてくれる。

 

何でお前がそんな事を知ってるんだって情報のオンパレード。

 

「君はいったい何者だ?」

 

当然の疑問であるが、それに対しこの男。

 

「ご覧の通りの風来坊ですよ」

 

いいかいセブン、君はまだ地球の言葉をよく知らないのかもしれないが、風来坊ってのは見て分かる類のものじゃないし、職業とかでもないんだぞ……ああ、コイツはまだウルトラセブンでもなかったか。

仕方ねえな。

 

「名前は?」

「名前……?」

 

そうだ、この星で人間の姿をとるからには名前が必要なんだぞ。

恒点観測員340号さんよ。

 

「……そう、モロボシ・ダンとでもしておきましょう」

 

()()()()()()()()()()()!?

そんなん偽名ですって言ってるようなもんだぞ!?

ここにいるのが、警備隊でも屈指に能天気なフルハシ、ソガコンビで助かったな?

 

代わりにアマギ隊員でもいたら、一発アウトな発言だぞ。

本当に正体を隠す気があるのか、こいつ!?

 

「危ない!」

 

ダンの警告で間一髪謎の攻撃から身を隠す俺達。

ナイスだぞ! クール星人!

おかげでダンへの追及が有耶無耶になった!

クールな援護射撃だぜ!

 

しかし、どこから攻撃されるか分からなければ、ポインターへの逃走ルートが決めきれない。

透明な円盤ってのはなかなか厄介だ。

む! 空が一瞬光った!

 

「あれだ!」

 

ふたりに方向を教えようと身を乗り出した瞬間、背後の岩がレーザーの着弾で爆発!

衝撃によって空中で1回転、そのまま右足を岩肌に強打!

 

 

痛ってえええっ!?

そうだった、ここで両隊員が負傷して、代わりにダンがポインターを運転して帰還するんだった。

高揚しすぎて忘れてた!

 

てか、これ以降もソガ隊員の負傷シーンいっぱいあるんだけど、毎回こんな痛いの!?

いつもそこまで痛がらないし、戦闘も続行したりするしで、ここまでとは思って無かった! ただ単に精神力で我慢してただけかよ! 警備隊員の鑑か?

勘弁してくれ!

 

俺を支えながらポインターへ走るダン。

うう、お前は本当にいい奴だな……オレ、ガンバルヨ。

 

 

そしてポインターに搭載されたバリアやレーザーを駆使して姿の見えない円盤からの妨害をかいくぐり、なんとか基地へ帰還した。

 

その後は、基地のモニターをジャックしたクール星人の降伏勧告に対して、長官達が突っぱねるのを眺める

 

 

「地球人ナンテ、我々カラ見レバ、昆虫ノヨウナモノダ」

 

どう見ても昆虫のようなのはお前らの方なんだよなあ……

ノミだかクモだか分からん体しやがって。

 

交渉が決裂した途端、攻撃を開始するクール星人。

見えない円盤に民間人が人質となっている為、迂闊に動けない防衛軍。

 

「そうだわ……ダン、貴方の地球がピンチに立たされているのよ。何か敵を倒す方法は無いの?」

 

ここでアンヌがダンに水を向ける。

ダンの正体はM78星雲からやってきた異星人だ。

だからこの台詞はまるっきりの的外れ。

 

……だが、知らなかった事とは言え、この時アンヌがダンを当事者として、そして同じく地球を愛する同志として、協力を求めたからこそ、ただの恒点観測員に過ぎない彼が、地球の為に戦う決意をしてくれたのかも知れない。

 

「ひとつだけある!」

「本当か?」

「敵の宇宙船を見えるようにすることだ。あの宇宙船は保護色を使って姿を隠しているんだ。特殊噴霧装置を利用して、こちらで色を吹き付けてやれば、相手の正体がわかるはずだ」

 

 

ダンの提案で、敵の円盤に特殊噴霧装置で色を付ける為、6人全員でウルトラホーク1号に搭乗し出撃する。

 

俺は足の負傷が響いているので、噴霧装置の発射だけ担当する事になった。アルファ号の操縦はアンヌと隊長がサポートしてくれるから楽だ。

だが、同じく負傷した筈のフルハシ隊員はガンマ号を一人で担当する。到底、同じ人類のタフネスとは思えない。……化け物じゃないのかあの人?

 

特殊塗料で真っ赤に塗られた円盤に、ホーク1号が空中で三機に分離し、連続攻撃を仕掛ける。

 

たまらず地上の山岳地帯へ退避するクール円盤。

それを再び合体し追跡するホーク1号。

 

 

……しかし、ウルトラホークの分離攻撃で爆散どころか煙も噴かずに、あまつさえこの後こちらを撃墜するという事は……もしかしてクール星人の円盤って滅茶苦茶高性能だったのでは?

 

宇宙人の円盤相手に尋常じゃない撃墜スコアを叩き出すウルトラ警備隊を撃ち落とすなんて……

 

セブンがあっという間に解決してくれるもんだから、クソ雑魚だと思ってたが、セブンが居なけりゃ詰んでるな。

流石は数年がかりで侵略準備していただけはある。

一話の敵に相応しい強敵だった。

 

……そして機体に走る突き上げるような衝撃!

谷間に隠れた円盤からの奇襲でエンジンをやられて不時着する!

 

頑張れオレ! 気合いで気絶だけは回避するんだ!

 

……まあ、前世はジェットコースターとか全然駄目だったんだけどさ。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙~↑!!!」


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