転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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ウルトラ警備隊に死ね《前編》(Ⅶ)

キングジョーが万力のように力強い3本指で、マグマライザーもむんずと掴んで、持ち上げる。

コックピットからドアップで見える敵の顔は、どこかとぼけたような愛嬌を感じさせるが、その中身は紛れもなく悪魔の兵器であった。

つぶらな瞳に、再び光が集まっていく。

回避不能の至近距離から、必殺の光線を直当てする気なのだ!

そんなもの食らったら、例えマグマの装甲でも一たまりもない。

 

「こんなところで……死んでたまるかァ!!」

 

俺は掴んだレバーを、力いっぱい後進側へ引き倒す。

逆噴射をかけながら、先端のドリルと機体側面の削岩カッターが逆回転し、ギャリギャリと不快な金属音を大音量で奏でた!

チルソナイト合金製のドリル達といえど、キングジョーのペダニウム装甲には全く歯が立たず、表面を削り取る事さえできなかったが、たった三本しかない彼の()()()()()()事には成功する。

頑丈さと力強さを重視した、クレーンのような指は、人間らしく器用に握りしめるようには出来ていなかったのだ。

デストレイが発射されるも間一髪、巨人の手から、つるりと滑り落ちるマグマライザー。

しかし、それで彼の安全が確保された訳では無い。なにせ数十メートルの高さから垂直落下することを意味するのだから。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙~↑!!!」

 

強かに地面へと叩きつけられ、空き缶のように転がる地底戦車。

タイヤはひしゃげ、履帯は全て散々にちぎれ飛んでしまったが、それでも驚くべきことに、なんとか原型は保っていた!

これが防衛軍最硬を誇るマグマライザーでも無ければ、落下のショックでエンジンが爆発炎上していたところだ。

そしてアマギが、一種狂気的なまでに耐ショック性能を追い求めた、コックピットの乗員保護機構が働いていなければ、例え機体が無事であっても、今頃中身がミンチになっていたことだろう。

落下の衝撃によって、完全に意識を手放してしまったソガであったが、マグマライザーの装甲と、アマギの執心は、確かにこの窮地において、彼の命を守り切ってみせたのである。

だが、それが一体何だというのだろうか?

 

横転して成す術のない地底戦車に、ゆっくりと近づく巨大な影。

黄金の魔神は今度こそ、この忌々しい黒い機体を粉々に粉砕するべく、片足を大きく持ち上げた。

地下数千メートルの圧力に耐えるマグマライザーと言えど、キングジョーの全体重と、ペダニウムエンジンの最大出力が生み出す強力無比なストンピングの前では、ハンマーを振り下ろされるダイヤモンドとそう変わりは無い。

漆黒の機体は今まさに棺桶と化そうとしていた。

最悪の光景を想像し、思わず目を背けるツチダ博士。

 

……しかし、そうはならなかった。

その時、天空から舞い降りた、真っ赤に燃える太陽の化身が、黄金に輝く巨神の頭部めがけて、錐揉み落下の威力を乗せた強烈なキックをお見舞いしたからである!

 

「ダァアアーッ!」

《グワッシ!》

 

さしものキングジョーも、これにはたまらず、もんどりうって倒れこむ。

空中で一回転し、その場に着地したセブンは、足元に転がるマグマライザーを両手で大事そうに抱え上げると、センターの影にそっと退避させた。

……危機一髪。セブンはひしゃげた戦車を見て胸をなでおろす。

彼が時間を稼いでくれたおかげで、通常飛行でもなんとか間に合ったらしい。

だが、改めて戦場を見渡したセブンは、自分の判断が間違っていたのではないかと後悔した。大地は抉れ、至る所で火の手があがり、マグマライザーはボロボロだ。

敵がセブンの予想を遥かに超えて強大であったという事に他ならない。

こんなことならば、ウルトラテレポートを使ってでも、即座に駆け付けるべきだった……彼を過信してしまったばかりに、危うく大切な友人を失ってしまうところだったのだから。

 

しかし、そう自省するセブンの耳が、何かの噴射音を捉える。見れば、打ち倒したはずのロボットが、背中のブースターを点火させ、今まさに起き上がろうとしているところであった。

なんという事だろう、あのアイロス星人すら破った技を食らってピンピンしているなんて! 死体が再び起き上がってくるかのような、恐ろしい光景を前に、セブンは先程の思いを撤回した。

 

……いや、だめだ。テレポートを使ってしまっては、とんでもない消耗を強いられる。切り札であるワイドショットを撃つことはおろか、念力を使用した様々な応用技すらも封じられてしまうだろう。

そうなっては使用できる技など、エネルギー効率が良く、全ての技の基本となる二種類のエメリウム光線と、アイスラッガーくらいしか残されていない。それも、ただ投げつけるだけで、念力によって複雑な軌道を描く事すらままならないはずだ。

そんな消耗した状態で、このように恐ろしい敵と戦わざるを得ないなんて、考えただけでゾッとする。

セブンは、この地球防衛という困難な使命を、ウルトラ警備隊の頼もしい仲間達と分かちあえる事に対し、心の中で改めて感謝した。その暖かな思いによって、セブンは眼前の敵に対する恐怖心を払拭し、闘争心を奮い立たせる!

 

躍りかかって、チョップを繰り出そうとするが、両腕でガードされてしまった上に、その勢いまかせに跳ね飛ばされてしまう。まるで大人と子供だ。

そんなセブンに興味を失ったのか、再び防衛センターを破壊するべく進みだす、ぺダン星人の侵略ロボット。

そうはさせじと組みついたセブンが、胸元目掛け、手刀で水平切りを打ち込むが、2,3歩たたらを踏ませるだけで、たいしたダメージがあるとは到底思えない。

 

そこへ現着するポインター。隊員達が降車すると、センターの前ではセブンと謎のロボットの戦いが、もう始まっているではないか!

 

「キリヤマ隊長!」

「おお、ツチダ博士! ご無事でしたか!」

「はい、ソガ隊員がマグマライザーで落とし穴を掘って、なんとか時間を稼いでくれましたが……ハッキリ言って、あのロボットは無敵です! 我々には打つ手がない!」

「無敵ですって?」

「……あれを、ご覧なさい」

 

ツチダ博士の指差す先では、ウルトラセブンが腰だめに拳を握りこみ、独特の構えをとっていた。

あの額から繰り出す素晴らしい光線で、敵を撃滅してしまうつもりなのだ!

見守る警備隊の面々は、次の瞬間、ロボットが大爆発する様を想像し、思わず口元が緩む。

 

この時セブンは、チブル星人のアンドロイドとの戦いを思い出していた。パワー自慢のロボット相手に無闇な肉弾戦を挑んでは、持久戦に持ち込まれ、疲れを知らぬ彼らにスタミナ勝負で勝つことは出来ない。

まずは遠距離戦で相手の出方を見る!

 

セブンの額から、エメリウム粒子を変換した熱線が発射された。

それは間違いなくロボットの正中線を捉えたかに思えたが……

爆発どころか、エネルギーを全身に発散され、逆に吸収されてしまったようにすら見える。

熱線は確かに命中したはずだ。周囲の池に、さざ波が広がるほどの衝撃が発生したのだから間違いない。だが、水面で揺れるロボットの虚像とは裏腹に、本体は小揺るぎもしない。

バリアを張ったでも、腕で防御したでもなく、ただ突っ立って、胸元で平然と受け止めて見せたのだ!

 

「ウルトラセブンの超兵器が通用しないなんて……恐るべきロボットだ……!」

 

普段は冷静沈着なあのキリヤマ隊長でさえ、思わずたじろいでしまう。

これまでセブンの勇姿を眩しく見ていた人類にとって、それほどまでに衝撃的な光景であった。

 

しかし、真正面でその姿を見ていたセブンには、また違った事実が見えていた。

なるほど……胸か!

先程のエメリウム光線は、確かに奴の胸部に一度吸い込まれてから、全身に拡散していったように思う。

そういえば、あのアンドロイドも弱点は胸の回路だったはず。

やはり、重要な回路やエンジンを搭載するならば、大きくスペースを確保できる胸か頭に搭載することになるのだろう。ならば……狙うはあの、光を放つ電子部品だ!

 

セブンは意を決して、敵の懐に飛び込み、金色の装甲に唯一覆われていない胸や頭部の透明なパーツに目掛けて、マシンガンのようにパンチを打ち込んだ。このロボットは、あのアンドロイドのように素早い動きが出来ないらしい。かつては全て防がれてしまったが、今度ばかりはその攻撃が全弾命中する!

……だが無情にも、セブンの剛力ですら、その部分を叩き割る事は出来なかった。

それもそのはず、セブンが知る由もないことであるが、キングジョーの風防は、ウルトニウムとのコランダムで作成された特注品だったのである。

 

そもそも、この無敵戦艦が建造されることになったのも、このパーツの原料として、上記のコランダム……言わばウルトニウムルビーやペダニウムサファイアの人工精製技術が確立されたからという経緯がある。

ペダニウムエンジンは、光エネルギーを吸収して、圧倒的な最大出力と、常識外のエネルギー効率とを叩きだす、まさに魔法の釜であったが……その代償として、一定水準以上の光量を必要とし、密閉された暗室などでは本来の半分程度の出力しか出ない、というのが兵器転用するうえでの致命的な欠陥であった。

遮光ができないという事は、最重要の機関室を装甲で覆い隠す事が出来ないという意味であり……通常の強化ガラスやプラスチックで覆ってしまっては、せっかくの全身ペダニウム装甲がまるで意味をなさない。

硬度と靭性を兼ね備えた宇宙ルビーとサファイアを多重構造で重ね合わせるというブレイクスルーがなければ、このキングジョー級戦艦一番艦『キングジョー』が、大地に立つなど永久になかったであろうことは、間違いない。

 

キングジョーの胸奥で、ペダニウムエンジンが七色の光をきらめかせ、セブンの体を放り投げる。

膝立ちになった赤い巨人を追い詰め、上段から拳をハンマーのように振り下ろすが、なんとかそれを両手で受け止めるセブン。

だが、このままでは押し切られる!

今度は柔良く剛を制すため、フルハシ直伝の一本背負いを決めようとするが……

金属の塊でできた体はまったく浮き上がる気配を見せず、セブンが何度力をこめてもビクともしない!

 

「奴は重いのよ! ……呆れ返るほど重いのよ!」

 

まるで山でも背負っている気分だ……やがてセブンのスタミナが切れるのを見計らって、今度はその重さを武器に、倒れた敵へボディープレスをしかけるキングジョー。地面を転がって回避するセブン!

あわやプレス機にかけられるところであった……

……しかし、これから一体どうすれば!

 

 

ウルトラセブン危うし!

ウルトラ警備隊の前に突然姿を現した、恐るべきスーパーロボットの正体は何か?

セブンは果たして勝てるだろうか?

勝て、ウルトラセブン!

頑張れ、我らのヒーロー!

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