転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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ウルトラ警備隊に死ね《後編》(Ⅵ)

防衛センターに集まったウルトラ警備隊の前で、スーツ姿のダンが、ツチダ博士に頼み込んでいた。

ぺダン星人に提示された交換条件を。

 

「えっ…研究を中止しろだって…?」

「そうです、そうすれば、ペダン星人も地球から退却すると証言しています」

「……ダン、お前、ペダン星人に会ったのか?」

「あの女が現れて、僕に誓ったんです」

「あの女って、アンダーソンのことか?」

「そうです」

 

懸命に停戦を呼び掛けるダン……騙されているとも知らずに。

それに対し、フルハシが率直な感想を述べる。こういうとき、遠慮せず真っ先に、歯に衣着せぬ物言いを出来るのが、彼の強みであった。

 

「けっ、あんなスパイの言うことが信じられるか」

「本当です、宇宙人同士……いや、地球人とペダン星人の約束として、そのことを協議してきたんです!」

 

皆の間に、気まずい沈黙が流れる……見かねたアンヌがダンに助け舟を出すかのように続く。

 

「もし本当なら、最高にいいわ! ……私たちが欲しいのは、平和なんですもの!」

「やったじゃないか、ダン! 惑星間戦争をすんでの所で回避できたんだ。これは大手柄だぞ! なあ、みんな?」

 

俺が全員の顔を見渡しながら、呼びかけるものの、まるで熱を失った様子で、こちらに背を向けるアマギ。

 

「その言葉が真実ならな……」

「みんな、何を疑っているんだ! ……まず、相手を信じることです! そうでなければ……人間は、永遠に平和を掴むことなんかできっこないんだ!」

 

煮え切らない態度の仲間達に、いらだちを募らせるように、語気を強めるダン。

彼は、人間が平和を願う心の強さを、誰よりも信じていた。そう、それは人間達以上に……

だからぺダン星人の提案にのったのだ。しかしこれでは……ダンは、自分が人間に、あまりに高い理想を抱きすぎていたのかもしれないと、そう思ったところで……彼の肩を叩くものがいた。

 

「まあまあ、そう怒るなよ、ダン。俺達地球人は、今まで沢山の宇宙人に騙されて来たんだ。今更そう易々と、攻撃してきた奴を信用できないってのも、仕方ないぜ。全員が全員、すぐに割り切れる訳じゃない」

「それは! ……いえ、僕も熱くなりすぎました……ソガ隊員のいう事にも一理ある。怒鳴ってごめんなさい、アマギ隊員」

「い、いや……俺はどうもネクラな性分だからさ……悪かったよ」

 

少し冷静になった両者が、ぎこちなくも、お互いの失言を訂正しあった。

だが、なんの証拠もなしに侵略者の言葉を信用するなんて……空気は依然として固いまま。

そこへ、マーヴィン捜査官が扉を開ける。隣には見覚えのあるプラチナブロンドの美女。

なんという事だ、あの女性は……!

 

「お、アンダーソン! マーヴィン、これは……?」

「本物のドロシー・アンダーソンです。ペダン星人は約束を守った……ダンの言うことは、本当です」

「アンダーソンさん、あなたは……今までどこに?」

「彼女は疲れています。少し休ませてください」

「……さ、いきましょ」

 

どこかボーッとした様子のドロシーを、アンヌが優しく病室へ案内する。

彼女達へついて、部屋を出て行こうとするマーヴィン捜査官に、自然な流れで声をかけるソガ。

 

「いやあ、良かったですね、マーヴィン捜査官! 彼女を見つけ出すなんて、流石はワシントン基地のエージェントだ」

「いえ、ぺダン星人が、ボクを呼びつけて、彼女を引き渡してきたんです」

「え、そうなんですか……?」

「……何か、問題でも?」

 

突然立ち止まったソガを、マーヴィンは訝し気に振り返る。

ソガ隊員は何事かを悩んでいるようだったが、ついに質問を始めた。

 

「先程、あなたは()()()ドロシー・アンダーソンと断言されましたが……何を根拠に?」

「これです。彼女の体内には発信機が埋めてあります」

「え? あ、そうなんだ……じゃあ肉体は本物として……心は?」

「心?」

「ええ……かつて、ユシマ博士が洗脳されて、あやうく基地が壊滅する寸前になりまして……彼女とはもう喋りましたか?」

「いえ、まだ一度も……ショックでぼんやりしているようなのです」

「じゃあ、早く確かめた方がいい」

 

ソガに不安を煽られたマーヴィンは、アンヌとソガが見守る病室で、ドロシーに語りかける。

 

「ドロシー……僕が分かるかい?」

「ううん、アナタは一体誰なの? ……それに、ここはどこ? ねえトト、ここはカンザスじゃないみたいよ……? そうだわ、トトがいない! おじさん、トトがいないの、一緒に探してくれない……?」

「……おお、なんということだ……! ああ、ドロシー!!」

「アンダーソンさんは記憶を完全に失っているわ……ぺダン星人に、記憶を消されているのよ!」

 

アンヌが即座にドロシーを寝かしつけ、脳波の状態を探った。

どうやら、単なる記憶消去よりも、さらに複雑な処理がなされているらしい。

アンヌ曰く、強力な暗示によって、元のドロシーとは別の人格で、記憶ごと上書きされてしまっているとの事。

今の彼女は、ドロシーはドロシーでも、ワシントン基地の才媛ドロシー・アンダーソンでは無く、カンザスに住む12歳のドロシー・ゲイルなのである。

物語のカギを握る天才科学者は、ぺダン星人の恐ろしい催眠により、自分がとある御伽噺の登場人物、ドロシーという幼い少女なのだと、思い込まされているのだった!

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「隊長、沖合を捜索していた駆逐艦が、海底を航行する巨大な金属反応を検知!」

「……ついに来たか……」

「停船命令に従わなったため、爆雷による攻撃を試みたものの、無傷で突破された模様。これより追撃をかけると言っています」

 

海域を探査中だった軍艦から、センターへ緊急入電が入る。

アンダーソンの記憶が消されていると報告があってからまだ数分。

それでも、危惧していた通りの事態になってしまった。

キリヤマは、女性科学者の病室に待機させていた部下を呼び出す。

 

「はい、こちらソガ」

「ソガ、アンダーソンの調子はどうだ?」

 

画面に映る隊長は、むずかしい顔をしている。

きっと、ドロシーの知恵を借りたいような事態が起きたのだ。

注文通り、ビデオシーバーに映る隊長へ、病室の様子を見せるが……芳しくはない。

 

「だめです……今、アンヌがショック療法を試していますが……時間がかかりそうです」

「……そうか」

「隊長、あのロボットが発見されたんですね……?」

「ああ、やはりぺダン星人は我々を油断させるためだけに……アンダーソンを返したのか……」

「なら……そのッ……」

「どうした、珍しく歯切れが悪いな」

 

隊長に進言しようとして、思わず言いよどむ。

オレは、事ここに至っても、まだ決断できずにいた。

……全艦艇を集結させて、波状攻撃を決行しましょう!

そう言うだけなのに……

 

もはや、あのキングジョーを倒せるのはライトンR30爆弾だけだ。そしてその設計図はドロシーの頭の中だけにある以上、俺達に出来るのは時間稼ぎだけ。

海上のキングジョーに落とし穴は通用しないし、本編の二戦目では、普通に起き上がっていた。

おそらく何らかの対策をしたのだろう。

だから、間断なく攻撃を仕掛けて、こちらへの反撃を誘発させる……という方法しかない。

こちらの攻撃はまるきり効かないのに、だ。

 

だが、攻撃が効かないから大人しく戦力を温存する。というのも……

この15話において、セブンは今までにないくらいの時間、キングジョーと格闘する事になる。

それまでは変身からせいぜい2、3分で決着がついていたのに、多分10分くらいは戦っていた。

その時間だって、全ての戦闘を映した訳ではないから、あくまで番組の中では10分くらいしか無かっただけで、それ以上の長時間である可能性の方が高い。なにせドロシーが目を覚まして、新兵器を作り上げるまでの時間だぞ? 尺の都合で圧縮されていただけで、本当は数時間だったかもしれない。それも、あのキングジョーを相手にだ。

 

だから、今回の戦いはセブンの中でも1.2を争うくらい消耗した戦いのハズ。なにせ平成版で、キングジョーにトラウマがあると、ダンが認めているくらいだからな。

だがそんな激戦も、結局はただの時間稼ぎでしかなく、セブンにしか使えない技や能力が必要だったわけでもなんでもない。ただ、神戸への上陸を阻止するために、キングジョーの巨体と組み付く事ができるサイズが、彼一人しかいなかったというに過ぎないのだ。攻撃が効かないのは、セブンも人類も同じなのだから。

ならば海上で、無数の戦艦によって取り囲み、神戸への到着を少しでも遅らせる事ができれば……セブンの戦う時間を大幅に減らせるのでは……? どの攻撃も等しく効かないという事は逆に、キングジョーの的になるだけならば、セブン以外にも十分仕事ができるのだ。

 

でも……果たして本当にそれでいいのか?

 

セブンはキングジョーにどれだけ殴られようが、撃たれようが、そこで死ぬことはない。

だが……あのロボットの進路に立ち塞がった戦艦は……確実に沈む。

尽く破壊され、全員死ぬだろう。間違いなく。

俺達ウルトラ警備隊はまだいい。原作と大きく違う行動をとらない限り、受ける被害も原作と同じ結果を生み、負傷はしても、最悪死にはしないはずだ。

警備隊の装備はマグマライザーでなくとも、ホークですら凄まじい堅牢さを誇るし、肉体も人類の最高峰だからな。

だが……他の防衛隊員はそうではない。メタ的な言い方をすると、()()に当たる彼らは、近くで何かが爆発するだけで容易く吹き飛び、ボロ雑巾のように死ぬ。そこにキャラ補正なんて微塵もなく、本編でも一般隊員はどんどん死ぬ。

地球防衛軍は、ウルトラシリーズの中でもトップクラスの戦果を誇るが……戦死者数もトップクラスなのだ。同じくらいの犠牲によって、あの輝かしい戦果は打ち立てられている。

 

そして、本編のキングジョー戦に、海軍の艦艇なんか一つも参加していない。

と言う事は……俺の一言で、原作にはなかった余計な戦死者が増えるという事だ。

 

ウルトラセブンの消耗を抑えたいというのは、結局オレ一人のエゴでしかなく……セブンを守るためなら、他の隊員の命はどれだけ散らしてもいいのか? ……セブン本人だって、そんな事、これっぽっちも望んじゃいないはずだ。分かってる。

でも……オレは……例え悪魔に魂を売り渡してでも、彼を助けたい。

だが、それを貫き通す覚悟も……ない。

俺がビデオシーバーの前で押し黙っていると、隊長がまなじりを吊り上げ、低い声で俺を呼ぶ。

 

「……ソガ、お前の言いかけた作戦を、当ててやろう。……付近の海域にいる全艦艇を集結し、進路上を塞ぐように陣を敷く。そうだな……?」

「た、隊長……」

 

流石は隊長だ。オレが言わずとも、次にやるべき事が分かっている。だが……

 

「そして、お前の悩む理由も、私には手に取るようにお見通しだ、あまり見くびるなよ? 攻撃が効かないなら、ただの時間稼ぎにしかならない。そんな作戦に付き合わせられない、といったところか。……どうだ、当たりだろう?」

「……」

 

図星をさされたオレが、二の句を告げないでいると、隊長は大きく息を吸い込んで、凄まじい剣幕で怒鳴った。

 

 

 

「あまったれるんじゃないっ!!」

 

 

「す、すみ……」

「これが通信越しだった事を幸運に思うがいい! そうでなければ今頃……殴り飛ばしていたところだ! バカにするのも大概にしろ! 我々地球防衛軍の使命を、一体何と心得るか、キサマ!」

「使命……」

「我々は、防衛軍だ。攻撃軍じゃない! 地球を守る盾なのだ! 盾の役目は、守るべきものの為に、代わりに傷つき、その体を削りながら、例え最後には断ち割れてしまったとしても、その後ろにいる者に一つも攻撃を通さないというのが、仕事なのだ! 盾が自分の傷を嘆いてどうする!? そこに攻撃が効く効かないなど、まるで関係ない、常に人々の前に立つのが、変わるものか! それを……キサマは侮辱したのだぞ! ウルトラ警備隊の覚悟を、鼻で笑ったのだ! 今、この作戦に従事してくれている全将兵に……恥ずかしいと思わんのかッ!!」

「……申し訳、ありませんッ……!」

「泣くな! 臆病者は一人で家に帰れ! キサマはなんだ? ウルトラ警備隊なのか? それとも単なる臆病者なのか?」

「う、ウルトラ警備隊の、ソガ隊員であります……!」

「ならば戦え! 戦って戦って……戦い抜いて! 最後の最後まで地球を守って……そして死ね! 我々地球防衛軍の命によって、たった一分一秒でも敵を押しとどめられたのならば……それは一人でも多くの市民が、逃げられる時間を稼ぎ出すことになるのだ! いいか、ソガ。我々人間の持つ本当の武器は、勇気だ! 真実の勇気とは、怖いと思い、それでもなお危険に立ち向かい、行動できることだ! キサマも名誉あるウルトラ警備隊員であるなら、武器を持て!」

「ハイ!」

「……それと、お前はもう一つ思い違いをしているぞ、ソガ」

「お、思い違いでありますか……?」

「そうだ、これから全海兵に……そして、お前たちウルトラ警備隊に死ねと命じるのは、キサマなどでは決してない。……私だ! このキリヤマだっ! 常にこの私の責任と義務であって、キサマのような未熟者がいちいち思い悩む事ではないッ! わかったか!? 分かったなら返事をせんか!」

「りょ、了解! 了解しましたッ!」

 

涙にぼやける画面の向こうで、キリヤマ隊長が全隊員に向けて、命を懸けろと命令を下す。

 

「ウルトラ警備隊……出動スタンバイ!」

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