転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
激しい閃光と爆発音で目が覚める。
まだ視界がぼんやりしているが、キャノピーからは墜落したホークを守るように両手を広げて敵へと立ちはだかり、咆哮をあげる銀色の巨大な背中が見えた。
……良かった間に合ったようだ。
旅客機の発進前アナウンスなんかで教わる、耐ショック姿勢を取っていたのが効いたのか、一瞬意識が飛んだだけで済んだらしい。
やはり撃墜されるのが分かっているかいないかは、大違いだ。
お陰で貴重な推しの戦闘シーンを特等席で見物できる。
墜落したホークにとどめを刺すため、母艦から発進した戦闘ドローンを銀色の右手で叩き落とし、窮地を救ってくれたこのメカニカルなニワトリはウインダム。
オレの大好きな怪獣だ。
こいつの活躍を見たいがために、気絶を回避したのだ!
いけー! やれー! ウインダム!
ドローンからの攻撃を顔に食らい、怯むウインダムだったが、もう一度攻撃をしようと旋回したドローンに、額からのレーザーショットを浴びせかける!
動きが鈍り、フラフラと低空飛行をするドローンを腕を振り回しながら追いかける姿はとってもコミカルだ。
そのまま飛びついてもう一機撃墜!
いいぞウインダム!
しかし、敵も立て続けに撃墜されて、流石に脅威と見たのか、ドローン達は三機で合体しウインダムの頭部に出力を上げた攻撃を叩き込む。
たまらず痙攣し、うめき声を上げながら膝をつくウインダム。
そのまま発光し、細かい粒子となって消えていく。
形勢不利と見てダンが回収したんだろう。
……ああ、足が自由に動けば援護の一つもできたかもしれないのに……すまん、許せウインダム。
だが、先程の攻撃でエネルギーが尽きたのか、ドローン達もこちらに追撃を仕掛けてはこない。
そうしてできた僅かな隙をついて、視界の端を赤い何かが飛んでいくのを確認してから、俺は後ろで伸びている隊長たちを起こしにかかるとする。
この後は、母艦に侵入したセブンがアイスラッガーでクール星人を真っ二つにしてから、人質を救出して事件終了!
ほーら、目を覚ましたみんなと外に出れば、捕まっていた人たちが助けを求めて走ってくる。
「あれは何ですか! なんですかあれは!」
震える警官が指さす方向を見れば、巨大化したセブンがクール星人の円盤を掴んで飛び去って行くところだった。
「いえ、我々にも何が何だか……あの巨人は一体?」
「あ、あの赤い宇宙人が我々を助けてくれたんです! ……し、しかし一体何者なんですか! 彼は!」
「まだ分かりませんが……敵では無いようです」
ステーションV2から赤い巨人と円盤が飛び去った方向の宇宙空間で爆発を確認したとの報告を受け、事件は一件落着だ!
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その後、作戦室にて。
「いやー、今度の事件になくてはならなかったのは……あの風来坊だな」
「そう言えば彼、どこいったのかしら」
「ここだよ諸君! ……紹介しよう、モロボシ・ダン隊員だ」
無事にウルトラ警備隊6番目の男が着任したが……
これはウルトラ念力で長官を洗脳したのだろうか、それともメビウスのように上層部に自身の正体を打ち明けてから入隊したのだろうか……?
でも直接聞いて藪蛇になる訳にもいかんしな……気になるぅ~!
「ダン! 生きていたのか! 俺達を守るために囮になって死んだかと思ったぞ」
「えッ!? 見ていたんですかソガ隊員?」
「後ろで誰かが出て行った気配はしたんだが、体が動かなくってな……」
「……ええ、彼に助けてもらったんです」
「彼って、トサカのある銀色のロボットか?」
「えッ……ああ」
ダン、まだまだ地球に慣れてないから、おちょくるのが楽しいな。
「きっとあの赤い宇宙人のことだろう」
「そうね、今回の事件の立役者といえば、彼のことを忘れちゃいけないわ」
「結局、奴は一体何者なんでしょうか……」
まあ、我々ウルトラ警備隊としては気になるところだ。
「人々を救い、クール星人の円盤を破壊したところを見るに、我々と敵対する意思は無いと思いたいが……」
「ええ、きっとそうですよ!」
ここぞとばかりに食いついてくるなダン。
「いつまでも赤い宇宙人ってのも味気ない、名前をつけてやろう」
「そうだな……太陽のように燃える情熱の赤い巨人、レッドマンってのはどうだ?」
「ダメダメ! ……あの、あれだ、今後赤い宇宙人が出てきたら紛らわしいでしょう!」
「そうか……」
当たり前だ! 性格まで変わっちまったらどうするんだ! それだけは認められないぞフルハシ隊員! 却下だ却下! ド却下だ!
「……そうだわ! この地球には、平和の為に戦う人が任命される、相応しい役職があるじゃない! ねえ、隊長」
「……うむ、なるほど。彼こそ我々ウルトラ警備隊7番目の隊員ということか」
「そりゃあいい、今日はせっかく新人が一人増えたんだ、もう一人くらい増えたって構わしねぇや!」
「ダンもこんな時期に一人で入隊したんじゃ、同期が居なくて寂しいだろう」
「同期はいいぞ……ダン!」
「はあ……」
「俺とヒロタのように、切磋琢磨しあってくれよ」
ダンは自分自身と同期にさせられて困惑しているが、もう一つの姿の方も地球人に好意的に受け入れられて嬉しそうではある。
「では、ウルトラ警備隊七番目の仲間、ウルトラセブンということで、どうかな?」
「素敵だわ隊長」
「ちょうどラッキーナンバーで縁起がいいや!」
「ウルトラセブン……とてもいいですね気に入りました」
「お前が気に入ってどうするんだ、ダン」
「ああいえ、同期の僕でもいい名前だと思ったんです。きっと彼も喜んでくれるでしょう」
「ハハハ、それならもし今後、彼が出現した場合はこう呼びかけてみるとするか」
ほほう、こうしてセブンは命名されたのか……
本編ではいきなりセブン呼びだったから、命名の場面に立ち会えて感慨もひとしおだ。
……これからよろしくなウルトラセブン!
第一話「姿なき挑戦者」終了!
ウインダムを援護する案もありましたが、今回は見送りという事で……
しばらく主人公が大きく動くことはありません。
それまでは少々お待ちください。