転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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ウルトラ警備隊に死ね《後編》(Ⅺ)

その時、二体の巨人は、何が起きたか咄嗟に理解できなかった。

キングジョーの持ち上げていた軍艦が、突如として、中心部から引き裂けるように爆散したからだ。

今まさにセブン目掛けて振り下ろそうと、高々と掲げていた鈍器が、至近距離でいきなり勝手に大爆発してしまったキングジョーとしては、たまったものではない。例によって、その無敵の装甲は傷ひとつ付かなかったが、流石に軍艦一つまるまる吹き飛ぶ爆発の持つエネルギーは、片足に故障を抱えた状態で踏ん張り切れるものでは無かった。

そのまま仰向けで、海面へと投げ出される黄金の肉体。巨大な重量物の没した海面は、真っ白な飛沫を激しく噴き上げ、体積によってかき分けられた海水が、小規模な津波すら引き起こす。

 

その様子を、セブンは半ば呆然に近い様子で眺めていた。

火災が起きていた訳でもなく、味方に砲撃されたわけでもない。直前まで、あの駆逐艦に爆発する兆しは見られなかった。衝突のショックでエンジンがイカレてしまったとしても、あんな吹き飛び方はしないはず。……間違いない、あの艦は自爆したのだ。

自爆したという事は、まだあの駆逐艦の中に無事な人間がいたという事であり、その誰かが、そう決断したという事。もはや瀕死の重傷だっただろうが、確かに生きていたのだ! ……なぜ? どうしてあのタイミングで、そんな選択が出来る?

 

もしやそれは…………ぼくを、助ける為か?

 

船を吹き飛ばした乗組員の思惑を、そう悟ったセブンは、愕然とした。

他者の為に命すらも投げ打つ事が出来る、美しい自己犠牲の精神。この星で最初に人間に魅せられた、きらめく宇宙の真理ではあったものの、よもやその対象に自分がなってしまうなんて……。ほんの少しの怪我や病気で、すぐに死んでしまう人間の命はあまりに儚い。そしてそんな彼らの命は、たった一つしかないのだ。その人間が、ぼくを! 悲しさに胸が張り裂けそうになる。

 

銀河に住む数多の生命は、こんなにも他人を思いやれる美しい心を持つのに……どうして……どうして、彼らが死ななくてはならない? どうしてこの宇宙からは……争いがなくならないんだ!!

 

セブンの真っ赤な拳が、怒りと、悔しさで、固く堅く、握りしめられる。

こんなにも、敵が憎いと思ったのは初めてだ。彼らだって、本気でそう望めば、平和を模索する事もできたろうに! 僕が……僕が、彼らの仲を、ちゃんと取り持ってやれなかったばかりに! 

 

だがその時、自らの不甲斐なさと、ともすれば激しい憎悪に飲み込まれそうだったセブンの心に、清流のごとく微かに流れ込んでくるものがある。

彼の超人的な聴力が捉えたそれは、自分を呼ぶ、誰かの声。

呼ばれるままに顔を向けると、そこに見えるのは、津波をかき分け、飛沫をあげて、恐れず堤防を突き進む、コンバットジープの姿。そしてそれに乗っているのは……彼の大好きな、ウルトラ警備隊の仲間達!

彼らは、巨大な敵に向けて、果敢に接近していくジープの上で、口々に何かを叫んでいる。

この距離と轟音では、流石にセブンの耳でも詳しく聞き取れないが……彼らが何の策もなく、敵に突撃していくはずがない。聞かなくたって分かる。きっと新兵器が完成したのだ! あの大筒の中に、人類の叡智の結晶が装填されているに違いない!

だったら、自分がやるべき事は、ひとつ!

 

セブンは、気合いを入れると、まだ海中でもがく敵のロボットを強引に引き起こし、後ろから羽交い締めにした。一度目の戦いではきっと、重たいキングジョーを持ち上げる事なんてできなかっただろうが、海水の浮力と……そして何より、セブンの発する、凄まじい怒りのエネルギーが、普段の何倍もの力を、彼に与えていた!

 

ジープで行けるギリギリの近くまで接近した警備隊員達は、セブンがこちらに向けてキングジョーを固定してくれるのを見て、攻撃の瞬間は今しかないと、奮起する。

 

だが、たった一発しかない弾丸で、最大の効果を発揮しなくてはならない。そして、敵の設計図は、例えアマギの脳にも、入ってはいないのだ。いったいどこを狙えばいいのか? 本来であれば、射手は考えてしまう場面。

しかし今、スコープ越しにロボットの姿を捉えた狙撃手の目に、迷いは一切無かった。なぜなら彼には、偉大な先達がいたからだ。たった一度きりしかない攻撃に、お手本があるなんて、なんと贅沢な事かと、自分とまったく同じ顔の、だが中身はまるきり正反対の英雄に、誰にも聞こえない小さな声で呟くソガ。

 

「……ありがとう、ソガ隊員」

 

狙うのは腹部と胸部のパーツの接合部! 奴の上半身と下半身を繋ぐ、正中線のド真ん中!

 

「撃て!」

 

ハンドルを握るフルハシの号令で、アマギが支えるバズーカの引き金を引くソガ。

恐れ知らずの警備隊のジープから、怒れるセブンに締め上げられるキングジョーに向けて、人類の叡智が結集した、退魔のスティレットが鋭く飛んでいく。

 

金色に輝く腹に着弾したライトンR30爆弾は、目覚ましい効果を発揮した。弾頭の先端で漏斗状に成型された放射性物質は、ペダニウム合金の弱点である放射線を、錐のように発生させながら、グニャグニャになった金属の中を突き進む。そして、針の先端が、装甲内部に達した時、その腹に隠されていた新型爆薬が、まるで筋肉注射のように押し込まれた。

そうしてコントロールルームに飛び込んだ薬剤は、しかしてほんの数量で致死に至る、紛れもない劇薬なのである!

事態を理解できず呆気にとられる乗組員を、跡形も残さず消し飛ばし、機体各部に向けて延ばされた、動力パイプを伝って、その爆発の衝撃を余すところなく全身まで行き渡らせた。

血管が一気に沸騰し、ビクンと痙攣するキングジョー。

全ての機能と、動作プログラムが強制的にシャットダウンし、何の入力もされていない最もニュートラルな状態、すなわち建造時の姿勢である、気を付けの姿勢をとったキングジョーは、両手両足を体にぴったりとくっつけたまま、後ろの海へと倒れこんだ!

各部の装甲から火花を吹き出し、大爆発を起こす超弩級戦艦。

歓喜の声に包まれ、皆が満面の笑みを浮かべて、隣の者と顔を見合わせた。

だが、そんな彼らの前に、ふわりと浮かび上がる円盤の影。

 

「駄目だ! 宇宙船団の攻撃は一時中止しよう!」

 

キングジョーから脱出するぺダン円盤。内部に丸々収められていた宇宙船は、キングジョーとのやりとりは通信のみで、動力パイプとは接合されず、ペダニウム装甲で覆われていたために、なんとか無事だったのだ。

 

このまま彼らを逃がしては、今回の教訓から、今度はキングジョーにもっと強力な改良を加えて、再び地球へやってくるだろう。

そうなれば、今度は膝を壊すどころか、新兵器すら効かなくなるかもしれない。

彼らに二度と、この地球の大地を踏ませてなるものか!

 

そう決意したセブンは、両の腕を、胸の前でピッタリとL字に構え、逃げる円盤に狙いをつけた。

正面戦闘用に作られた、ビームを無効化してしまう無敵の要塞であるキングジョーには、恐らく効かなかったかもしれないが、長距離飛行やワープ航法を組み込まねばならない宇宙船ならばあるいは……やってみるしかない!

ワイドショット。それは、セブンが持つ技の中で最大威力、正真正銘の必殺技。

普段は体内に蓄えた膨大な太陽エネルギーを、額のビームランプでいったんエメリウム粒子へ変換し、あらゆる形状や威力に調整して、効率よく消費しているが、この技を撃つのに、そんなまどろっこしい事は一切ない。

ただ、幅の広い蛇口から、これまた凄まじい勢いの水圧で、プールの水を垂れ流すがごとく、太陽エネルギーを無変換で、そのまま丸ごと叩きつける!

恒星の持つ光と熱を、直接味わうなど、無事で済むはずがない。ただ単純であるがゆえに、強い。太陽に突っ込んで、生きていられる生物などいるはずがないからだ。

その代償として、エネルギーの消耗度合いも半端でないが、そんな事を気にする余裕も手心も、今のセブンには一切なかった。

 

深紅に輝くセブンの腕から発射された極太の光線が、円盤全体を包み込み、反重力ノズルやイオンジェネレーターを焼き切っていく。

 

「……ああっ!」

 

それを岸辺で見ていたドロシーが、小さな声をあげて、思わず駆け寄ろうとするが、横から差し出されたマーヴィンの太い腕が、彼女を制す。

ゆっくりとかぶりを振るエージェントの様子から、もはやセブンを止められない……いや止めてはならないのだ、と悟るドロシー。

 

彼女は青い瞳から一粒だけ、ガラスのように美しい涙を流すと、白煙を上げてゆっくり海へ墜落していく円盤の姿を、一度も目をそらさずに脳裏へと焼き付けた。彼女の記憶力は、その光景を一生忘れないだろう。

墜落先のキングジョーと共に、大爆発を起こして海中へ没するぺダン星人の宇宙船。

歓喜に震える神戸の港で、たったひとり、小さく呟いた。

 

 

 

 

「さようなら、もう一人のワタシ……」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

夕暮れに紅く染まる神戸港。それは血の色にも似た暖かな輝きで、戦士達の帰還を出迎えた。

我々は、この美しい街を、人々の営みを、ついに守り抜いたのだ。

 

キリヤマ隊長の腕で二回のコール音を鳴らすビデオーシーバー。

画面の向こうのマナベ参謀に、やり遂げた漢の顔で、隊長はおだやかに戦果を告げる。

 

「はい、こちらキリヤマ……。参謀、ペダン星人のスーパーロボットは、ついに撃滅しました」

「ご苦労。なお、宇宙ステーションから入電があり、敵の宇宙船団は、途中から引き返したそうだ。多分、諸君の活躍に恐れをなしたのだろう」

 

約束された地球の平和に、ほっと胸を撫でおろし、笑いあう一同。

そこへ、決然としたドロシーが、反省を述べる。

 

「今度のペダン星の事件は、ワタシたち地球も責任があります。これから観測ロケットを打ち上げるときには、充分注意しなければ……」

「うむ……」

 

ドロシーの語る教訓に、笑顔でうなずくキリヤマ隊長。

彼らの耳に、こちらへよびかける、大声が聞こえた。

 

「おぉーい! おぉーい!」

 

一同が振り向くと、夕陽の中を、手を振りながら駆け寄る男の影……ダンだ!

愛する仲間達の元へと帰ってくる彼の笑顔は、まるでセブンのように赤く煌めいていた。

 

 

~終劇~




はい皆さま、ウルトラセブン第14、15話「ウルトラ警備隊西へ」前後編を基にした特撮映画「私の愛したキングジョー」いかがだったでしょうか。

監督の私といたしましても、皆様の熱い応援のおかげで、このように劇場版を作製することが叶い、感無量といったところです。

当初の予定ではセブンにちなみ、前後編それぞれ七話ずつ、とする予定でしたが、私のわがままで、シーンを省く事無く描写したせいで、このように完成が遅れ、スタッフに多大なご迷惑をおかけして、若気の至りを恥じ入るばかりですね。

自らの手掛ける作品を、ひとつの尺に収めるというのが、どれほど困難なことか、当時のスタッフ方の苦心と偉大さを、改めて実感するばかりです。

さて物語の方はというと、これで序盤の山場を無事に切り抜け、今度からは中盤戦、恐ろしいキングジョーを撃退したにも関わらず、まだまだ沢山の侵略者が、様々な理由で、地球へと魔の手を伸ばしてきます。

原作のセブンからすれば、キングジョーから受けるダメージを半分以下にまで抑えて倒すことが出来たソガですが、その代償として海軍は壊滅的な損害を被り、セブンやソガの思いとは裏腹に、地球防衛軍の方針はより強固な兵器開発へと舵を切るのでした……怪しい雲行きの中での中盤戦、ソガはいったいどう行動するのか? 徐々に効果を発揮していくバタフライエフェクト。

以降の展開もぜひお楽しみいただけますと、幸いです。

では最後に、本日はお足元の悪い中、完成試写会の為に、この劇場へわざわざ足を運んでくださり、誠にありがとうございます。

スタッフによりますと、今ちょうど外では虹がかかっているそうですので、是非、パネルで記念撮影をしていただきたく思います。

では、ありがとうございました!

原作:ウルトラセブン

原作脚本:金城哲夫 

原作監督:満田かずほ 

原作特殊技術:高野宏一

脚色:Mr.You78

監督:Mr.You78

撮影協力:兵庫県・京都府

ウルトラセブン・ダン役…………



















ワシントン基地のテラスにて
手すりにもたれ掛かる、サングラスをかけたスーツ姿の男に、両手でサンドイッチを抱えた職員が、たまたま通りかかり、声をかける。

「おう、マーヴィン! 戻ってたのか。今回の任務も早かったな」
「ああ、あの事件に比べれば、たわいもない」
「スコーピオン計画を妨害しようなんて、ふてえ奴らがいたもんだぜ。だが、いくら巨大な犯罪組織でも、相手がエイリアン・キラーでは役不足だったな! ……アンチョビサンド、食べる?」
「結構、イワシは苦手だ」
「あ、そう。……おいなんだよ、ドロシーを待ってるのかと思えば、彼女、もうあそこに座ってるじゃないか。いかないのか?」
「ああ」
「……ははあ、さては……フラれたか?」
「サンダース……前歯を全部クッキーみたいに粉々に砕かれたくなければ、そのおしゃべりな口を閉じるんだな」
「冗談じゃないかよ……」
「見えるか? あれから彼女、すっかりガムを噛む癖がついてしまって……まったく、あの女を思いだすから、やめて欲しいんだがな……」
「だったら彼女にそう言えば良いじゃないか、行儀が悪くちゃお里がしれるよ、カンザスか? ってさ」
「できるか、そんな事。お前のその節穴をかっぽじってよく見るんだな、あの顔を。……まるでロスの洒落たハンバーガー屋で、同年代の友人と騒ぐ女学生みたいじゃないか」
「へえ、彼女あんなに楽しそうに笑うんだな……そんなに美味しいのか? あのガム」
「……いったい、どこの誰と、喋ってるんだか……」

エージェントはサングラスの奥で薄く笑うと、ポケットから取り出した葉巻をくわえ、先端に火をつけると、実にうまそうに、灰色の煙を吐きだした。
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