転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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お察しの通り、巻きです。


湖の恐怖

パトロールから帰ってきたフルハシ隊員とダンが、もう一回木曽谷に出撃していくのを見送る。

 

なんで他の隊員も志願してるのに、わざわざ帰還した二人を行かせたんですか隊長!!

労基案件ですよ!

 

まあ隊長本人が言ってたように、子供の通報だからすぐ帰ってこれるし、その分ボーナスで休憩させてやろうとでも思ってたんだろうけども、オレはこの後二人がなかなか休めないことを知っている。

 

だって木曽谷ってことはエレキング戦なんだもんよ。

 

 

……え? ワイアール星人?

ああ、あんなの、俺の出る幕はまるでなかった。

基本的に序盤はセブン無双だから、俺が何かする必要はほとんど無い。

 

せいぜい、夜に倒れている重傷者を発見したら、警察や救急じゃなくて防衛軍で収容するように進言しただけだ。

こうすりゃあの話は人的被害ゼロだからね。

むしろ、最初の頃はセブンにバンバン活躍して貰って、彼が人類の味方である事を周囲にしっかり認識して貰わないといけない。

 

そういや前回の事件の後には大量のチルソナイトが手に入って

 

「これだけの量があれば、構造解析が捗ります! 開発中の地底戦車の設計に活かせそうですよ!」

 

とかなんとかアマギ隊員が喜んでたっけ。

 

 

いや、終わった話はいいんだ。

それよりエレキングだ。

しばらくすると、発見した宇宙船の中で二人が襲われたらしく、その時巻き込まれた少女を保護してフルハシ隊員が帰還する。

 

聞けば、肝心のダンは少女をフルハシ隊員に託してから行方が分からないんだと。

彼からの通信もなく、もしかすると宇宙人にやられてしまったのでは? と心配する面々。

 

「万が一という事があります。現場へ飛びましょう!」

「待て! ……ダンがあるいは何かを掴んでいるかもしれん。……彼に期待しよう」

 

隊長、貴方がその多大な期待を寄せるモロボシ・ダンは今頃、大事なウルトラアイを盗まれて右往左往してますよ。

だからどうにかして早めに出撃して、援護してやりたいんだが……

 

オレが困っていると、メディカルセンターのアンヌから指令室へ通信が入る。

保護した少女が接触を拒んで治療ができず困っているという。

 

……しめた! これだ!

 

「よし、僕の責任だ。見にいってきます」

「ちょっと待った! フルハシ隊員はその娘を追いかけたんでしょう? 怖がられてしまいますよ。 ここは俺が代わりに行ってきます」

「……頼む」

 

よしよし! ……覚悟しやがれピット星人!

メディカルルームに入ると、少女がヒステリックにアンヌへの拒絶を示している。

 

「やめてッ! 触らないでッ!」

「……どうしたんだい? このアンヌ隊員はね、こう見えて我が基地の誇る名医なんだよ。この基地にいる全ての隊員がみんな健康なのも、彼女のおかげなんだよ」

 

アンヌは褒められて照れくさそうに微笑むが、少女は一向にいう事を聞かない。

 

「いいの! 私もう何でもないわ! この通り元気よ! ……触られたくないの、誰にも」

「……そうか、それなら少し横になっていくといい。……それだけでもだいぶ休まるだろう」

「わがまま言って、ごめんなさいね」

「いいのよ、ゆっくりお休みなさい」

「そうだアンヌ、パラライザーを取って来いって言われたんだ。どこにあるかな」

「そうなの? とってくるわ」

 

二人で優しく少女を寝かしつけて、アンヌにはパラライザーを貸してもらう。

そうそう、これこれ。

ワイアール星人化した被害者も一撃で麻痺させられる優れた非殺傷武器。

あの場面で咄嗟にこれを使う判断ができるとは、アンヌも流石は精鋭たるウルトラ警備隊だ。

……しかし、女の細腕で使うにはえらい物々しい銃だな。バルタン星人によく効きそうな見た目をしている。

 

「今度の作戦にこれが必要なの?」

「ああそうさ、こうするんだ」

 

渡されたパラライザーをベッドの上で寝ている少女にすかさず照射!

 

「アアッ!?」

「ソガ隊員!? なんてことを! やめてッ!」

「アンヌ、こういうヒステリックな患者ってのはね、その実すごく痛いのを隠してたりするもんさ。……俺の爺さんも酷い医者嫌いでね、それで死んじまった。殴ってでも病院に引きずって行けばよかったと今でも思ってるよ。……さ、早く」

 

悲鳴を上げるアンヌを宥めて診察を促す。

俺の事を野蛮人を見る目で睨んでくるが、流石は才媛だ、流れるような手つきで診察を進めていく。すると、みるみるうちにその顔色が変わっていくではないか。

 

「嘘……体温が32.2度しかないのに、代謝が異常な速度で行われている……脈拍も血圧も正常値を計測できないなんて! まるでトンボかバッタだわ!」

「なに!? レントゲンをとって見ろ!」

「キャアッ!」

「アンヌ!?」

 

シーツを跳ね飛ばし、目の前にいたアンヌの首を絞めにかかる少女を、背後からウルトラガンで即座に撃ち殺す。

 

「そ、そんな……殺してしまったの!?」

「……いや、見ろ!」

 

俺が指さす先では少女の頭部がみるみる膨れ上がり、大きな複眼を持つ醜い宇宙人の死体となった。

こいつを基地の中に放置しておくと、指令室のコンピュータを破壊した上にホーク2号まで盗み出してとやりたい放題されるところだった。

コンピュータの修理に一体誰が駆り出されると思ってるんだ……俺達(アマギ隊員)の仕事を余計に増やす奴は絶対に許さないぞ、このクソアマめ! ざまあみろ!

 

「彼女は侵略者だったということ!?」

「それがバレそうになったんで、キミを殺そうとしたんだ……ということは、ダンが危ない!!」

 

ありがとよ、ピット星人。おかげで出撃の理由がでっち上げられたぜ!

隊長に報告し、ホーク1号での出撃許可を貰う。

木曽谷へ急行する途中で吾妻湖から怪獣が出現したと通報が入る。

よしよし、いいタイムだ。

 

「怪獣だと? どんな奴だ?」

「ハッ、角を持った白と黒の牛のような怪獣だそうです」

「一体なぜ怪獣が……」

「我々が出撃したからでしょうか?」

「それにしてはタイミングが妙だ。……もしや湖のダンを殺す為に?」

「ならばまだ彼は生きている! 急ぐぞ!」

 

湖に到着すると、二匹の怪獣が争っている。

よっしゃ! エレキングとミクラスの戦闘中に間に合ったぞ!

しかし、ミクラスの周囲は激しく炎上している。エレキングのレーザー攻撃で近づけないようだ。

 

「なんだ!? 怪獣は二匹いたのか!?」

「いえ、通報ではそんなこと聞いてません!」

「ならば、どちらかは後から現れたのだ」

「どっちも角があって、牛みたいな怪獣だぜ……?」

 

同じ牛でも、バッファローとホルスタインだけどな。

 

「一先ず、通報にあった白黒模様の方を先に攻撃してみよう」

 

ホークのレーザーが白黒の怪獣(エレキング)の足元に命中する。

すると雄叫びを上げこちらを向いたエレキングがその独特の形状をした口から三日月型の光線を発射してきた。

初撃は正面からの攻撃だったため、フルハシの巧みな操縦で躱すことが出来たが、奴はまだこちらを狙っている。マズイ、旋回中は隙だらけだ!

 

しかし、横合いから突っ込んできた謎の怪獣(ミクラス)がエレキングを突き飛ばし、三日月光線は明後日の方向へ飛んでいく。

 

 

「隊長、奴らの正体がなんであれ、今のところ、あっちの怪獣は利用できそうですよ」

「うむ、利害が一致するうちは共闘といこう。ダンとの通信はまだ回復しないか?」

「まだです。もう少しばかり、あのギョロ目と仲良くやる必要があるみたいですね」

「よーし、いくぞ!」

 

 

ミクラスの攻撃に、こちら側が合わせて追撃をする形で疑似的な連携攻撃を行う。

お互いの隙を打ち消しあって、打撃とレーザーの波状攻撃を食らわせる。

そうして何度も何度も攻撃を繰り返していくうちに、エレキングの美しかった白磁の体表は、土埃と流れ出た体液で段々と黄色に染まっていくではないか。

着実にダメージを与えられているようで何よりだ。

見るからに弱ってきたエレキングはミクラスに背中を見せて逃げようとする。

そうはさせじとミクラスは追撃を仕掛けるが……

 

「イカン! 罠だ!」

 

突進を長い尻尾で迎撃され、そのまま顔面を滅多打ちにされるミクラス。

流石のミクラスもこのカウンターはかなり効いたのか、その場でフラフラと棒立ちになってしまう。

これは()()が来る! マズイ!

 

「隊長、あのギョロ目がピンチです! 助けてやりましょう!」

「……よし、あの怪獣を援護する! 急降下だ!」

「フルハシ隊員、機首を奴の角へ向けてください!」

「よし来た!」

 

エレキングはグロッキー状態のミクラスにゆっくりとその長い尻尾を巻き付けていく。

必殺の放電攻撃でとどめを刺すつもりだ。

だが、そうはさせるもんか、動きが止まっているのは奴も同じ。

 

……お前の弱点は知っているぞ!

 

「ここだ!」

 

回転する右のアンテナに狙いを定めてレーザーを叩き込む!

着弾と同時に三日月型のアイデンティティは根元からへし折れ弾け飛ぶ。

絶叫し、ミクラスを放り出して苦しむエレキング。

へへっ! ウルトラ警備隊一の射撃の腕を見たか!

 

喜んだのもつかの間、敵に致命傷を与える事には成功したものの、ホークは急降下からの急上昇という最大の隙を敵の眼前で晒すことになってしまう。

自分の角を折った憎き敵の隙を見逃すエレキングでは無かった。

怒りのままに光線を乱射すると、そのうちの一発がホークの右翼を捉える。

 

「しまった!」

「こうなったら地上戦だ! フルハシ、着陸しろ!」

「了解!」

 

不時着して脱出しようとするが、ハッチの外は運悪く渓流だった。救命ボートを展開するしかない。

しかし、怒りに燃えるエレキングがそんな悠長なことを許してくれるはずもなく、こちらを踏みつぶそうと迫ってくる。

万事休す! 余計な欲を出した罰が当たったのか?

エレキングの足が目の前に! これは死んだ!

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙~↑!!! ……ってアレ?」

 

一向にその白い足が振り降ろされることはなく、それどころか徐々に後退していくではないか!

 

「見ろ! アイツだ!」

「助かった……」

 

アマギ隊員がエレキングの後方を指さすと、その長い尻尾をむんずと掴み、力いっぱい引っ張るミクラスの姿が見えた。

 

「今のうちだ! 脱出を急げ!」

「これで貸し借り無しってことか……味なマネしやがる」

 

俺達が命からがらボートに乗り移ったと同時、ミクラスは悲鳴をあげ、もんどりうって倒れる。よく見れば両腕からプスプスと白煙を吹いていた。掴んでいた尻尾から直接、電流を流し込まれたのだ。

そうして光の粒子になって消えていく……ありがとうミクラス。

 

「ああッ! アイツがやられてしまった!」

「後は我々だけだ、来るぞ! ……撃て!」

 

ボートから手持ちのウルトラガンで応戦するが、流石にサイズ差がありすぎる。

ダン、早く来てくれ! 急流すべりしながらじゃ、ろくに回避もできやしない!

このままでは、光線と落石攻撃で沈んでしまう!!

 

「あッ、ウルトラセブンだ!」

「デュアアーーッ!!」

 

飛行の勢いをそのままにセブンのキックが炸裂!

そのまま連続で殴るわ投げるわ連続攻撃。

アンテナが一本折れているせいか、エレキングの動きは精彩を欠き、まるで反撃が出来ない様子。

 

「セブン! そいつの尻尾に注意しろー!」

「角が弱点だ! 角を狙えー!」

「デュワ!!」

 

左に残ったもう一本のアンテナにエメリウム光線が命中し、完全に動きが止まったところへ、すかさずアイスラッガーでバラバラ! ナムサン!

うへえ、グロい。回収処理班は大変そうだな。

 

そのままセブンは河原の宇宙船にエメリウム光線を発射し、円盤は爆散!

こうしてピット星人の地球侵略は失敗に終わったのだった。

 

 

……さて、次こそは頑張りどころだ。

大丈夫かなあ……




「緑の恐怖」「湖のひみつ」続けて終了。

今回の行動とその影響

・基地内のピット星人αを射殺


出撃が早まったため、共闘の結果ミクラスの敗因となった攻撃が
グロッキー状態で全身に巻き付いた尻尾から存分に電撃を食らう。

両手で掴んだ尻尾から数秒の電撃
へと軽減される。


船内でダンに襲われ気絶したピット星人βから指示を引き継ぐピット星人αが帰還しない為、既に致命傷を負っていたエレキングがろくに反撃せず、セブンがノーダメ勝利。

船内で気絶したβがαに起こされないので、円盤が逃げ遅れ、セブンとの追撃戦が発生しない。

基地のコンピュータが破壊されないので、アマギが兵器開発に専念できる。

といったところでしょうか。

次回は閑話の予定

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