転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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海底基地を砕け(Ⅱ)

「やってくれやがったな……! 参謀! 参謀、大変です!」

「どうしたソガ!」

「敵は戦艦大和の残骸をサルベージして、軍艦島にしてしまいました! しかも、ベースは大和の船体でも、その上から地球防衛軍の戦艦を張り付けて、装甲や武装を強化してあります!」

「なんだと!? 防衛海軍の!? ……という事はまさか!」

「対ぺダン作戦で沈んだ……艦艇達だと思われます……!」

「なんですって! 本当ですか、ソガ隊員!」

「ああそうだ……あの右舷側の切っ先は間違いない、ゼノン号だ! 見間違えるもんか!」

「な、なんという事を……」

 

通信機の向こうで、ダンが絶句しているのが分かる。

俺だってまさかこんな事になるとは……クソっ! 完全にオレのミスだ!

ちょっと考えれば分かりそうなものだったのに、どうやってキングジョーを退けるかばかり考えて、コイツの存在を忘れていた……

アイアンロックスといえば大和という固定観念から、こうなる可能性を無意識に除外してしまっていたんだ……奴にここまでの拡張性があったなんて!

 

「許さない……絶対に許さんぞ!」

「おい、どうしたダン! 無茶はやめろ!」

「ソガ隊員、ダンを援護しないと!」

「無茶いうなアンヌ! いくらポインターって言ったって、大和の主砲を食らったら、周囲の地形ごと、跡形もなくなってしまうかも知れないんだぞ! どうやって車と戦艦がやり合えるってんだ!」

「そんな……ダン、やめて!」

 

原作より激しい対空砲火に、攻めあぐねていたダンが、突然無茶な攻撃を繰り返し始めた。

アイツ……頭に血が上ってやがる!

 

「こうなったらやるしかない! アンヌ、ウルトラミサイル、発射!」

「ハイ!」

 

ポインターの後部から展開したロケットランチャーが火を噴くが、アイアンロックスに対しては焼け石に水。

高角砲や装甲版をいくら吹き飛ばしても、次から次へとせりあがってくる。剝いても剝いても変化がない……まるで鉄の玉ねぎだ。

それでも俺達の茶々入れを煩わしく思ったのか、アイアンロックスはぐるりとこちらへ艦首を向けると、無数の砲台群で埠頭に激しく艦砲射撃を行ってきた!

 

「キャアア!!」

「ア゙ア゙ァ゙↑!!!」

「アンヌ! ソガ隊員! ……くそっ! 冷静になれ……ダン……」

 

至近弾の爆風ですら、ポインターが押し返される程の威力! バリアが無かったら、今頃ミンチだぞ……

……いや、まてよ? 本当にそうか?

もしあれが本物の大和の主砲だったら、こんな漁港、一発で全部吹き飛ぶはずだ……

ところが、弾の当たった家屋は確かに吹き飛び炎上するものの、かろうじて原型はとどめている。

 

もしかして、奴の武装は、戦艦の主砲そのままでは……ない?

敵はいったい、何を撃っているんだ……?

 

冷静になってみると、さっきから奴の攻撃が見える。それがそもそもおかしいじゃないか。

てっきり曳光弾かと思っていたが……それにしては弾速が若干遅い。

第一、一度沈んだ船の弾薬が無事なはずはないし、いくら大和が頑丈とは言え、海底で錆び付いた砲身が、発射時の爆圧に耐えられるはずがない!

そうか、分かったぞ! さてはミミー星人め……砲塔の中身を全部、ロケット砲に改造しやがったな?

 

砲身内で炸薬を爆発させ、その圧力で弾を撃ち出す大砲と違って、弾自体に推進力のあるロケット弾なら、砲身の強度はそこまで必要ない。ならばどうして砲塔をそのまま流用しているかと言うと……きっとあの長い砲身を、ある程度の狙いをつけるため、レール代わりにしているんだ。ロケット弾は命中精度が悪いからな。

そしてロケット砲のもう一つの欠点は……同じ大きさなら、砲弾よりも威力が明らかに低いことだ!

重たい砲弾で押しつぶされたら、ポインターのバリアも意味はないが、爆風を弾くだけでいいのなら、電磁バリアでも十分耐えられる!

 

ダンのホーク3号を追う対空砲のすぐ目の前を、俺はボンネットのレーザー砲で、薙ぎ払うようにして狙う。

徐々に加速していくロケット弾は、射出直後が最も遅い。こうすることで、飛び出したロケットを撃ち落としてやろうってわけさ!

運よくレーザーに引っかかったロケット弾が爆発し、後続の弾へどんどん誘爆していく。

ひとたび破片が飛び散れば、それが障害となって、発射を阻む壁となったのだ。まるで大気圏外で人類の宇宙進出を阻むデブリ帯のように……

 

「みんな、よく持ちこたえた! いまから私の攻撃を援護せよ!」

「隊長!」

 

アイアンロックスの背後の空に、銀色の三角形がきらりと光る。

みるみるうちにそれは大きくなって、隊長の駆るホーク一号が、現場に駆け付けた事を知らせてくれた。

 

海域に到達したキリヤマは、海面スレスレの低空飛行で敵の死角に侵入したかと思うと、迎撃砲台の描く無数の火線にまったく怯むことなく、雷撃機のように敵へ向けて一直線に突入し、腹に抱えた大量のミサイルを、至近距離からこれでもかとお見舞いした!

後部の砲台群が吹き飛び、新たな砲がせりあがるまで、一瞬だけ無防備になるアイアンロックス。

艦とぶつかる寸前に急上昇したキリヤマは、今度はその隙をついて、敵の後部でひらりと宙返り、背面飛行のまま、急降下爆撃を仕掛けた! ホークの投下した爆弾が、大和の巨大な煙突にホールインワン!

特徴的な円筒を、木っ端みじんに吹き飛ばす!

 

「やったッ!」

「いや、まだだ!」

 

隊長機の後ろを、左右にせり出した甲板上に設置された砲台が狙う、

原作では、巧みな操縦技術によって、一度は巨艦を沈黙させた隊長の攻撃も、三倍以上の耐久力へと強化されたアイアンロックスには、致命傷とまではいかなかった!

 

「なんてふてぶてしい奴なんだ……!」

 

下田港でウルトラ警備隊が激闘を繰り広げている頃、作戦室にパリ本部から通信が入る。

怪物は、アイアンロックスと呼ばれ、沈没した戦艦などの、海底の無限の鉄屑を利用した、強烈な爆弾ロボットとわかった。欧州各国の基地が狙われ、静止して15分後に爆発することが知られたが、敵の本拠地はわからなかった……

 

「なんですって!? 爆弾ロボット!?」

「ああ、なんでも沿岸都市を丸々吹き飛ばす威力だそうだ。概算したが、爆発半径に富士山も入っている。この極東基地が地下施設とは言え、どんな影響があるかもわからん。ましてや、日本に現れたアイアンは、その他の地域のものより三倍以上の大きさを誇るのだ。爆発の威力もどうなるか分かったもんじゃない」

「なんとしてもここで撃滅せねば!」

「自爆までしようというのか……あの姿で!」

「ダン! 突出し過ぎだ! 戻れ!」

「ウオォオオオォオオオオ!!!」

 

今度は隊長の制止も聞かず、回避をかなぐり捨てて一心不乱に攻撃を繰り返すダン。

敵の中央部に鎮座する、巨大な艦橋へ肉薄するが……その扶桑のごとき歪な艦橋すらも、各所に対空機銃の張り巡らされた、防御塔だったのだ!

 

「アッ! ダン!」

「ダァァアアアン!!」

「バカ! やめろアンヌ! 今バリアから出たら、体がバラバラに千切れ飛んでしまうぞ!」

 

ダンがハチの巣にされる様を見ていたアンヌが、悲痛な叫びを上げる。黒煙を上げて海上へ墜落していくホーク3号。アマギとフルハシは消息不明、ダンは撃墜され、残る戦力は強行軍のホーク1号と小さな小さなポインターだけ。万事休すか!

 

「デュアアアア!!」

 

その時、海面がピカッと瞬いたかと思うと、海の中から真っ赤な巨人が飛び出して来た!

怒りの炎をその身に宿した、地球の守護者、ウルトラセブンだ!

 

「ハッハッハッハ……来たかセブン。キミは、我々の力を知らなすぎる……」

「なにッ?」

 

なんとセブンの脳内に敵が語り掛けて来るではないか。

それもこの声から滲み出る余裕……セブンが現れたというのに、狼狽えるどころか、まるで待ち構えていたかのような……

 

「我々は、海底に眠るこの豊富な資源……それも、地球人が利用していないものをいただくだけだ……」

「なんだッ……!?」

「総攻撃で、ミミー星人の威力を見せてやる!!」

 

そう、ミミー星人はこの時を待っていたのだ!

ウルトラセブンが、アイアンロックスに勝負を仕掛けるこの時を!

 

アイアンの全砲門が一斉に火を噴き、セブンの体に真っ赤な炎の大輪を咲かせる。

さしものヒーローも、これほど膨大な鉄量を一度にぶつけられては、たまらない。

思わず海面に膝をつき、一瞬意識を飛ばしてしまう。

それは、致命的な隙を晒す事になった!

 

「デュオオッ!」

「しまったッ! セブンが捕らえられたっ!」

 

アイアンロックスの各部から、無数の錨が射出され、セブンの両手両足、胴体から首に至るまで、雁字搦めにしてしまう!

 

「オイオイオイオイ! 鎖が多すぎる!! そんなん反則や!」

 

本編では、手枷足枷の付いた鎖に捕らわれたが、結局は一本の鎖に過ぎず、苦戦はしたものの、最終的に飛び上がったセブンが猛烈に回ればなんとかなった……だが、これでは空中で回転してねじ切るどころか、身動き一つすらできない!

危うしセブン!

 

「くそ! だめだ! 鎖が硬すぎる……それに狙いがつけられん!」

 

ソガは、今回の戦いにおいて、この鎖を破壊する事こそが、自身の役割だと任じていた。しかし、あまりに予想外の展開に、半ばパニックに陥ってしまっていたのだ。

 

ウルトラミサイルを打ち込んでも、鎖の()()()によって衝撃をいなされてしまい、効果が薄い。かといってレーザーでは、頑丈な鎖を焼き切る為に照射し続けなくてはならず、巨大なセブンが少し身じろぎしただけで跳ね回る鎖の一点を狙い続けるのは、いかなソガと言えど至難の業であった。それに、そうしている間にも、アイアンロックスからロケット攻撃が雨あられと飛び、セブンの体を打ち据える。破壊できたのはほんの数本で、これではまったく焼け石に水だ。そうこうしている間にミサイルが尽きてしまう。

 

「隊長! セブンを助けなくては!」

「駄目だ! 元々偵察目的の出撃だったんだ……満足な爆装はしていない! あとはこちらもレーザーだけだ!」

「そんな……キャアアア!!」

「ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙~↑!!!」

「アンヌ! ソガ!」

 

直撃弾を食らい、派手に吹き飛ばされ、逆さまに横転してしまうポインター。

電磁バリアは二人の命を守り切ったが、これではもう攻撃に参加することは出来ないだろう……

 

「アンヌ、アンヌ! 駄目か…………クソッ! いったい、どうしろってんだよ!」

 

気絶したアンヌを揺さぶるのをやめ、ハンドルを殴りつけるソガ。

オレのせいだ……オレが余計な事をしたからこうなったんだ……オレがきちんと予想していなかったばかりに……!

こんなところで……!

 

 

その時! アイアンロックスの後背で爆発が巻き起こる!

な、なんだ? 隊長のミサイルは弾切れのはずだ……いったい誰の攻撃だ!?

 

飛来したミサイルと思しき攻撃の排気煙の軌道を辿って、双眼鏡で海上を確認した俺は驚愕した。

 

そんな……まさか!?

 

鋭角を基調とした、さながらイージス艦の如きシンプルで先進的なフォルム。ピラミッドのような独特の形状をした艦橋。

 

槍のような舳先で波を切り裂き、美しく輝く白磁の船体を、沈みゆく夕日で真っ赤に染めながら、見せつける様に、大海原へ悠々とその姿を晒すあの艦は……間違いない。

 

あれは……!!

 

 

「対艦ミサイル、初弾全弾命中。敵、損害軽微なれど、攻撃の効果を認むものなり」

「よろしい! そのままミサイルによる牽制射を続行! 砲戦距離まで接近したのち、新兵器による肉薄攻撃を試みるぞ! 本艦はこれより作戦海域に突入する! 機関最大船速!」

「機関、最大船速!」

「諸君、前回は風船のように浮かべられて不覚をとったが……海の上では依然として、このマックス号こそが、無敵の大戦艦なのだという事を、あの不届き者に教えてやれ! ……マックス号、交戦せよ!」

「戦闘開始!!」


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